「核かくのごみ」北海道ほっかいどう寿都すっつ町まち 非ひ公開こうかいの議事ぎじ録ろくに書かかれていたこと

いわゆる「核かくのごみ」の最終さいしゅう処分しょぶん場じょうの選定せんていをめぐり、調査ちょうさに応募おうぼするか賛否さんぴの声こえがあがっている北海道ほっかいどう寿都すっつ町まちで、町長ちょうちょうが当初とうしょは先月せんげつ中ちゅうにも調査ちょうさへの応募おうぼを決きめる方針ほうしんを示しめしていたことが、NHKが入手にゅうしゅした非公開ひこうかいの町議会ちょうぎかいの会合かいごうの議事ぎじ録ろくでわかりました。

議事ぎじ録ろくでは「町民ちょうみんに伺うかがいを立たてたらかえって面倒めんどうになる」などの発言はつげんもあり、住民じゅうみんに説明せつめいする前まえに応募おうぼを決きめようとしていた意向いこうがうかがえ、議論ぎろんを呼よびそうです。

寿都すっつ町まちの大だい部分ぶぶんはマップ上じょう“濃こい緑色りょくしょく”

処分しょぶんを実施じっしする国くにの認可にんか法人ほうじん、NUMO＝原子力げんしりょく発電はつでん環境かんきょう整備せいび機構きこうによりますと、北海道ほっかいどう寿都すっつ町まちの大だい部分ぶぶんは「科学かがく的てき特性とくせいマップ」では“濃こい緑色りょくしょく”で示しめされているということです。

この濃こい緑みどりは「科学かがく的てきに好このましい特性とくせいが確認かくにんできる可能かのう性せいが相対そうたい的てきに高たかく、廃棄はいき物ぶつの輸送ゆそう面めんでも好このましい」とされるエリアです。

いわゆる「核かくのごみ」の最終さいしゅう処分しょぶん場じょうの選定せんていをめぐり、寿都すっつ町まちの片岡かたおか春雄はるお町長ちょうちょうは先月せんげつ13日にち、調査ちょうさの第だい1段階だんかいにあたる「文献ぶんけん調査ちょうさ」への応募おうぼを検討けんとうしていることを明あきらかにし、住民じゅうみんから賛否さんぴの声こえが出でています。

町長ちょうちょう「うまく活用かつようが寿都すつの幸しあわせ」 応募おうぼで交付こうふ金きん得える考かんがえ

NHKはこの調査ちょうさへの応募おうぼをめぐり、ことし2月つきから8月つきまで非ひ公開こうかいで行おこなわれていた町議会ちょうぎかいの全員ぜんいん協議きょうぎ会かい、3回分かいぶんの議事ぎじ録ろくを入手にゅうしゅしました。

それによりますと、ことし2月つき17日にちの全員ぜんいん協議きょうぎ会かいでは、片岡かたおか町長ちょうちょうが、経済けいざい産業さんぎょう省しょうの担当たんとう者しゃと最終さいしゅう処分しょぶん場じょうの調査ちょうさの勉強べんきょう会かいを行おこないたいとしたうえで「決けっして最終さいしゅう処分しょぶん場じょうを受うけるということではない」「ここは将来しょうらい的てきな財源ざいげん確保かくほのためにうまく活用かつようすることが寿都すつの幸しあわせにつながるのではないかと思おもう」と述のべ、文献ぶんけん調査ちょうさに応募おうぼして交付こうふ金きんを得えるべきだという考かんがえを示しめしています。

町長ちょうちょう「なるべく早はやい時期じきに」当初とうしょは８月はちがつ中ちゅうにも応募おうぼの方針ほうしん

そして、実際じっさいに勉強べんきょう会かいを開ひらいたあとの先月せんげつ7日にちの全員ぜんいん協議きょうぎ会かいで、片岡かたおか町長ちょうちょうが「寿都すっつ町まちの方針ほうしんとして、どうあるべきかというのも、盆ぼん明あけ、なるべく早はやい時期じきに計画けいかくしたい」「できれば出ださないと。よそに先手せんてを打うたれたら、もう一番いちばんはとれない」と述のべ、当初とうしょは先月せんげつ中ちゅうにも調査ちょうさへの応募おうぼを決きめる方針ほうしんだったことがわかりました。

