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値上ねあラッシュも物価ぶっか上昇じょうしょういちてき?ノルムって?【経済けいざいコラム】

2022-10-07 09:35:16

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物価ぶっか安定あんてい目標もくひょう達成たっせい来年らいねんさい来年らいねんむずかしい
9つき下旬げじゅん日銀にちぎん黒田くろだ総裁そうさい発言はつげん市場しじょう関係かんけいしゃおどろって受け止うけとめられました。原材料げんざいりょうだかによる物価ぶっか上昇じょうしょう一時いちじてきだというのが黒田くろだ総裁そうさい見方みかたです。ただ総裁そうさい任期にんきのこ半年はんとしせまだけに、賃上ちんあともなった物価ぶっか安定あんてい目標もくひょうにつながる最後さいごチャンス期待きたいするこえ日銀にちぎんないにないわけでもありません。なぜここまで慎重しんちょう見方みかたになったのか。そして今後こんご物価ぶっか動向どうこうは?(経済けいざい記者きしゃ 加藤かとうニール)

物価ぶっか上昇じょうしょう一時いちじてき

物価ぶっか上昇じょうしょうまりません。

今年ことし8つき消費しょうひしゃ物価ぶっか指数しすう生鮮せいせん食品しょくひんのぞ)は2.8%。
日銀にちぎん目標もくひょうとする2%を上回うわまわのは5か月かげつ連続れんぞく

年内ねんないには、3%をえるという見方みかたもあります。

ただ黒田くろだ総裁そうさいは9つき会見かいけん物価ぶっか上昇じょうしょう一時いちじてきだと強調きょうちょうします。
「いまの物価ぶっか上昇じょうしょうは、国際こくさい商品しょうひん市況しきょうえんやす影響えいきょう輸入ゆにゅうひん価格かかく上昇じょうしょうしているためだ。賃金ちんぎんがって物価ぶっかがってというかたちではなく、物価ぶっか安定あんてい目標もくひょう達成たっせい来年らいねんさい来年らいねんむずかしい

物価ぶっか目標もくひょう達成たっせいできていないのはなぜ

なぜ日銀にちぎん目指めざかたちでの物価ぶっか上昇じょうしょう実現じつげんできていないのか。

1つは黒田くろだ総裁そうさい指摘してきするように賃金ちんぎん上昇じょうしょうともなわないコストプッシュがた物価ぶっか上昇じょうしょうだからということがあります。

もう1つは人々ひとびと物価ぶっかかんわらないこと。

その原因げんいんについて日銀にちぎんは2にわたって検証けんしょうしています。

まず2016ねん9つき検証けんしょう

このときは日本にっぽん欧米おうべい物価ぶっかかん比較ひかく

日本にっぽん企業きぎょう消費しょうひしゃ物価ぶっか先行さきゆ見方みかたは、中央ちゅうおう銀行ぎんこうしめ物価ぶっか目標もくひょうよりも、現実げんじつあしもと物価ぶっか左右さゆうされやすいことがかったとしています。

当時とうじ原油げんゆ価格かかく下落げらくなどあしもと物価ぶっか下落げらく

日本にっぽん春闘しゅんとうでは、前年ぜんねん物価ぶっか上昇じょうしょう考慮こうりょして賃金ちんぎん交渉こうしょうおこなわれるため、賃上ちんああしもと物価ぶっかきずられやすいと分析ぶんせきしています。

そして2021ねん3つき検証けんしょう

ここでは世代せだいごと物価ぶっかかんちがことがかったとしています。
生活せいかつ意識いしきに関にかんする日銀にちぎんアンケートくわしく分析ぶんせきしたところ、1970年代ねんだいのオイルショックをはじめ、インフレいち経験けいけんしたことがない世代せだいは、物価ぶっかがるという見通みとおちにくいことがあきらかになったといいます。

物価ぶっかがらないのは過去かこ経験けいけんによってデフレ期待きたいふか定着ていちゃくしてしまっているためだというのが日銀にちぎん総括そうかつです。

過去かこ経験けいけんつちかわれた規範きはん社会しゃかいづいた考え方かんがえかたのことを「ノルム」といますが、人々ひとびと物価ぶっかかんをあらわすさい最近さいきん日銀にちぎんないでよく飛び交とびかっていることばです。

たとえば黒田くろだ総裁そうさいは7つき記者きしゃ会見かいけんこう発言はつげんしています。

企業きぎょう価格かかく転嫁てんかうごすすんでいるが、あくまで輸入ゆにゅう物価ぶっか転嫁てんかだ。従来じゅうらいからのノルムが完全かんぜんわったとはていない。まだ不十分ふじゅうぶんだ」

10つき3にち発表はっぴょうされた日銀にちぎん短観たんかんでは企業きぎょうの5ねん物価ぶっか見通みとおはじめて2%にたっしましたが、日銀にちぎんある幹部かんぶは「変化へんかきざはあるが、ノルムがわったとみるのは時期じき尚早しょうそうだ」と慎重しんちょう見方みかたしめします。

ノルムはわる

ではこのさき物価ぶっかどうなるのか。

物価ぶっか研究けんきゅうだいいちにんしゃ東京とうきょう大学だいがく大学院だいがくいん渡辺わたなべつとむ教授きょうじゅきました。
渡辺わたなべ教授きょうじゅは、いまの日本にっぽん物価ぶっか上昇じょうしょうは、慢性まんせいデフレと急性きゅうせいインフレ同居どうきょした状態じょうたいだといいます。

