政府せいふ 感染かんせん症しょうのまん延まんえんに備そなえた感染かんせん症しょう法ほうなどの改正かいせい案あんを閣議かくぎ決定けってい

政府せいふは、今後こんごの感染かんせん症しょうのまん延まんえんに備そなえて、都道とどう府県ふけんが地域ちいきの中核ちゅうかくとなる医療いりょう機関きかんと事前じぜんに協定きょうていを結むすび、病床びょうしょうや外来がいらい医療いりょうの確保かくほなどを義務ぎむづけるとした感染かんせん症しょう法ほうなどの改正かいせい案あんを閣議かくぎ決定けっていしました。

新型しんがたコロナへの対応たいおうをめぐっては都道とどう府県ふけんと医療いりょう機関きかんとの調整ちょうせいが十分じゅうぶんに行おこなわれず、医療いりょう提供ていきょう体制たいせいがひっ迫ひっぱくしたことなどが課題かだいとして指摘してきされていて、これを踏ふまえ、政府せいふは、今後こんごの感染かんせん症しょうのまん延まんえんに備そなえた感染かんせん症しょう法ほうなどの改正かいせい案あんを閣議かくぎ決定けっていしました。

それによりますと、▽都道とどう府県ふけんは感染かんせん症しょうの予防よぼう計画けいかくを策定さくていしたうえで、地域ちいきの中核ちゅうかくとなる医療いりょう機関きかんと事前じぜんに協定きょうていを結むすび、病床びょうしょうや外来がいらい医療いりょうの確保かくほなどを義務ぎむづけるとしています。

▽協定きょうていに違反いはんした場合ばあいは医療いりょう機関きかん名めいを公表こうひょうし、さらに従したがわない場合ばあいは大学だいがく病院びょういんなどの特定とくてい機能きのう病院びょういんと地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんについて国くにと都道とどう府県ふけんが承認しょうにんを取り消とりけすことがありうるとしています。

また、▽すべての医療いりょう機関きかんに対にたいし、予防よぼう計画けいかくの達成たっせいのために必要ひつような協力きょうりょくをするよう努力どりょく義務ぎむを課かすことや、▽特とくに緊急きんきゅう性せいがある場合ばあいには、国くにが直接ちょくせつ公立こうりつの医療いりょう機関きかんなどに医師いしや看護かんご師しの派遣はけんを求もとめることができる措置そちも盛り込もりこんでいます。

さらに、▽医師いしや看護かんご師し以外いがいでもワクチン接種せっしゅを行おこなえるようにするほか▽水際みずぎわ対策たいさくを強化きょうかするため、感染かんせんのおそれがある人ひとに自宅じたくなどでの待機たいきを指示しじできるようにし、従したがわない場合ばあいなどは罰則ばっそくを科かすことも盛り込もりこまれています。

政府せいふは、改正かいせい案あんを今いまの国会こっかいに提出ていしゅつし、成立せいりつを目指めざすことにしています。

都道とどう府県ふけんの予防よぼう計画けいかくと協定きょうてい

今回こんかいの感染かんせん症しょう法ほうなどの改正かいせい案あんではこれまでの新型しんがたコロナ対応たいおうで十分じゅうぶん機能きのうせず、課題かだいとされていた点てんの解消かいしょうに主眼しゅがんが置おかれています。

中なかでも病床びょうしょうなど医療いりょう提供ていきょう体制たいせいの確保かくほをめぐっては、これまで国くにや都道とどう府県ふけんは多おおくの医療いりょう機関きかんに対にたいし、協力きょうりょくの要請ようせいにとどまっていたためより実効じっこう性せいを高たかめる措置そちが盛り込もりこまれました。

（予防よぼう計画けいかくの充実じゅうじつ）
まず、感染かんせん症しょう法ほうに基もとづいて都道とどう府県ふけんなどが策定さくていする「予防よぼう計画けいかく」をより充実じゅうじつさせるため
◇確保かくほする病床びょうしょう数すう
◇発熱はつねつ外来がいらいの数かず
◇宿泊しゅくはく療養りょうよう施設しせつの確保かくほ居室きょしつ数すうなど
数値すうち目標もくひょうを明記めいきするとしています。

（医療いりょう機関きかんとの協定きょうてい）
新あらたに策定さくていした「予防よぼう計画けいかく」に沿そって、都道とどう府県ふけんは、あらかじめ医療いりょう機関きかんと協議きょうぎを行おこない協定きょうていを結むすびます。

