インドネシア津波つなみ 原因げんいんは地滑じすべり ５ご分ふんで沿岸えんがんに到達とうたつか

先月せんげつ、インドネシア・スラウェシ島とうの地震じしんで被害ひがいをもたらした津波つなみは、湾わんの沿岸えんがんの少すくなくとも６ろくか所かしょで発生はっせいした地滑じすべりによって引き起ひきおこされ、場所ばしょによっては、地震じしん発生はっせいから５ご分ふん足たらずで沿岸えんがんに押し寄おしよせていたとみられることが専門せんもん家かの解析かいせきでわかりました。

インドネシアのスラウェシ島とうの地震じしんで発生はっせいした津波つなみについて、東北とうほく大学だいがくの今村いまむら文彦ふみひこ教授きょうじゅらの研究けんきゅうグループは、現地げんちで津波つなみや地滑じすべりの痕跡こんせきを調査ちょうさしました。

その結果けっか、湾わんの東側ひがしがわの沿岸えんがんでは、高たかさ７ななメートルを超こえる場所ばしょに津波つなみの痕跡こんせきがあり、大おおきく地滑じすべりが発生はっせいした痕跡こんせきも湾わんの西部せいぶを中心ちゅうしんに少すくなくとも６ろくか所かしょで見みつかったということです。

今村いまむら教授きょうじゅらが調査ちょうさ結果けっかを基もとにシミュレーションを行おこなって解析かいせきしたところ、地震じしんの揺ゆれで発生はっせいした地滑じすべりが海底かいていにも達たっしたことで、同時どうじ多発たはつ的てきに津波つなみが起おきていたとみられることがわかりました。

地震じしんの発生はっせいから沿岸えんがんに津波つなみが到達とうたつするまでの時間じかんは、短みじかいところで５ご分ふん足たらずしかなかったということです。

被害ひがいの大おおきかった湾わんの沿岸えんがんは、震源しんげんから50キロ以上いじょう離はなれていたにもかかわらず、揺ゆれを感かんじてからわずかな時間じかんで津波つなみに襲おそわれたという証言しょうげんがあり、今回こんかいの解析かいせき結果けっかはそれを裏付うらづけるものとなっています。

今村いまむら教授きょうじゅは、「地震じしんが発生はっせいしてから津波つなみが来くるまでわずかな時間じかんしかなく、沿岸えんがん部ぶの人ひとが避難ひなんするのは難むずかしい状況じょうきょうだったと考かんがえられる」と指摘してきしています。

現地げんち調査ちょうさや海底かいてい地形ちけい図ずなどで解析かいせき

スラウェシ島とうで発生はっせいした津波つなみの状況じょうきょうを解析かいせきするため研究けんきゅうグループが行おこなったシミュレーションには、現地げんち調査ちょうさで判明はんめいした津波つなみや地滑じすべりの痕跡こんせきのほか、湾わんの海底かいてい地形ちけい図ずなどのデータが使つかわれました。

沿岸えんがんで見みつかった６ろくか所かしょの地滑じすべりの先さきにあたる海底かいていの地形ちけいは、急きゅうな斜面しゃめんになっていたため、研究けんきゅうグループは、地滑じすべりは地上ちじょうだけでなく海底かいていでも起おきていたとみてシミュレーションしました。

シミュレーションでは、地滑じすべりによって湾わんの西側にしがわ５ごか所かしょと東側ひがしがわ１いちか所かしょで同時どうじ多発たはつ的てきに津波つなみが発生はっせいすると、一気いっきに波紋はもんが広ひろがり、数すう分ぶんの間かんに湾内わんないのほぼすべての沿岸えんがんに到達とうたつする様子ようすがわかります。

特とくに東側ひがしがわの沿岸えんがんには、西側にしがわで発生はっせいした津波つなみが複雑ふくざつに重なり合かさなりあって襲来しゅうらいしていて、研究けんきゅうグループは東側ひがしがわの沿岸えんがんで津波つなみが高たかくなった要因よういんの１ひとつとみています。

研究けんきゅうグループは、このほかにも地上ちじょうや海底かいていで地滑じすべりが発生はっせいしていた可能かのう性せいがあるとして、さらに解析かいせきを進すすめることにしています。

動画どうがサイト投稿とうこうの映像えいぞうも手てがかり

インターネットの動画どうが投稿とうこうサイトには、湾わんの周辺しゅうへんで津波つなみの様子ようすを撮影さつえいしたとされる映像えいぞうが投稿とうこうされ、複数ふくすうの専門せんもん家かが当時とうじの状況じょうきょうを知しる手てがかりになるとして注目ちゅうもくしています。

