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温泉の硫化水素事故防止へ 安全対策を強化
2017-02-26 10:03:34

温泉施設での硫化水素による事故を防ぐため、環境省の検討会は27日、施設の設備や構造などに関する基準の改正案をまとめることになりました。浴室内の換気を24時間行うなど施設や自治体に対し、安全対策の強化を求める内容が盛り込まれる予定です。
3年前、北海道足寄町の温泉施設で入浴中の男性が倒れて意識不明の重体となる事故があり、その後、浴室から国の基準を大幅に上回る高い濃度の硫化水素が検出されたことを受けて、環境省は去年、有識者などによる検討会を立ち上げ、硫化水素が発生する可能性がある「硫黄泉」を利用している温泉施設の安全対策について議論してきました。
その結果、27日開かれる会合で、施設の設備や構造などに関する基準の改正案をまとめることになりました。
改正案には施設に対し、浴室内に24時間連続で換気できる設備を設置することや、硫化水素の濃度を測定する際には、浴槽に温泉が注ぎ込み、特に濃度が高くなる注入口の付近で測ることなど、安全対策の強化を求める内容が盛り込まれる見込みです。
さらに自治体に対し、施設側から硫化水素の測定結果について、定期的に報告を受けたり、必要に応じて立ち入り調査を行ったりするなど安全を確保するための措置を適切に取るよう求める内容も盛り込まれる予定です。
その結果、27日開かれる会合で、施設の設備や構造などに関する基準の改正案をまとめることになりました。
改正案には施設に対し、浴室内に24時間連続で換気できる設備を設置することや、硫化水素の濃度を測定する際には、浴槽に温泉が注ぎ込み、特に濃度が高くなる注入口の付近で測ることなど、安全対策の強化を求める内容が盛り込まれる見込みです。
さらに自治体に対し、施設側から硫化水素の測定結果について、定期的に報告を受けたり、必要に応じて立ち入り調査を行ったりするなど安全を確保するための措置を適切に取るよう求める内容も盛り込まれる予定です。
濃度の定期的測定が不可欠
硫化水素が発生する可能性のある硫黄泉の源泉は全国に1204か所あり、このお湯を使っている温泉施設の浴槽は、合わせて6434に上ります。
このうち、環境省が去年10月、全国の自治体を通じて行った調査で、浴室内で硫化水素の濃度が国の基準を超えた温泉施設の浴槽は、合わせて33ありました。
具体的には青森県が16と最も多く、次いで北海道が7、山形県が6、宮城県が4となっています。また、浴室内の硫化水素の濃度を定期的に測定していなかった浴槽は、5503と、全体の85%に上りました。
このため、今回の基準の改正案では自治体に対し、施設側から硫化水素の測定結果について定期的に報告を受けるなど、安全確保のための適切な措置を行うことを求める内容が盛り込まれる予定です。
硫化水素の中毒に詳しい医師によりますと、硫化水素は微量であれば、人体に影響はないということですが、国の基準を超えるような高い濃度になると、意識を失うなどの事故につながる可能性があり、安全管理には濃度の定期的な測定が欠かせないということです。
また、硫化水素は空気より重く低いところにたまりやすい性質があるため、特に背の低い子どもなどは、十分な注意が必要だとしています。
このうち、環境省が去年10月、全国の自治体を通じて行った調査で、浴室内で硫化水素の濃度が国の基準を超えた温泉施設の浴槽は、合わせて33ありました。
具体的には青森県が16と最も多く、次いで北海道が7、山形県が6、宮城県が4となっています。また、浴室内の硫化水素の濃度を定期的に測定していなかった浴槽は、5503と、全体の85%に上りました。
このため、今回の基準の改正案では自治体に対し、施設側から硫化水素の測定結果について定期的に報告を受けるなど、安全確保のための適切な措置を行うことを求める内容が盛り込まれる予定です。
硫化水素の中毒に詳しい医師によりますと、硫化水素は微量であれば、人体に影響はないということですが、国の基準を超えるような高い濃度になると、意識を失うなどの事故につながる可能性があり、安全管理には濃度の定期的な測定が欠かせないということです。
また、硫化水素は空気より重く低いところにたまりやすい性質があるため、特に背の低い子どもなどは、十分な注意が必要だとしています。
環境省が参考にした施設は
過去の事故を教訓に独自に安全対策を進め、今回、環境省の検討会が基準の改正案をまとめるにあたって、取り組みが参考にされた施設があります。
福島市にある高湯温泉です。白く濁ったお湯が関節の痛みなどに効くと評判で、年間およそ17万人が訪れます。この温泉の源泉は高い濃度の硫化水素を含んでいます。過去には硫化水素が原因と見られる事故も起きていて、41年前には入浴中の男性客が死亡しました。
