“志村しむらけんさんに感染かんせんさせた”うそ書き込かきこみ クラブのママ 提訴ていそ

大阪おおさか・北新地きたしんちのクラブのママが3年ねん前まえ、新型しんがたコロナウイルスによる肺炎はいえんで亡なくなったコメディアンの志村しむらけんさんにウイルスを感染かんせんさせたかのようなインターネット上じょうのうその書き込かきこみで名誉めいよを傷きずつけられたと主張しゅちょうし、投稿とうこうした26人にんに3300万まん円えん余あまりの賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを起おこしました。

訴うったえを起おこしたのは、大阪おおさかの繁華はんか街がい・北新地きたしんちにある「クラブ藤崎ふじさき」のママ、藤崎ふじさきまり子まりこさんです。

訴状そじょうなどによりますと、コメディアンの志村しむらけんさんが新型しんがたコロナウイルスによる肺炎はいえんで亡なくなった3年ねん前まえの3月つき、インターネットの掲示板けいじばんなどで「東京とうきょう 銀座ぎんざで開ひらかれたパーティーで、コロナに感染かんせんした藤崎ふじさきさんが、志村しむらさんにウイルスをうつした」などと、感染かんせん源げんであるかのようなうその書き込かきこみが拡散かくさんされたと主張しゅちょうしています。

藤崎ふじさきさんは、当時とうじ、新型しんがたコロナに感染かんせんしておらず、志村しむらさんとの面識めんしきもありませんでしたが、藤崎ふじさきさんのSNSには、書き込かきこみを信しんじた人ひとたちから「死しね」とか、「人殺ひとごろし」、「外そとを歩あるけると思おもうな」などとひぼう中傷ちゅうしょうや脅迫きょうはくめいた内容ないようのメッセージが、2か月かげつ以上いじょうにわたって、毎日まいにち、数すう百ひゃく件けん届とどいたということです。

藤崎ふじさきさんは、掲示板けいじばんの運営うんえいサイトに開示かいじを求もとめるなどして特定とくていした投稿とうこう者しゃ26人にんに対にたいして、うその書き込かきこみで名誉めいよを傷きずつけられたと主張しゅちょうし、合あわせて3300万まん円えん余あまりの賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを大阪おおさか地方ちほう裁判所さいばんしょに起おこしました。

藤崎ふじさきさんは「デタラメな臆測おくそくが事実じじつであるかのようにすごいスピードで広ひろまった。画面がめんの向むこうでは人ひとの心こころが傷きずつくことを、書き込かきこむ前まえに考かんがえてほしい」と話はなしていました。

提訴ていそしたクラブのママ「死しを考かんがえたことも」

藤崎ふじさきまり子まりこさんは、志村しむらけんさんに新型しんがたコロナウイルスを感染かんせんさせたといううそを信しんじた人ひとたちからひぼう中傷ちゅうしょうのメッセージが連日れんじつ届とどき、「死しを考かんがえたこともあった」と言いいます。

訴状そじょうなどによりますと、3年ねん前まえの3月つきに志村しむらさんの感染かんせんが公表こうひょうされると、インターネット上じょうで「藤崎ふじさきさんのクラブに志村しむらさんが客きゃくとして訪おとずれていたようだ」という臆測おくそくの情報じょうほうが出回でまわりました。

志村しむらさんが店みせを訪おとずれたことはなく、面識めんしきがなかったうえ、藤崎ふじさきさんは新型しんがたコロナに感染かんせんもしていませんでしたが、デマは、次第しだいに「東京とうきょう 銀座ぎんざのパーティーで新型しんがたコロナに感染かんせんした藤崎ふじさきさんが、志村しむらさんにウイルスをうつした」などと、事実じじつではないのに具体ぐたい的てきでストーリー性せいを帯おびたものになったといいます。

藤崎ふじさきさんは「根ねも葉はもない話はなしで、はじめは『誰だれも信しんじないだろう』と気きにしないようにしていたが、尾おひれがついて不安ふあんになりだした」と振り返ふりかえりました。

