「人工じんこう地震じしんではありません」 専門せんもん家かが解説かいせつ

福島ふくしま県けん沖おきを震源しんげんに発生はっせいしたマグニチュード7.4の地震じしんについてSNS上じょうでは「人工じんこう地震じしんだ」という投稿とうこうがあり、ツイッターでも一時いちじトレンド入いりしました。

こうした「人工じんこう地震じしん」に関にかんする投稿とうこうについて、専門せんもん家かに詳くわしく聞きいてみました。

核かく実験じっけんでもエネルギーは足たりない

地震じしんのメカニズムに詳くわしい東京とうきょう大学だいがく地震じしん研究所けんきゅうじょの古村こむら孝志たかし教授きょうじゅは、地震じしんのエネルギーに注目ちゅうもくすると人工じんこう地震じしんでないことはすぐわかると指摘してきします。

「これだけ強つよい揺ゆれを東北とうほくから関東かんとうにかけての広ひろい範囲はんいで起おこそうと思おもうととてつもないエネルギーが必要ひつようで、例たとえば核かく実験じっけんでも全然ぜんぜんエネルギーは足たりません」

過去かこに北朝鮮きたちょうせんが地下ちか核かく実験じっけんを行おこなった際さいには、地震じしんの規模きぼに換算かんさんするとマグニチュード5前後ぜんごの振動しんどうが観測かんそくされています。

それに対にたいして今回こんかいの地震じしんの規模きぼはマグニチュード7.4。マグニチュードで2の差さはエネルギーでは1000倍ばいの差さとなります。

波形はけいも通常つうじょうの地震じしん

SNS上じょうでは地震じしん波形はけいを持ち出もちだして人工じんこう地震じしんだと主張しゅちょうする投稿とうこうもあります。

上うえの図ずがSNSで人工じんこう地震じしんの根拠こんきょとして示しめされた地震じしん波形はけいと同おなじものです。

よく見みかける地震じしん波形はけいではP波はという小刻こきざみな揺ゆれのあとS波はという大おおきな揺ゆれがかかれるのに対にたいし、今回こんかいはいきなり大おおきな揺ゆれで始はじまっているように見みえる点てんからそのような主張しゅちょうをしているとみられます。

これについても古村こむら教授きょうじゅは「よくある波形はけいです」と否定ひていします。

古村こむら教授きょうじゅによると、こうした主張しゅちょうをしている人ひとが引用いんようする地震じしん波形はけいのグラフはP波はとS波はが一体いったい化かしているように見みえますが、これは時間じかん軸じくの問題もんだいで時間じかんを引き延ひきのばすと印象いんしょうはかなり変かわります。下したがその図ずです。

さらに今回こんかいの地震じしん波形はけいをよく解析かいせきに使つかう「速度そくど波形はけい」という形かたちに変換へんかんし時間じかん軸じくを拡大かくだいしてみると、下したの図ずのようになってP波は、S波はがしっかり分わかれました。

古村こむら教授きょうじゅは「よく見みてみるとP波はもS波はもしっかりあります。当然とうぜんなのですが」と話はなしていました。

（参考さんこう）

上うえの図ずは2016年ねん9月つきに北朝鮮きたちょうせんが行おこなった核かく実験じっけんの際さいの加速度かそくど波形はけいです。最初さいしょから大おおきな振幅しんぷくの波形はけいとなっています。

震源しんげんの深ふかさまで人間にんげんは掘ほれない

強つよ震動しんどう予測よそくに詳くわしい防災ぼうさい科学かがく技術ぎじゅつ研究所けんきゅうじょの藤原ふじわら広行ひろゆき部門ぶもん長ちょうは「震源しんげんの深ふかさ」に注目ちゅうもくして人工じんこう地震じしん説せつを否定ひていします。

今回こんかいの地震じしんについて藤原ふじわらさんは「今回こんかいの震源しんげんは深ふかさが57キロとされていますが、例たとえばこれだけ深ふかい場所ばしょまで穴あなを掘ほることは今いまの人類じんるいの技術ぎじゅつでは不可能ふかのうです」と話はなしていました。

藤原ふじわらさんによると、日本にっぽんで最もっとも深ふかい穴あなは新潟にいがた県けんで資源しげん探査たんさのために掘ほられたもので深ふかさはおよそ6300m、つまり6キロほどです。海底かいていの探査たんさを行おこなう地球ちきゅう深部しんぶ探査たんさ船せん「ちきゅう」が掘削くっさくするのも3000m、3キロほどです。世界せかいを見みてもロシアやカタールで掘ほられた12キロが最大さいだい級きゅうだということです。

またそれだけの穴あなを掘ほろうと思おもうと予算よさんも数すう百ひゃく億おく円えんはかかるということです。

発光はっこうは「アーク」か

SNS上じょうでは地震じしん発生はっせい時じの街まちの映像えいぞうで白しろく光ひかる発光はっこう現象げんしょうを取り上とりあげて「人工じんこう地震じしん」の証拠しょうこだという投稿とうこうもありました。

これについて電力でんりょくシステムに詳くわしい東京とうきょう電機でんき大学だいがくの加藤かとう政一まさかず教授きょうじゅに動画どうがを見みてもらうと「アーク」という現象げんしょうだとみられるということでした。

加藤かとう教授きょうじゅによると「アーク」は地震じしんで揺ゆすぶられた送電そうでん線せんどうしが接触せっしょくしてショートしたあと、送電そうでん線せんがふたたび離はなれる際さいに大気たいき中ちゅうを大量たいりょうの電気でんきが流ながれることで起おきるということです。

デマにだまされないで リツイートは慎重しんちょうに

不確ふたしかな情報じょうほうを気軽きがるにリツイートすると、デマを広ひろげることに加担かたんしてしまうこともあります。災害さいがいが起おきると不安ふあんな気持きもちになりますが、情報じょうほう収集しゅうしゅうをする際さいには公的こうてき機関きかんが出だす情報じょうほうを参考さんこうに冷静れいせいに取り組とりくんでください。

ソース：NHK ニュース