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年金ねんきん制度せいど改革かいかく関連かんれんほう成立せいりつ どうわる課題かだいは?

2020-05-29 03:53:28

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パートなどはたらみじか時間じかん労働ろうどうしゃ厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅうしやすいよう、加入かにゅう条件じょうけん緩和かんわすることをはしらとした年金ねんきん制度せいど改革かいかく関連かんれんほうが、29にち参議院さんぎいんほん会議かいぎ成立せいりつしました。
年金ねんきん制度せいど改革かいかく関連かんれん法案ほうあんは、29にち参議院さんぎいんほん会議かいぎ採決さいけつおこなわれ、自民じみん公明こうめいりょうとうくわえ、立憲りっけん民主党みんしゅとう国民こくみん民主党みんしゅとう日本にっぽん維新いしんかいなど賛成さんせい多数たすう可決かけつ成立せいりつしました。

法律ほうりつでは、パートなどはたらみじか時間じかん労働ろうどうしゃてい年金ねんきん対策たいさくとして、厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅうしやすいよう、加入かにゅう条件じょうけんうち企業きぎょう規模きぼ要件ようけん現在げんざい従業じゅうぎょういん「501にん以上いじょう」から、「51にん以上いじょう」まで段階だんかいてき引き下ひきさげ、適用てきよう範囲はんい拡大かくだいします。

また、60さい以降いこう就労しゅうろううながため、はたらいて一定いってい収入しゅうにゅうある高齢こうれいしゃ年金ねんきんらす在職ざいしょく老齢ろうれい年金ねんきん制度せいどで、60さいから64さいひと年金ねんきんらされる収入しゅうにゅう基準きじゅんがくを、いま月額げつがく28まんえんから47まんえん引き上ひきあげます。

さらに、現在げんざい60さいから70さいまでとなっている年金ねんきん受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれい選択肢せんたくしはばを75さいまで拡大かくだいします。

今回こんかい改正かいせいは、はたらかた多様たようし、高齢こうれいしゃ就業しゅうぎょう機会きかい拡大かくだいしていることに対応たいおうするとともに、年金ねんきん財政ざいせい安定あんていのためささしゅやすねらいがあります。法律ほうりつおも部分ぶぶんは、さい来年らいねん4つき施行しこうされます。

年金ねんきん制度せいどどうわる

年金ねんきん制度せいどは、どうわるのか。おも変更へんこうてんです。

いち 厚生こうせい年金ねんきん適用てきよう範囲はんい拡大かくだい

パートなどはたらみじか時間じかん労働ろうどうしゃは、サラリーマンなどが加入かにゅうする厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅうしていないひとおおく、将来しょうらい受け取うけと年金ねんきん十分じゅうぶんでないと老後ろうご生活せいかつ懸念けねんするこえがっています。

このため、短時間たんじかん労働ろうどうしゃ厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅうしやすくするため、現在げんざい従業じゅうぎょういん「501にん以上いじょう」の企業きぎょうつとめていることが条件じょうけんとなっている企業きぎょう規模きぼ要件ようけん段階だんかいてき緩和かんわします。

2022ねん10つきに「101にん以上いじょう」に、2024ねん10つきに「51にん以上いじょう」まで、2段階だんかい引き下ひきさげます。保険ほけんりょう半分はんぶん企業きぎょう負担ふたんするため、負担ふたんえる中小ちゅうしょう企業きぎょう配慮はいりょし、段階だんかいてき引き下ひきさげとなりました。

「101にん以上いじょう」にした場合ばあいあらに45まんにんが。「51にん以上いじょう」にした場合ばあい、65まんにん適用てきよう対象たいしょうなる見込みこまれています。

いわゆる就職しゅうしょく氷河期ひょうがき世代せだい正規せいき雇用こようひとなどてい年金ねんきん対策たいさくにつなげるねらいもあります。

在職ざいしょく老齢ろうれい年金ねんきん見直みなお

在職ざいしょく老齢ろうれい年金ねんきん」は、はたらいて一定いってい収入しゅうにゅうある高齢こうれいしゃ年金ねんきんらす仕組しくですが、高齢こうれいしゃ就労しゅうろう意欲いよくをそいでいるという指摘してきています。

このため、60さいから64さいひとについては、年金ねんきんらされる収入しゅうにゅう基準きじゅんがくいま月額げつがく28まんえんから47まんえん引き上ひきあげます。

一方いっぽうで、65さい以上いじょうひとについては、与党よとうないからも「こう所得しょとくしゃ優遇ゆうぐうなるなどとして、引き上ひきあげに慎重しんちょうろん相次あいついだことから、いま月額げつがく47まんえん据え置すえおかれました。

さん 受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれい 選択肢せんたくしはばを75さいまで拡大かくだい

年金ねんきん受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれいは、現在げんざい、60さいから70さい自由じゆうえらことができます。

高齢こうれいしゃ就業しゅうぎょう機会きかい拡大かくだいにあわせ、受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれい選択肢せんたくしはばを75さいまで拡大かくだいし、60さいから75さいえらべるようになります。

年金ねんきんがくは、65さいよりはや受け取うけとはじめた場合ばあいは、1か月かげつたり0.4%一方いっぽう、65さいよりおくらせた場合ばあいは1か月かげつたり0.7%えます。

