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匿名で審理 傍聴席には遮蔽板も 障害者殺傷事件初公判
2020-01-08 09:01:02

相模原市の知的障害者施設で入所者19人が殺害されるなどした事件の裁判。8日の初公判では、被害者は個人が特定される情報は伏せて匿名で審理が行われたほか、傍聴席に遮蔽板が設置され、遺族などがほかの傍聴者から見えないようにする異例の対応がとられました。
法廷には遺族などが座っている姿がほかの傍聴者から見えないように傍聴席の一部に高さ1メートル80センチほどの白の遮蔽板が設置されました。
この対応について、裁判長は冒頭、「被害者や遺族のプライバシーに配慮して傍聴席の一部を遮蔽板で見えないようにしている」と述べました。
また裁判長は検察官が起訴状を読み上げる前に、被害者の要望に応じて個人が特定される情報は伏せて匿名で審理を行うことを説明しました。
これを受けて検察官は起訴状を読み上げる際、漢字の「甲」「乙」「丙」という文字と、アルファベットを組み合わせて、殺人事件の被害者19人については「甲Aほか18名」などと述べました。
また殺人未遂事件の被害者については「乙Aほか23名」、施設の職員については「丙A」などと読み上げました。
被告に対しては起訴状を読み上げたあと、起訴状と被害者の名前が示された一覧表を示しました。
一方、殺人未遂事件の被害者で、今回ただ1人実名で審理が行われる尾野一矢さんについては8日の審理では名前は出ませんでした。
被害者を匿名にして審理が行われたことについて、裁判を傍聴した71歳の女性は「亡くなった19人やけがをした人が匿名のまま裁判が行われ、存在していなかったように扱われていると感じるので残念。廷内に遮蔽板を設置するという今回の対応には今の社会のありようが表れていると思う」と話していました。
また兵庫県から車いすで訪れ裁判を傍聴した45歳の女性は「裁判官が『犠牲者の名前を甲と呼ぶとか、AとかBとかで呼ぶ』と説明するのを聞いて、悲しい気持ちになりました。19人の人格があって、それぞれの名前を呼んであげたいと思いました。匿名で裁判をしないといけない社会にも腹が立ちました」と話していました。
この対応について、裁判長は冒頭、「被害者や遺族のプライバシーに配慮して傍聴席の一部を遮蔽板で見えないようにしている」と述べました。
また裁判長は検察官が起訴状を読み上げる前に、被害者の要望に応じて個人が特定される情報は伏せて匿名で審理を行うことを説明しました。
これを受けて検察官は起訴状を読み上げる際、漢字の「甲」「乙」「丙」という文字と、アルファベットを組み合わせて、殺人事件の被害者19人については「甲Aほか18名」などと述べました。
また殺人未遂事件の被害者については「乙Aほか23名」、施設の職員については「丙A」などと読み上げました。
被告に対しては起訴状を読み上げたあと、起訴状と被害者の名前が示された一覧表を示しました。
一方、殺人未遂事件の被害者で、今回ただ1人実名で審理が行われる尾野一矢さんについては8日の審理では名前は出ませんでした。
被害者を匿名にして審理が行われたことについて、裁判を傍聴した71歳の女性は「亡くなった19人やけがをした人が匿名のまま裁判が行われ、存在していなかったように扱われていると感じるので残念。廷内に遮蔽板を設置するという今回の対応には今の社会のありようが表れていると思う」と話していました。
また兵庫県から車いすで訪れ裁判を傍聴した45歳の女性は「裁判官が『犠牲者の名前を甲と呼ぶとか、AとかBとかで呼ぶ』と説明するのを聞いて、悲しい気持ちになりました。19人の人格があって、それぞれの名前を呼んであげたいと思いました。匿名で裁判をしないといけない社会にも腹が立ちました」と話していました。
匿名審理にあたり取材班は
今回の裁判で、被害者は重傷を負った尾野一矢さんを除いて匿名での審理となる見通しです。
この事件では発生当初から警察が「家族の意向」などとして、亡くなった19人全員を匿名で発表する異例の対応を取りました。公開が原則の裁判でもその状態が続くことになります。
ご遺族が座る傍聴席と一般の傍聴席の間には遮蔽板が設けられ、私たちも過去に経験したことがない法廷になります。
