ＥＵい-ゆ-委員いいん会かい サマータイム制度せいど廃止はいしを正式せいしき提案ていあんへ

ヨーロッパは長年ながねん、夏なつの生活せいかつ時間じかんを早はやめるサマータイム制度せいどを実施じっししていますが、健康けんこうに悪あく影響えいきょうがあるとして廃止はいしを求もとめる人ひとが増ふえています。ＥＵい-ゆ-＝ヨーロッパ連合れんごうの執行しっこう機関きかんにあたるヨーロッパ委員いいん会かいは、近ちかく、加盟かめい国こくなどに廃止はいしを正式せいしきに提案ていあんする見通みとおしで、今後こんごの議論ぎろんが注目ちゅうもくされます。

ＥＵい-ゆ-は、すべての加盟かめい国こくで３月さんがつから10月つきまで時計とけいを１いち時間じかん早はやめるサマータイム制度せいどを実施じっししています。

しかし、ＥＵい-ゆ-がこの夏なつ、１いちか月かげつ余あまりにわたって域内いきないから意見いけんを募集ぼしゅうした結果けっか、回答かいとうした460万まん人にんのうち84％がサマータイム制度せいどの廃止はいしを支持しじしました。

制度せいどの廃止はいしを求もとめる人ひとたちは、健康けんこうに悪あく影響えいきょうがある、睡眠すいみん不足ふそくなどによって交通こうつう事故じこが増加ぞうかする、そして省エネしょうえね効果こうかがないなどと主張しゅちょうしています。

ドイツ南西なんせい部ぶ、クリンゲンミュンスターの睡眠すいみんの専門医せんもんい、ハンツ・ギュンター・ヴェース医師いしはＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいに対にたいし、「社会しゃかいの時計とけいを変かえると体内たいない時計とけいと合あわなくなり、健康けんこうに悪あく影響えいきょうがある」と指摘してきしています。
特とくに子こどもや高齢こうれい者しゃへの影響えいきょうは、40年ねん近ちかく前まえにサマータイム制度せいどが始はじまった際さいに想定そうていされていたよりも大おおきいと考かんがえていて、「サマータイムに切り替きりかわった直後ちょくごはうつの傾向けいこうが強つよまったり心筋しんきん梗塞こうそくの疑うたがいで入院にゅういんする人ひとが増ふえたりする」としています。

一方いっぽう、制度せいどの継続けいぞくを支持しじする人ひとたちは、理由りゆうとして、余暇よかを楽たのしむ時間じかんが増ふえることをあげています。

ドイツの首都しゅとベルリンの公務員こうむいん、ウォルフガング・ニッケルさんはサマータイムの時期じきには週しゅうに３さん日にちほど、仕事しごとが終おわったあとに湖みずうみで趣味しゅみのボートをこぎ、仲間なかまとビールを飲のむ時間じかんを楽たのしんでいます。

ニッケルさんは「サマータイムは生活せいかつの質しつを高たかめている」と話はなしています。

ＥＵい-ゆ-の執行しっこう機関きかんにあたるヨーロッパ委員いいん会かいは、域内いきないからの意見いけんを受うけて、近ちかく加盟かめい各国かっこくなどに対にたいしサマータイム制度せいどの廃止はいしを正式せいしきに提案ていあんする見通みとおしですが、加盟かめい国こくの間まで考え方かんがえかたに違ちがいがあり、今後こんごの議論ぎろんが注目ちゅうもくされます。

日本にっぽんで求もとめる声こえに専門せんもん家かは懸念けねん

２に年ねん後ごに迫せまった東京とうきょうオリンピック・パラリンピックの暑あつさ対策たいさくの一環いっかんとして、夏なつの生活せいかつ時間じかんを早はやめる「サマータイム」の導入どうにゅうを求もとめる声こえがあがっていることに対にたいし、専門せんもん家かは、社会しゃかいの隅々すみずみに普及ふきゅうしたＩＴ機器ききへの影響えいきょうについて「動作どうさ確認かくにんなどの作業さぎょうが完了かんりょうするまでに少すくなくとも５ご年ねんはかかる」と懸念けねんを示しめしています。

