小ちいさな寺てらの仏像ぶつぞう 実じつは朝鮮ちょうせん半島はんとう伝来でんらいの貴重きちょうな仏像ぶつぞうか

京都きょうと市しの小ちいさな寺てらにある、江戸えど時代じだいのものと思おもわれていた仏像ぶつぞうが、実じつは、仏教ぶっきょうが日本にっぽんに伝来でんらいして間まもない頃ころに朝鮮ちょうせん半島はんとうで作つくられた極きわめて貴重きちょうな仏像ぶつぞうの可能かのう性せいが高たかいことが、大阪おおさか大学だいがくなどによる最新さいしんの調査ちょうさでわかりました。専門せんもん家かは「こうした貴重きちょうな文化財ぶんかざいは、ほかにも埋うずもれている可能かのう性せいがある」と指摘してきしています。

京都きょうと市し左京さきょう区くにある「妙みょう傳つとう寺てら」では、「半はん跏思惟しい像ぞう」という高たかさおよそ５ご０ぜろセンチの青銅せいどう製せいの仏像ぶつぞうが本尊ほんぞんとして安置あんちされていて、これまでは、寺てらが建たてられたのと同おなじ江戸えど時代じだいのものと思おもわれていました。

この仏像ぶつぞうについて、大阪おおさか大学だいがくや東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかんの研究けんきゅう者しゃが改あらためて鑑定かんていしたところ、額がくに刻きざまれた模様もようや装飾そうしょく品ひんの龍りゅうのデザインなどが６ろく世紀せいきから７なな世紀せいきごろに朝鮮ちょうせん半島はんとうで作つくられた仏像ぶつぞうや出土しゅつど品ひんの特徴とくちょうと一致いっちしていました。さらに、仏像ぶつぞうにＸ線えっくすせんを当あてて金属きんぞくの成分せいぶんを詳くわしく調しらべた結果けっか、銅どうがおよそ９きゅう０ぜろ％、スズがおよそ１いち０ぜろ％で鉛なまりはほとんど含ふくまれていませんでした。こうした割合わりあいは日本にっぽんや中国ちゅうごくの仏像ぶつぞうにはなく、７なな世紀せいきごろに朝鮮ちょうせん半島はんとうで作つくられた仏像ぶつぞうである可能かのう性せいが極きわめて高たかいことがわかったということです。

この時代じだいは、日本にっぽんに仏教ぶっきょうが伝つたわってまもない時期じきに当あたりますが、この仏像ぶつぞうがどういう経緯けいいでこの寺てらに伝つたわったかはわかっていません。
調査ちょうさに当あたった大阪おおさか大学だいがくの藤岡ふじおか穣みのる教授きょうじゅは、「韓国かんこくでは国宝こくほう級きゅうとなる最高さいこうレベルの仏像ぶつぞうで、こうした仏像ぶつぞうが見みつかったことは大おおきな意味いみがある。ほかにも、埋うずもれている貴重きちょうな文化財ぶんかざいがまだまだ見みつかる可能かのう性せいがあり、価値かちに気付きづかれないまま盗難とうなんなどの被害ひがいに遭あう前まえに、調査ちょうさが進すすんでほしい」と話はなしています。

決め手きめての一ひとつとなった調査ちょうさ方法ほうほう

今回こんかい、仏像ぶつぞうの由来ゆらいが明あきらかになった決め手きめての一ひとつは、仏像ぶつぞうに使つかわれている金属きんぞくの成分せいぶんの分析ぶんせきでした。

寺てらなどに安置あんちされている仏像ぶつぞうを分析ぶんせきするには、傷きずつけずに、しかもその場ばで調しらべる必要ひつようがあります。このため、今回こんかいの調査ちょうさに当あたった大阪おおさか大学だいがくの藤岡ふじおか穣みのる教授きょうじゅが使つかったのは、Ｘ線えっくすせんを金属きんぞくに当あて、含ふくまれる成分せいぶんによって跳ね返はねかえってくるＸえっくす線せんの波長はちょうが異ことなることを利用りようした、「蛍光けいこうＸ線えっくすせん分析ぶんせき」と呼よばれる手法しゅほうでした。
かつては機器ききが大おおきくて持ち運もちはこびできませんでしたが、技術ぎじゅつの進歩しんぽによってドライヤーほどの大おおきさまで小型こがた化かし、研究けんきゅう者しゃが現場げんばに持ち運もちはこんで測定そくていできるようになりました。

藤岡ふじおか教授きょうじゅらは、この機器ききを使つかって日本にっぽん国内こくないだけでなく中国ちゅうごくや韓国かんこくなどの古ふるい仏像ぶつぞうおよそ４よん０ぜろ０ぜろ体たいの分析ぶんせきを積み重つみかさねていて、そのデータの蓄積ちくせきが今回こんかいの成果せいかに結むすびついたということです。

３さんDスキャナー使づかい盗難とうなん対策たいさく

地域ちいきに根ねざした小ちいさな寺てらにあった仏像ぶつぞうが、極きわめて貴重きちょうなものとわかったことで、新あらたな心配しんぱいも浮上ふじょうしました。盗難とうなんのおそれです。
このため、妙みょう傳つとう寺てらの荒木あらき正ただし宏ひろし住職じゅうしょくは、地元じもとの人ひとたちの理解りかいを得えたうえで、専門せんもんの業者ぎょうしゃに依頼いらいし、仏像ぶつぞうの複製ふくせい品ひんを作つくることにしました。大阪おおさかの業者ぎょうしゃが「３さんＤでぃ-スキャナー」と呼よばれる装置そうちで仏像ぶつぞうの細こまかなデザインの立体りったい的てきなデータをとり、富山とやま県けん高岡たかおか市しの仏像ぶつぞう作づくりの職人しょくにんがこのデータを基もとに鋳型いがたを作つくりました。さらに別べつの職人しょくにんが仕上しあげの細工ざいくや色いろつけを施ほどこし、最新さいしんの技術ぎじゅつと伝統でんとうの技法ぎほうによって、１いち０ぜろ０ぜろ０ぜろ年ねんを超こえる歴史れきしとともに刻きざまれた風合ふうあいまで再現さいげんした本物ほんものそっくりの仏像ぶつぞうが完成かんせいしました。

本物ほんものの仏像ぶつぞうは博物館はくぶつかんで保管ほかんし、寺てらには新あたらしく完成かんせいした仏像ぶつぞうが安置あんちされることになっていて、今月こんげつ、寺てらで地元じもとの人ひとたちにお披露目おひろめされました。集あつまった女性じょせいの１いち人にんは「本物ほんものそっくりでびっくりしています。本物ほんものが移うつされるのは少すこし寂さびしいですが、しかたないと思おもいます。博物館はくぶつかんにちゃんとすてきなご本尊ほんぞん様さまがいらっしゃると思おもって手てを合あわせたいです」と話はなしていました。
荒木あらき住職じゅうしょくは「博物館はくぶつかんでできるだけ多おおくの方ほうに見みていただきたい。将来しょうらい、寺てらで安全あんぜんに保管ほかんできる設備せつびが整ととのったときに、ご本尊ほんぞん様さまに帰かえってきてほしい」と話はなしていました。

ソース：NHK ニュース