投稿とうこうされた映像えいぞうは、先月せんげつ28日にちの地震じしん直後ちょくごにスラウェシ島とうの湾わん周辺しゅうへんの海上かいじょうで船ふねから撮影さつえいされたとみられ、沿岸えんがんの複数ふくすうの場所ばしょで、陸りく側がわから沖おきに向むかって高波たかなみが発生はっせいしている様子ようすがわかります。

映像えいぞうでは、四方しほう八はち方ぽうから何なん度ども押し寄おしよせる高波たかなみに船ふねが大おおきく揺ゆさぶられ、翻弄ほんろうされている様子ようすもわかります。

津波つなみのメカニズムに詳くわしい常葉ときは大学だいがくの阿部あべ郁男いくお教授きょうじゅが、映像えいぞうにある地形ちけいや建物たてもののほか、津波つなみの様子ようすを捉とらえた別べつの映像えいぞうと合あわせて確認かくにんしたところ、特徴とくちょうが一致いっちしていて、映像えいぞうの信頼しんらい性せいは高たかいとしています。

阿部あべ教授きょうじゅは、「陸りく側がわから沖おきに向むかって押し寄おしよせる津波つなみは地滑じすべりによる津波つなみの特徴とくちょうを捉とらえていて、メカニズムを明あきらかにするうえで、貴重きちょうな映像えいぞうだ。複数ふくすうの場所ばしょで起おきた津波つなみが重なり合かさなりあって大おおきくなっていった可能かのう性せいがある」と指摘してきしています。

地滑じすべりの津波つなみ 国内こくないでも

沿岸えんがん部ぶや海底かいていで地滑じすべりが発生はっせいしたことによって津波つなみが発生はっせいしたと指摘してきされている事例じれいは、日本にっぽん国内こくないにもあります。

（東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさい）
７なな年ねん前まえの東北とうほく沖おきの巨大きょだい地震じしんでは、宮城みやぎ県けん沖おきの海底かいていで大おおきな段差だんさが確認かくにんされ、複数ふくすうの専門せんもん家かが、海底かいていで地滑じすべりが起おきて局所きょくしょ的てきな大だい津波つなみをもたらしたと指摘してきしています。

（駿河するが湾わんの地震じしん）
９きゅう年ねん前まえの平成へいせい21年ねんに駿河するが湾わんで起おきたマグニチュード6.5の地震じしんでは、静岡しずおか県けん焼津やいづ市しで地震じしんの規模きぼから推定すいていされる大おおきさを上回うわまわる、60センチ余あまりの津波つなみが観測かんそくされ専門せんもん家かの調査ちょうさでは、焼津やいづ市しの東ひがし５ごキロの海底かいていで地滑じすべりが起おきたとみられる跡あとが見みつかっています。

（能登のと半島はんとう地震じしん）
平成へいせい19年ねんの「能登のと半島はんとう地震じしん」では、津波つなみが震源しんげん地ちに近ちかい石川いしかわ県けんよりも、震源しんげん地ちから離はなれた富山とやま県けんの沿岸えんがんに、20分ふん以上いじょう早はやく到達とうたつし、今村いまむら教授きょうじゅは、海底かいていの地滑じすべりが原因げんいんだとしています。

（島原しまばら大変たいへん肥後ひご迷惑めいわく）
江戸えど時代じだいの1792年ねんには、長崎ながさき県けんの雲仙うんぜん・普賢岳ふげんだけの噴火ふんか活動かつどう中ちゅうに起おきた地震じしんで、近ちかくの山やまが崩れ落くずれおちて有明海ありあけかいに流れ込ながれこみ大だい津波つなみが発生はっせいしました。島原しまばら半島はんとうだけでなく、有明ありあけ海かいの対岸たいがんの熊本くまもと県けんにも大だい津波つなみが押し寄おしよせておよそ１いち万まん5000人にんが亡なくなり、「島原しまばら大変たいへん肥後ひご迷惑めいわく」と語り継かたりつがれています。

今村いまむら教授きょうじゅは、「地滑じすべりで津波つなみの可能かのう性せいがある場所ばしょを把握はあくし、津波つなみの速はやさや規模きぼを推定すいていしておく必要ひつようがある。地滑じすべりによる津波つなみは津波つなみ警報けいほうが間に合まにあわないおそれがあるので、地震じしんが発生はっせいしたら、警報けいほうが出でていなくてもより早はやく高たかいところへ避難ひなんする必要ひつようがある」と指摘してきしています。

ソース：NHK ニュース