これを教訓に、各温泉施設は独自に安全対策を進めてきました。高湯温泉で温泉宿を経営する遠藤淳一さん(61)は環境省の検討会の委員も務めていて、今回の基準の改正案をまとめるにあたって、これまでに行ってきた取り組みが参考にされました。
対策の1つ目が源泉からお湯を施設の浴槽まで運ぶ水路の構造です。中に木の板を何枚も入れて階段状にしています。お湯が板を乗り越えて落ちる際に空気に触れるため、硫化水素の濃度を下げることができるということです。
入浴客が利用する浴室には、さらに多くの対策を施しています。源泉からのお湯が浴槽に注ぎ込む注入口は、浴室内でも最も硫化水素の濃度が高くなりやすいため、すぐそばの壁に換気孔を設けています。
さらに、その真上には24時間動く換気扇を設置し、万が一、故障して止まることがないよう点検も欠かしません。浴室内の硫化水素の濃度も毎日2回以上、測定しています。この際もやはり、最も濃度が高くなりやすい注入口の付近を中心に測定します。
こうした取り組みは、入浴客の安全を守る上で効果的だとして、基準の改正案や、基準に基づいて施設や自治体向けに作られるガイドラインに盛り込まれる見通しです。
遠藤さんは「昭和40年代に硫化水素が原因と見られる、本当に残念な事故があったので、それをきっかけに高湯温泉全体で取り組もうと始めた。安全対策を徹底し、お客さんに安心して入浴していただくことが、いちばんのサービスだと考えています」と話していました。
福島市にある高湯温泉です。白く濁ったお湯が関節の痛みなどに効くと評判で、年間およそ17万人が訪れます。この温泉の源泉は高い濃度の硫化水素を含んでいます。過去には硫化水素が原因と見られる事故も起きていて、41年前には入浴中の男性客が死亡しました。
これを教訓に、各温泉施設は独自に安全対策を進めてきました。高湯温泉で温泉宿を経営する遠藤淳一さん(61)は環境省の検討会の委員も務めていて、今回の基準の改正案をまとめるにあたって、これまでに行ってきた取り組みが参考にされました。
対策の1つ目が源泉からお湯を施設の浴槽まで運ぶ水路の構造です。中に木の板を何枚も入れて階段状にしています。お湯が板を乗り越えて落ちる際に空気に触れるため、硫化水素の濃度を下げることができるということです。
入浴客が利用する浴室には、さらに多くの対策を施しています。源泉からのお湯が浴槽に注ぎ込む注入口は、浴室内でも最も硫化水素の濃度が高くなりやすいため、すぐそばの壁に換気孔を設けています。
さらに、その真上には24時間動く換気扇を設置し、万が一、故障して止まることがないよう点検も欠かしません。浴室内の硫化水素の濃度も毎日2回以上、測定しています。この際もやはり、最も濃度が高くなりやすい注入口の付近を中心に測定します。
こうした取り組みは、入浴客の安全を守る上で効果的だとして、基準の改正案や、基準に基づいて施設や自治体向けに作られるガイドラインに盛り込まれる見通しです。
遠藤さんは「昭和40年代に硫化水素が原因と見られる、本当に残念な事故があったので、それをきっかけに高湯温泉全体で取り組もうと始めた。安全対策を徹底し、お客さんに安心して入浴していただくことが、いちばんのサービスだと考えています」と話していました。
自治体は継続的なチェック態勢を
硫黄泉の安全対策に詳しい専門家は基準の改正案がまとまることを受けて、今後は温泉施設による対策だけでなく、自治体にも継続的なチェック態勢の構築が求められると指摘しています。
神奈川県温泉地学研究所の元研究員で、日本温泉協会の大山正雄会長は「自治体が温泉施設をきちんと調査しなかったり、施設側から報告を求めなかったりすると、基準が変わった当初は温泉施設が注意していても、その後、施設の担当者が変わって安全対策がうまく引き継がれなかったりして、事故が起きるおそれがある。行政も1年に1回とか現場を調べることが基準の徹底につながる」と述べ、安全対策を施設任せにするのではなく、自治体にも継続的なチェック態勢の構築が求められると指摘しています。
そのうえで、「今後、温泉を訪れる高齢者や外国人観光客が増加すると予想される中、ただ単にたくさんの人に来てくださいと言うだけではなく、安全対策をきちんと整備することが必要だ」と話しています。
神奈川県温泉地学研究所の元研究員で、日本温泉協会の大山正雄会長は「自治体が温泉施設をきちんと調査しなかったり、施設側から報告を求めなかったりすると、基準が変わった当初は温泉施設が注意していても、その後、施設の担当者が変わって安全対策がうまく引き継がれなかったりして、事故が起きるおそれがある。行政も1年に1回とか現場を調べることが基準の徹底につながる」と述べ、安全対策を施設任せにするのではなく、自治体にも継続的なチェック態勢の構築が求められると指摘しています。
そのうえで、「今後、温泉を訪れる高齢者や外国人観光客が増加すると予想される中、ただ単にたくさんの人に来てくださいと言うだけではなく、安全対策をきちんと整備することが必要だ」と話しています。
ソース:NHK ニュース