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北海道 カート死亡事故 浮かび上がった“法律の隙間”とは?
2022-10-18 11:27:30

北海道の森町で子どもが乗ったカートがコース脇に突っ込み、2歳の男の子が死亡した事故から1か月。
何が起きたのか?対策はとられていたのか?
公道ではない場所での事故。浮かび上がったのは「法律の隙間」でした。
何が起きたのか?対策はとられていたのか?
公道ではない場所での事故。浮かび上がったのは「法律の隙間」でした。
カート突っ込み2歳児死亡

先月18日、森町で開かれた子どもを対象に開かれたモータースポーツなどを体験できるイベントで、子どもが乗っていたカートがコース脇の見物客用のスペースに突っ込み、函館市の2歳の男の子が脳挫傷で死亡しました。また、4歳の男の子2人がけがをしました。
事故当時の状況は?

警察によりますと、事故が起きたコースは1周およそ200メートルで、主催者によりますと、身長が140センチ以上であれば誰でも乗車体験ができ、制限時間のあいだコースを自由に周回できたということです。
事故を目撃した人などによりますと、事故は利用者が乗り降りする場所の近くで起きたということで、事故を起こしたカートは、本来は右に曲がる場所をそのまま直進し、コース脇にいた人たちに突っ込んだということです。
事故を目撃した人などによりますと、事故は利用者が乗り降りする場所の近くで起きたということで、事故を起こしたカートは、本来は右に曲がる場所をそのまま直進し、コース脇にいた人たちに突っ込んだということです。

事故が起きた場所とコースとのあいだには、三角コーンなどでつくられた仕切りが設けられていましたが、防護ブロックは設置されていなかったということです。
カートの貸し出しとコースの設営を行った千歳市にある「新千歳モーターランド」によりますと、事故を起こしたカートは、最高で60キロほどの速度を出せる性能があるということですが、このコースで出せる速度は最高で40キロほどだったのではないかとしています。
警察は業務上過失致死傷の疑いで捜査し、イベントの主催者側が、事故を予防するために、必要な対策をとっていたかどうかを調べています。
カートの貸し出しとコースの設営を行った千歳市にある「新千歳モーターランド」によりますと、事故を起こしたカートは、最高で60キロほどの速度を出せる性能があるということですが、このコースで出せる速度は最高で40キロほどだったのではないかとしています。
警察は業務上過失致死傷の疑いで捜査し、イベントの主催者側が、事故を予防するために、必要な対策をとっていたかどうかを調べています。
これまでにわかったことは?
捜査関係者によりますと、これまでに主催者側からイベントの実施計画書のほか、コースの設営業者とやり取りしたメールなどの提出を受け、当日の運営状況などについて従業員らに任意で事情を聞いているということです。
また、作成された実施計画書にはコースのおおまかな図面が書かれていたものの、その長さや幅などは具体的に明記されておらず、事前に十分な下見をしないままコースを設営していたことが主催者側の関係者への取材で新たに分かりました。
また、作成された実施計画書にはコースのおおまかな図面が書かれていたものの、その長さや幅などは具体的に明記されておらず、事前に十分な下見をしないままコースを設営していたことが主催者側の関係者への取材で新たに分かりました。
キーワードは「法律の隙間」
一方で、取材した複数の捜査関係者は捜査の難しさを語っています。
何が捜査を難しくしているのか。「法律の隙間」というキーワードが浮かび上がってきました。
事故の現場は公道ではなく、ホテルの駐車場敷地内に作られた仮設のコースです。警察などによりますと、カートは公道用でもないため、
1. 道路交通法の速度規制が適用されない
2. シートベルト着用などの基準ない
また、今回設置されたコースは、例えば遊園地のジェットコースターなどと異なり、
3. 建築基準法で安全管理基準を定める「遊戯施設」にも該当しない
ということです。
こうした点について、遊戯施設の安全管理に詳しい日本大学の青木義男教授に話を聞きました。
何が捜査を難しくしているのか。「法律の隙間」というキーワードが浮かび上がってきました。
事故の現場は公道ではなく、ホテルの駐車場敷地内に作られた仮設のコースです。警察などによりますと、カートは公道用でもないため、
1. 道路交通法の速度規制が適用されない
2. シートベルト着用などの基準ない
また、今回設置されたコースは、例えば遊園地のジェットコースターなどと異なり、
3. 建築基準法で安全管理基準を定める「遊戯施設」にも該当しない
ということです。
こうした点について、遊戯施設の安全管理に詳しい日本大学の青木義男教授に話を聞きました。

