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くわしく】なぜアメリカがロシアとたたかわない3つの理由りゆう

2022-04-05 23:44:42

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これまで世界せかい各地かくち紛争ふんそうぐん派遣はけんしてきた世界一せかいいち軍事ぐんじ大国たいこくアメリカ
しかしウクライナをめぐって、バイデン政権せいけん早々そうそう軍事ぐんじ介入かいにゅうはしないと宣言せんげんしています。
ロシアによる攻撃こうげき市民しみん犠牲ぎせいつづけるなかでもその方針ほうしんわらないのでしょうか?
そもそも、なぜウクライナにアメリカぐんおくらないのでしょうか。
わかりやすく解説かいせつします。

アメリカぐんおくらない3つの理由りゆうとは?

「1%でいいんだ。NATOが戦車せんしゃの1%を供与きょうよしてほしい」

3つき24にちおこなわれたNATO=北大ほくだい西洋せいよう条約じょうやく機構きこう首脳しゅのう会議かいぎでウクライナのゼレンスキー大統領だいとうりょううったえたことばです。

しかし、バイデン大統領だいとうりょう戦闘せんとう供与きょうよはもちろん「アメリカぐん派遣はけんしないかんがわりはない」と日々ひび強調きょうちょうしています。
バイデン大統領だいとうりょう説明せつめい専門せんもんなど指摘してきによると、その理由りゆうおもに3つ、「まも義務ぎむがない」「利益りえきがない」「軍事ぐんじ衝突しょうとつけたい」です。

理由りゆう1.ウクライナをまも義務ぎむがない

ウクライナはNATOに加盟かめいしていないため、アメリカ防衛ぼうえい義務ぎむはありません。

理由りゆう2.アメリカ利益りえきがない

アメリカの安全あんぜん保障ほしょう直結ちょっけつし、戦略せんりゃくてき利益りえきある場合ばあい、アメリカはたたかいます。
アフガニスタンでは同時どうじ多発たはつテロ事件じけんけての「テロとのたたか」をかかげて、イラクでは「大量たいりょう破壊はかい兵器へいき保有ほゆう」を口実こうじつ軍事ぐんじ作戦さくせん踏み切ふみきりました。

しかし今回こんかいのウクライナはアメリカ直接ちょくせつおびやかされる状況じょうきょうではありません。

理由りゆう3.ロシアとはたたかえない

アメリカもっとけたいのは、ロシアとの軍事ぐんじ衝突しょうとつです。
べい両国りょうこく衝突しょうとつは「だい3世界せかい大戦たいせん」につながりかねず、かく戦争せんそうという最悪さいあくシナリオまで想定そうていしなければなりません。

アフガニスタンからの撤退てったいえたばかりのバイデン政権せいけんふたただい規模きぼ戦争せんそう突入とつにゅうするリスクはえません。

たたかえないぶん なにしてる?

アメリカぐん派遣はけんしなくても、ヨーロッパ各国かっこくとともに異例いれい規模きぼ軍事ぐんじ支援しえんつづけています。
大量たいりょう武器ぶき現地げんちおくり、なかでもたい戦車せんしゃミサイルはロシアぐんおおきなダメージをあたえています。アメリカは、ウクライナの2020ねん国防こくぼう予算よさんの2ばい以上いじょうにあたるがく軍事ぐんじ人道じんどう支援しえんおこなことにしています。
しかし、バイデン政権せいけん支援しえんにあたってえてはいけない一線いっせんもうけています。
それは「当事者とうじしゃにならない範囲はんいおさめる」ということ。
軍事ぐんじ支援しえんがロシアを刺激しげきし、NATOが戦争せんそう巻き込まきこまれることがあってはならないということです。

飛行ひこう禁止きんし区域くいき設定せっていしないの?

