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他人たにんのiPS細胞さいぼう使つかって治療ちりょうする世界せかいはつ臨床りんしょう研究けんきゅう了承りょうしょう

2017-02-01 08:56:48

他人たにん移植いしょくしても拒絶きょぜつ反応はんのうこしにくい特殊とくしゅなiPS細胞さいぼう使つかって、おも病気びょうき患者かんじゃ治療ちりょうする「他家たけ移植いしょく」とばれるタイプの世界せかいはつ臨床りんしょう研究けんきゅう実施じっしを、厚生こうせい労働ろうどうしょう審査しんさ委員いいんかい了承りょうしょうしました。特殊とくしゅなiPS細胞さいぼうは、京都大きょうとだいがく山中やまなかしんわたる教授きょうじゅのグループがつくったもので、培養ばいようによってやし、おおくの患者かんじゃ使つかえることから、成功せいこうすればすうせんまんえんかかっていた治療ちりょうコストを大幅おおはば引き下ひきさげ、再生さいせい医療いりょう普及ふきゅうにつながると期待きたいされます。
この臨床りんしょう研究けんきゅうは、他人たにん移植いしょくしても拒絶きょぜつ反応はんのうこしにくい特殊とくしゅなiPS細胞さいぼう使つかって、「よわいむら変性へんせい」というおも病気びょうき網膜もうまく組織そしき再生さいせいしようという他家たけ移植いしょくばれるタイプのもので、神戸こうべにある理化りかがく研究所けんきゅうじょや、神戸こうべ市立しりつ医療いりょうセンター中央ちゅうおう市民しみん病院びょういん、それに京都きょうと大学だいがく大阪おおさか大学だいがくのチームが去年きょねん10月じゅうがつ厚生こうせい労働ろうどうしょう実施じっし申請しんせいしていました。

厚生こうせい労働ろうどうしょう審査しんさ委員いいんかいいちにちかい審議しんぎおこない、倫理りんりめん技術ぎじゅつめんから、計画けいかく内容ないよう法律ほうりつさだめる再生さいせい医療いりょう基準きじゅん適合てきごうするとして、臨床りんしょう研究けんきゅう実施じっし了承りょうしょうしました。

これでくにによる実質じっしつてき審査しんさ終了しゅうりょうし、研究けんきゅうチームは今後こんご厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじん了承りょうしょうて、臨床りんしょう研究けんきゅう参加さんかする患者かんじゃえら作業さぎょうはいります。そしてはやければ、ことし前半ぜんはんにも世界せかいはつとなる手術しゅじゅつおこなわれる見通みとおしです。

iPS細胞さいぼうをめぐっては、さんねんまえおも病気びょうき患者かんじゃ本人ほんにんからiPS細胞さいぼうつくり、網膜もうまく組織そしき再生さいせいさせる「自家じか移植いしょく」とばれるタイプの手術しゅじゅつおこなわれましたが、患者かんじゃごとにiPS細胞さいぼうつくると、半年はんとし以上いじょう期間きかんすうせんまんえんのぼ費用ひようがかかり、普及ふきゅうけた課題かだいになっていました。

今回こんかい臨床りんしょう研究けんきゅう使つかわれるiPS細胞さいぼうは、京都大きょうとだいがく山中やまなかしんわたる教授きょうじゅのグループが特殊とくしゅ免疫めんえきのタイプをひとから細胞さいぼう提供ていきょうしてもらいつくったもので、細胞さいぼう自在じざいやせ、おおくの患者かんじゃ使つかえるため、成功せいこうすれば、コストや手術しゅじゅつまでの期間きかん大幅おおはば削減さくげん可能かのうで、iPS細胞さいぼう使つかった医療いりょう普及ふきゅうにつながると期待きたいされています。

よわいむら変性へんせいとは

よわいむら変性へんせい網膜もうまくきずつく難病なんびょうで、国内こくない患者かんじゃは、およそななぜろまんにん推計すいけいされ、おおくが進行しんこうはやいタイプだとされています。

網膜もうまく組織そしききずついて、はたらきが低下ていかし、視野しやがゆがんだりせまくなったりして、症状しょうじょう進行しんこうすると視力しりょくうしなわれます。

患者かんじゃに対にたいしては、これまで、薬剤やくざい注射ちゅうしゃするなどの治療ちりょうおこなわれてきました。しかし、症状しょうじょうすすむのをおさえることはできても、きずついた部分ぶぶん修復しゅうふくする効果こうかはあまり期待きたいできず、根本こんぽんてき治療ちりょうほうにはなっていません。

