刺傷ししょう事件じけんで被害ひがいの女子じょし大学生だいがくせいが手記しゅき 警察けいさつに不信ふしん感かん

ことし５月ごがつ、東京とうきょう・小金井こがねい市しで音楽おんがく活動かつどうをしていた女子じょし大学生だいがくせいが男おとこに刃物はもので刺さされた事件じけんで、被害ひがいに遭あった女子じょし大学生だいがくせいがＮＨＫえぬえいちけいに手記しゅきを寄よせ、「殺ころされるかもしれないと何なん度ども警察けいさつに伝つたえたにもかかわらず危険きけん性せいがないと判断はんだんされたのは今いまでも理解りかいできません」などと、警察けいさつへの不信ふしん感かんや現在げんざいの心境しんきょうを初はじめて明あきらかにしました。
（手記しゅきは全文ぜんぶんを掲載けいさい）。

ことし５月ごがつ、東京とうきょう・小金井こがねい市しで音楽おんがく活動かつどうをしていた大学だいがく３さん年生ねんせいの冨田とみた真由まゆさん（２に１いち）がナイフで刺さされ、岩いわ埼友宏ともひろ被告ひこく（２に８はち）が殺人さつじん未遂みすいなどの罪つみで逮捕たいほ・起訴きそされました。

冨田とみたさんは一時いちじ、意識いしき不明ふめいの重体じゅうたいになりましたが、現在げんざいは通院つういんしながら治療ちりょうを続つづけていて、事件じけんから半年はんとし余あまりがたった１いち６ろく日にち、ＮＨＫえぬえいちけいにＡえい４よん用紙ようし４よん枚まいにつづった手書てがきの手記しゅきを寄よせ、初はじめてみずからの言葉ことばで心境しんきょうなどを明あきらかにしました。

この中なかで、被告ひこくからのＳＮＳの書き込かきこみが始はじまったおととし６月ろくがつ以降いこう、不安ふあんや恐怖きょうふが募つのり、警察けいさつ署しょを訪おとずれて「殺ころされるかもしれない」と訴うったえた経緯けいいをつづっています。それにもかかわらず被害ひがいに遭あったことについて、「殺ころされるかもしれないと何なん度ども伝つたえたにもかかわらず、危険きけん性せいがないと判断はんだんされたのは今いまでも理解りかいできません」と警察けいさつへの不信ふしん感かんを記しるしました。

さらに、先月せんげつから今月こんげつにかけて警視庁けいしちょうから事情じじょうを聞きかれた際さいに、「本当ほんとうに殺ころされるかもしれないと警察けいさつに言いったのですか」などと何なん度ども聞きかれたことを明あかし、「この事実じじつを警察けいさつが認みとめないことに怒いかりを通り越とおりこして悲かなしみを感かんじています」と記しるしました。

そして現在げんざいの心境しんきょうについて「事件じけんに遭あった日ひから時間じかんが止とまってしまったかのように前まえに進すすむことが怖こわくなってしまいました。この事件じけんをきっかけに、同おなじ不安ふあんや恐怖きょうふを抱かかえて苦くるしんでいる人ひとが安心あんしんできるような社会しゃかいに変かわってくれたらうれしいです」とつづっています。

警視庁けいしちょうは、事件じけんの対応たいおうについて１いち６ろく日にち、最終さいしゅう的てきな検証けんしょう結果けっかを公表こうひょうする方針ほうしんです。

手記しゅきの全文ぜんぶん

まずは、私わたしが被害ひがいに遭あったときに、現場げんばで犯人はんにんに立ち向たちむかってくれた方ほう、１１０番ひゃくとおばん通報つうほうをして下くださった方々かたがたに、この場ばを借かりてお礼おれいを申し上もうしあげます。今いま私わたしが生いきていられるのは、皆様みなさまのおかげです。本当ほんとうにありがとうございました。