今回の事件では匿名となったことで亡くなられた方の姿が見えませんでしたが、取材の中でそのお名前を知り、ご遺族や関係者からお話をうかがえたことで、19人の人柄や人生の一端を知ることができました。
そこには被告が主張した「不幸しかつくらない」とか「意思疎通ができない」といったこととは全く違う、豊かな感情があり、周りの人と深く関わり合いながら過ごしてこられた人生がありました。
匿名ならばと話して下さった方が多く、取材班では「19のいのち」という特設サイトを立ち上げ、イラストなどを交えてお1人お1人のエピソードを伝えてきました。
これに対し、さまざまなご意見もいただきました。「障害のある人や家族に差別や偏見がある社会において匿名はやむを得ない」という声があった一方で、障害のある当事者やそのご家族などから「他の事件と同じようにその人生を名前とともに伝えてほしい」「名前を伝えることが差別をなくす一歩になる」といった声もいただき、取材班では議論を続けてきました。
8日の初公判にあたってもどのように伝えるべきか検討を重ねました。裁判では被告が19人に対し、実態と異なる差別的な発言を繰り返すことや、それに同調する人が出ることへのご遺族の懸念がある一方、こうした中でも、初めて下の名前だけでも伝えようと決心されたご遺族や、傍聴という形や、法廷で気持ちを直接語る形で被告と対じしようとされているご遺族がいます。
お話を伺う中で、3年半近く悩みぬいて、ぎりぎりのところでそれぞれが出された判断だと受け止めています。それが匿名での審理につながっていると考え、初公判についてはそのままお伝えします。
NHKは事故や事件、災害などで亡くなられた方を実名で伝えてきました。「名前」はその人の存在そのものであり、誰であれ、差などあろうはずもありません。
今回の裁判では匿名で審理されますが、被告によって一方的に傷つけられた19人の方々の尊厳を取り戻し、社会にある差別や偏見をなくしていくために、私たちはこれからも、お1人お1人の人生をつぶさに伝えていく取り組みを続けてまいります。
この事件では発生当初から警察が「家族の意向」などとして、亡くなった19人全員を匿名で発表する異例の対応を取りました。公開が原則の裁判でもその状態が続くことになります。
ご遺族が座る傍聴席と一般の傍聴席の間には遮蔽板が設けられ、私たちも過去に経験したことがない法廷になります。
今回の事件では匿名となったことで亡くなられた方の姿が見えませんでしたが、取材の中でそのお名前を知り、ご遺族や関係者からお話をうかがえたことで、19人の人柄や人生の一端を知ることができました。
そこには被告が主張した「不幸しかつくらない」とか「意思疎通ができない」といったこととは全く違う、豊かな感情があり、周りの人と深く関わり合いながら過ごしてこられた人生がありました。
匿名ならばと話して下さった方が多く、取材班では「19のいのち」という特設サイトを立ち上げ、イラストなどを交えてお1人お1人のエピソードを伝えてきました。
これに対し、さまざまなご意見もいただきました。「障害のある人や家族に差別や偏見がある社会において匿名はやむを得ない」という声があった一方で、障害のある当事者やそのご家族などから「他の事件と同じようにその人生を名前とともに伝えてほしい」「名前を伝えることが差別をなくす一歩になる」といった声もいただき、取材班では議論を続けてきました。
8日の初公判にあたってもどのように伝えるべきか検討を重ねました。裁判では被告が19人に対し、実態と異なる差別的な発言を繰り返すことや、それに同調する人が出ることへのご遺族の懸念がある一方、こうした中でも、初めて下の名前だけでも伝えようと決心されたご遺族や、傍聴という形や、法廷で気持ちを直接語る形で被告と対じしようとされているご遺族がいます。
お話を伺う中で、3年半近く悩みぬいて、ぎりぎりのところでそれぞれが出された判断だと受け止めています。それが匿名での審理につながっていると考え、初公判についてはそのままお伝えします。
NHKは事故や事件、災害などで亡くなられた方を実名で伝えてきました。「名前」はその人の存在そのものであり、誰であれ、差などあろうはずもありません。
今回の裁判では匿名で審理されますが、被告によって一方的に傷つけられた19人の方々の尊厳を取り戻し、社会にある差別や偏見をなくしていくために、私たちはこれからも、お1人お1人の人生をつぶさに伝えていく取り組みを続けてまいります。
ソース:NHK ニュース