旧統一教会をめぐる高額な献金などについて、岸田総理大臣から「質問権」の行使による調査の指示を受けた文部科学省は25日、初めての専門家会議を開き、宗教団体の幹部や大学教授などおよそ20人が出席しました。
会議の冒頭で文化庁の合田哲雄次長は「質問権の一般的な基準を定めるためさまざまな角度から議論していただき、次回の会議で一定の方向性を示したい」と述べ、基準の具体的な方向性を来月8日に開かれる次回の会議で示すことを明らかにしました。
議事は非公開で行われ、担当者の説明によりますと委員からは「事案の悪質性、継続性などの観点から基準を具体化すべきだ」という意見や「宗教的行為に介入させないなど信教の自由を考慮した基準にすべきだ」という意見もあったということです。
専門家会議が今後定める基準をもとに文部科学省は質問案を作成し、年内にも旧統一教会に対する「質問権」の行使をすることにしています。そして解散命令に該当しうる事実関係を把握した場合には、裁判所への請求を検討する方針です。
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旧統一教会めぐり「質問権」行使のための会議 今後どうなる?
2022-10-25 11:02:58

旧統一教会をめぐって宗教法人法に基づく「質問権」を行使するため、文部科学省は25日、初めての専門家会議を開き、基準の具体的な方向性を来月上旬にも示すことを明らかにしました。
「質問権」とは宗教法人に解散命令に該当する疑いがある場合などに、文部科学省や都道府県が運営実態などについて報告を求めたり質問したりできるものですが、実際に行使された例はありません。
専門家会議での議論や今後の焦点をまとめました。
「質問権」とは宗教法人に解散命令に該当する疑いがある場合などに、文部科学省や都道府県が運営実態などについて報告を求めたり質問したりできるものですが、実際に行使された例はありません。
専門家会議での議論や今後の焦点をまとめました。

経緯と背景は
ことし7月に発生した安倍元総理大臣の銃撃事件をきっかけに、改めて問題が浮き彫りとなった旧統一教会。
高額献金などの被害者救済に取り組む弁護士などからは、教会への解散命令を裁判所に請求するよう、政府に求める声が上がるようになりましたが、政府は当初、信教の自由を保障する観点から慎重な立場をとっていました。
しかし、この間、岸田内閣の支持率は、この問題や安倍元総理大臣の「国葬」などを背景に下落。
野党側は、教会との関係が明らかになった山際経済再生担当大臣の更迭を迫るなど、追及を強めました。
こうした中、岸田総理大臣は、衆議院予算委員会初日の今月17日、宗教法人法に基づく「質問権」の行使を表明。
高額献金などの被害者救済に取り組む弁護士などからは、教会への解散命令を裁判所に請求するよう、政府に求める声が上がるようになりましたが、政府は当初、信教の自由を保障する観点から慎重な立場をとっていました。
しかし、この間、岸田内閣の支持率は、この問題や安倍元総理大臣の「国葬」などを背景に下落。
野党側は、教会との関係が明らかになった山際経済再生担当大臣の更迭を迫るなど、追及を強めました。
こうした中、岸田総理大臣は、衆議院予算委員会初日の今月17日、宗教法人法に基づく「質問権」の行使を表明。