了承りょうしょうされた臨床りんしょう研究けんきゅう内容ないよう

今回こんかい了承りょうしょうされたのは他人たにんのiPS細胞さいぼう使つかって、よわいむら変性へんせい治療ちりょうおこな世界せかいはつ臨床りんしょう研究けんきゅうです。

理化りかがく研究所けんきゅうじょ高橋たかはし政代まさよプロジェクトリーダーなどのグループはさんねんまえよわいむら変性へんせい患者かんじゃ本人ほんにんからiPS細胞さいぼうつくり、網膜もうまく組織そしき変化へんかさせて移植いしょくする臨床りんしょう研究けんきゅうおこない、これまでのところ、安全あんぜんせい問題もんだいはなく、症状しょうじょう悪化あっかおさえられているとしています。

しかし、患者かんじゃいちにんいちにんからiPS細胞さいぼうつくるには半年はんとし以上いじょう期間きかんすうせんまんえんにのぼる費用ひようがかかるうえ、計画けいかくされていたれい手術しゅじゅつ作製さくせいされたiPS細胞さいぼう遺伝子いでんし変異へんい複数ふくすうつかって中止ちゅうしとなるなど、課題かだいのこされていました。

今回こんかい計画けいかくでは、京都大きょうとだいがくiPS細胞さいぼう研究所けんきゅうじょ健康けんこう提供ていきょうしゃ細胞さいぼうから、あらかじめつくって保管ほかんしているiPS細胞さいぼう使つかっておこなう、世界せかいはじめての他家たけ移植いしょくとなります。

あらかじめつくって保管ほかんしているiPS細胞さいぼう活用かつようすることで、これまでの自家じか移植いしょくでは移植いしょく手術しゅじゅつまでいちいちか月かげつあった待機たいき時間じかんが、さんか月かげつからか月かげつ程度ていど短縮たんしゅくされるほか、費用ひよう大幅おおはばおさえられると期待きたいされています。

また、他人たにん移植いしょくしても拒絶きょぜつ反応はんのうきにくい特殊とくしゅなタイプの免疫めんえきったひとから提供ていきょうされた細胞さいぼう使つかっているため、拒絶きょぜつ反応はんのうすくなくおさえることができるということです。

計画けいかくでは、細胞さいぼうふくまれた液体えきたい注入ちゅうにゅうする方法ほうほう移植いしょくおこなわれ、安全あんぜんせい効果こうか調しらべることにしています。

手術しゅじゅつ神戸こうべ中央ちゅうおう市民しみん病院びょういん大阪おおさか大学だいがく附属ふぞく病院びょういんおこなわれる予定よていで、グループでは、ことし前半ぜんはん手術しゅじゅつ実施じっし目指めざすということです。

よわいむら変性へんせい患者かんじゃ

大阪おおさか堀部ほりべ和子かずこさんななぜろ)はさんぜろさいのころ、右目みぎめ景色けしきがゆがみ、視野しやせまくなりました。

病院びょういんきましたが、当時とうじよわいむら変性へんせいとはわからず、十分じゅうぶん治療ちりょうけられないまま、いちぜろねんあままえぜろだいとき左目ひだりめにも症状しょうじょうて、はじめてよわいむら変性へんせい診断しんだんされました。

それ以降いこうくすり注射ちゅうしゃをするなどの治療ちりょうつづけてきましたが、症状しょうじょう悪化あっかまらず、視野しやせまくなり、視力しりょくがりつづけました。

新聞しんぶん拡大かくだいきょう使つかって、ひと文字もじずつしかむことができず、段差だんさ案内あんないばんなどがよくえないため、れない土地とちいちにんかけるのはむずかしいということです。

堀部ほりべさんは今回こんかい他人たにんのiPS細胞さいぼう使つかった臨床りんしょう研究けんきゅう成功せいこうし、移植いしょくにかかる時間じかん費用ひよう大幅おおはばおさえることにつながれば、おおくのひとすくわれると期待きたいせています。

