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プライバシー保護ほごならネットの情報じょうほう削除さくじょ最高裁さいこうさいはつ基準きじゅん

2017-02-01 06:57:47

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逮捕たいほされた経歴けいれきのある男性だんせいが、インターネット当時とうじ記事きじ検索けんさくされないよう、検索けんさく結果けっか削除さくじょもとめたことについて、最高さいこう裁判所さいばんしょ情報じょうほう社会しゃかい提供ていきょうする自由じゆうより、プライバシーの保護ほご優先ゆうせんされる場合ばあいには削除さくじょみとめられるというはじめての基準きじゅんしめしました。その一方いっぽうで、男性だんせい逮捕たいほされた事件じけん社会しゃかいてき関心かんしんたかいとして、申し立もうしたてを退しりぞけ、削除さくじょみとめませんでした。
ろくねんまえ児童じどう買春ばいしゅんうたがいで逮捕たいほされ、罰金ばっきん略式りゃくしき命令めいれいけた男性だんせいは、インターネットで自分じぶん名前なまえなどを検索けんさくすると当時とうじ記事きじ表示ひょうじされるとして、グーグルに削除さくじょもとめるかり処分しょぶん申し立もうしたてました。

おととし、さいたま地方ちほう裁判所さいばんしょは「過去かこ逮捕たいほれき知人ちじんられ立ち直たちなおりをさまたげられない利益りえき侵害しんがいされる」として、削除さくじょめいじましたが、去年きょねん東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょぎゃく申し立もうしたてを退しりぞけ、男性だんせいがわ抗告こうこくしていました。

これに対にたいする決定けっていで、最高さいこう裁判所さいばんしょだいさんしょう法廷ほうてい岡部おかべ喜代子きよこ裁判さいばんちょうは「インターネットの検索けんさくは、膨大ぼうだい情報じょうほうから必要ひつようなものを入手にゅうしゅする情報じょうほう流通りゅうつう基盤きばんだ」と指摘してきしました。

そのうえで、判断はんだんにあたっては社会しゃかいてき関心かんしんたかさや、本人ほんにんける損害そんがいといった事情じじょうもとに、情報じょうほう社会しゃかい提供ていきょうする事業じぎょうしゃ表現ひょうげん自由じゆうより、プライバシーの保護ほご優先ゆうせんされる場合ばあい削除さくじょできるという、はじめての基準きじゅんしめしました。

その一方いっぽうで、児童じどう買春ばいしゅんつよ非難ひなん対象たいしょうとなり、社会しゃかい関心かんしんたかいと指摘してきして、男性だんせい申し立もうしたてを退しりぞけました。

検索けんさく結果けっか削除さくじょをめぐってはさんねんまえ、ヨーロッパ司法しほう裁判所さいばんしょ判断はんだんをきっかけに「わすれられる権利けんり」という言葉ことば注目ちゅうもくされ、今回こんかいかり処分しょぶんでは、さいたま地裁ちさい日本にっぽんでははじめて、わすれられる権利けんり根拠こんきょ削除さくじょみとめたため、最高裁さいこうさい判断はんだん注目ちゅうもくされていました。

このてんについて、最高裁さいこうさい決定けっていなかで、わすれられる権利けんりにはれず、プライバシー保護ほごという従来じゅうらい枠組わくぐみのなかで、表現ひょうげん自由じゆう重視じゅうしした判断はんだんしめしたといえます。

最高裁さいこうさいしめした基準きじゅん

最高さいこう裁判所さいばんしょ判断はんだんは、インターネットによる情報じょうほう入手にゅうしゅ不可欠ふかけつとなるなかで、ネットじょう情報じょうほう流通りゅうつうおもるものとなりました。

最高裁さいこうさいは、今回こんかい決定けっていで、情報じょうほう社会しゃかい提供ていきょうする事業じぎょうしゃ表現ひょうげん自由じゆうより、プライバシーの保護ほご優先ゆうせんされることがあきらかな場合ばあい削除さくじょできるという基準きじゅんしめしました。

その判断はんだんにあたっては、社会しゃかいてき関心かんしんたかさなど事案じあん性質せいしつ内容ないよう本人ほんにんける損害そんがい程度ていど本人ほんにん社会しゃかいてき地位ちい影響えいきょうりょく記事きじ目的もくてき意義いぎ当時とうじ社会しゃかいてき状況じょうきょうや、その後そのご変化へんかといった事情じじょう考慮こうりょすべきだとしています。

これによって、社会しゃかい関心かんしんたか事件じけんや、社会しゃかいてき地位ちいのある人物じんぶつ不祥事ふしょうじや、処分しょぶんなどの情報じょうほう削除さくじょみとめられにくくなるものとられます。

一方いっぽうで、注目ちゅうもくされなかった事件じけんなどの場合ばあいは、記事きじ掲載けいさいから一定いってい時間じかんがたてば、削除さくじょみとめられる可能かのうせいしめされました。

