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くわしく】ロシア侵攻しんこう 生物せいぶつ化学かがく兵器へいき使用しようされる可能かのうせいは?

2022-04-03 01:48:14

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ウクライナへの侵攻しんこうつづけるロシアぐん
欧米おうべい諸国しょこく中心ちゅうしんに、ロシアぐん生物せいぶつ兵器へいき化学かがく兵器へいき使用しようするのではないかという懸念けねんつよまっています。
そもそも生物せいぶつ化学かがく兵器へいきって?使用しようされたらどうなるの?
海外かいがい専門せんもんなどきました。
アメリカ総局そうきょく徹太郎てつたろう/ワシントン支局しきょく渡辺わたなべこうかい

生物せいぶつ兵器へいきとは?

生物せいぶつ兵器へいきは、ひと感染かんせんする細菌さいきんやウイルスを兵器へいき利用りようしたもので、核兵器かくへいきおなじく大勢たいせいひと殺傷さっしょうする「大量たいりょう破壊はかい兵器へいき」です。

ロシアは、きゅうソビエト時代じだいからさまざまな病原びょうげんたいを、兵器へいきとして利用りようするための研究けんきゅうつづけてきたとみられています。

具体ぐたいてきにはどんな生物せいぶつ兵器へいき研究けんきゅうしていたのか?

炭疽たんそきん(たんそきん)」や「天然痘てんねんとうウイルス」など利用りようしたものです。
ロシアは、中央アジアちゅうおうあじあのカザフスタンに「炭疽たんそきん」の生産せいさん施設しせつ保有ほゆうしていたとみられるほか、ロシア国内こくないでは「天然痘てんねんとうウイルス」の生産せいさん貯蔵ちょぞうおこなっていたとかんがえられています。

このほかきゅうソビエト時代じだいから、「エボラウイルス」や「ペストきん」などについても、兵器へいきとして利用りようするための研究けんきゅうおこなわれていたとかんがえられています。

化学かがく兵器へいきとは?

化学かがく兵器へいきは、化学かがくざいふく弾薬だんやく爆発ばくはつさせるなどして、大量たいりょうひと殺傷さっしょうする兵器へいきで、生物せいぶつ兵器へいき同様どうよう大量たいりょう破壊はかい兵器へいき」です。

ロシアは、きゅうソビエト時代じだいから「サリンガス」、「VXガス」、「ノビチョク」とばれる化学かがく兵器へいき開発かいはつしてきたとされています。
いずれも、神経しんけい伝達でんたつさまたげ、呼吸こきゅう障害しょうがい引き起ひきおこす猛毒もうどくの「神経しんけいざい」です。

生物せいぶつ化学かがく兵器へいきは、禁止きんしされていないの?

いずれ兵器へいきも、使用しようについては、1925ねん国際こくさい条約じょうやく「ジュネーブ議定ぎていしょ」で禁止きんしされています。
その後そのご、1975ねん生物せいぶつ兵器へいき開発かいはつ生産せいさん保有ほゆうなど禁止きんしする「生物せいぶつ兵器へいき禁止きんし条約じょうやく」、1997ねんには、同様どうようのことをきんじた「化学かがく兵器へいき禁止きんし条約じょうやく」がそれぞれ発効はっこう
ロシアも、これら国際こくさい条約じょうやく締結ていけつこくです。

ロシアは保有ほゆうしているの?

条約じょうやくもとづいて“すべて廃棄はいきした”としています。

2017ねん9つき、プーチン大統領だいとうりょうは、テレビ電話でんわを通をつうじて、ロシア国内こくないのこっていた化学かがく兵器へいきをすべて廃棄はいきしたとする映像えいぞう公開こうかい

プーチン大統領だいとうりょうつぎのようにべていました。
「ロシアにとって非常ひじょう重要じゅうようで、歴史れきしてきだ」

きゅうソビエトで化学かがく兵器へいき開発かいはつかかわった化学かがくしゃは?

