池田いけだ小しょう事件じけんから8日にちで20年ねん 被害ひがい児童じどうの同級生どうきゅうせいは今いま

大阪おおさか・池田いけだ市しの大阪おおさか教育きょういく大学だいがく附属ふぞく池田いけだ小学校しょうがっこうで、8人にんの児童じどうが殺害さつがいされた事件じけんから8日にちで20年ねんになります。学校がっこうでは追悼ついとうの集つどいが開ひらかれ、遺族いぞくらが出席しゅっせきする予定よていです。

大阪おおさか教育きょういく大学だいがく附属ふぞく池田いけだ小学校しょうがっこうでは、20年ねん前まえの平成へいせい13年ねん6月つき8日にち、刃物はものを持もった男おとこが侵入しんにゅうして1年生ねんせいと2年生ねんせいの児童じどう8人にんが殺害さつがいされ、児童じどう13人にんと教員きょういん2人にんがけがをしました。

事件じけんから20年ねんとなる8日にち、学校がっこうでは追悼ついとうの集つどいが開ひらかれ、遺族いぞくらが出席しゅっせきする予定よていです。

新型しんがたコロナの影響えいきょうで例年れいねんよりも規模きぼは縮小しゅくしょうするということです。

附属ふぞく池田いけだ小学校しょうがっこうでは事件じけんを教訓きょうくんに防犯ぼうはんや防災ぼうさいについて学まなぶ「安全あんぜん科か」という授業じゅぎょうを設もうけ、子こどもの命いのちを守まもる教育きょういくに力ちからを入いれてきました。

また、教職きょうしょく員いんが不審ふしん者しゃへの対応たいおう訓練くんれんを定期ていき的てきに行いっているほか、緊急きんきゅう時じ用ようの対応たいおうマニュアルをホームページで公開こうかいしています。

20年ねんがたち、事件じけんを経験けいけんした教員きょういんは校長こうちょうだけになったということです。

学校がっこうでは教訓きょうくんを広ひろく共有きょうゆうし、子こどもが巻き込まきこまれる事件じけんが繰り返くりかえされることのないようにしたいとしています。

同級生どうきゅうせい亡なくした ガンバ大阪がんばおおさか職員しょくいん 渡邉わたなべさん

当時とうじ2年生ねんせいで幼おさななじみの同級生どうきゅうせいを亡なくした渡邉わたなべ怜奈れいなさん（27）は今いま、サッカーJ1、ガンバ大阪がんばおおさかの運営うんえい会社かいしゃで働はたらいています。

渡邉わたなべさんの教室きょうしつに刃物はものを持もった男おとこが入はいってきたのは2時間じかん目めの授業じゅぎょうが終おわったあとでした。

渡邉わたなべさんは男おとこにぶつかりながら必死ひっしに廊下ろうかに逃にげました。

当時とうじは何なにが起おきたのか理解りかいできませんでしたが、担任たんにんの教員きょういんが男おとこにいすを投なげつけていたことや、けがをした子こどもを抱かかえた教員きょういんのスーツに血ちが付ついていたことなどを今いまでもはっきりと覚おぼえているといいます。

事件じけんからしばらくたって、新聞しんぶんやテレビに同級生どうきゅうせいたちの写真しゃしんが映うつっているのを見みて母親ははおやに理由りゆうを尋たずね、幼おさななじみの森脇もりわき綾乃あやのちゃん（当時とうじ7）を含ふくむ8人にんが亡なくなっていたのを知しりました。

明あかるく、活発かっぱつだった綾乃あやのちゃんは、泣き虫なきむしだった渡邉わたなべさんをよく励はげましてくれました。

幼稚園ようちえんも同おなじで、小学校しょうがっこうでも通学つうがくや休やすみ時間じかんに一緒いっしょに過すごしていた幼おさななじみの死しに、ふさぎ込ふさぎこんでいた渡邉わたなべさんを励はげましてくれたのがサッカーとの関かかわりでした。

学校がっこうを慰問いもんに訪おとずれた選手せんしゅと交流こうりゅうしたり、試合しあいで花束はなたばを渡わたしたりして、徐々じょじょに元気げんきを取り戻とりもどした渡邉わたなべさんは、いつか自分じぶんでも周まわりを元気げんきづけるようになりたいと考かんがえるようになったといいます。

いまはガンバ大阪がんばおおさかの運営うんえい会社かいしゃで選手せんしゅとサポーターの交流こうりゅうイベントなどを企画きかくしている渡邉わたなべさん。

事件じけんを決けっして忘わすれずに、亡なくなった幼おさななじみや同級生どうきゅうせいたちの分ぶんまで強つよく生いきたいと考かんがえています。

渡邉わたなべさんは「綾乃あやのちゃんには『今いまは泣ないていないよ。強つよくなったよ』と伝つたえたい。一緒いっしょに遊あそんでいた綾乃あやのちゃんや同級生どうきゅうせいたちに恥はじないないよう、同級生どうきゅうせいたちの分ぶんまでちゃんと生いきていきたい。私わたしの経験けいけんを生いかして、同おなじような思おもいをしている人ひとや悲かなしい思おもいをしている人ひとを元気げんきづけたい」と話はなしていました。

当時とうじ1年生ねんせい 子こども食堂しょくどうの運営うんえい 伊藤いとうさん

附属ふぞく池田いけだ小学校しょうがっこうの1年生ねんせいだった伊藤いとう政まさし貴たかさん（27）は現在げんざい、地元じもとで子こども食堂しょくどうの運営うんえいに携たずさわっています。

