2024年の大統領選挙に向けて、今月14日にも立候補表明を検討していると報じられたトランプ前大統領。今月8日に迫った中間選挙の結果はトランプ氏の動向を左右するのか。最新情勢を詳しく解説します。
トランプ氏14日にも立候補表明?
「トランプ氏は2024年に行われる大統領選挙への立候補の表明を今月14日にも行うことを検討していて、発表とあわせて複数の政治イベントを行う可能性がある」
アメリカのニュースサイト・アクシオスなど、複数のメディアが4日一斉に報じました。
今回の中間選挙では、自身に近い考えを持つ候補者に相次いで支持を打ち出しているトランプ氏。
こうした共和党の候補者はトランプ氏との距離感に違いはあるものの、上下両院などで200人以上にのぼります。
直前の世論調査では共和党が連邦議会で議席を増やすとの見方が強まる中、トランプ氏の真意はどこにあるのか。
そして、中間選挙の最新情勢はどうなっているのか。
アメリカの現代政治が専門の上智大学・前嶋和弘教授、ワシントン支局でホワイトハウス担当の久枝記者に聞きました。
トランプ氏の立候補表明いつ?
▽前嶋教授
タイミングを見ていると思います。
もし、自分が支持している候補者が次々に勝ったら「俺が推す候補だから強いんだ。2024年の大統領選挙も俺が出ないとダメなんだ」と早めの立候補表明になると思う。
一方で、自分が支持する候補が相次いで負けた場合でも、少し時間をおいたうえで「やはり本物が出ないと、支持しただけではダメなんだ。俺が立候補しないといけないんだ」ということになるのではないでしょうか。
トランプ前大統領としては、早く立候補を表明することで自分のところに資金も集まってきますし、FBI=連邦捜査局が続けている捜査に対しても「大統領になる男を訴追していいのか」とけん制することができる、というわけです。
中間選挙 前嶋教授は結果どう予想?
▽前嶋教授
下院は共和党が過半数を超え多数派を奪還する形。
上院は微妙な情勢です。
今回の中間選挙では35議席が改選です。
35議席のうち21が共和党の議席。
現在は共和党と民主党それぞれ50議席ずつなので、今回の選挙で共和党が過半数を取るには22議席をとらないといけない。
「35のうちの22」というのはけっこう厳しい数字で、競り合っているという感じです。
トランプ氏立候補にも影響する最新情勢は?
▽久枝記者
現在、議会下院は共和党が優勢となっている一方で、上院は両政党が激しく競り合っています。
ただ、勢いは共和党側にあるように感じます。
アメリカの政治情報サイトの分析では、4日時点で上院議員選挙は8つの州で接戦となっていて、その多くで最終盤になって共和党候補が支持を伸ばす傾向にあるとしています。
中間選挙 そもそも与党は勝てない?
▽前嶋教授
これまでの中間選挙の一種の法則みたいなものがあって、簡単に言うと中間選挙というのは、そのときの大統領にとっては“鬼門中の鬼門”なんです。
ほとんど、うまくいきません。
例えば、1994年のクリントン政権は下院で54議席減。
2010年のオバマ政権は63議席も減らしました。
前回、2018年のトランプ政権も40議席減と、基本的には与党が負ける選挙なんです。
例外は、2002年のブッシュ政権。
このときは、2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件を受けて、“テロとの戦い”の中での中間選挙となり、上下両院ともブッシュ大統領の共和党が議席を増やしました。
ただ、これは1934年のルーズベルト大統領のとき以来2回目。
アメリカで2大政党制が生まれた1854年、日本で言うとまだ江戸時代ですが、そのときから数えてもこの2回だけという非常に珍しいことなんです。
どうして与党は勝てないの?
▽前嶋教授
それは投票率が低いからです。
中間選挙の投票率は前回の2018年は50%でした。
そもそも民主党支持者が3割、共和党支持者が3割なので、政党支持者でさえ全員は投票にいかないというのがアメリカの中間選挙なんです。
では誰が投票に行くかというと、その時々の与党、今回はバイデン政権に対して怒りを持っている人たちがいくということなんです。
過去の中間選挙を見ても、50%という投票率は100年ぶりぐらいにいい数字で、これまではずっと40%ぐらいでした。
第2次世界大戦後に行われた中間選挙を平均すると、与党は下院で26議席ぐらい失う計算になります。
いま下院は民主党が共和党よりも8議席多いですが、これはひっくり返ってしまうでしょう。
なぜ共和党に“勢い”?
▽久枝記者
民主党は中絶の権利の擁護を掲げ、夏ごろには勢いがあったように見えました。
特に若い人たちを取材していると、これまで政治に関心がなかったという人たちの中に中絶問題をきっかけに投票に行くと話す人たちが多くいて、民主党に追い風になっていると強く感じました。
ただ、先月末に行われた世論調査では投票でもっとも重視する問題として「経済」を掲げている人が51%と最も多く、中絶などのほかの問題を大きく上回っています。
こちらで生活していると物価の高さにとまどうことも多く、一時は大きな関心を集めた中絶をめぐる問題も日々の生活の問題を前に相対的に埋もれてしまったように感じます。
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