「すべての化学かがく兵器へいき廃棄はいきしたというロシアの主張しゅちょうがそもそも虚偽きょぎだ」
こう指摘してきするのは、きゅうソビエト時代じだい「ノビチョク」など化学かがく兵器へいき開発かいはつかかわり、その後そのご、ロシアが国際こくさいてき合意ごういはんして開発かいはつつづけていると告発こくはつした化学かがくしゃビル・ミルザヤノフです。

そして、ミルザヤノフは、つぎのようにつづけました。
「ロシアが廃棄はいきしたのは、使用しようできなくなった化学かがく兵器へいきで、『ノビチョク』などの『しん世代せだい』とばれる兵器へいき保有ほゆうしている。わたし試算しさんでは、およそ3000トン保管ほかんされているとみられ、すうひゃくまんにん殺害さつがいできるりょうだ」

ロシアの主張しゅちょうは?

専門せんもんこう指摘してきするなか、ロシアは“アメリカがわ使用しようするおそれある”と主張しゅちょうしています。

プーチン大統領だいとうりょうは、3つき16にちつぎのようにべています。
「ウクライナの研究所けんきゅうじょアメリカ支援しえんにより、コロナウイルス、炭疽たんそきん、コレラなど実験じっけんおこなわれている。生物せいぶつ兵器へいきつくられたとしんじる理由りゆう十分じゅうぶんある

また、ロシアぐんの「国家こっか防衛ぼうえい管理かんりセンター」のミジンツェフ・センターちょうは、3つき19にちつぎのようにべました。
「ウクライナぐん南部なんぶのミコライウしゅう有毒ゆうどく化学かがく物質ぶっしつ使つかった挑発ちょうはつ行為こうい計画けいかくしている」

たいするアメリカがわ主張しゅちょうは?

「プーチンは追い詰おいつめられている。追い詰おいつめられれば追い詰おいつめられるほど、よりはげしい戦術せんじゅつ使つかだろう」

アメリカのバイデン大統領だいとうりょうは、3つき21にち、ロシアぐんが、ウクライナぐんはげしい抵抗ていこうにあっていることを念頭ねんとうに、こうべました。

また、ブリンケン国務こくむ長官ちょうかんも3つき17にちつぎのようにべて、警戒けいかいかんつよめています。
「ロシアは化学かがく兵器へいき使つかったうえで、それをウクライナがやったとうその主張しゅちょう展開てんかいし、ウクライナの人々ひとびとへの攻撃こうげき強化きょうかすることを正当せいとうしようとしているかもしれない。よりだい規模きぼ軍事ぐんじ行動こうどう正当せいとうするために、ジェノサイドをねつ造ねつぞうするのは、ロシアがこれまでもとってきた方法ほうほうだ」

アメリカ国防こくぼう総省そうしょうで、生物せいぶつ化学かがく兵器へいき担当たんとうつとめたもと高官こうかんは?

「ウクライナで生物せいぶつ兵器へいき製造せいぞうしているというロシアの主張しゅちょう事実じじつ無根むこんだ」
こう強調きょうちょうするのが、アメリカ国防こくぼう総省そうしょうで、かく生物せいぶつ化学かがく兵器へいき担当たんとう次官補じかんほつとめ、ウクライナやカザフスタンなどきゅうソビエト時代じだい生物せいぶつ化学かがく兵器へいき廃棄はいきかかわったアンドリュー・ウェバーです。

ウェバーは、アメリカがウクライナにった支援しえんについては「公衆こうしゅう衛生えいせい疾病しっぺい対策たいさく強化きょうか」だとしたうえで、「生物せいぶつ化学かがく兵器へいき使用しよう軍事ぐんじてきなメリットはない」とも指摘してきしました。

ロシアが使つか可能かのうせいは?

ウェバーは、その可能かのうせいについてつぎのようにはなしています。
「ロシアぐんおおきな犠牲ぎせいなか、ウクライナの市民しみんなどソフトターゲット』がねらわれるようになっている。人々ひとびと恐怖きょうふ巻き起まきおこして、士気しき低下ていかさせ、降伏ごうぶく強要きょうようする目的もくてき使つかわれるそれある

ぜんしゅつ化学かがくしゃミルザヤノフは、化学かがく兵器へいき「ノビチョク」が使用しようされる可能かのうせいは「十分じゅうぶんにある」と分析ぶんせきしています。
「『ノビチョク』は個人こじん暗殺あんさつだけでなく、戦場せんじょう大勢たいせい人々ひとびと攻撃こうげきする兵器へいきとして使用しようすることも想定そうていされている」

もし使用しようされたらどうなるの?