特とくに
◇公立こうりつや公的こうてきな医療いりょう機関きかん
◇大学だいがく病院びょういんなどの特定とくてい機能きのう病院びょういん
◇地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういん
といった地域ちいきの中核ちゅうかくとなる医療いりょう機関きかんに対にたいしては、感染かんせん症しょうが流行りゅうこうした時ときの医療いりょう提供ていきょうを義務ぎむづけます。

都道とどう府県ふけんは、協定きょうていに基もとづいた医療いりょうを提供ていきょうするよう医療いりょう機関きかんに勧告かんこくや指示しじを行おこなうことができ、これに従したがわなかった場合ばあいは医療いりょう機関きかん名めいを公表こうひょうするとしています。

こうした措置そちを受うけても従したがわない特定とくてい機能きのう病院びょういんと地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういんについては、国くにや都道とどう府県ふけんが承認しょうにんを取り消とりけすことがありうるとしています。

協定きょうていを結むすんだ医療いりょう機関きかんが、感染かんせん症しょうの対応たいおうにあたって収入しゅうにゅうが減へった場合ばあい、感染かんせん症しょう流行りゅうこう前まえとの差額さがくを補填ほてん（ほてん）ほてんする財政ざいせい支援しえんも盛り込もりこまれました。

また地域ちいきの中核ちゅうかくとなる医療いりょう機関きかんに限かぎらず、すべての医療いりょう機関きかんに対にたいし
▽協定きょうていに関にかんする協議きょうぎに参加さんかすることと
▽「予防よぼう計画けいかく」の達成たっせいに必要ひつような協力きょうりょくをするなどといった努力どりょく義務ぎむも課かされます。

（医療いりょう人材じんざいの広域こういき派遣はけん）
広域こういき的てきな人材じんざい派遣はけんが必要ひつようになった場合ばあいの対応たいおうです。感染かんせんが拡大かくだいし、医療いりょうがひっ迫ひっぱくした都道とどう府県ふけんの知事ちじは、厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんを介かいして、ほかの自治体じちたいに応援おうえんを求もとめることができます。

特とくに緊急きんきゅう性せいがある場合ばあいには、要請ようせいがなくても、国くにが直接ちょくせつ、公立こうりつや公的こうてきな医療いりょう機関きかんなどに、医師いしや看護かんご師しの派遣はけんを求もとめることができるとしています。

ワクチン接種せっしゅと物資ぶっしの確保かくほ

（ワクチン接種せっしゅの促進そくしん）
ワクチンの接種せっしゅは原則げんそく、医師いしと看護かんご師し以外いがい、行おこなうことができませんが、新型しんがたコロナの対応たいおうの中なかで打うち手しゅが不足ふそくしたため、現在げんざいは、特例とくれいとして、歯科しか医師いしなどにも認みとめています。

今回こんかいの改正かいせいは、こうした措置そちを法的ほうてきに裏付うらづけることにしたもので、厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんが協力きょうりょくを要請ようせいした時ときにかぎり
◇歯科しか医師いし
◇診療しんりょう放射ほうしゃ線せん技師ぎし
◇臨床りんしょう検査けんさ技師ぎし
◇臨床りんしょう工学こうがく技士ぎし
◇救急きゅうきゅう救命きゅうめい士しが
ワクチン接種せっしゅを行おこなうことができるとしています。

また、予防よぼう接種せっしゅに関連かんれんする事務じむのデジタル化かを推進すいしんするため、マイナンバーカードを活用かつようして接種せっしゅ対象たいしょう者しゃを確認かくにんする仕組しくみを導入どうにゅうします。

（マスクなどの物資ぶっし確保かくほ）
これまでの対応たいおうで、マスクや抗原こうげん検査けんさキット、血液けつえき中ちゅうの酸素さんそ濃度のうどを測はかる「パルスオキシメーター」などが足たりなくなった反省はんせいから、緊急きんきゅう時じには、国くにが事業じぎょう者しゃに生産せいさんや輸入ゆにゅうを行おこなうよう要請ようせいができるとしています。

事業じぎょう者しゃから提出ていしゅつされた計画けいかくに問題もんだいがある場合ばあいには、国くにが変更へんこうを指示しじでき、正当せいとうな理由りゆうなく従したがわなかった場合ばあいには、企業きぎょう名めいを公表こうひょうすることができるとしています。

一方いっぽうで、要請ようせいや指示しじに基もとづいて生産せいさんや輸入ゆにゅうなどを行おこなった事業じぎょう者しゃには、必要ひつような財政ざいせい措置そちを行おこなうこととしています。

