スーダン 独自のルートで退避の男性 緊迫の状況を語る
2023-05-01 21:45:34

取材に応じたのは、国際NGO「国境なき医師団」の落合厚彦さん(61)です。
落合さんは、スーダン国内の3つのチームおよそ40人を統括する責任者として首都ハルツームで活動していましたが、4月中旬に戦闘が激しくなって以降、銃撃を避けるため地下室に避難することが多く、実質的な活動ができなくなったといいます。
落合さんのチームが支援する西部のダルフール地域の病院に武装した集団が押し入り、医薬品などが略奪されたとの報告があったほか、ハルツーム市内でも煙が上がる様子が確認されるなど、日に日に情勢は悪化していったといいます。
当初は、現地にとどまって活動を継続しようと日本の自衛隊機での退避は辞退しましたが、情勢の悪化を受けて退避を余儀なくされました。
独自に車を手配して、4月25日まで3日間かけて、陸路で隣国のエチオピアまで退避したということです。
落合さんは、「政府と折衝などを行う立場だったが、政府機能がすべて停止し、チームが機能しなくなった。責任者が国から出るのは無責任だと思い、日本政府の申し出は丁重に断ったが、スタッフの精神的な負担が非常に大きかったので、退避することを判断した」と振り返りました。
ただ、今もスタッフ7人が国内にとどまって活動を続けているということで、「医療ニーズが高まる中、本来であれば物資も人も増やしていかないといけないができていない。状況はますます悪くなり、自分だけ安全なところに避難したというのはすごく心苦しい」と胸の内を明かしました。
また、今のスーダンの状況について、「紛争が起きる前から医療崩壊に近い状況だったが、物流が滞ってしまい、医薬品は不足し、補てんする手だてがない。経済はガタガタの状態で、一般市民の生活は厳しく、困難が待ち受けている」と語りました。
そのうえで、「紛争が続くと支援団体も活動できないので、停戦合意が守られないと次の段階にいけない。ウクライナをはじめ、ひとたび紛争が起きると巡り巡って日本にも影響が出るのが現代だと思うので、日本の皆さんにもどこか遠い国で起きている出来事と捉えずに、自分事として考えてもらいたい」と話していました。
18日に同じ宿舎の地下室で撮影された写真には、目立たないように小さな明かりだけで避難生活をおくる様子が写っていて、床に毛布が敷かれているのも確認できます。
4月21日に同じ宿舎の屋上で撮影された動画には、砲撃とみられる「ドーン」という大きな音とともに近くの市街地から白い煙が空高くあがる様子が確認できます。
23日にハルツームから独自にエチオピアに向かう途中に撮影された写真には、国境なき医師団の服を着た人たちが舗装されていない道路に並んだ車から降りてとどまっている様子が写っています。