「かえって面倒めんどう」 住民じゅうみん説明せつめい前まえに主要しゅようメンバーで決きめる意向いこう

この場ばで片岡かたおか町長ちょうちょうは「町民ちょうみんに伺うかがいを立たてて勉強べんきょう会かいをするっていったらかえって面倒めんどうな話はなしになるので、ここは町まちを動うごかしている行政ぎょうせい、議会ぎかい、産業さんぎょう団体だんたい、その要職ようしょくにある人ひとが皆みなで総意そういでそうしよう」と述のべていて、住民じゅうみんに説明せつめいする前まえに町まちの主要しゅようなメンバーだけで応募おうぼを決きめようとしていた意向いこうがうかがえます。

【なぜ急いそいだ？】 背景はいけい1. 洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんの誘致ゆうち

なぜ、片岡かたおか町長ちょうちょうが急いそいでいたのか、議事ぎじ録ろくからは、その背景はいけいもかいま見かいまみえます。1つは洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんです。

町まちでは新あらたな財源ざいげんとして洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんの誘致ゆうちに期待きたいし、国くにから「促進そくしん区域くいき」の指定していを受うけることを目指めざしていますが、めどは立たっていません。

片岡かたおか町長ちょうちょうは、2月つきや3月つきの全員ぜんいん協議きょうぎ会かいで現状げんじょうに強つよい危機きき感かんを示しめし「資源エネルギー庁しげんえねるぎ-ちょうの官僚かんりょうをくすぐった中なかで、洋上ようじょう風力ふうりょくを浮上ふじょうさせるという、いやらしい戦法せんぽうかもしれないが、結果けっかよければなんでもよし」「きれいごとで勝かち取とれるというものであればそれに越こしたことはない。遅おくれを取り戻とりもどすためには、私わたしはどんな手てを使つかってでもやってやるという思おもいでいる」と述のべ、最終さいしゅう処分しょぶん場じょうの調査ちょうさと引き換ひきかえに国くにの指定していを得えたいというねらいを見みせています。

【なぜ急いそいだ？】 背景はいけい2. ひっぱくする財政ざいせいと交付こうふ金きん90億おく円えん

もう1つは、ひっぱくする町まちの財政ざいせいです。

片岡かたおか町長ちょうちょうは先月せんげつの全員ぜんいん協議きょうぎ会かいで、「国くにの今いまの弱よわいところをついて、それを1つのビジネスチャンスとして手てを挙あげましょうという思おもいも強つよい。90億おく稼かせぐっていったら大変たいへんなことだ」と話はなし、調査ちょうさの第だい2段階だんかいにあたる「概要がいよう調査ちょうさ」まで受け入うけいれて、最大さいだい90億おく円えんの交付こうふ金きんを得えたいという思おもいをにじませています。

反発はんぱつの声こえ相次あいつぐ 応募おうぼ判断はんだんの時期じき 明言めいげん避さける

寿都すっつ町まちでは、応募おうぼを検討けんとうしていることが報道ほうどうによって明あきらかになって以降いこう、町内ちょうない各地かくちで住民じゅうみん説明せつめい会かいを開ひらきましたが、反発はんぱつの声こえが相次あいつぎ、片岡かたおか町長ちょうちょうは丁寧ていねいな説明せつめいが必要ひつようだとして、現在げんざいは応募おうぼの判断はんだんの時期じきについて明言めいげんを避さけています。

片岡かたおか町長ちょうちょう「核かくアレルギーの人ひと多おおい 甘うまかったかもしれない」

寿都すっつ町まちの片岡かたおか町長ちょうちょうは18日にち、NHKの取材しゅざいに対にたいし当初とうしょは先月せんげつ中ちゅうにも調査ちょうさへの応募おうぼを決きめる方針ほうしんを示しめしていたことを認みとめたうえで「まず文献ぶんけん調査ちょうさに手てを挙あげてしっかり産業さんぎょう団体だんたいに了解りょうかいを得えながら、その次つぎには住民じゅうみんにちゃんと説明せつめいしようという段取だんどりでいた」と述のべました。

