意地いじの餅もち

田たんぼで仕事しごとをしていても「雨あめが降ふる降ふらない」で意地いじを張はり合あい、家いえに帰かえれば「風呂ふろが沸わいた沸わいてない」で意地いじを張はり合あう。いつも口くちげんかをしていたが、村人むらびとたちはそれを微笑びしょうましく見みていた。

ある年としの秋祭あきまつりの際さい、豊年万作ほうねんまんさくの祝いわい餅もちが配くばられた。最後さいごの一ひとつを取とり合あいとなりどちらも譲ゆずらないため、先さきにしゃべった方かたが負まけで、勝かった方かたが最後さいごの餅もちを食たべるという事ことにした。

その時とき、家いえに泥棒どろぼうが入はいり、おもわず「泥棒どろぼうー！」とじいさんが叫さけんでしまった。泥棒どろぼうはあわてて逃にげだしたが、村人むらびとたちに取とり押おさえられてしまった。泥棒どろぼうは「あんな意地いじっぱりで、よくあれで夫婦ふうふでいられるもんだな」と不思議ふしぎがったが、村人むらびとたちは「あれでこの村むらでは一番いちばんの仲良なかよし夫婦ふうふなんだ」と言いいあった。

結局けっきょく、最後さいごの餅もちはばあさんのものとなり、その後ごも仲良なかよく意地いじを張はり合あいながら暮くらした。

ソース：NHK ニュース