また、被害ひがいに遭あった後のちから、これまでの間ま、警視庁けいしちょうの犯罪はんざい被害ひがい者しゃ支援しえん室しつの皆様みなさまには大変たいへんお世話おせわになっていて支援しえん室しつの皆様みなさまにはとても感謝かんしゃしています。犯人はんにんからのＳＮＳへの書き込かきこみが始はじまったのは平成へいせい２に６ろく年ねんの６月ろくがつからでした。特とくに不安ふあんや恐怖きょうふを大おおきく感かんじるようになったのは、ライブ終了しゅうりょう後ごにストーカー行為こういをされたことや、生いき死しにに関にかんする書き込かきこみが１いち日にちに何なん件けんもくるようになったことがきっかけです。

初はじめは、気きにしないでいようと踏ん張ふんばっていましたが、どんどん不安ふあんや恐怖きょうふが積み重つみかさなり、その重おもさに限界げんかいを感かんじていました。そんな気持きもちから家族かぞくや友人ゆうじんに相談そうだんしましたが、犯人はんにんが急きゅうに目めの前まえに現あらわれて殺ころされそうになったとしても、私わたしも家族かぞくも周まわりの人ひとも素人しろうとなので、自分じぶんのことや誰だれかを守まもる方法ほうほうは何なにも知しりません。

そんな中なかでも希望きぼうを持もっていたのが、警察けいさつに助たすけを求もとめることでした。家族かぞくや友人ゆうじんは、命いのちより大切たいせつなものはないよと、身みの危険きけんを感かんじていることや助たすけて欲ほしいということを警察けいさつに伝つたえた方ほうが良よいと背中せなかを押おしてくれました。私わたしも、この不安ふあんや恐怖きょうふを解消かいしょうするための一番いちばん良よい方法ほうほうだと思おもいました。

警察けいさつには、命いのちの危険きけんを感かんじていることがわかる資料しりょうをいくつも持もっていきました。男女だんじょ２に人にんの生活せいかつ安全あんぜん課かの方ほうが対応たいおうをしてくれて、主おもに女性じょせいが話はなしを聞きいてくれました。平成へいせい２に６ろく年ねんの６月ろくがつからＳＮＳへの書き込かきこみが始はじまったこと、生いき死しにに関にかんする書き込かきこみが頻繁ひんぱんにあること、友人ゆうじんのＳＮＳにも迷惑めいわくな書き込かきこみがされていること、ライブ終了しゅうりょう後ごにストーカー行為こういをされ命いのちの危険きけんを感かんじていたことを、持もっていった資料しりょうを見みながら、特とくに危険きけんだと感かんじていたものに関にかんしてはひとつひとつ説明せつめいをし、「殺ころされるかもしれない」と不安ふあんや恐怖きょうふを訴うったえました。

資料しりょうが多おおかったため、後あとでゆっくり読よませてもらうと女性じょせいの方ほうに言いわれましたが、ストーカー行為こういをされたことに関にかんしては、そのときの状況じょうきょうを何なん度ども説明せつめいすると、頷うなずきながら聞きかれていたので、理解りかいしてくれたのだと思おもっていました。相談そうだんにいったときに伝つたえ忘わすれたことはひとつもありません。

警察けいさつからは、「使つかっているＳＮＳから犯人はんにんのアカウントをブロックしてください」「何なにかあればこちらから連絡れんらくします」と言いわれました。その後そのご相談そうだんから事件じけんまでの間まに、担当たんとう者しゃから３さん回かいほど電話でんわがかかってきましたが、私わたしのことを聞きかれたのはそのうちの１いち回かいだけでした。