志村しむらさんが亡なくなるとこのデマが一気いっきに拡散かくさんしました。

藤崎ふじさきさんのSNSにはデマを信しんじた人ひとたちから、2か月かげつ以上いじょうにわたって毎日まいにち、数すう百ひゃく件けんの匿名とくめいのメッセージが届とどき、スマートフォンの通知つうちが鳴なりやまなかったといいます。

メッセージは、「死しね」とか「人殺ひとごろし」、「外そとを出歩であるけると思おもうな」などというひぼう中傷ちゅうしょうや脅迫きょうはくめいた内容ないようで、藤崎ふじさきさんが書き込かきこみは誤あやまりだと返信へんしんしても、「嘘うそをつくな」などと聞き入ききいれられなかったということです。

藤崎ふじさきさんは「親おやや親戚しんせきにも迷惑めいわくがかかるのならば、自分じぶんが死しんだら済すむのかと思おもった。見みえない相手あいてからの攻撃こうげきは本当ほんとうに怖こわいと感かんじた」と話はなしました。

その後そのご、およそ2年間ねんかんかけてデマを書き込かきこんだ50人にん以上いじょうを特定とくていするため運営うんえいサイトに開示かいじを求もとめる裁判さいばんなどを起おこし、その費用ひようは1000万まん円えん以上いじょうかかったということです。

そして先月せんげつ、このうち謝罪しゃざいや示談じだんなどに応おうじなかった投稿とうこう者しゃ26人にんに対にたいして賠償ばいしょうを求もとめる訴うったえを起おこしました。

藤崎ふじさきさんは「SNSでのデマに苦くるしむ人ひとが減へってほしい。根拠こんきょのない話はなしを安直あんちょくに信しんじて広ひろめることで、誰だれかを傷きずつけることがあると考かんがえる人ひとが増ふえてほしい」と話はなしていました。

ネットやSNSでのひぼう中傷ちゅうしょう 対策たいさくの強化きょうかは

インターネットやSNSでのひぼう中傷ちゅうしょうが深刻しんこく化かする中なか、被害ひがいを受うけた人ひとたちの声こえを受うけて、対策たいさくは強化きょうかされてきました。

3年ねん前まえ、民放みんぽうのテレビ番組ばんぐみに出演しゅつえんしていたプロレスラーの木村きむら花はなさんがSNS上じょうでひぼう中傷ちゅうしょうを受うけ、22歳さいの若わかさでみずから命いのちを絶たちました。

この問題もんだいをきっかけに、対策たいさくの強化きょうかに向むけた議論ぎろんが加速かそくし、2021年ねん、ひぼう中傷ちゅうしょうを投稿とうこうした人物じんぶつを速すみやかに特定とくていできるよう新あらたな裁判さいばん手続てつづきをつくる「改正かいせいプロバイダ責任せきにん制限せいげん法ほう」が成立せいりつしました。

一方いっぽう、投稿とうこうした人物じんぶつに対にたいする侮辱ぶじょく罪ざいの刑けいの重おもさは「30日にち未満みまんの拘留こうりゅう」または「1万まん円えん未満みまんの科料かりょう」と刑法けいほうの中なかでは最もっとも軽かるかったため、「抑止よくし力りょくになっていない」などとして、見直みなおしを求もとめる声こえがあがりました。

しかし、侮辱ぶじょく罪ざいの厳罰げんばつ化かによって憲法けんぽうが保障ほしょうする表現ひょうげんの自由じゆうがおびやかされるなどと懸念けねんする声こえもあり、国会こっかいでの議論ぎろんの末すえに、去年きょねん6月つき、侮辱ぶじょく罪ざいの法定ほうてい刑けいの上限じょうげんを「1年ねん以下いかの懲役ちょうえき・禁錮きんこ」と「30万まん円えん以下いかの罰金ばっきん」に引き上ひきあげる法ほう改正かいせいが行おこなわれました。

インターネット上じょうでのひぼう中傷ちゅうしょうなどについて対応たいおうを案内あんないしている「違法いほう・有害ゆうがい情報じょうほう相談そうだんセンター」によりますと、2022年度ねんどの相談そうだん件数けんすうは5745件けんで、10年ねん前まえの2012年度ねんどと比くらべて2.4倍ばいに増ふえています。

ソース：NHK ニュース