さらに、検索けんさく結果けっか削除さくじょはプライバシーの権利けんり侵害しんがい根拠こんきょとするという判断はんだんしめされ、今後こんごわすれられる権利けんりは、判断はんだんのよりどころにならない見通みとおしとなりました。

グーグルとヤフー対応たいおう

インターネットの検索けんさく結果けっか表示ひょうじされないようにする削除さくじょ要請ようせいについて、日本にっぽん検索けんさくサービスの市場しじょうふんするグーグルと、ヤフーは、それぞれ会社かいしゃ基準きじゅんもとづいて個別こべつ要請ようせい受け付うけつけています。

グーグルは「世界中せかいじゅう情報じょうほう整理せいりし、世界中せかいじゅう人々ひとびとがアクセスできるようにすること」を会社かいしゃ使命しめいとしてかかげています。検索けんさく結果けっかから情報じょうほう削除さくじょする要請ようせい個別こべつ受け付うけつけていて、判断はんだんもととなる基準きじゅん公開こうかいしています。

それによりますと、削除さくじょ対象たいしょうとしているのは、児童じどう性的せいてき虐待ぎゃくたい画像がぞうなど法律ほうりつ違反いはんしているとみとめられるもの、それに個人こじん銀行ぎんこう口座こうざ番号ばんごう署名しょめい画像がぞうなどの機密きみつせいたか個人こじん情報じょうほうです。

一方いっぽうで、今回こんかい裁判さいばんあらそわれたような過去かこかかわった犯罪はんざい事実じじつのような内容ないよう削除さくじょ対象たいしょうになっていません。

検索けんさく結果けっかからの削除さくじょをめぐっては、EUい-ゆ-=ヨーロッパ連合れんごう最高さいこう裁判所さいばんしょに当にあたるヨーロッパ司法しほう裁判所さいばんしょさんねんまえわすれられる権利けんりみとめたことをけて、グーグルはEUい-ゆ-域内いきないでは、これまでの基準きじゅんもとづく対象たいしょうくわえて、過去かこ犯罪はんざいれきや、名誉めいよ毀損きそんたる情報じょうほう削除さくじょ要請ようせい受け付うけつける対応たいおうっています。

グーグルによりますと、EUい-ゆ-ではわすれられる権利けんりみとめられた直後ちょくごぜろいちよんねん5月ごがつから先月せんげつまつまでにわせてろくはちまんいちきゅうろくきゅうけん削除さくじょ要請ようせいけ、このうちのよんさんさん%を削除さくじょしたとしています。

一方いっぽう、ヤフーはわすれられる権利けんり議論ぎろん欧米おうべい活発かっぱつになるなか外部がいぶ有識者ゆうしきしゃ会議かいぎもうけて、おととし3月さんがつ削除さくじょおうじるあらたな基準きじゅんつくりました。

この基準きじゅんでは、削除さくじょもとめているひと公的こうてき立場たちばひと成年せいねんしゃかなど、それに性的せいてき画像がぞうなどプライバシー保護ほご必要ひつようせいたかいかについて、個別こべつ検討けんとうするとしています。

ヤフーによりますと、去年きょねん4月しがつから8月はちがつまでに削除さくじょ申請しんせいはちいちけんあり、このうちよんよんに当にあたるいちぜろきゅうろくけん削除さくじょおうじたということです。

わすれられる権利けんりめぐる議論ぎろん

わすれられる権利けんりは、インターネットの普及ふきゅうともなって提唱ていしょうされたあたらしい考え方かんがえかたで、あたらしい権利けんりとしてみとめられるかどうか議論ぎろんんでいました。

インターネットじょうにはろくぜろちょうえるサイトがあるとわれ、さまざまな情報じょうほうながれていて、検索けんさくサイトでひと名前なまえなどを入力にゅうりょくすると、その人物じんぶつかかわった過去かこ事件じけんに関にかんする記事きじ表示ひょうじされることがあります。

こうした状況じょうきょうに対にたいして、みずからの個人こじんデータの保護ほごもとめる権利けんりとして、わすれられる権利けんりEUい-ゆ-=ヨーロッパ連合れんごう中心ちゅうしん議論ぎろんされるようになりました。EUい-ゆ-最高さいこう裁判所さいばんしょに当にあたるヨーロッパ司法しほう裁判所さいばんしょさんねんまえ、グーグルに過去かこ記事きじ削除さくじょもとめたスペインじん男性だんせいうったえをけて、わすれられる権利けんりみとめ、注目ちゅうもくあつめました。

日本にっぽんでも過去かこ逮捕たいほされたことのあるひとなどが、平穏へいおん生活せいかつおびやかされるとして、検索けんさくサービスの事業じぎょうしゃ削除さくじょもとめるうったえが相次あいつぐようになりました。

