海外かいがいで初はつ 自衛隊じえいたいが「日本人にっぽんじん保護ほご」訓練くんれん

海外かいがいの治安ちあんが悪化あっかした地域ちいきで自衛隊じえいたいが日本人にっぽんじんを助け出たすけだすことを想定そうていした訓練くんれんが１いち９きゅう日にち、タイで行おこなわれました。これは安全あんぜん保障ほしょう関連かんれん法ほうで可能かのうとなった任務にんむで、海外かいがいで行おこなわれるのは初はじめてです。

訓練くんれんは、アジア最大さいだい規模きぼの多国たこく間かん共同きょうどう演習えんしゅう「コブラ・ゴールド」の一環いっかんとしてタイ東部とうぶで行おこなわれ、陸上りくじょう自衛隊じえいたいの隊員たいいんなどおよそ１いち０ぜろ０ぜろ人にんが参加さんかしました。

海外かいがいで災害さいがいが起おきたあと治安ちあんが悪化あっかしたため、現地げんちの日本人にっぽんじんを国外こくがいに退避たいひさせるという想定そうていで行おこなわれ、日本人にっぽんじんが集あつまる場所ばしょに小銃しょうじゅうを持もった自衛隊じえいたい員いんが装甲車そうこうしゃなどで駆かけつけました。

そして、一緒いっしょにいたアメリカ人じんを含ふくめ輸送ゆそうを開始かいししましたが、小銃しょうじゅうなどを持もった集団しゅうだんが道路どうろを封鎖ふうさして通行つうこう料りょうを求もとめてきたため、隊員たいいんたちは小銃しょうじゅうを上空じょうくうに向むけた状態じょうたいで、「道路どうろ封鎖ふうさは違法いほう行為こういだ。従したがわない場合ばあい、実力じつりょくを行使こうしする」とタイ語ごを交まじえて警告けいこくし、移動いどうさせていました。

自衛隊じえいたいによる海外かいがいでの「日本人にっぽんじん保護ほご」の任務にんむは去年きょねん３月さんがつに施行しこうされた安全あんぜん保障ほしょう関連かんれん法ほうで可能かのうとなり、従来じゅうらいから対応たいおうできた「輸送ゆそう」のほかに、「救出きゅうしゅつ」や「警護けいご」の任務にんむが加くわわりました。

この訓練くんれんが海外かいがいで行おこなわれるのは初はじめてですが、自衛隊じえいたいが武器ぶきを使つかう場面ばめんは公開こうかいされませんでした。
訓練くんれんを統括とうかつする統合とうごう幕僚監部ばくりょうかんぶの河口かわぐち弘幸ひろゆき１いち等とう陸りく佐たすくは「各国かっこくとの調整ちょうせいが確認かくにんできて有意義ゆういぎだった。状況じょうきょうに応おうじて対応たいおうできるよう、今後こんごも必要ひつような訓練くんれんを行おこなっていきたい」と話はなしていました。

海外かいがいでの日本人にっぽんじん保護ほご 法ほう整備せいびの背景はいけい

治安ちあんが悪化あっかした海外かいがいでの「日本人にっぽんじん保護ほご」の任務にんむは、４よん年ねん前まえ、アルジェリアで起おきた日本人にっぽんじんの人質ひとじち事件じけんをきっかけに議論ぎろんが活発かっぱつになりました。その結果けっか、外国がいこくの空港くうこうや港みなとに航空こうくう機きや艦艇かんていを派遣はけんして輸送ゆそうする従来じゅうらいの任務にんむに加くわえて、新あらたに、現地げんちで車両しゃりょうを走はしらせて陸上りくじょう輸送ゆそうする任務にんむができるようになりました。

さらに、去年きょねん３月さんがつの安全あんぜん保障ほしょう関連かんれん法ほうの施行しこうによって、「救出きゅうしゅつ」や「警護けいご」の任務にんむもできるようになり、これに伴ともなって自衛隊じえいたいの武器ぶき使用しようが認みとめられる範囲はんいが拡大かくだいされました。武器ぶきの使用しようは、自分じぶんを守まもる場合ばあいや、救出きゅうしゅつする日本人にっぽんじんや一緒いっしょにいる外国がいこく人じんを守まもる場合ばあい、それに妨害ぼうがいしてきた相手あいてを排除はいじょする場合ばあいに認みとめられるとされています。

一方いっぽう、憲法けんぽうで禁きんじられている「武力ぶりょくの行使こうし」にならないよう、自衛隊じえいたいが任務にんむを実施じっしする条件じょうけんとして、受け入うけいれ国こくが任務にんむに同意どういしていることや、現地げんち政府せいふが治安ちあん維持いじに当あたり、戦闘せんとう行為こういが行おこなわれることがないと認みとめられることなどが挙あげられています。

より厳きびしい場面ばめんも想定そうてい

今回こんかいの訓練くんれんには盛り込もりこまれませんでしたが、自衛隊じえいたいは日本人にっぽんじんを救出きゅうしゅつする任務にんむでより厳きびしい場面ばめんも想定そうていしています。

具体ぐたい的てきには、暴徒ぼうと化かしたグループに日本人にっぽんじんが誘拐ゆうかいされた場合ばあいのほか、より厳きびしいケースとして、日本にっぽんの大使館たいしかんが占拠せんきょされた場合ばあいや日本にっぽんの航空こうくう機きがハイジャックされ海外かいがいの空港くうこうに着陸ちゃくりくした場合ばあいなどが想定そうていされています。

こうした任務にんむは危険きけん性せいが高たかいうえに、武器ぶきを使用しようする際さいは瞬時しゅんじの判断はんだんを求もとめられることから、自衛隊じえいたいは安全あんぜん確保かくほの徹底てっていと法律ほうりつの範囲はんい内ないでの武器ぶき使用しようを両立りょうりつできるよう、訓練くんれんの積み重つみかさねが必要ひつようだとしています。

また、大使館たいしかんの占拠せんきょやハイジャックへの対応たいおうは、日本にっぽん側がわのほうが能力のうりょくが高たかいなどの理由りゆうで、現地げんち政府せいふから要請ようせいや同意どういがある場合ばあいとされていますが、自衛隊じえいたいが実際じっさいに任務にんむを実施じっしするには、情報じょうほう収集しゅうしゅうを含ふくめてさまざまな調整ちょうせいが必要ひつようで、国くにレベルでの難むずかしい判断はんだんを求もとめられることが予想よそうされます。

ソース：NHK ニュース