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成年後見で1億円余着服 元弁護士に懲役6年判決
2016-10-07 05:29:25

東京の元弁護士が、成年後見人を務めていた認知症の女性3人から1億円余りを着服したとして業務上横領の罪に問われた裁判で、東京地方裁判所は「着服した金で豪遊するなど犯行は悪質で、成年後見制度への信頼を揺るがしかねない」として懲役6年の判決を言い渡しました。
東京・千代田区の元弁護士 渡部直樹被告(49)は、去年6月までの4年間に成年後見人として財産を管理していた認知症の女性3人の口座から合わせて1億1000万円余りを着服したとして、業務上横領の罪に問われました。検察が懲役7年を求刑したのに対して、被告側は「精神的に不安定で十分な責任能力がなかった」として刑を軽くするよう求めていました。
7日の判決で、東京地方裁判所の稗田雅洋裁判官は「住宅ローンや生活費の支払いに必要な時期に必要な金額を横領していて、責任能力に影響するような症状はなかった」と指摘しました。そのうえで、「着服した金でキャバクラで豪遊するなど犯行は悪質で、成年後見制度に対する信頼を揺るがしかねない。被害者は老後の蓄えを奪われ、入居していた施設からの退去を考えざるを得なくなった人もいて結果は重大だ」として懲役6年を言い渡しました。
7日の判決で、東京地方裁判所の稗田雅洋裁判官は「住宅ローンや生活費の支払いに必要な時期に必要な金額を横領していて、責任能力に影響するような症状はなかった」と指摘しました。そのうえで、「着服した金でキャバクラで豪遊するなど犯行は悪質で、成年後見制度に対する信頼を揺るがしかねない。被害者は老後の蓄えを奪われ、入居していた施設からの退去を考えざるを得なくなった人もいて結果は重大だ」として懲役6年を言い渡しました。
被害者の家族は
今回の事件で財産を着服された被害者の家族は「弁償を得るのは難しく、不安が募ります」と訴えています。
東海地方の70代の女性は、5年前、東京で暮らしていた認知症の母親のため、東京家庭裁判所に成年後見制度の利用を申し立て、渡部直樹元弁護士を後見人として指定されました。しかし、その4か月後からおよそ3年間にわたって母親の口座の金を引き出され、被害額は合わせて4100万円余りに達しました。母親がいた施設から「入居費が滞納されている」と連絡があって着服に気づいたということで、事件の後、母親の通帳を確認すると、最後は毎週のように多額の金が引き出され、1回に400万円以上引き出されたこともあったということです。
女性は「裁判所が選んだ弁護士なので安心だと信じていました。両親が一生懸命働いて老後の暮らしに当てていたお金が無残にもぎ取られ、ぼう然としました」と振り返っています。これまでに弁償された額は800万円ほどにとどまり、母親は、住み慣れた東京を離れ、女性の自宅の近くにある割安な施設に移りました。その後、認知症の症状が進み、介護を必要とすることが多くなってしまったということです。
渡部元弁護士に対しては賠償を求める裁判も起こし、先月、7900万円余りの支払いを命じる判決が言い渡されましたが、相手には資産が残っていないとみられ、弁償のめどはたっていません。女性は「被害の弁償を得るのは実際問題、難しいと思います。母親には長生きしてもらいたいですが、そうするともっと安い施設に移ってもらわなければならないので、今後どうなるのだろうと不安が募ります」と訴えています。
東海地方の70代の女性は、5年前、東京で暮らしていた認知症の母親のため、東京家庭裁判所に成年後見制度の利用を申し立て、渡部直樹元弁護士を後見人として指定されました。しかし、その4か月後からおよそ3年間にわたって母親の口座の金を引き出され、被害額は合わせて4100万円余りに達しました。母親がいた施設から「入居費が滞納されている」と連絡があって着服に気づいたということで、事件の後、母親の通帳を確認すると、最後は毎週のように多額の金が引き出され、1回に400万円以上引き出されたこともあったということです。
女性は「裁判所が選んだ弁護士なので安心だと信じていました。両親が一生懸命働いて老後の暮らしに当てていたお金が無残にもぎ取られ、ぼう然としました」と振り返っています。これまでに弁償された額は800万円ほどにとどまり、母親は、住み慣れた東京を離れ、女性の自宅の近くにある割安な施設に移りました。その後、認知症の症状が進み、介護を必要とすることが多くなってしまったということです。
