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研究者みずから部品開発 国内最大の異例の望遠鏡が完成
2018-08-17 09:39:19

京都大学が岡山県に建設を進めてきた国内最大の天体望遠鏡が完成し、17日、報道陣に公開されました。各国がより大型の望遠鏡を開発し、共同で利用する形が主流な中、自前の設備で自由な研究環境を実現しようと、研究者がみずから部品を開発して作り上げた異例の望遠鏡です。
完成したのは、京都大学が岡山県浅口市と矢掛町にまたがる山の上に建設を進めてきた天体望遠鏡「せいめい」で、直径は3.8メートルと国内最大です。
天体観測をめぐっては、日本と欧米でおよそ1000億円をかけて、南米チリに建設した世界最大の電波望遠鏡「アルマ」をはじめ、より大型の望遠鏡を各国が建設、共同で利用する形が主流となっていますが、多くの研究者が使うため、割り当てられる観測時間が限定されるなど制約があるのが実情です。
このため、研究グループでは、より自由に観測できる環境を求め、限られた予算で高い性能の望遠鏡を作ろうと、部品をみずから開発しました。
望遠鏡の心臓部となる鏡は18枚の扇形の鏡が組み合わされていて、刀鍛冶で知られる岐阜県関市にベンチャー企業を設立して、地場の加工技術を生かしました。
また、鏡を載せる台座も複雑な計算に基づいてパイプを格子状に組むことで、軽いのにゆがまない構造を作り上げました。
こうした工夫で建設費はおよそ15億円と、同規模の望遠鏡の3分の1程度に抑えることに成功しました。資金は国の予算だけでは足りず、一部、賛同者からの寄付でまかなったということです。
研究グループでは、ブラックホールや超新星爆発など、宇宙の謎の解明につながる観測に取り組むほか、生命が存在する可能性がある惑星を探す観測にも挑戦したいとしていて、グループの京都大学、栗田光樹夫准教授は「予算が限られることで、みんなでアイデアを出し合い、シンプルながらも高性能なものがつくれた。身軽さを生かして、挑戦的な研究を行いたい」と話しています。
天体観測をめぐっては、日本と欧米でおよそ1000億円をかけて、南米チリに建設した世界最大の電波望遠鏡「アルマ」をはじめ、より大型の望遠鏡を各国が建設、共同で利用する形が主流となっていますが、多くの研究者が使うため、割り当てられる観測時間が限定されるなど制約があるのが実情です。
このため、研究グループでは、より自由に観測できる環境を求め、限られた予算で高い性能の望遠鏡を作ろうと、部品をみずから開発しました。
望遠鏡の心臓部となる鏡は18枚の扇形の鏡が組み合わされていて、刀鍛冶で知られる岐阜県関市にベンチャー企業を設立して、地場の加工技術を生かしました。
また、鏡を載せる台座も複雑な計算に基づいてパイプを格子状に組むことで、軽いのにゆがまない構造を作り上げました。
こうした工夫で建設費はおよそ15億円と、同規模の望遠鏡の3分の1程度に抑えることに成功しました。資金は国の予算だけでは足りず、一部、賛同者からの寄付でまかなったということです。
研究グループでは、ブラックホールや超新星爆発など、宇宙の謎の解明につながる観測に取り組むほか、生命が存在する可能性がある惑星を探す観測にも挑戦したいとしていて、グループの京都大学、栗田光樹夫准教授は「予算が限られることで、みんなでアイデアを出し合い、シンプルながらも高性能なものがつくれた。身軽さを生かして、挑戦的な研究を行いたい」と話しています。
インドネシアにも輸出
京都大学がつくった天体望遠鏡は、低コストで高性能な点が評価され、インドネシアに輸出されることがすでに決まっています。
インドネシアでは標高1300メートルの山の上に建設される計画で、京都大学の研究グループは、日本とインドネシアが協力して、北半球と南半球から観測することでさらなる成果が期待できるとしています。
インドネシアでは標高1300メートルの山の上に建設される計画で、京都大学の研究グループは、日本とインドネシアが協力して、北半球と南半球から観測することでさらなる成果が期待できるとしています。
ビッグサイエンスに課題も
天文学を含め科学の分野では、「ビッグサイエンス」と呼ばれる各国が多額の予算を投じ、大型の装置をつくって研究を進める動きが主流になっています。
例えば望遠鏡については、日本とアメリカ、そしてヨーロッパで、およそ1000億円をかけて南米のチリに建設した世界最大の電波望遠鏡「アルマ」や、日本の国立天文台がおよそ400億円をかけて、アメリカ・ハワイに建設し各国の研究者が利用している「すばる望遠鏡」などが代表的なものです。