そのうえで「核かくに対にたいするアレルギーを持もっている人ひとは結構けっこう多おおく、まず文献ぶんけん調査ちょうさの応募おうぼに手てを挙あげて、それから町民ちょうみんに説明せつめいしても分わかってくれると思おもっていたこと自体じたいが甘うまかったかもしれない。核かくのごみに対にたいする心配しんぱいは賛成さんせいする人ひとも反対はんたいする人ひとも相当そうとうな思おもいがあり、住民じゅうみんが望のぞんでいることに対にたいして真摯しんし（しんし）に応こたえていかなければならない」と述のべました。

一方いっぽう、最終さいしゅう処分しょぶん場じょうの調査ちょうさと引き換ひきかえに洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんの国くにの指定していを得えたいというねらいがあったことについては「洋上ようじょう風力ふうりょく発電はつでんは北海道ほっかいどうは完全かんぜんに遅おくれていて、勝ち取かちとろうとするのは当たり前あたりまえだ。その1つの材料ざいりょうとして国くにが困こまっている核かくの部分ぶぶんもテーブルに浮上ふじょうさせましょうということで『何なにが悪わるいんですか』と私わたしは思おもう」と説明せつめいしました。

専門せんもん家か「背景はいけいも含ふくめ町民ちょうみんや社会しゃかいが判断はんだんできることが大切たいせつ」

核かくのごみの処分しょぶん場じょうの選定せんていに関にかんする国くにの専門せんもん部会ぶかいの委員いいんを務つとめ、原子力げんしりょくと社会しゃかいの関かかわりに詳くわしい東京とうきょう電機でんき大学だいがくの寿ことぶき楽らく浩ひろし太ふとし准じゅん教授きょうじゅは「調査ちょうさの応募おうぼまでの過程かていが自治体じちたいの自主じしゅ性せいに任まかせる今いまのやり方やりかただと、合意ごうい形成けいせいのプロセスが不ふ明確めいかくになるおそれがある」として、現在げんざいの、候補こうほ地ち決定けっていまでの仕組しくみの課題かだいの一端いったんを指摘してきしたうえで「スウェーデンなどは、応募おうぼをするまでに町議会ちょうぎかいの承認しょうにんを得えるといった必要ひつような条件じょうけんをあらかじめ決きめているなど、合意ごういの枠組わくぐみがより明確めいかくであり、国くには検討けんとうを進すすめる必要ひつようがある」と話はなしています。

そのうえで「町長ちょうちょうが判断はんだんをするにあたっては、なぜ自分じぶんの町まちが調査ちょうさを受け入うけいれるかなどを透明とうめい性せいを持もって説明せつめいし、納得なっとくを得えることが求もとめられる。町まちの財政ざいせいに大おおきく貢献こうけんするとの理由りゆうもあると思おもうが、そういった背景はいけいも含ふくめて町民ちょうみんや社会しゃかいが判断はんだんできることが大切たいせつだ」と話はなしています。

最終さいしゅう処分しょぶん場じょう 選定せんていの流ながれは

高こうレベル放射ほうしゃ性せい廃棄はいき物ぶつの地下ちか処分しょぶんを実施じっしする国くにの認可にんか法人ほうじんNUMO＝原子力げんしりょく発電はつでん環境かんきょう整備せいび機構きこうによりますと、処分しょぶん場じょうを選えらぶまでには3段階だんかいに分わけて調査ちょうさが行おこなわれます。

その最初さいしょの段階だんかいが「文献ぶんけん調査ちょうさ」です。
文献ぶんけん調査ちょうさでは地下ちかに埋うめて処分しょぶんするのに適切てきせつな候補こうほ地ちを探さぐるため、研究けんきゅう論文ろんぶんや地質ちしつのデータなどから地層ちそうの状況じょうきょうを把握はあくすることを目的もくてきにしています。具体ぐたい的てきには、該当がいとうする地域ちいきで火山かざんや活かつ断層だんそうがどう分布ぶんぷしているかや、経済けいざい的てきに価値かちがある鉱物こうぶつ資源しげんがないかなどといったことを2年ねん程度ていどかけて調しらべるとしています。