75さいから受け取うけとはじめると、65さいからの場合ばあいくらべ、年金ねんきんがくは84%えることになります。

よん「iDeCo」が利用りようしやすく

公的こうてき年金ねんきん上乗うわのせする「個人こじんがた」の確定かくてい拠出きょしゅつ年金ねんきん=「iDeCo」が利用りようしやすくなります。

60さい未満みまんとなっている加入かにゅう期間きかん上限じょうげんが、65さい未満みまんまで延長えんちょうされる一方いっぽう、60さいから70さいまでのえらべる受給じゅきゅう開始かいし年齢ねんれい選択肢せんたくしが75さいまでひろがります。

また申し込もうしこなど手続てつづが、オンラインでできるようになります。

さらに、「企業きぎょうがた」の確定かくてい拠出きょしゅつ年金ねんきん加入かにゅうしている会社かいしゃいん希望きぼうすれば、労使ろうし合意ごういがなくても「iDeCo」に加入かにゅうできるようになります。

企業きぎょうがた」と併用へいようする場合ばあい掛金かけきんわせて月額げつがく5まん5000えんまでで、このうち「iDeCo」は、月額げつがく2まんえんまでの範囲はんい自由じゆう組み合くみあわせることができます。

「iDeCo」は、掛金かけきん運用うんようえき非課税ひかぜいなるメリットがあり、老後ろうご資産しさん形成けいせいにつなげてもらうねらいがあります。

のこされた課題かだい

年金ねんきん制度せいどには、なおいくつかの課題かだいのこっています。

“さらなる適用てきよう拡大かくだい

厚生こうせい年金ねんきん適用てきよう範囲はんいをさらに拡大かくだいするかどうかです。
今回こんかい改正かいせいけた議論ぎろん過程かていでは、「雇用こようされているひと原則げんそく、すべてのひと厚生こうせい年金ねんきん加入かにゅうできるようにすべき」だとして、企業きぎょう規模きぼ要件ようけんそのものを撤廃てっぱいすべきだという意見いけんおおされました。

撤廃てっぱいした場合ばあいあらに125まんにん適用てきよう対象たいしょうなるということです。

今回こんかい改正かいせいでは、保険ほけんりょう負担ふたんえる企業きぎょうがわ配慮はいりょして、撤廃てっぱい見送みおくられましたが、さらなる適用てきよう拡大かくだい今後こんご検討けんとう課題かだいとなりそうです。

基礎きそ年金ねんきん充実じゅうじつ

公的こうてき年金ねんきん将来しょうらい給付きゅうふ水準すいじゅん見通みとおしめ去年きょねんの「財政ざいせい検証けんしょう」では、「基礎きそ年金ねんきん」の将来しょうらい給付きゅうふ水準すいじゅんが、厚生こうせい年金ねんきんくらべて、おおきく低下ていかするという結果けっかしめされました。

国会こっかい審議しんぎでは、与野党よやとう双方そうほうから、懸念けねん対策たいさくこうじるようもとめる意見いけんされ、付帯ふたい決議けつぎには、今後こんご必要ひつよう検討けんとうおこなことが盛り込もりこまれました。

基礎きそ年金ねんきん」の給付きゅうふ水準すいじゅん引き上ひきあげをはかため、60さいまでとなっている国民こくみん年金ねんきん加入かにゅう期間きかんを65さいまで延長えんちょうし、45年間ねんかんとするあん検討けんとうされましたが、今回こんかい見送みおくられました。

基礎きそ年金ねんきん」の財源ざいげんは、半分はんぶん国庫こっこ負担ふたん税金ぜいきんまかなため、加入かにゅう期間きかん延長えんちょうは、ぜい引き上ひきあげとセット議論ぎろんすべきだという指摘してきています。

新型しんがたコロナの影響えいきょう

国会こっかい審議しんぎでは、新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいが、年金ねんきん制度せいどあたえる影響えいきょうについても議論ぎろんとなりました。

今回こんかい改正かいせいで、厚生こうせい年金ねんきん適用てきよう拡大かくだいされ、企業きぎょう保険ほけんりょう負担ふたんえる業種ぎょうしゅは、旅館りょかん外食がいしょくチェーンなどです。これら業種ぎょうしゅでは、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょう経営けいえいくるしくなっているところもすくなくありません。

このため、要件ようけん緩和かんわするスケジュールおくらせるようもとめる意見いけんましたが、労働ろうどうしゃ年金ねんきん確保かくほする必要ひつようあるとして、当初とうしょあんのままとなりました。負担ふたんえる企業きぎょうがわへの目配めくばりが必要ひつようとなります。

去年きょねん財政ざいせい検証けんしょうでは、経済けいざい順調じゅんちょう成長せいちょうした場合ばあい現役げんえき世代せだい平均へいきん収入しゅうにゅうの50%以上いじょう給付きゅうふ水準すいじゅん維持いじできるという試算しさんしめされました。

しかし新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいが、日本にっぽん経済けいざい世界せかい経済けいざいおおきな影響えいきょうあたえていることから、試算しさん前提ぜんていなる経済けいざい成長せいちょうりつ」の設定せっていわったのではないかという指摘してきされました。

経済けいざいへの影響えいきょうすうねんつづという見方みかたもあります。現役げんえき世代せだい老後ろうご安心あんしんまもために年金ねんきん財政ざいせいどのように維持いじしていくのかが引き続ひきつづき、おおきな課題かだいとなります。
ソース:NHK ニュース