台風たいふう10号ごう “最大さいだい級きゅう警戒けいかい”も発達はったつしなかった「意外いがいな要因よういん」とは

最大さいだい級きゅうの警戒けいかいが呼よびかけられた台風たいふう10号ごうが事前じぜんの予報よほうほど勢力せいりょくを強つよめなかった意外いがいな要因よういんが浮かび上うかびあがりました。専門せんもん家かが当時とうじの海うみの状況じょうきょうを詳くわしく解析かいせきした結果けっか、本来ほんらい、暖あたたかい海水かいすいを届とどける黒潮くろしおが、先行せんこうした台風たいふうがかき混かきまぜた比較的ひかくてき冷つめたい海水かいすいを200キロ以上いじょうも広ひろげる役割やくわりを果はたしていた可能かのう性せいが高たかいことが分わかりました。

台風たいふう10号ごうは沖縄おきなわの大東だいとう島とう地方ちほうや奄美あまみ、九州きゅうしゅうに近ちかづき、暴風ぼうふうや大雨おおあめによる被害ひがいが相次あいつぎましたが、九州きゅうしゅう南部なんぶに接近せっきんする時点じてんで中心ちゅうしんの勢力せいりょくは945ヘクトパスカルと、数すう日にち前まえの予報よほうより15ヘクトパスカル前後ぜんごも弱よわまりました。

海洋かいよう物理ぶつり学がくが専門せんもんで九州きゅうしゅう大学だいがく応用おうよう力学りきがく研究所けんきゅうじょの広瀬ひろせ直毅なおき教授きょうじゅは、その背景はいけいを探さぐるため、台風たいふう9号ごうや10号ごうが通過つうかした際さいの海水温かいすいおんや海流かいりゅうの状況じょうきょうを人工じんこう衛星えいせいのデータや、気象きしょう状況じょうきょうなどを基もとに、コンピューターシミュレーションで詳細しょうさいに再現さいげんしました。

台風たいふう9号ごうが通過つうかする前まえ、一帯いったいの海面かいめん水温すいおんは台風たいふうが発達はったつするとされる27度どよりも高たかく28度ど以上いじょうとなっていましたが、9月つき3日にちにかけて台風たいふう9号ごうが東シナ海ひがししなかいを北上ほくじょうすると、海水かいすいがかき混かきまぜられた影響えいきょうで、進路しんろの付近ふきんでは27度ど以下いかに低下ていかしたとみられています。

さらにその後そのごも、水温すいおんが低下ていかした領域りょういきは東ひがしへ広ひろがり続つづけ、台風たいふう10号ごうが九州きゅうしゅうに近ちかづいた6日にちの正午しょうごごろには、27度ど以下いかの領域りょういきが鹿児島かごしま県けんの種子島たねがしま、屋久島やくしま地方ちほう付近ふきんまで拡大かくだいしていました。

台風たいふうの進路しんろからは200キロ以上いじょうも離はなれており、広瀬ひろせ教授きょうじゅによりますと、こうした現象げんしょうは珍めずらしいということですが、台風たいふう9号ごうと10号ごうの進路しんろをつなぐように黒潮くろしおが流ながれていたことで、比較的ひかくてき冷つめたい海水かいすいが広ひろがったとみています。

広瀬ひろせ教授きょうじゅは「暖流だんりゅうの黒潮くろしおが一時いちじ的てきに寒流かんりゅうになってしまうような大おおきな変化へんかで、結果けっかを見みるまで想像そうぞうできなかった。一般いっぱん的てきに、海面かいめん水温すいおんは台風たいふうの強度きょうどに大おおきな影響えいきょうを与あたえるので、今後こんご、無視むしできない要素ようそだ」と話はなしています。

専門せんもん家か「気象庁きしょうちょう より現実げんじつに近ちかい海面かいめん水温すいおんデータの把握はあくを」

海面かいめん水温すいおんのデータは、気象庁きしょうちょうの台風たいふう予報よほうに使つかわれてはいるものの、数すう週間しゅうかん分ぶんのデータを平均へいきんする形かたちとなっていることから、今回こんかいのように短たん期間きかんで起おきる海面かいめん水温すいおんの極端きょくたんな変動へんどうは組み込くみこむことができないのが実情じつじょうです。

台風たいふうのメカニズムに詳くわしい琉球りゅうきゅう大学だいがくの伊藤いとう耕こう介かい准じゅん教授きょうじゅは「今回こんかいは台風たいふうの特別とくべつ警報けいほうの基準きじゅんには達たっしなかったが、地球ちきゅう温暖おんだん化かの進展しんてんもあり、同おなじような強つよさの台風たいふうが接近せっきん、上陸じょうりくする可能かのう性せいは今後こんごも十分じゅうぶんある。気象庁きしょうちょうは、シミュレーションなどを活用かつようし、より現実げんじつに近ちかい海面かいめん水温すいおんのデータを把握はあくする仕組しくみ作づくりに取り組とりくむべきだ。より正確せいかくな予報よほうを出だすことで、住民じゅうみんの適切てきせつな避難ひなんにもつながると思おもう」と話はなしています。

ソース：NHK ニュース