渡部元弁護士に対しては賠償を求める裁判も起こし、先月、7900万円余りの支払いを命じる判決が言い渡されましたが、相手には資産が残っていないとみられ、弁償のめどはたっていません。女性は「被害の弁償を得るのは実際問題、難しいと思います。母親には長生きしてもらいたいですが、そうするともっと安い施設に移ってもらわなければならないので、今後どうなるのだろうと不安が募ります」と訴えています。
裁判所 監督強化迫られる
成年後見制度は、認知症のお年寄りなどの権利を守るためのものですが、逆に後見人の不正が相次ぐ事態に、家庭裁判所は監督の強化を迫られています。
認知症のお年寄りなどに十分な判断力がないと見られる場合、家族などは、家庭裁判所に成年後見制度の利用を申し立てることができます。家庭裁判所は、後見人が必要か調査したうえで、事情に応じて親族や弁護士などを後見人に選び、財産の管理や、介護サービスの契約など法律に関する行為を行わせます。
後見人を監督するのも家庭裁判所の役割で、最低でも年に1回は財産の管理状況の報告を求めているほか、不正が相次いでいることを受けて、報告にずさんさが見られる後見人には、年に2回から3回程度、報告を求める場合もあるということです。また、財産が多額な場合などは、後見人が不正を行っていないか調査し、解任を申し立てることができる「監督人」を選ぶこともあり、最近では弁護士に監督人をつけるケースも増えているということです。
認知症のお年寄りなどに十分な判断力がないと見られる場合、家族などは、家庭裁判所に成年後見制度の利用を申し立てることができます。家庭裁判所は、後見人が必要か調査したうえで、事情に応じて親族や弁護士などを後見人に選び、財産の管理や、介護サービスの契約など法律に関する行為を行わせます。
後見人を監督するのも家庭裁判所の役割で、最低でも年に1回は財産の管理状況の報告を求めているほか、不正が相次いでいることを受けて、報告にずさんさが見られる後見人には、年に2回から3回程度、報告を求める場合もあるということです。また、財産が多額な場合などは、後見人が不正を行っていないか調査し、解任を申し立てることができる「監督人」を選ぶこともあり、最近では弁護士に監督人をつけるケースも増えているということです。
日弁連は「見舞金」を検討
成年後見人に選ばれた弁護士の不正が相次ぐ中、日弁連・日本弁護士連合会は被害者に一定の見舞金を支払う制度などを検討しています。
最高裁判所によりますと成年後見人のうち、弁護士や司法書士などの専門職が横領などの不正を行った件数は、去年、過去最悪の37件に上り、被害額はおよそ1億1000万円でした。このため日弁連は、成年後見人など弁護士の業務で金銭的な被害にあった人たちに一定の見舞金を支払う「依頼者保護給付金制度」の導入を検討しています。
支払う額は、被害者1人当たり最高で500万円、複数の被害者がいる場合は合計2000万円が上限で、日弁連が設けた審査会が被害の状況を確認し、支払うべきかどうかや、金額を決めます。見舞金の費用は、すべての弁護士が毎月、日弁連に納めている会費の中でまかなえる見通しだということです。
しかし、弁護士の中には、「扱う金額が大きい成年後見制度に関わっている弁護士にだけ負担させるべきだ」といった反対意見もあります。日弁連は、各地の弁護士会に意見を求めていて、今月14日以降に寄せられた意見を集約して正式な制度の案をまとめ、理事会で議論することにしています。また、別の対策として、各地の弁護士会の相談窓口に同じ弁護士に関する苦情が3回以上寄せられた場合、弁護士会が、その弁護士の管理する口座や財産の状況について調査するルールの導入も検討しているということです。
最高裁判所によりますと成年後見人のうち、弁護士や司法書士などの専門職が横領などの不正を行った件数は、去年、過去最悪の37件に上り、被害額はおよそ1億1000万円でした。このため日弁連は、成年後見人など弁護士の業務で金銭的な被害にあった人たちに一定の見舞金を支払う「依頼者保護給付金制度」の導入を検討しています。
支払う額は、被害者1人当たり最高で500万円、複数の被害者がいる場合は合計2000万円が上限で、日弁連が設けた審査会が被害の状況を確認し、支払うべきかどうかや、金額を決めます。見舞金の費用は、すべての弁護士が毎月、日弁連に納めている会費の中でまかなえる見通しだということです。
しかし、弁護士の中には、「扱う金額が大きい成年後見制度に関わっている弁護士にだけ負担させるべきだ」といった反対意見もあります。日弁連は、各地の弁護士会に意見を求めていて、今月14日以降に寄せられた意見を集約して正式な制度の案をまとめ、理事会で議論することにしています。また、別の対策として、各地の弁護士会の相談窓口に同じ弁護士に関する苦情が3回以上寄せられた場合、弁護士会が、その弁護士の管理する口座や財産の状況について調査するルールの導入も検討しているということです。
ソース:NHK ニュース