事件じけん当時とうじ、体育たいいくの授業じゅぎょうで体育館たいいくかんにいたところ、教員きょういんからすぐに逃にげるよう指示しじをされ、クラスメートとともに、一斉いっせいに運動うんどう場じょうまで走はしりました。

逃にげる途中とちゅう、倒たおれている児童じどうと、シャツが赤あかく染そまった教員きょういんの姿すがたも目めに入はいったといいます。

事件じけん後ごは不安ふあん感かんが続つづき、救急きゅうきゅう車しゃのサイレンやヘリコプターの音おとに強つよく反応はんのうすることもありました。

さらに、誰だれかが入はいってこないか恐怖きょうふ心しんを感かんじるため、ドアの鍵かぎが施錠せじょうされているか何なん度ども確認かくにんしてしまうなど日常にちじょうを取り戻とりもどすのに時間じかんがかかりました。

大学生だいがくせいになった頃ころ、自分じぶんを支ささえてくれたのは両親りょうしんや学校がっこうを訪問ほうもんしてくれたスポーツ選手せんしゅなど周囲しゅういの大人おとなの存在そんざいだったと気付きづいたということで、「当時とうじのことをふと振り返ふりかえることがあり、大人おとなたちが自分じぶんを元気げんきづけ、応援おうえんしてくれていたのかなと年としをとるごとに身みにしみて分わかってきました」と話はなしていました。

このため、大学生だいがくせいになったとき、今度こんどは自分じぶんが子こどもたちを支ささえたいと母親ははおやの睦美むつみさんとともに地元じもとで子こども食堂しょくどうを始はじめました。

現在げんざいは会社かいしゃ員いんとして働はたらきながら関かかわっていて、家庭かていや学校がっこうでつらい思おもいをしている子こどものよりどころになるため、食堂しょくどうでは決けっして怒おこらず、「お兄にいちゃん」として優やさしく接せっすることにしています。

この1年ねん半はんほどは新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうで食堂しょくどうでみんなで食事しょくじをすることが難むずかしく、月つきに2回かいほど、睦美むつみさんが弁当べんとうを作つくり食事しょくじを提供ていきょうしています。

事件じけんから20年ねんがたち、伊藤いとうさんは「大変たいへんなこともあるが、子こどもたちの笑顔えがおや成長せいちょうを見みていると始はじめてよかったなと感かんじます。事件じけんが無なければ亡なくなった同級生どうきゅうせいたちも自分じぶんと同おなじようにいろんな経験けいけんができていたはずなので、彼かれらの思おもいも背負せおってこれからの人生じんせいを歩あゆんでいかなければと思おもいます」と話はなしていました。

クラスメートの女児じょじが被害ひがい 研修けんしゅう医い 中原なかはらさん

事件じけん当時とうじ、附属ふぞく池田いけだ小学校しょうがっこうの2年生ねんせいだった中原なかはら康輔やすすけさん（28）は、現在げんざい、大阪おおさか市立しりつ大学だいがく医学部いがくぶ附属ふぞく病院びょういんで研修けんしゅう医いとして勤務きんむしています。

事件じけんが起おきたのは国語こくごの授業じゅぎょうが終おわったあとすぐで、チャイムが鳴なる直前ちょくぜんでした。

教室きょうしつの前側まえがわのドアが開ひらき、刃物はものを持もった男おとこの姿すがたが見みえた瞬間しゅんかん、クラスメートの女子じょし児童じどうが刺さされていたといいます。

教員きょういんに促うながされて運動うんどう場じょうに避難ひなんしましたが、クラスメートを心配しんぱいして教室きょうしつに戻もどったということで、「教室きょうしつに戻もどると先生せんせいが介抱かいほうしていました。心配しんぱいになって近ちかづきましたが先生せんせいに『逃にげてなさい』って言いわれて運動うんどう場じょうに逃にげました。自分じぶんはそのとき、何なにもできませんでした」と話はなし今いまでも当時とうじの光景こうけいが忘わすれられず、心こころに残のこっているといいます。

そのときの経験けいけんもあり、高校こうこう2年生ねんせいで医師いしになることを決意けついしたということで、「医者いしゃになる理由りゆう、なりたい理由りゆうについて自分じぶんのなかにあったのはあの事件じけんのときのあの女の子おんなのこのような子こが目めの前まえに現あらわれたら自分じぶんが助たすけたい、助たすけられるようになりたいという思おもいでした」と医師いしを志こころざした経緯けいいを話はなしていました。

去年きょねんからは小児しょうに科か医いを目指めざして研修けんしゅう医いとして大学だいがく病院びょういんで勤つとめていて、ことし3月つきには救急きゅうきゅう病棟びょうとうで新型しんがたコロナウイルスの重症じゅうしょう患者かんじゃの治療ちりょうにあたりました。

比較的ひかくてき若わかい人ひとたちが必死ひっしの治療ちりょうにもかかわらず相次あいついで亡なくなる現状げんじょうを前まえに大おおきなショックを受うけ、改あらためて命いのちについて考かんがえさせられたといいます。

事件じけんから20年ねんになるいま、中原なかはらさんは「当時とうじ、席せきが違ちがえば、自分じぶんが亡なくなっていてもおかしくなく、事件じけんを思い出おもいだすたびに命いのちの大切たいせつさというのは何なにかなと考かんがえてしまいます。自分じぶんの命いのちを助たすかった命いのち、助たすけられた命いのちとして、次つぎの命いのちに役立やくだてていく、誰だれかを助たすけるためにいかしていきたいです」と将来しょうらいへの決意けついを語かたりました。

ソース：NHK ニュース