情報じょうほうシステムに詳くわしい立命館大学りつめいかんだいがくの上原うえはら哲太郎てつたろう教授きょうじゅは、システムの改修かいしゅうが不十分ふじゅうぶんな状態じょうたいでサマータイムを導入どうにゅうすると、ＩＴ機器ききに混乱こんらんが生しょうじる可能かのう性せいを指摘してきしています。

例たとえば、４よん時間じかん後ごに作動さどうするようあるＩあいＴてぃ-機器ききをセットし、時間じかんが来くる前まえにサマータイムに切り替きりかわって時計とけいが２に時間じかん早はやまった場合ばあい、まだ２に時間じかんしかたっていないのに、コンピューターは４よん時間じかんたったと判断はんだんして作動さどうしてしまうケースです。

サマータイムから元もとの時間じかんに戻もどるときにはこれ逆ぎゃくのことが起おこり、４よん時間じかん後ごに作動さどうするはずが６ろく時間じかん後ごに作動さどうしてしまうことが考かんがえられるということです。

今いまの社会しゃかいでは国くにや自治体じちたい、医療いりょう機関きかんやインフラ、金融きんゆうなどのさまざまなシステムが時計とけいに連動れんどうして動うごいているほか、家電かでんなどインターネットにつながる機器ききも増ふえ続つづけています。

夏時間なつじかんが定着ていちゃくしている国くにではこれに対応たいおうしたシステムが作つくられていますが、日本にっぽんではサマータイムを導入どうにゅうする前提ぜんていで作つくられていないため、あらゆるシステムを改修かいしゅうする必要ひつようがあると上原うえはら教授きょうじゅは指摘してきしています。

そのうえで「全国ぜんこくの技術ぎじゅつ者しゃが総動員そうどういんで対応たいおうしても、動作どうさ確認かくにんなどが完了かんりょうするまでに少すくなくとも５ご年ねんはかかり、2020年ねんには間に合まにあわない」と懸念けねんを示しめしています。

時間じかんのずれ システム障害しょうがいに

時間じかんがずれることでコンピューターのシステムに障害しょうがいが起おきるケースは、これまでにも起おきています。

平成へいせい24年ねん、世界せかいの標準時ひょうじゅんじを地球ちきゅうの自転じてんに合あわせるため１いち日にちを１いち秒びょう長ながくする「うるう秒びょう」が実施じっしされた際さい、ＩＴ企業きぎょうの「さくらインターネット」で大だい規模きぼなシステム障害しょうがいが起おき、サービスを提供ていきょうしていた顧客こきゃくの企業きぎょうのホームページが見みられなくなるなどのトラブルが起おきました。

当時とうじ、責任せきにん者しゃとして対応たいおうにあたったさくらインターネット研究所けんきゅうじょの鷲わし北きた賢所かしこどころ長ちょうは「私わたしたちが身みにつける時計とけいでは５ご秒びょうずれたら時報じほうなどを聞きいて秒針びょうしんを合あわせればいいが、大だい規模きぼ化か、複雑ふくざつ化かしたシステムにとっては秒びょう数すうを変化へんかさせるだけで大だい規模きぼなトラブルが起おき、時計とけいを調整ちょうせいするのは大変たいへんな作業さぎょうだ」と話はなしています。

そのうえで「コンピューターにとっては、サマータイムによって時間じかんが消きえたり増ふえたりすることになり、電力でんりょくや交通こうつうなどインフラのシステムも含ふくめ、正直しょうじきどんな影響えいきょうがでるか想像そうぞうもできない。１いち秒びょうを挟み込はさみこむ『うるう秒びょう』ですらシステムに障害しょうがいが出でる中なかで、あと２に年ねんでサマータイムの対策たいさくを講こうじなければならないというのは大変たいへんきびしい。トラブル回避かいひや対策たいさく費ひなどを考かんがえるとサマータイムは導入どうにゅうしないのがいちばんだ」と指摘してきしています。

ソース：NHK ニュース