堀部ほりべさんは「山中さんちゅう先生せんせいノーベルしょう受賞じゅしょうしたときによわいむら変性へんせい治療ちりょう研究けんきゅうすすめられていることをりました。自分じぶん病気びょうきも、いつかなおるかもしれないと、まさに朗報ろうほうでした。万能ばんのう細胞さいぼうばれるiPS細胞さいぼう移植いしょくによって将来しょうらいてきにどんな病気びょうきでもなおせるようにしてほしいです」とはなしていました。

iPS細胞さいぼう ほかの研究けんきゅうでも

今回こんかいのように特殊とくしゅなiPS細胞さいぼう使つかって、病気びょうきなどできずついたからだ機能きのう再生さいせいさせようという臨床りんしょう研究けんきゅうは、ほかにも、さまざまなグループが計画けいかくすすめています。

大阪おおさか大学だいがく西田にしだ幸二こうじ教授きょうじゅらのグループは、角膜かくまく組織そしき再生さいせいし、うしなわれた視力しりょく回復かいふく目指めざ臨床りんしょう研究けんきゅうを、また、おな大阪おおさか大学だいがくさわ芳樹よしき教授きょうじゅらのグループは心筋しんきん梗塞こうそくなどできずついた心臓しんぞう筋肉きんにく再生さいせいさせる臨床りんしょう研究けんきゅうなどの実施じっし目指めざしています。

京都大きょうとだいがくiPS細胞さいぼう研究所けんきゅうじょ江藤えとう浩之ひろゆき教授きょうじゅのグループは、iPS細胞さいぼうから血液けつえき成分せいぶん血小板けっしょうばん大量たいりょうつく技術ぎじゅつ開発かいはつしていて、血液けつえき病気びょうき患者かんじゃ輸血ゆけつする臨床りんしょう研究けんきゅう治験ちけんおこな計画けいかくすすめています。

さらに京都きょうと大学だいがくiPS細胞さいぼう研究所けんきゅうじょ高橋たかはしあつし教授きょうじゅのグループはパーキンソンびょう患者かんじゃ対象たいしょうに、のう神経しんけい細胞さいぼう再生さいせいさせる治療ちりょうほう開発かいはつ目指めざした研究けんきゅう計画けいかくしています。

iPS細胞さいぼう保存ほぞんするプロジェクトも

京都大きょうとだいがくは、他人たにん移植いしょくしても拒絶きょぜつ反応はんのうをおこしにくい特殊とくしゅなiPS細胞さいぼう作り出つくりだし、必要ひつよう患者かんじゃがいつでも使つかえるように保存ほぞんしておく「iPS細胞さいぼうストック」とばれるプロジェクトをよんねんまえからはじめています。

こうしたiPS細胞さいぼうは、日本人にっぽんじんなかに、ごくわずかにいる特定とくていのタイプの免疫めんえきひと細胞さいぼう提供ていきょうしてもらいつくるもので、実際じっさいひと移植いしょくされるのは、今回こんかいはじめてとなります。

iPS細胞さいぼうは、いったん作り出つくりだせば、自在じざいやすことができるため、患者かんじゃいちにんいちにんから、そのつど、iPS細胞さいぼうつく自家じか移植いしょくくらべ、今回こんかい他家たけ移植いしょく移植いしょくまでの待機たいき期間きかんや、治療ちりょうコストを大幅おおはばおさえることができると期待きたいされています。

現在げんざい、ストックに保存ほぞんされているiPS細胞さいぼういち種類しゅるいですが、日本人にっぽんじんのおよそいちなな%に移植いしょくできるということで、京都大きょうとだいがくでは今後こんご保存ほぞんする細胞さいぼう種類しゅるいやし、日本人にっぽんじん大半たいはんひとをカバーできるようにしたいとしています。

iPS細胞さいぼうストックをめぐっては先月せんげつ保存ほぞんしていた種類しゅるいのiPS細胞さいぼうのうちいち種類しゅるいで、作製さくせい過程かていあやまった試薬しやく使つかった可能かのうせいがあることがわかり、この細胞さいぼう研究けんきゅう機関きかんへの提供ていきょう停止ていしされる事態じたいきました。

このため、大阪おおさか大学だいがくなどがすすめている角膜かくまく移植いしょくする臨床りんしょう研究けんきゅういちねん程度ていどおくれる可能かのうせいがあるほか、京都大きょうとだいがくすすめている輸血ゆけつよう血小板けっしょうばん臨床りんしょう研究けんきゅうおくれがるおそれがあるということです。

ただ、今回こんかい使つかわれるのはのこされた、もういち種類しゅるいのiPS細胞さいぼうで、今後こんご臨床りんしょう計画けいかく実施じっし影響えいきょうはないということです。
ソース:NHK ニュース