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見過みすごされた“困窮こんきゅうほそった72さいと66さい兄弟きょうだい死亡しぼう

2020-02-06 07:57:57

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去年きょねん12つき東京とうきょう 江東こうとう集合しゅうごう住宅じゅうたくで72さいと66さい兄弟きょうだいほそった状態じょうたい死亡しぼうしているのがつかりました。電気でんきガスめられ食べ物たべものほとんどなく、困窮こんきゅうしたすえ死亡しぼうしたとみられています。

発見はっけんされた遺体いたい 体重たいじゅうは30キロだいと20キロだい

去年きょねん12つき24にちのクリスマスイブ、江東こうとう北砂きたすな集合しゅうごう住宅じゅうたく異臭いしゅうがすることなどから通報つうほうがあり、けつけた警察官けいさつかんが、男性だんせいにん遺体いたいつけました。

警視庁けいしちょうによりますと、死後しごよんにちから10にちほどたっていて事件じけんせいはないと判断はんだんされました。

その後そのご関係かんけいしゃへの取材しゅざいによりますと、くなったのはこの部屋へや72さいと66さい兄弟きょうだいで、いずれほそっていててい栄養えいようてい体温たいおん状態じょうたい死亡しぼうしたとみられています。体重たいじゅうあには30キロだいおとうとは20キロだいしかありませんでした。

料金りょうきん滞納たいのう電気でんきガスめられていて、電気でんきかよっていない冷蔵庫れいぞうこはいっていたのは里芋さといもだけでした。水道すいどうか月かげつまえ去年きょねん7月しちがつから料金りょうきん滞納たいのうし、められる直前ちょくぜんでした。

兄弟きょうだい台東たいとうまれで、およそ20ねんまえから江東こうとうこの部屋へやにんらしていたということです。いずれ年金ねんきんはありませんでした。

おとうとはかつて運送うんそう会社かいしゃ勤務きんむしていましたが、現在げんざい無職むしょくあに警備けいび会社かいしゃつとめていて、その給料きゅうりょうにん唯一ゆいいつ収入しゅうにゅうだったとみられていますが、去年きょねん9月くがつごろから体調たいちょうくずしてはたらけなくなっていました。

近所きんじょづきあいはほとんどなく、兄弟きょうだい困窮こんきゅうしていたことをひとはいませんでした。

集合しゅうごう住宅じゅうたくおなかいにおよそ30ねんんでいるという80だい女性じょせいは「にんくなっていたこともらなかった」とはなしていました。

親族しんぞくとのつきあいも途絶とだえていて、にん遺体いたい引き取ひきとった唯一ゆいいつ親族しんぞくによりますと、最後さいごったのはおよそ15ねんまえだということです。

この親族しんぞくは「くなったことをらせる警察けいさつからの電話でんわで、はじめてにん困窮こんきゅうしていたことをった。遺影いえいもなく、葬式そうしきもせずにそのまま火葬かそうしてもらった」とはなしていました。

さらに江東こうとう福祉ふくし担当たんとう部署ぶしょも、先月せんげつNHKえぬえいちけいから取材しゅざいけるまで今回こんかいケースそのものを把握はあくしておらず、兄弟きょうだい福祉ふくし支援しえんけていませんでした。

によりますと、くなったにんから生活せいかつ保護ほご申請しんせい相談そうだんはなかったということです。

経済けいざいてき困窮こんきゅう過去かこにも

経済けいざいてき困窮こんきゅうしたひとがみずからごえげず、生活せいかつ保護ほごなど福祉ふくし支援しえんけていないケースめずらしくありません。

厚生こうせい労働ろうどうしょうによりますと、平成へいせい28ねんの「国民こくみん生活せいかつ基礎きそ調査ちょうさ」をもとにした推計すいけいでは、所得しょとく生活せいかつ保護ほご基準きじゅん下回したまわ世帯せたいうち生活せいかつ保護ほごけていない世帯せたいおよそろくわりのぼ推計すいけいされています。

そのなかには、今回こんかいのように深刻しんこく事態じたいいたってしまうケースもあります。

平成へいせい24ねんには札幌さっぽろで40だい姉妹しまい電気でんきガスめられた部屋へや死亡しぼうしているのがつかったほか、さいたまでも60だい夫婦ふうふと30だい息子むすこ親子おやこさんにんほそった状態じょうたい死亡しぼうしているのがつかりました。

困窮こんきゅうしゃ対策たいさく発見はっけんできず

江東こうとうでは困窮こんきゅうしているひとたちを福祉ふくしにつなげようという取り組とりくみをすすめてきましたが、今回こんかい兄弟きょうだいつけることはできませんでした。

江東こうとうによりますと、は75さい以上いじょう高齢こうれいしゃのみの世帯せたい訪問ほうもんする事業じぎょうなどおこなっていました。ところが、72さいと66さいだった兄弟きょうだい対象たいしょうにはなりませんでした。

またねんまえには東京とうきょう水道すいどうきょく協定きょうていむすび、料金りょうきん滞納たいのうつづ生活せいかつ困窮こんきゅうしている様子ようすがうかがえる場合ばあいなどは、水道すいどうきょくから情報じょうほう提供ていきょうしてもらうことになっていました。

水道すいどうきょくによりますと、兄弟きょうだい去年きょねん7月しちがつから料金りょうきん滞納たいのうつづいていて、11つき以降いこう担当たんとうしゃ電話でんわ訪問ほうもんこころみましたが、生活せいかつ困窮こんきゅう状況じょうきょう直接ちょくせつ確認かくにんすることができず、への通報つうほうおこなわれませんでした。