大量たいりょう避難ひなんみん発生はっせいや、感染かんせんしょう対策たいさくなど人道じんどう支援しえんにもおおきな影響えいきょうきることがかんがえられる」
ブッシュ政権せいけんやオバマ政権せいけんで、生物せいぶつ化学かがく兵器へいき対策たいさくかかわったネブラスカ大学だいがくのジェームズ・ローラーじゅん教授きょうじゅは、こうはなします。

また、ローラーじゅん教授きょうじゅは、戦闘せんとういん戦闘せんとういん被害ひがいはもちろんのこと、ウクライナだけでなく、周辺しゅうへんくににも影響えいきょうおよそれあることから、診断しんだんキット、解毒げどくざい抗菌こうきんざい治療ちりょうやくなど準備じゅんびととのえる必要ひつようがあるとうったえています。

そのうえで、ロシアが生物せいぶつ兵器へいき使用しようする場合ばあい伝染でんせんせいたか病原びょうげんたい使つかえば、国境こっきょうえて国民こくみんわる影響えいきょうおよぼす可能かのうせいがあることをまえ、「ヒトからヒトに感染かんせんしない炭疽たんそきん使用しようすることがかんがえられる」と分析ぶんせきしています。

ロシアが過去かこ使用しようしたことは?

欧米おうべいは、ロシアが化学かがく兵器へいき「ノビチョク」を使用しようまたは使用しよう関与かんよしたことがあるとみています。
具体ぐたいてきには、以下いかの2つの事件じけんです。
▽2018ねん3つき イギリスで、ロシアのもとスパイのスクリパルそのむすめがねらわれた暗殺あんさつ未遂みすい事件じけん
▽2020ねん8つき ロシアではん体制たいせい指導しどうしゃナワリヌイおそわれ一時いちじ意識いしき不明ふめいおちいった暗殺あんさつ未遂みすい事件じけん

また、OPCW=化学かがく兵器へいき禁止きんし機関きかんは、シリア中部ちゅうぶのハマけんで2017ねん3つき、アサド政権せいけんぐんはん政府せいふ勢力せいりょく支配しはいしていたまちに対にたい空爆くうばくおこない、サリンガスなど化学かがく兵器へいき使つかわれたと結論けつろんづけています。
これについてアメリカ国務省こくむしょうは「アサド政権せいけんに対にたいするロシアの支援しえんが、化学かがく兵器へいき継続けいぞくてき使用しよう可能かのうにしたうたがある」として、ロシアの関与かんよ指摘してきしています。

使つかわれた場合ばあい欧米おうべいどう対応たいおうする?

ロシアに対にたいする追加ついか制裁せいさいやウクライナへの支援しえん強化きょうか予想よそうされます。
ただ軍事ぐんじてき対抗たいこう措置そちにまで踏み切ふみきどうかはわかりません。

バイデン大統領だいとうりょうは、3つき24にち化学かがく兵器へいき使用しようされた場合ばあいについて「相応そうおう対応たいおうをとる」とべる一方いっぽうで、軍事ぐんじ行動こうどうによる対抗たいこう措置そち可能かのうせいについては「そのとき判断はんだんする」とべるにとどめています。

軍事ぐんじ行動こうどうについて、バイデン大統領だいとうりょうは、かくもちいただい3世界せかい大戦たいせんにつながりかねないとして一貫いっかんして否定ひていしてきましたが、NATOによる軍事ぐんじ行動こうどう排除はいじょしない姿勢しせいしめしたのは、プーチン大統領だいとうりょうに、なんとか生物せいぶつ化学かがく兵器へいき使用しようおもいとどまらせるねらいがあったとみられています。

しかし、ミルザヤノフは「ロシアがこうしたこえみみかたむけるとはおもえない」として悲観ひかんてき見方みかたしめしています。

アメリカなどNATOは、ロシアとの全面ぜんめんてき軍事ぐんじ衝突しょうとつ回避かいひしながら、これ以上いじょうのウクライナのひとたちの犠牲ぎせいをいかに食い止くいとめることができるのか、むずかしい対応たいおうせまられることになります。
ソース:NHK ニュース