教会への解散命令を視野に入れた対応を決断しました。
野党の追及を受ける前に、教会側に厳正な対応をとる立場を明確にすることで、局面の転換を図るねらいがあったとみられます。
野党の追及を受ける前に、教会側に厳正な対応をとる立場を明確にすることで、局面の転換を図るねらいがあったとみられます。
今後の焦点は
政府は、年内にも「質問権」の行使による調査を行うとしています。
一方、解散命令を請求する要件について岸田総理大臣は今月18日「民法上の不法行為は含まれない」という見解を示しましたが、野党の指摘を受け、翌日には一転して「入りうる」と修正し、各党から「朝令暮改だ」との批判が出されたほか「解散命令へのハードルが下がった」という受け止めも出ています。
政府は、調査を通じて客観的な事実を積み上げていく方針で、途中段階でも十分な根拠がそろえば、請求に踏み切ることもあり得るという認識を示しています。
これに対し、野党側には「すでに事実は積み上がり、ただちに解散命令を請求すべきだ」という声があり政府が、いつ、どのような結論を出すのかが最大の焦点となります。
一方、解散命令を請求する要件について岸田総理大臣は今月18日「民法上の不法行為は含まれない」という見解を示しましたが、野党の指摘を受け、翌日には一転して「入りうる」と修正し、各党から「朝令暮改だ」との批判が出されたほか「解散命令へのハードルが下がった」という受け止めも出ています。
政府は、調査を通じて客観的な事実を積み上げていく方針で、途中段階でも十分な根拠がそろえば、請求に踏み切ることもあり得るという認識を示しています。
これに対し、野党側には「すでに事実は積み上がり、ただちに解散命令を請求すべきだ」という声があり政府が、いつ、どのような結論を出すのかが最大の焦点となります。
「実効性のある形で質問権を行使してほしい」
「小川さゆり」の名前で、両親が行った献金や自身が受けた精神的な被害などを訴えている旧統一教会の宗教2世の女性は、専門家会議で「質問権」を行使するための議論が始まったことについて「信教の自由があり難しい問題ですが、民法上の不法行為も解散命令請求の要件に入りうると明言してもらったので、私たち被害者にとっては大きな一歩でありがたい。中身のないものになってしまうのが一番よくないので、しっかり実効性のある形で質問権を行使してほしい」と話しました。

一方で「小川さん」は、手続きにどれくらい時間がかかるのか明確にならないと安心できないとして「今もなお被害を受けている人がいて、その中には未成年の子どもも含まれているので、時間がかかればかかるほど自分と同じように子どもたちの未来が失われてしまう。旧統一教会も対策を立ててくると思うので、早急にやってほしい」と述べ、速やかな対応が必要だと訴えました。
旧統一教会「質問が来た際には誠実に対応する」
旧統一教会が20日に開いた記者会見で、勅使河原秀行教育改革推進本部長は、政府が「質問権」の行使を表明していることについて、「仮に文化庁から質問が来た際には誠実に対応します」と述べています。
磯崎官房副長官「基準を明らかにすることが必要」
磯崎官房副長官は記者会見で「会議では、宗教法人法に定める報告徴収・質問権がどのような場合に行使できるかについて、基準を明らかにすることが必要だという認識で一致したと聞いている」と述べました。
そのうえで「信教の自由とも密接にかかわる事項なので、適切な行使のためには一般的な基準について定め、これを明確にすることが重要だと考えている。年内のできるかぎり早いうちに質問権が行使できるよう、文部科学大臣が取り組むと承知している」と述べました。
そのうえで「信教の自由とも密接にかかわる事項なので、適切な行使のためには一般的な基準について定め、これを明確にすることが重要だと考えている。年内のできるかぎり早いうちに質問権が行使できるよう、文部科学大臣が取り組むと承知している」と述べました。
野党ヒアリング「今ある事実で請求できる認識で取り組む必要」
立憲民主党や共産党などは政府からヒアリングを行いました。
出席した議員からは「質問権を行使しても、解散命令請求を根拠づける新たな事実は出てこないのではないかと指摘されている。今ある事実でも請求はできるという認識のもと取り組むことが必要だ」といった指摘が出されました。
また、元信者などの支援活動をしている「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の阿部克臣弁護士は「質問権の行使による調査で、解散命令請求につながるような 違法・不当な行為の情報を出してくるとは思えない。政府には、民事や刑事の裁判の判例をもとに請求の準備を進めてほしい」と要望しました。
出席した議員からは「質問権を行使しても、解散命令請求を根拠づける新たな事実は出てこないのではないかと指摘されている。今ある事実でも請求はできるという認識のもと取り組むことが必要だ」といった指摘が出されました。
また、元信者などの支援活動をしている「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の阿部克臣弁護士は「質問権の行使による調査で、解散命令請求につながるような 違法・不当な行為の情報を出してくるとは思えない。政府には、民事や刑事の裁判の判例をもとに請求の準備を進めてほしい」と要望しました。
ソース:NHK ニュース