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ノーベル化学かがくしょう「ゲノム編集へんしゅう」のあら手法しゅほう 国内こくないでも研究けんきゅうすす

2020-10-07 14:38:29

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ことしのノーベル化学かがくしょうに、「ゲノム編集へんしゅう」のあら手法しゅほう開発かいはつしたドイツの研究けんきゅう機関きかんアメリカ大学だいがく研究けんきゅうしゃ2にんえらばれました。この技術ぎじゅつ使つかって国内こくないでも研究けんきゅうすすめられています。日本人にっぽんじん研究けんきゅうしゃらの反応はんのうです。

りょう通常つうじょうよりも1.2ばいやしたマダイの養殖ようしょく成功せいこう

ことしのノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょうした「ゲノム編集へんしゅう」の技術ぎじゅつ使つかった研究けんきゅうすすめている近畿きんき大学だいがくいえたかし太郎たろう教授きょうじゅは、「ゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつはじめてったとき、あまりに画期的かっきてき技術ぎじゅつですぐに使つかってみたいとおもった。予想よそうしていたよりもはや受賞じゅしょうだったが、いつかかなら受賞じゅしょうするとおもっていた」とはなしています。

いえ教授きょうじゅらのグループではこれまでにゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつによってりょう通常つうじょうよりも1.2ばいやしたマダイの養殖ようしょく成功せいこうしていて、現在げんざいは、トラフグなどほかさかな改良かいりょうにも取り組とりくんでいるということです。いえ教授きょうじゅは「以前いぜんさかな品種ひんしゅ改良かいりょうしようとすると、なに世代せだい掛け合かけあわせて15ねんから20ねんかかっていた。それがゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつ使つかことで4ねんほどに短縮たんしゅくできた。ゲノム編集へんしゅうをしたマダイはエサをべるりょう通常つうじょうのマダイとわらないのにりょうえる」とはなしていました。

いえ教授きょうじゅたちは、ゲノム編集へんしゅう品種ひんしゅ改良かいりょうしたマダイの流通りゅうつう目指めざして、研究けんきゅうすすめているということで、「いま日本にっぽん養殖ようしょくぎょうよこばい状況じょうきょうつづいているが、ゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつ使つかえば、より効率こうりつ養殖ようしょくできるさかな品種ひんしゅ改良かいりょうができるはずだ。今回こんかい受賞じゅしょう契機けいきとなって国内こくないでゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつ活用かつようすすみ、養殖ようしょくぎょうそのものが活気かっき取り戻とりもどきっかけになってほしい」とはなしていました。

農作物のうさくもつ品種ひんしゅ改良かいりょうスピード飛躍ひやくてきにアップ」

「ゲノム編集へんしゅう」の技術ぎじゅつ使つかい、トマトの品種ひんしゅ改良かいりょう研究けんきゅうおこなってきた筑波つくば大学だいがく江面えづらひろし教授きょうじゅは、「この技術ぎじゅつによって、農作物のうさくもつ品種ひんしゅ改良かいりょうのスピードが飛躍ひやくてきにアップした。なんねんまえから受賞じゅしょうするとおもっていたので『やっと』というおもだ。受賞じゅしょうによって、ゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつひと役立やくだ技術ぎじゅつの1つとして世界せかいてき認知にんちされたとおも」とはなしていました。

江面えづら教授きょうじゅ血圧けつあつげるとされる成分せいぶんおおふくんだトマトを開発かいはつし、販売はんばいのための手続てつづすすめていて、「農業のうぎょう分野ぶんやでは突然とつぜん変異へんい利用りようして品種ひんしゅ改良かいりょうすすんできたので、ゲノム編集へんしゅう応用おうようすることに問題もんだいはないとされているが、医療いりょう家畜かちくなどそれぞれ分野ぶんや議論ぎろん必要ひつよう部分ぶぶんあるので今回こんかい受賞じゅしょう関心かんしんたかまってこの技術ぎじゅつがよりじん役立やくだようになることを期待きたいしたい」とはなしていました。

