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死刑囚の肉声から考える 死刑告知は当日か事前か
2022-10-21 11:31:52

死刑囚に対して、死刑の執行を直前まで伝えていない現在の国の運用。この是非が争われている民事裁判で、事前の告知も行われていた67年前、執行を伝えられた死刑囚が家族と面会して別れを告げたり、後悔のことばを話したりする肉声を録音した音声データが提出されました。
死刑囚への死刑の告知 過去には事前も現在は直前

国などによりますと、死刑囚に対する死刑執行の事前告知は昭和50年ごろまでは、一部で行われていましたが、死刑囚が自殺したケースがあり、これをきっかけに、「死刑囚の心情の安定を確保するため」などとして、当日に告知する運用に変更されたとみられ、現在は執行の1、2時間前に本人に告知されています。
原告の死刑囚“残酷な方法だ”提訴
この運用について現在、拘置所に収容されている死刑囚2人はみずからの死と向き合えず残酷な方法だなどと主張して、国に事前告知や損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こしています。
67年前の死刑囚の肉声

この裁判で21日、原告の死刑囚側は67年前の昭和30年、大阪拘置所で2日前に執行を伝えられた、死刑囚の様子を記録した1時間余りの音声データを証拠として提出しました。
これは、当時の大阪拘置所の所長がひそかに録音したもので、所長の孫の女性から「死刑制度について知ってもらう資料になれば」と提供を受けたということです。
これは、当時の大阪拘置所の所長がひそかに録音したもので、所長の孫の女性から「死刑制度について知ってもらう資料になれば」と提供を受けたということです。
死刑執行の2日前 告知
※音声データより
所長:このたび恩赦の申し出を断られて執行命令がくると。誠に残念だがこれはやむをえないね。
死刑囚:長かったですね。
所長:うん、長かったねえ。
死刑囚:早いものでねえ。
所長:このたび恩赦の申し出を断られて執行命令がくると。誠に残念だがこれはやむをえないね。
死刑囚:長かったですね。
所長:うん、長かったねえ。
死刑囚:早いものでねえ。
死刑執行の前日 姉と面会
死刑囚は姉と面会し、別れを告げる機会も得られました。

※音声データより
死刑囚:姉さん長い間ありがとうございました。どうかお母さんにもよろしくと申してくださいね。そして子どものことくれぐれもお願いします。姉さん、もう泣かんで、笑って別れましょうよ。
姉:さようなら。
死刑囚:姉さん、さようなら。
死刑囚:姉さん長い間ありがとうございました。どうかお母さんにもよろしくと申してくださいね。そして子どものことくれぐれもお願いします。姉さん、もう泣かんで、笑って別れましょうよ。
姉:さようなら。
死刑囚:姉さん、さようなら。
執行当日 犯した罪への後悔
強盗の最中に、現場に駆けつけた警察官を射殺したなどとして死刑が確定していた死刑囚は、執行の当日、犯した罪への後悔のことばを口にしていました。
※音声データより
死刑囚:いちばん最期になってくるとね、分かるんですわ。ああ、えらいことしたなあと。ああ、こんな悪いことをあの時、せなんだらよかったとね。今になって思うんですよ、今になって後悔するんですよね。
死刑囚:いちばん最期になってくるとね、分かるんですわ。ああ、えらいことしたなあと。ああ、こんな悪いことをあの時、せなんだらよかったとね。今になって思うんですよ、今になって後悔するんですよね。

原告の死刑囚側“事前告知でも心情乱れず より罪に向き合える”

原告の死刑囚側 植田豊弁護士
「事前に告知を受けても死刑囚の心情は乱れていないことが、この音声を聞けばわかる。より、みずからの罪や死に向き合うことができる」
「事前に告知を受けても死刑囚の心情は乱れていないことが、この音声を聞けばわかる。より、みずからの罪や死に向き合うことができる」
国「当日告知は自殺や暴動回避で合理的」
一方、国側は、訴えを退けるよう求めています。

国側の主張
「現在の当日告知は、自殺や暴動が起きるおそれを回避するためで、合理的だ。告知したあとには、遺言や教誨(きょうかい)の希望についても死刑囚に尋ねている」
「現在の当日告知は、自殺や暴動が起きるおそれを回避するためで、合理的だ。告知したあとには、遺言や教誨(きょうかい)の希望についても死刑囚に尋ねている」
死刑執行の在り方は
死刑が確定した事件で、理不尽に犠牲になった被害者たちがいることは決して忘れてはなりません。
死刑の執行の在り方については、死刑囚の人権も含めて、さまざまな視点から、慎重な議論が求められます。
死刑について国から公開される情報が限られている現状についても、改めて見直しを検討することも必要です。
死刑の執行の在り方については、死刑囚の人権も含めて、さまざまな視点から、慎重な議論が求められます。
死刑について国から公開される情報が限られている現状についても、改めて見直しを検討することも必要です。
ソース:NHK ニュース