事件じけん後ご、私わたしが相談そうだんに行いったときのことについては、平成へいせい２に８はち年ねん１１月じゅういちがつ２に８はち日にちと１２月じゅうにがつ２に日にちの２に回かいにわたって、警察けいさつから事情じじょう聴取ちょうしゅを受うけました。警察けいさつからの聴取ちょうしゅの際さい、挨拶あいさつが終おわった後のちの最初さいしょの言葉ことばが「本当ほんとうに殺ころされるかもしれないと言いったんですか」でした。その後そのごも、私わたしが「殺ころされるかもしれないという言葉ことばを言いっていないのではないか」と何なん度ども聞きかれました。でも、「殺ころされるかもしれない」という言葉ことばを、私わたしは絶対ぜったいに伝つたえました。母ははも、警察けいさつに何なん度ども訴うったえてくれました。これだけは間違まちがいありません。

この事実じじつを警察けいさつが認みとめないことに、怒いかりを通り越とおりこして、悲かなしみを感かんじています。必死ひっしに訴うったえたことが全まったく伝つたわらなかった。感かんじるものに温度おんど差さがあったとしても、警察けいさつに持もっていった多おおくの資料しりょうがあり、殺ころされるかもしれないと何なん度ども伝つたえたにもかかわらず、危険きけん性せいがないと判断はんだんされたのは今いまでも理解りかいできません。

今いま思おもうと、相談そうだんした際さいに、女性じょせいの警察官けいさつかんがほとんどメモを取とらずに話はなしを聞きいていたことや、男性だんせいの警察官けいさつかんが「他たの事件じけんが忙いそがしい」と言いい何なん度ども部屋へやを出入でいりしていたことから、私わたしの相談そうだんを軽かるい気持きもちで聞きいていたのだと思おもいます。私わたしが言いったことをどのように受け取うけとったのか、相談そうだんした担当たんとう者しゃに直接ちょくせつ話ばなしを聞きかせてほしいと何なん度どもお願おねがいしてきましたが、組織そしきとして対応たいおうしていますと、一切いっさい取り合とりあってもらえませんでした。

平成へいせい２に８はち年ねん１２月じゅうにがつ１いち３さん日にちに、武蔵野むさしの署しょの署長しょちょうからは形かたちばかりの謝罪しゃざいがありましたが、「少すこしお元気げんきになられたようですが」と、傷きず付つく言葉ことばがかけられました。謝罪しゃざいをしていただいたからといって傷きずだらけになった身体しんたいが元もとに戻もどる訳わけでもないし、時間じかんを巻まき戻もどせる訳わけでもありません。それでも、警察けいさつがどうして私わたしの相談そうだんを真剣しんけんに受け止うけとめてくれなかったのか、きちんと理由りゆうを説明せつめいしてもらえるのなら、少すこしは救すくわれるのかもしれません。

事件じけんに遭あった日ひから時間じかんが止とまってしまったかのように、前まえに進すすむことが怖こわくなってしまいました。支ささえや助たすけがあること、温あたたかい言葉ことばをかけてくれる人ひとがいることで、きっと大丈夫だいじょうぶだと思おもえる勇気ゆうきをもらい、なんとか毎日まいにちを過すごしています。

この事件じけん以降いこうも、似にたような事件じけんが起おこっているのをニュースでみかけますが、その度たびにとても苦くるしい気持きもちになります。犯人はんにんの勝手かってな思い込おもいこみや都合つごう、感情かんじょうだけで、なくなっていい命いのちはどこにもありません。

本ほん事案じあん発生はっせい後ごの取り組とりくみを拝見はいけんしましたが、警察けいさつがこの事件じけんのことを本当ほんとうに反省はんせいしてくれていないと、また同おなじことが繰り返くりかえされるのではないかと心配しんぱいです。この事件じけんをきっかけに、同おなじ不安ふあんや恐怖きょうふを抱かかえて苦くるしんでいる人ひとが、安心あんしんできるような社会しゃかいに変かわっていってくれたら嬉うれしいです。この文章ぶんしょうで、少すこしでも私わたしの気持きもちが伝つたわりますように。

平成へいせい２に８はち年ねん１２月じゅうにがつ１いち６ろく日にち冨田とみた真由まゆ。

ソース：NHK ニュース