農業のうぎょうでの活用かつよう成熟せいじゅく医療いりょうめんでは倫理りんりてきめん課題かだい

科学かがく技術ぎじゅつ振興しんこう機構きこう古川ふるかわ雅士まさし調査ちょうさやくは「化学かがくしょうでとったというのは遺伝子いでんし配列はいれつに対にたいする化学かがく反応はんのうというてん評価ひょうかされたほか農業のうぎょうでの活用かつよう成熟せいじゅくしてきているてんがあったとおもわれます。一方いっぽうで、医療いりょうめんではがん治療ちりょうなど研究けんきゅう進行しんこうしていますが、倫理りんりてきめん解決かいけつできていなくてここ課題かだいとなっています。今回こんかい論文ろんぶん発表はっぴょうから8ねんというみじか期間きかん受賞じゅしょうで、世界せかいてきにも注目ちゅうもくたかかったことを反映はんえいしています」とはなしています。

「ゲノム編集へんしゅうのリスク しっかり評価ひょうかする仕組しくを」

生命せいめい倫理りんり専門せんもん北海道ほっかいどう大学だいがく石井いしい哲也てつや教授きょうじゅは、「今回こんかいのノーベルしょうは、受賞じゅしょうするべくして受賞じゅしょうしたものだとかんがえている。ただ、ゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつには、意図いとしていない遺伝子いでんし改変かいへんきるなどのリスクがあることが指摘してきされている。食品しょくひん品種ひんしゅ改良かいりょう医療いりょうへの応用おうようなど健康けんこうかかわる技術ぎじゅつになっている以上いじょうこのリスクをしっかり評価ひょうかする仕組しく国内こくないあるいは国際こくさいてきつくことがもとめられているとおもまた中国ちゅうごくおこなわれたようなゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつ使つかって受精卵じゅせいらん遺伝子いでんし操作そうさして実際じっさいあかちゃん誕生たんじょうさせるなど行為こうい禁止きんしするべきだ」とはなしています。

この技術ぎじゅつ人間にんげんどこまで応用おうようしていくおおきな問題もんだい

生命せいめい科学かがく医療いりょう倫理りんり問題もんだいくわしい大阪おおさか大学だいがく医学いがくけい研究けんきゅう加藤かとう和人かずと教授きょうじゅは、ノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょう対象たいしょうになったゲノム編集へんしゅう手法しゅほうについて、「画期的かっきてき技術ぎじゅつで、とても有用ゆうよう技術ぎじゅつであることは間違まちがいない」とべたうえで、「技術ぎじゅつはまだ未熟みじゅくめんがあり、この技術ぎじゅつ人間にんげんにどこまで応用おうようしていくかおおきな問題もんだいなるたとえ病気びょうきなおためであっても、受精卵じゅせいらんにゲノム編集へんしゅうほどこし、書き換かきかえた遺伝子いでんし世代せだいえて引き継ひきつがれるども誕生たんじょうさせるべきではないというのが世界せかい考え方かんがえかただ。日本にっぽんでも研究けんきゅうおこなことは禁止きんしされているが、法的ほうてき規制きせいはなく、検討けんとうすすめてほしい」と指摘してきしました。

加藤かとう教授きょうじゅは、世界せかい各国かっこく足並あしなをそろえてルールつく必要ひつようあるとして、「本当ほんとう役立やくだ技術ぎじゅつ研究けんきゅう自信じしんってすすめることができるよう、倫理りんり法律ほうりつなどについて社会しゃかい全体ぜんたいかんがえる必要ひつようがある」とはなしていました。

京大きょうだい iPS細胞さいぼう研究所けんきゅうじょ 山中やまなかしんわたる所長しょちょう画期的かっきてき発見はっけん

京都大きょうとだいがくのiPS細胞さいぼう研究所けんきゅうじょ山中やまなかしんわたる所長しょちょうは、ツイッターで、ノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょうしゃにジェニファー・ダウドナまったことについて、コメント発表はっぴょうしました。山中さんちゅう所長しょちょうとダウドナは、アメリカ・カリフォルニアしゅうのグラッドストーン研究所けんきゅうじょにともに研究けんきゅういんとして所属しょぞくしています。

