石垣島と西表島の間に広がる国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」です。
東西およそ20キロ、南北15キロにわたりサンゴ礁が広がっています。
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国内最大のサンゴ礁で進む“白化現象” 異変はなぜ起きた
2022-10-06 09:05:37

沖縄県にある国内最大のサンゴ礁でいま、異変が起きています。
広い範囲でサンゴが白くなり、死滅するおそれが高くなる「白化現象」が問題となっているのです。
異変はなぜ起きたのか。NHKの水中カメラと専門家の解説を交えて、詳しくお伝えします。
広い範囲でサンゴが白くなり、死滅するおそれが高くなる「白化現象」が問題となっているのです。
異変はなぜ起きたのか。NHKの水中カメラと専門家の解説を交えて、詳しくお伝えします。
豊かな海を支える 国内最大のサンゴ礁


海の中に潜ると、300種以上のサンゴが生息しています。
サンゴは色とりどりの魚たちの住みかや繁殖の場所になっていて豊かな生態系を維持するのに重要な役割を担っています。
ところが、この海ではサンゴが白くなり死滅するおそれが高くなる「白化現象」が問題になっています。
サンゴは色とりどりの魚たちの住みかや繁殖の場所になっていて豊かな生態系を維持するのに重要な役割を担っています。
ところが、この海ではサンゴが白くなり死滅するおそれが高くなる「白化現象」が問題になっています。
6年前の危機 再び

「石西礁湖」では6年前に大規模な「白化現象」が起きて全体の97%のサンゴが白化し、このうち70%が死滅しました。
その後、新たなサンゴが育っていましたが9月に行われた国の調査に同行して取材を進めたところ、「白化現象」が6年前に近い水準で起きていることがわかりました。
その後、新たなサンゴが育っていましたが9月に行われた国の調査に同行して取材を進めたところ、「白化現象」が6年前に近い水準で起きていることがわかりました。

環境省の調査は9月24日から6日間行われ、NHKは初日の調査に同行しました。
調査では、実際に海に潜ってサンゴの白化がどこまで進んでいるのか、31の地点で確認しました。
調査では、実際に海に潜ってサンゴの白化がどこまで進んでいるのか、31の地点で確認しました。
なぜ サンゴは白くなるのか
そもそも、サンゴの白化現象はどうして起きるのでしょうか。

サンゴの色のもとになっているのは「褐虫藻」と呼ばれる植物プランクトンです。
サンゴと共生していて栄養を供給しています。
サンゴと共生していて栄養を供給しています。
原因は “海水温の上昇”

ところが、海水温の高い状態が続くと「褐虫藻」が抜け出るなどしてサンゴの骨格が透けて白く見えます。白くなったサンゴは栄養を受け取れなくなり、このままの状態が続くと死滅してしまいます。
大規模な白化現象が起きている「石西礁湖」。ことし8月には周辺の海面の水温は平均で30.5度と、観測史上2番目に高くなっていたのです。
大規模な白化現象が起きている「石西礁湖」。ことし8月には周辺の海面の水温は平均で30.5度と、観測史上2番目に高くなっていたのです。
白化しにくいはずの地点でも

調査を進めると深刻な被害が次々と明らかになってきました。
小浜島の南の地点では、水深5メートルほどの海底に広がるサンゴのほとんどが大きさ種類を問わず白化。
本来ここは潮の流れが速く海水温が上昇しづらいためサンゴが白化しにくいとされていますが、白化したサンゴの割合は例年より大幅に高くなっていました。
小浜島の南の地点では、水深5メートルほどの海底に広がるサンゴのほとんどが大きさ種類を問わず白化。
本来ここは潮の流れが速く海水温が上昇しづらいためサンゴが白化しにくいとされていますが、白化したサンゴの割合は例年より大幅に高くなっていました。
白化だけでなく 死滅がすすむ地点も

こちらは確認できる範囲ですべてのサンゴが白化していた地点です。
ところが、海に潜ると多くのサンゴは真っ白ではなく、茶色くなっていました。白化したサンゴがすでに死んでしまい藻が付着しているため茶色に見えるのです。
ところが、海に潜ると多くのサンゴは真っ白ではなく、茶色くなっていました。白化したサンゴがすでに死んでしまい藻が付着しているため茶色に見えるのです。
専門家 “台風のかくはん 少なかったことも影響”
調査を担当したサンゴの専門家、琉球大学の中村崇准教授は、今回の大規模白化は全体の97%のサンゴが白化した6年前に近い水準で起きていると指摘しています。

「温暖化にともなう水温の上昇傾向が背景にある。ことしはそれに加え、通常夏に暖められた表層の海水をかき混ぜて低い温度にする、台風による“かくはん”があまり起こらなかった。そのため周辺海域の温度がどんどん高くなって、サンゴが白化しやすい条件がそろってしまったことが大きな理由だと考えられる」
若いサンゴも白化

6年前の大規模白化ではおよそ70%のサンゴがその後、死滅してしまいました。今回の調査では6年前の被害のあとに新たに育った直径10センチから20センチほどのサンゴも白化していることが確認されました。
専門家 “生態系のバランス 崩れるおそれも”
数年かけて少しずつ成長してきた若いサンゴ。中村准教授は今回の大規模白化でこうしたサンゴが死滅すれば、サンゴ礁の衰退につながるおそれがあると指摘しています。

「新たに育った若いサンゴが死滅してしまうと、被害を受けて減ってしまったサンゴが回復していくスピードが遅れてしまう。サンゴが少なくなってしまうと魚の種類が減るなど生態系のバランスが崩れるおそれがある」

大規模な白化によっていったんサンゴが失われてしまうと元の状態に戻るには長い年月がかかります。
中村准教授は生態系のほか、漁業や観光にも影響が出るおそれがあると指摘しています。
環境省は今回の調査で得られたデータを詳しく分析し、10月中にも公表することにしています。
中村准教授は生態系のほか、漁業や観光にも影響が出るおそれがあると指摘しています。
環境省は今回の調査で得られたデータを詳しく分析し、10月中にも公表することにしています。
ソース:NHK ニュース