江東こうとう長寿ちょうじゅ応援おうえん加藤かとう章子あきこ課長かちょう今回こんかい兄弟きょうだいケースについて、「あらゆる取り組とりくみをしてきたがそれでも把握はあくできなかったもので、これまでの取り組とりくみが不十分ふじゅうぶんだったとはおもっていない」とはなしています。

協定きょうていむすんでいた東京とうきょう水道すいどうきょくからの情報じょうほう提供ていきょうがなかったことについては、「けっして水道すいどうきょく連携れんけいがとれていなかったとはかんがえていない。連絡れんらくすべきことがてきた場合ばあいには連絡れんらくしてくれるようさい確認かくにんしていきたい」とべました。

そのうえで、「把握はあくできない困窮こんきゅうしゃについてどういったことができるのかは今後こんご検討けんとうすべき課題かだいだ。ライフライン事業じぎょうしゃかぎらずおおくの方々かたがた連携れんけいはかりながら取り組とりくみをつづけていきたい」とはなしています。

教訓きょうくんかされていない実態じったい

困窮こんきゅう問題もんだい各地かくちあきらかになった平成へいせい24ねん以降いこう全国ぜんこく自治体じちたい対策たいさくすすめられてきたはずでした。

厚生こうせい労働ろうどうしょう困窮こんきゅうしているひとたちをはや段階だんかいつけて福祉ふくしにつなげるため、全国ぜんこく自治体じちたい通知つうちして電気でんき水道すいどうなどライフラインの事業じぎょうしゃ連携れんけいするようもとめました。

料金りょうきん滞納たいのうしている困窮こんきゅうしゃに関にかんする情報じょうほうなど事業じぎょうしゃから提供ていきょうしてもらい、支援しえん必要ひつようひとつけるしくみです。

水道すいどうきょくからの情報じょうほう ねんはちけんにとどまる

これけて各地かくち自治体じちたいとライフライン事業じぎょうしゃ情報じょうほう提供ていきょう協定きょうていむすんでいます。

このうち東京とうきょう水道すいどうきょく都内とないみず供給きょうきゅうしているすべての市町しちょう協定きょうていむすんでいます。

しかし水道すいどうきょくによりますと、平成へいせい27年度ねんどから昨年度さくねんどまでの年間ねんかんに23通報つうほうした困窮こんきゅうしゃ情報じょうほうわせてはちけんにとどまっています。

料金りょうきん滞納たいのう水道すいどうめる措置そち対象たいしょうになっているひとは23およそまんにんのぼりますが、生活せいかつくるしいひとだけでなく、支払しはらいをわすれていたり、お金おかねあるのにはらわなかったりするひとめずらしくないということです。

東京とうきょう水道すいどうきょくは「現場げんば担当たんとうしゃが、その世帯せたい困窮こんきゅうしているか見極みきわめることはむずかしく通報つうほうすべきか見分みわけることは簡単かんたんではない」としています。

また東京とうきょう電力でんりょくは、東京とうきょう平成へいせい28ねん協定きょうていむすんでいるほか、23ではおよそ半数はんすう個別こべつ協定きょうていむすんでいます。

料金りょうきん滞納たいのう電気でんきめるまえ社員しゃいん訪問ほうもんしたさいなど困窮こんきゅうしているひとからの申し出もうしでければ、福祉ふくし行政ぎょうせい窓口まどぐち情報じょうほう提供ていきょうするとしています。

これまでに情報じょうほう提供ていきょうした件数けんすうについて東京とうきょう電力でんりょくでは把握はあくしていないということです。

東京ガスとうきょうがすは、利用りようしゃ困窮こんきゅう把握はあくした場合ばあい行政ぎょうせい支援しえん窓口まどぐちあることを利用りようしゃがわつたえる取り組とりくみをすすめていますが、都内とない自治体じちたいたいして困窮こんきゅうしゃ情報じょうほうつたえた事例じれいはないということです。

専門せんもんうたがわしい情報じょうほう すべて通報つうほうするしくみを」

社会しゃかい福祉ふくし生活せいかつ困窮こんきゅうしゃ支援しえんおこなっているNPOえぬぴ-お-法人ほうじんほっとプラス」の藤田ふじた孝典たかのり理事りじは、困窮こんきゅうしているひとがみずからたすもとめようとしないケースすくなくないと指摘してきします。

藤田ふじた理事りじは「お金おかねがなくて生活せいかつ保護ほご申請しんせいするのははじだとおもっているひとおおく、孤立こりつしている場合ばあいだれかにたよハードルが非常ひじょうたかくなってしまう。『自分じぶん責任せきにん』『自分じぶん頑張がんばる』という価値かちかんひと非常ひじょうおお周囲しゅうい気付きづいたときには手遅ておくになってしまうので、外側そとがわから『大丈夫だいじょうぶですか?』『いまこまっていませんか?』とこえをかけていくことが必要ひつようだ」とはなしています。

そのうえで「水道すいどうなど料金りょうきん滞納たいのう困窮こんきゅうしているひと発見はっけんするうえ重要じゅうようポイントだ。本人ほんにんなにかたらなくてもライフラインの滞納たいのう困窮こんきゅうあきらかになり、それがいのちすく情報じょうほうなる」と指摘してきしています。

ところが今回こんかいケースでは、協定きょうていがあってもライフラインの事業じぎょうしゃから行政ぎょうせいへの通報つうほうがごくわずかな件数けんすうにとどまっていることがあきらかになりました。

これについて藤田ふじた理事りじは「しくみとしてまった機能きのうしていない。おおくの犠牲ぎせいけてできたくみなのに、機能きのうしなければ犠牲ぎせいになったひとたちのおもいが反映はんえいされないことになるかたちばかりの協定きょうていでは意味いみがなく、うたがわしい情報じょうほうはすべて行政ぎょうせい通報つうほうするしくみにすべきだ」と指摘してきしています。
ソース:NHK ニュース