このなかで山中さんちゅう所長しょちょうは、「ダウドナ先生せんせい受賞じゅしょうおめでとうございます。グラッドストーン研究所けんきゅうじょ同僚どうりょうとして、こころよりよろこ申し上もうしあげます。『CRISPRーCas9』を使つかったゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつは、医学いがくのみならず、ぜん生命せいめい科学かがくにおける画期的かっきてき発見はっけんであり、その業績ぎょうせきこころから敬意けいいあらわします」とコメントしています。

歴史れきし革命かくめいこした技術ぎじゅつ

ノーベル化学かがくしょう受賞じゅしょうまったジェニファー・ダウドナとエマニュエル・シャルパンティエの2にん親交しんこうがあり、みずからもゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつもちいた治療ちりょうほう研究けんきゅうなどおこなっている東京とうきょう大学だいがく大学院だいがくいん理学りがくけい研究けんきゅう教授きょうじゅは「あらゆる生命せいめい活動かつどう設計せっけい書き換かきかえることができるもので、歴史れきし革命かくめいこした技術ぎじゅつだ。この技術ぎじゅつてから加速度かそくどてき応用おうよう範囲はんいひろがり、社会しゃかいあたえた影響えいきょうおおきい。それだけおおきな業績ぎょうせきだ」とはなしています。

また教授きょうじゅは、「わたし自身じしんがライバルでもあるが、2にんとは、お互おたが研究けんきゅうがうまくいったときに祝福しゅくふくってきた。おな分野ぶんや研究けんきゅうしゃとして今回こんかい受賞じゅしょう決定けっていよろこばしいわたしたちも今後こんご研究けんきゅうすすめ、基礎きそ疾患しっかん難病なんびょうなど治療ちりょうほう開発かいはつし、くるしんでいるおおひとすくえるようにしたい」とはなしています。

「ゲノム編集へんしゅう産業さんぎょう推し進おしすすめようとする機運きうんを」

日本にっぽんゲノム編集へんしゅう学会がっかい会長かいちょうで、広島ひろしま大学だいがくゲノム編集へんしゅうイノベーションセンター山本やまもとたく教授きょうじゅは、「おそかれはやかれゲノム編集へんしゅうがノーベルしょうのは間違まちがないとおもっていた。受賞じゅしょうまった2にんは、これまでの方法ほうほうよりも簡単かんたん効率こうりつよく遺伝いでん情報じょうほう編集へんしゅうできることを証明しょうめいし、どの研究けんきゅうしゃにも使つかえるようにしたてん功績こうせき非常ひじょうおおきく、受賞じゅしょうはうれしくおも」とかたりました。

そのうえでゲノム編集へんしゅう技術ぎじゅつかしたあら治療ちりょう食品しょくひん開発かいはつ世界せかいすすんでいるとして、「今後こんごわたしたちの生活せいかつおおきくえていく技術ぎじゅつだが、世界せかいくら日本にっぽんおくれているめんもある。ノーベルしょうきっかけおお若者わかもの関心かんしんってもらい、ゲノム編集へんしゅう産業さんぎょう推し進おしすすめようとする機運きうんまれてほしい」とはなしていました。

一方いっぽうで、山本やまもと教授きょうじゅは、「どれだけ正確せいかく遺伝いでん情報じょうほう書き換かきかできるのかという安全あんぜんめん問題もんだいやデザイナーベイビーをつくることにもつながりかねないなどといった倫理りんりてき問題もんだい完全かんぜんコントロールできている状況じょうきょうではない。すばらしい技術ぎじゅつあることはわかっているが、こうした問題もんだい解決かいけつしながら使つかっていかなければいけない」と指摘してきしました。
ソース:NHK ニュース