アメリカはウクライナからのつよ要請ようせいがあっても「当事者とうじしゃにならない範囲はんい」をえるつもりはありません。
その象徴しょうちょうともえるのが飛行ひこう禁止きんし区域くいき設定せっていです。
飛行ひこう禁止きんし区域くいきとは、敵国てっこく戦闘せんとうからの攻撃こうげきふせため航空こうくうはいってくるのをきんじる空域くういきもうけること。

ウクライナはロシアぐんによるそらからの攻撃こうげきふせため、繰り返くりかえアメリカやNATOに要請ようせいしていますが、アメリカなど否定ひていてきです。
なぜなら飛行ひこう禁止きんし区域くいき設定せっていは「理由りゆう3.ロシアとはたたかえない」と直結ちょっけつするからです。
上空じょうくう警戒けいかいつづけ、敵国てっこくはいってきた場合ばあいには撃墜げきついすることを意味いみします。
かりNATO軍機ぐんきがロシア軍機ぐんき撃墜げきついするようなことがあれば、ロシアとの全面ぜんめん衝突しょうとつにつながりかねないからです。

えてはいけない一線いっせんとは?

えてはいけない一線いっせんためされたのは、ゼレンスキー大統領だいとうりょう戦闘せんとう供与きょうよもとめ、ポーランドがおうじたときです。

きゅうソビエトせいでウクライナの兵士へいし操縦そうじゅうれているミグ29戦闘せんとう供与きょうよを、3つき8にちにポーランドが発表はっぴょう
しかし供与きょうよさきはウクライナではなくアメリカでした。
ポーランドが直接ちょくせつ供与きょうよすれば、ロシアからの報復ほうふく攻撃こうげき軍事ぐんじ衝突しょうとつ巻き込まきこまれるそれあるため、輸送ゆそうアメリカやNATOの責任せきにんでやってもらう、そのための提案ていあんでした。
しかしアメリカ反応はんのうは「ポーランドの提案ていあん実現じつげん可能かのうだとはおもわない」と、そっけないものでした。

国防こくぼう総省そうしょうのカービー報道ほうどうかん理由りゆうとしてげたのは、ここでも、ロシアのつよ反発はんぱつまね軍事ぐんじ衝突しょうとつ引きずり込ひきずりこまれかねないとの懸念けねんでした。
実際じっさい、ロシアは輸送ゆそう目的もくてきふく空軍くうぐん基地きち使用しようといったウクライナへの協力きょうりょくについて「軍事ぐんじ衝突しょうとつ当事者とうじしゃとみなすこともありうる」と警告けいこくしています。

これからさきたたかわないのか?

アメリカ外交がいこう政策せいさくにも影響えいきょうおよぼすアメリカ外交がいこう評議ひょうぎかい会長かいちょうつとめるリチャード・ハースは、武力ぶりょくによって相手あいてねじ伏ねじふせようとするロシアの行動こうどう国際こくさい秩序ちつじょそのものに対にたいする挑戦ちょうせんだと指摘してきします。
世界せかい一定いってい原則げんそくのもとでうごいています。そのもっと基本きほんてきなものは国家こっか主権しゅけん国境こっきょう尊重そんちょうされるというものです。武力ぶりょくこれえることがゆるされてはいけない。ロシアの軍事ぐんじ侵攻しんこうゆるされれば『自分じぶんたちもおなことをしても大丈夫だいじょうぶだ』とかんがえるほか国々くにぐにてきて世界せかいだい混乱こんらんになってしまう

アメリカぐん派遣はけんしない3つの理由りゆう当面とうめんわることはありません。
しかし支援しえん限界げんかいめるえてはいけない一線いっせん」の解釈かいしゃくわる余地よちがあります。

国際こくさい秩序ちつじょ民主みんしゅ主義しゅぎといったアメリカかかげる価値かちかんまもためにどこまで今後こんご踏み込ふみこ用意よういあるのか。
現地げんち戦況せんきょう外交がいこううごだけでなく、アメリカ国内こくない国際こくさい世論せろんふくめていく必要ひつようがあります。

(ワシントン支局しきょく つじ浩平こうへい
ソース:NHK ニュース