こうした多額の費用をかけた国際的なプロジェクトは、画期的な成果を出す一方、多くの研究者が共同で利用するため、提案が採用されなかったり、仮に採用されても観測時間が年に数日間などとかぎられたりします。
また、多額の予算がつぎ込まれることで、そのほかの研究開発の予算が圧迫されるとの懸念も一部の研究者などから挙がっています。
京都大学の野上大作准教授は「ビッグサイエンスでできることは最先端だが、ビッグサイエンスだけではカバーできないこともある。観測に長い時間を使えるとか、新しいアイデアを試せるとか、そういうことができないと科学全体の発展はなく、すそ野の広がりは非常に大事だと思う」と話し、ビッグサイエンスとそれ以外の低予算で自由がきく研究とが両立し、補完しあうことが大切だと指摘しています。
例えば望遠鏡については、日本とアメリカ、そしてヨーロッパで、およそ1000億円をかけて南米のチリに建設した世界最大の電波望遠鏡「アルマ」や、日本の国立天文台がおよそ400億円をかけて、アメリカ・ハワイに建設し各国の研究者が利用している「すばる望遠鏡」などが代表的なものです。
こうした多額の費用をかけた国際的なプロジェクトは、画期的な成果を出す一方、多くの研究者が共同で利用するため、提案が採用されなかったり、仮に採用されても観測時間が年に数日間などとかぎられたりします。
また、多額の予算がつぎ込まれることで、そのほかの研究開発の予算が圧迫されるとの懸念も一部の研究者などから挙がっています。
京都大学の野上大作准教授は「ビッグサイエンスでできることは最先端だが、ビッグサイエンスだけではカバーできないこともある。観測に長い時間を使えるとか、新しいアイデアを試せるとか、そういうことができないと科学全体の発展はなく、すそ野の広がりは非常に大事だと思う」と話し、ビッグサイエンスとそれ以外の低予算で自由がきく研究とが両立し、補完しあうことが大切だと指摘しています。
アイデアしだいで大きな成果
低予算の観測でもアイデアしだいで大きな成果が出ています。京都大学の研究グループの木邑真理子さんは3年前、大学院の修士1年生の時に、ブラックホールの近くで起きた爆発現象を詳細に捉えることに成功し、世界の注目を集めました。
観測に使ったのは、大学にある直径わずか40センチの小型の望遠鏡。世界の研究者やアマチュア天文家にも呼びかけ、一緒に同じ天体を観測し続けた結果、爆発の光が強まったり弱まったりする様子を連続的に捉えることに成功し、おととし、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載され注目されました。
たとえ望遠鏡が小さくても、利用に制約が少なく、必要な時にすぐに観測を始めて、継続的に観測を行えたことが大きな成果につながったといいます。
木邑さんは「小さい望遠鏡でもいいから長時間の観測をすることが大事だということが明らかになったかなと思う」と振り返ります。
京都大学の野上大作准教授は「お金はあまりかからないが、アイデアを皆で共有して、世界中から参加できる形を整えて、これまでできなかったことを成し遂げた。今後は大学が自前の3.8m望遠鏡を持つことで、より長い観測時間を確保できるし、爆発が起きた直後からより詳しく観測ができる。とにかく宇宙は広くて、われわれの予想を超えるものを見せてくれるので、本当に楽しみだ」と話しています。
観測に使ったのは、大学にある直径わずか40センチの小型の望遠鏡。世界の研究者やアマチュア天文家にも呼びかけ、一緒に同じ天体を観測し続けた結果、爆発の光が強まったり弱まったりする様子を連続的に捉えることに成功し、おととし、イギリスの科学雑誌「ネイチャー」に掲載され注目されました。
たとえ望遠鏡が小さくても、利用に制約が少なく、必要な時にすぐに観測を始めて、継続的に観測を行えたことが大きな成果につながったといいます。
木邑さんは「小さい望遠鏡でもいいから長時間の観測をすることが大事だということが明らかになったかなと思う」と振り返ります。
京都大学の野上大作准教授は「お金はあまりかからないが、アイデアを皆で共有して、世界中から参加できる形を整えて、これまでできなかったことを成し遂げた。今後は大学が自前の3.8m望遠鏡を持つことで、より長い観測時間を確保できるし、爆発が起きた直後からより詳しく観測ができる。とにかく宇宙は広くて、われわれの予想を超えるものを見せてくれるので、本当に楽しみだ」と話しています。
ソース:NHK ニュース