水際みずぎわ対策たいさく

日本にっぽんに入国にゅうこくする人ひとへの水際みずぎわ対策たいさくを強化きょうかするため、空港くうこうや港みなとの検疫けんえき所長しょちょうは、感染かんせんのおそれがある人ひとに対にたいし、自宅じたくなどでの待機たいきや報告ほうこくなど、感染かんせんの防止ぼうしに対にたいする協力きょうりょくを求もとめることができるとしています。

正当せいとうな理由りゆうなく協力きょうりょくに応おうじない場合ばあいは、待機たいきの「指示しじ」が可能かのうとなり、従したがわない場合ばあいは6か月かげつ以下いかの懲役ちょうえき、または50万まん円えん以下いかの罰金ばっきんを科かすことも盛り込もりこまれています。

加藤かとう厚あつし労相ろうしょう「感染かんせん症しょう対応たいおうの実効じっこう性せいを高たかめる」

加藤かとう厚生こうせい労働ろうどう大臣だいじんは閣議かくぎのあと記者きしゃ団だんに対にたいし「あらかじめ地域ちいきにおける役割やくわり分担ぶんたんを明確めいかく化かし、感染かんせん症しょう対応たいおうの実効じっこう性せいを高たかめるとともに、都道とどう府県ふけん知事ちじが指示しじを行おこなえるようにして、感染かんせん症しょうの発生はっせいや、まん延まんえんした際さいにより確実かくじつな対策たいさくの履行りこうを確保かくほする趣旨しゅしの法ほう改正かいせいだ。しっかりと国会こっかいで説明せつめいして、1日にちも早はやい成立せいりつを図はかっていきたい」と述のべました。

民間みんかん病院びょういんからは評価ひょうかの一方いっぽう 財政ざいせい措置そち求もとめる声こえ

今回こんかいの感染かんせん症しょう法ほうなどの改正かいせい案あんについて、地域ちいきの中核ちゅうかくとなる民間みんかん病院びょういんからは事前じぜんの体制たいせい整備せいびは重要じゅうようだと評価ひょうかする一方いっぽう、体制たいせいを整ととのえるために必要ひつような十分じゅうぶんな財政ざいせい措置そちを求もとめる声こえがあがっています。

東京とうきょう都との「地域ちいき医療いりょう支援しえん病院びょういん」に指定していされている東京とうきょう 杉並すぎなみ区くの「河北かほく総合そうごう病院びょういん」では、2020年ねんの感染かんせん拡大かくだいの初期しょきから一部いちぶの病床びょうしょうをコロナ専用せんよう病床びょうしょうに転用てんようし、ピーク時じには55床しょうで患者かんじゃを受け入うけいれてきました。

受け入うけいれ当初とうしょはウイルスの危険きけん性せいや特徴とくちょうがよく分わからない中なかで、看護かんご師しなど病院びょういん全体ぜんたいの医療いりょう従事じゅうじ者しゃが恐怖きょうふや不安ふあんを抱かかえていたと言いいます。

杉村すぎむら洋一よういち院長いんちょうは、今回こんかいの改正かいせい案あんで地域ちいきの中核ちゅうかくとなる医療いりょう機関きかんが都道とどう府県ふけんと協定きょうていを結むすび、流行りゅうこう時じには医療いりょう提供ていきょうが義務ぎむづけられることについて「有事ゆうじの際さいに先頭せんとうに立たち地域ちいきの医療いりょうを引っ張ひっぱる役割やくわりを担になっているので当然とうぜんだと思おもう。今回こんかいは強制きょうせい力りょくが無なくお願おねがいベースだったが、次つぎの感染かんせん症しょうで積極せっきょく的てきに動うごけるようできるかぎり協力きょうりょくしたい」と話はなしています。

一方いっぽう、病院びょういんではコロナ患者かんじゃを受け入うけいれるために一般いっぱん診療しんりょうを制限せいげんした影響えいきょうで、補助ほじょ金きんを除のぞく通常つうじょうの収入しゅうにゅうは大おおきく減少げんしょうしたということです。

杉村すぎむら院長いんちょうは、改正かいせい案あんに収入しゅうにゅうが減へった場合ばあいに流行りゅうこう前まえとの差額さがくを補填ほてんする財政ざいせい支援しえんが盛り込もりこまれたことについて評価ひょうかする一方いっぽうで、「病院びょういんの収入しゅうにゅうだけでなく、職員しょくいんの離職りしょくや風評ふうひょう被害ひがいなど病院びょういんにはいろいろなマイナスのことが起おこる。リスクを抱かかえて患者かんじゃを引き受ひきうけるのは相当そうとうの覚悟かくごが必要ひつようなので、そうしたことも考慮こうりょして支援しえんを考かんがえてもらいたい」と指摘してきしました。

ソース：NHK ニュース