電気でんきだいやガソリンなど前年ぜんねんくらべて急激きゅうげき上昇じょうしょうりつ品目ひんもく急性きゅうせいインフレ)がある一方いっぽうで、美容びようだい家賃やちん定期ていきサービス関連かんれんなど価格かかくほとんどうごいていない品目ひんもく慢性まんせいデフレ)も引き続ひきつづおおというのです。

渡辺わたなべ教授きょうじゅが8つき消費しょうひしゃ物価ぶっか指数しすうをもとに作成さくせいしたひょうです。調査ちょうさ対象たいしょうの600品目ひんもくについてその分布ぶんぷをまとめました。
グラフよこじくみぎにいくほど前年ぜんねん同月どうげつくらべた上昇じょうしょうりつたかくなります。

とくエネルギー関連かんれん品目ひんもく目立めだちます。

一方いっぽうグラフ中央ちゅうおう

上昇じょうしょうりつがゼロのところにおおきなやまがあります。

これ価格かかくまったうごいていない品目ひんもくです。

今年ことし4つき以降いこう物価ぶっか上昇じょうしょうりつは2%を上回うわまわっていますが、全体ぜんたいの3わりから4わり程度ていど品目ひんもく依然いぜんとして価格かかく変化へんかしていません。

欧米おうべいとはおおきくことなるといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅ
欧米おうべい幅広はばひろ商品しょうひんサービス値上ねあがりする急性きゅうせいインフレ深刻しんこく中央ちゅうおう銀行ぎんこう利上りあ対応たいおうしている。一方いっぽう日本にっぽん海外かいがいからもたらされた急性きゅうせいインフレと、従来じゅうらいからの慢性まんせいデフレが同居どうきょしている。日本にっぽんでは原材料げんざいりょう上昇じょうしょう転嫁てんかするうごあるが、欧米おうべいのように賃金ちんぎん上昇じょうしょう転嫁てんかするうごきはられず、人件じんけん割合わりあいたかサービス関連かんれん中心ちゅうしん価格かかく据え置すえおかれたままだ」

その一方いっぽう日本にっぽん消費しょうひしゃ意識いしきには変化へんかきざがあるといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅアンケート調査ちょうさによると、欧米おうべいくらべて日本にっぽん消費しょうひしゃ値上ねあに対にたいしてシビアだといいます。

馴染なじのスーパーで10%の値上ねあおこなわれた場合ばあいどうするかという質問しつもんに対にたいして日本にっぽんでは去年きょねん8つき調査ちょうさで57%のひとがほかのみせうつ回答かいとうしました。

アメリカやカナダ、イギリス、ドイツでは馴染なじみせ買い物かいものつづけるという回答かいとうおおほかみせうつのは3わりから4わりでしたが、日本にっぽんだけが半数はんすうえました。

ただ今年ことし5つき調査ちょうさでは、日本にっぽんでもみせうつというひとは44%にり、欧米おうべい各国かっこくおな水準すいじゅんとなりました。

身の回みのまわ値上ねあ相次あいつなかあきらめにも気持きもで、値上ねあげを受け入うけいれざるをない状況じょうきょうあるのではないかといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅ今後こんご物価ぶっか動向どうこううえでカギはやはり賃金ちんぎんだといいます。

渡辺わたなべ教授きょうじゅ
急性きゅうせいインフレきっかけ慢性まんせいデフレが是正ぜせいされる可能かのうせいはあり、原材料げんざいりょうだかだけでなく人件じんけん価格かかく転嫁てんかするうごこり、賃上ちんあにつながるかがポイントだ。これまでの原材料げんざいりょうだかえんやす局面きょくめんでは人件じんけんはコストカット対象たいしょうになりがちだったが、それでは商品しょうひん開発かいはつサービス創意そうい工夫くふうまれにくく競争きょうそうりょくたかまらない。賃金ちんぎんについて幅広はばひろ議論ぎろん必要ひつようだ」

相次あいつ値上ねあ家計かけい負担ふたんしています。

急性きゅうせいインフレきっかけ賃上ちんあながにつながり、長年ながねん日本にっぽん経済けいざいくるしめてきた慢性まんせいデフレからだっすることはできるのか。

そして日銀にちぎん“ノルム”に変化へんかがあらわれるのか。

物価ぶっか上昇じょうしょう経済けいざいこう循環じゅんかん生み出うみだかたちなるのか注目ちゅうもくしていきたいとおもいます。

注目ちゅうもく予定よてい

日本にっぽん時間じかん未明みめいには、アメリカ中央ちゅうおう銀行ぎんこうにあたるFRB=連邦れんぽう準備じゅんび制度せいど理事りじかいが9つき会合かいごう議事ぎじろく公表こうひょうします。

この会合かいごうでFRBは3かい連続れんぞくで0.75%という異例いれい利上りあ踏み切ふみきりましたが、どのようなやりとりがあったのか。

また日本にっぽん時間じかんの13にちよるには、今後こんごアメリカ利上りあ見通みとおうえ重要じゅうよう消費しょうひしゃ物価ぶっか指数しすう公表こうひょうもあります。
ソース:NHK ニュース