最高さいこう裁判所さいばんしょのまとめによりますと、去年きょねん9月くがつまつまでのいち年間ねんかん全国ぜんこく地方ちほう裁判所さいばんしょ申し立もうしたてられた検索けんさく結果けっかをめぐる仮処分かりしょぶんなどの件数けんすうけんのぼっています。

こうしたなか、おととし、さいたま地方ちほう裁判所さいばんしょ日本にっぽんはじめて、わすれられる権利けんりみとめる判断はんだんしめし、注目ちゅうもくあつめました。

一方いっぽうで、わすれられる権利けんり権利けんりとしてみとめられると、当事者とうじしゃうったえだけで情報じょうほう削除さくじょされ、事実じじつじょう検閲けんえつになるとして、表現ひょうげん自由じゆう権利けんり重視じゅうしする立場たちばから反対はんたいこえがっていました。

検索けんさく結果けっか削除さくじょもとめる背景はいけい

検索けんさく結果けっか削除さくじょもとめるひとたちは、インターネットじょうながれた前科ぜんかなどの情報じょうほうが、いつまでものこつづける現状げんじょう不安ふあんかんじています。

削除さくじょもとめるがわ代理人だいりにんとして、おおくのかり処分しょぶんなどをあつかってきた神田かんだ知宏ともひろ弁護士べんごしによりますと、さんねんまえEUい-ゆ-=ヨーロッパ連合れんごうで、わすれられる権利けんりみとめる司法しほう判断はんだんしめされてから、検索けんさく結果けっか削除さくじょもとめる相談そうだん急激きゅうげきえたということです。

これまでに検索けんさくサービスの事業じぎょうしゃ相手あいてに、すうじゅうけんかり処分しょぶんや、裁判さいばんこしましたが、過去かこ犯罪はんざいれき表示ひょうじされる検索けんさく結果けっか削除さくじょもとめるうったえがおおいということです。

神田かんだ弁護士べんごし執行しっこう猶予ゆうよ期間きかんわったり、刑期けいきえたりしたあとでも、名前なまえ検索けんさく過去かこ犯罪はんざいれきなどが表示ひょうじされると、就職しゅうしょくさまたげになったり、どもがいじめにあったりするといった問題もんだいしょうじると指摘してきしています。

とくに、記事きじ報道ほうどう機関きかんのサイトから削除さくじょされたあとも、個人こじんのブログや掲示板けいじばんにコピーされるなど、拡散かくさんした場合ばあいは、すべてを削除さくじょさせるのはむずかしく、検索けんさく表示ひょうじできないようにする必要ひつようがあると主張しゅちょうしています。

神田かんだ弁護士べんごしは「以前いぜん新聞しんぶんなどで犯罪はんざい報道ほうどうされても、いちぜろねんもたてば、うわさされることはなくなったが、インターネットの普及ふきゅうぜろねんたっても犯罪はんざいれきあかるみに状況じょうきょうになり、本人ほんにん更生こうせいするうえで支障ししょうになっている」とはなしています。

検索けんさく結果けっか 犯罪はんざい被害ひがい拡大かくだいふせいだケースも

表現ひょうげん自由じゆう権利けんりまもるために、検索けんさく結果けっか削除さくじょ安易あんいみとめるべきではないという指摘してきもあります。

犯罪はんざい被害ひがいしゃなどからの相談そうだんけている川本かわもと瑞紀みずき弁護士べんごしは、情報じょうほう収集しゅうしゅうのためにインターネットの検索けんさくサービスを活用かつようしています。

去年きょねん12月じゅうにがつせられた相談そうだんでは、依頼いらいしゃからいた人物じんぶつ名前なまえなどを入力にゅうりょくして検索けんさくした結果けっか過去かこおな手口てぐちで、きんだまし取だましとられた被害ひがいしゃこした裁判さいばん賠償ばいしょうめいじられたという書き込かきこみがつかり、追加ついか投資とうしをしないよう助言じょげんしたということです。

このように、投資とうしばなしちかけた人物じんぶつ名前なまえなどを検索けんさくすると、過去かこ逮捕たいほれきや、刑事けいじ告訴こくそされたという情報じょうほうつかることはすくなくなく、被害ひがい拡大かくだいふせぐのに役立やくだっているといいます。

川本かわもと弁護士べんごしは「情報じょうほうのこっているかどうかで、被害ひがい未然みぜんふせげるかどうかがまる。国民こくみん権利けんりまもるために、情報じょうほう早期そうき削除さくじょせずにつづけてほしい」とはなしています。

また、グーグルは、「インターネットじょうでアクセスできる情報じょうほう操作そうさすることは検閲けんえつ該当がいとうしうるもので、表現ひょうげん自由じゆう権利けんり制限せいげんする」と主張しゅちょうしています。
ソース:NHK ニュース