Q.原因はどこにあった?
事故を起こした車両はゴーカートと言いながら、レース場にあるようなばっちりとしたレースカートですから、スピードが出ていれば衝撃を吸収できないバリアだと、容易に跳ね飛ばしてしまいます。
事故が起きた地点では防護ブロックのようなバリアが観客との間に設置されていませんでした。代わりに三角コーンとポールが置かれていましたが、あくまで場所の区分けに使われるもので、カートの衝突を想定したバリアにはなりえませんでした。
また、カートを運転していたのは小学生ですから、アクセルとブレーキの使い方以外に事前の安全指導が十分だったのか、疑問が残ります。
事故が起きた地点では防護ブロックのようなバリアが観客との間に設置されていませんでした。代わりに三角コーンとポールが置かれていましたが、あくまで場所の区分けに使われるもので、カートの衝突を想定したバリアにはなりえませんでした。
また、カートを運転していたのは小学生ですから、アクセルとブレーキの使い方以外に事前の安全指導が十分だったのか、疑問が残ります。
Q.法律の問題はどう見る?
今回のケースというのは、ある意味「法律の隙間」にあたります。
建築基準法の中での「遊戯施設」は、軌道・レールといった走路を勝手にそれないのが前提で、動力が付いているものではスピードや回転数などの規制を踏まえて、安全対策を議論します。
今回のようなカートは、運転者のハンドルさばき1つで、いかにでも走路を変えられるというのは自動車に近く、従来の「遊戯施設」の範疇からかなり外れたものになっていて、建築基準法とはなじみが悪いと思います。
現行の法律では縛りきることができていないので、いわゆる乗り物に近い法令の中で規制をかける方が適切ではないかと思います。
建築基準法の中での「遊戯施設」は、軌道・レールといった走路を勝手にそれないのが前提で、動力が付いているものではスピードや回転数などの規制を踏まえて、安全対策を議論します。
今回のようなカートは、運転者のハンドルさばき1つで、いかにでも走路を変えられるというのは自動車に近く、従来の「遊戯施設」の範疇からかなり外れたものになっていて、建築基準法とはなじみが悪いと思います。
現行の法律では縛りきることができていないので、いわゆる乗り物に近い法令の中で規制をかける方が適切ではないかと思います。
国会でも議論に

今月5日、岸田総理大臣も衆議院本会議で「法律の隙間」について答弁しています。
立憲民主党 西村智奈美議員
「これまで何らの規制を行ってこなかった責任をどうお考えですか?また、再発防止のため何らかの法規制を検討すべきと考えますがいかがでしょうか?」
「これまで何らの規制を行ってこなかった責任をどうお考えですか?また、再発防止のため何らかの法規制を検討すべきと考えますがいかがでしょうか?」
岸田首相
「人が死傷する事案については、それが過失により発生したものであったとしても、従前より刑法の業務上過失致死傷罪等による処罰の対象とすることにより、その予防を図ってきたところであり、必要な法制度が設けられているものと考えております」
「人が死傷する事案については、それが過失により発生したものであったとしても、従前より刑法の業務上過失致死傷罪等による処罰の対象とすることにより、その予防を図ってきたところであり、必要な法制度が設けられているものと考えております」
Q.この答弁をどう受け止めたか?
岸田首相が言われたのでは「事後の安全」「事後の処罰」っていう話になってしまいますけれども、やっぱり事前の規制とセットでないとなかなかこういう事故を根絶やしにすることはできません。
Q.事故を防ぐにはどうしたら?
法律をこれから制定するというようなことは、なかなか時間もかかり、すぐには難しいのかなと思います。
ですから、すぐにできることとしては、やはり業界団体の意識改革です。
今回の事故はいわゆる業界団体が主催しているわけですから、国に言われたことや法で決まったことを守っていればいいやという受け身の姿勢ではなく、現場の人たちが自力で事故を起こさないという意識を持たないといけません。
ですから、すぐにできることとしては、やはり業界団体の意識改革です。
今回の事故はいわゆる業界団体が主催しているわけですから、国に言われたことや法で決まったことを守っていればいいやという受け身の姿勢ではなく、現場の人たちが自力で事故を起こさないという意識を持たないといけません。
現場が大変忙しいことは重々承知していますが、事故を防ぐ技術が現場で共有され、継承しなければ事故のリスクは高まります。
情報交流会のように、業界団体の人たちが年に一度でもよいから集まって、そこで自分たちが意識しているインシデントやヒヤリハット事例を共有し、工夫を考えていくことで、国任せではない事故の抑制ができてくると思います。
情報交流会のように、業界団体の人たちが年に一度でもよいから集まって、そこで自分たちが意識しているインシデントやヒヤリハット事例を共有し、工夫を考えていくことで、国任せではない事故の抑制ができてくると思います。

ソース:NHK ニュース