仮かりに、文献ぶんけん調査ちょうさの評価ひょうかがまとまり、自治体じちたいなどの理解りかいを得えることができれば「概要がいよう調査ちょうさ」と呼よばれる第だい2段階だんかいに進すすみます。この調査ちょうさでは4年ねん程度ていどかけて、地層ちそうを掘り出ほりだすボーリングを実施じっしするなどして直接ちょくせつ、地質ちしつや地下ちか水すいなどの状況じょうきょうを調しらべることになります。

続つづいて自治体じちたいなどの理解りかいが得えられれば、第だい3段階だんかいの「精密せいみつ調査ちょうさ」に入はいります。この調査ちょうさは14年ねん程度ていどかけることが想定そうていされ、掘削くっさくした地層ちそうを精密せいみつに分析ぶんせきし、過去かこの火山かざんや地震じしんの活動かつどうを踏ふまえ、将来しょうらいの地層ちそうの安定あんてい性せいや今後こんご、掘削くっさくの対象たいしょうとなるかもしれない鉱物こうぶつ資源しげんの有無うむなどについて最終さいしゅう的てきな結果けっかをまとめることになります。

この調査ちょうさの最終さいしゅう結果けっかを踏ふまえて、実際じっさいに処分しょぶん場じょうをつくるかどうかは住民じゅうみんの意見いけんや自治体じちたいの考かんがえなどを聞きいたうえで、決定けっていされることになります。

一方いっぽう、自治体じちたいが調査ちょうさを受け入うけいれると、最初さいしょの文献ぶんけん調査ちょうさで最大さいだい20億おく円えん、第だい2段階だんかいの概要がいよう調査ちょうさで最大さいだい70億おく円えんが交付こうふ金きんとして支払しはらわれることになっていますが、国くにはいずれの段階だんかいの調査ちょうさも自治体じちたいの意見いけんを十分じゅうぶんに尊重そんちょうし、反対はんたいする場合ばあいは次つぎの調査ちょうさに進すすむことはないとしています。

これまでのいきさつは

寿都すっつ町まちが最終さいしゅう処分しょぶん場じょうの選定せんていの第だい1段階だんかいとなる「文献ぶんけん調査ちょうさ」への応募おうぼを検討けんとうしていることは、先月せんげつ13日にちに明あきらかになりました。

この段階だんかいでは、片岡かたおか町長ちょうちょうは町議会ちょうぎかい議員ぎいんや漁協ぎょきょうなどの団体だんたいの代表だいひょうとの意見いけん交換こうかん会かいや住民じゅうみん説明せつめい会かいを開ひらいたうえで、今月こんげつ中旬ちゅうじゅんにも応募おうぼするかを決きめるとしていました。

その後そのご、町議会ちょうぎかい議員ぎいんとの会合かいごうで議員ぎいんから「町民ちょうみんにもっと丁寧ていねいに説明せつめいすべきだ」という意見いけんが出でたため、町まちは当初とうしょは1回かいを予定よていしていた住民じゅうみん説明せつめい会かいを、町内ちょうない7か所かしょで開ひらいたうえで判断はんだん時期じきは来月らいげつ以降いこうになるという考かんがえを示しめしました。

住民じゅうみん説明せつめい会かいでは、調査ちょうさへの応募おうぼに反対はんたいする声こえが相次あいついだことから、追加ついかで説明せつめい会かいを開ひらくことに加くわえて、今月こんげつ中ちゅうに経済けいざい産業さんぎょう省しょうの担当たんとう者しゃを招まねいた説明せつめい会かいも開ひらくことにしています。

応募おうぼの判断はんだん時期じきについて片岡かたおか町長ちょうちょうは「非常ひじょうに悩なやましい」と述のべて現在げんざいは明言めいげんを避さけています。

ソース：NHK ニュース