インドのモディ首相は、最初の訪問地ニューヨークから21日、首都ワシントンに入りました。
アメリカのバイデン大統領が国賓として招いた首脳としてはフランス、韓国に次いで3人目で、インドの首相としては2009年以来14年ぶりとなります。
両首脳は22日午前、日本時間の22日夜、ホワイトハウスで会談を行います。
インドにこれまで多くの兵器を供給してきたのはロシアですが、バイデン政権の高官によりますと、両首脳は▽アメリカが開発した戦闘機用のエンジンをインド国内で共同で生産することや、▽インド政府がアメリカ製の攻撃用無人機を購入することなどで合意する見通しです。
また、先端技術分野での協力として、▽アメリカ半導体大手によるインド国内への投資のほか、▽宇宙やクリーンエネルギー分野での戦略的技術パートナーシップを深化させるとしています。
中国が覇権主義的な行動を強める中、アメリカとインドは、先月、G7広島サミットにあわせて行った日本とオーストラリアを含む4か国の枠組み「クアッド」の首脳会合でも連携を確認していて、今回の会談を通じて一層の関係強化を図る見通しです。
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アメリカとインド 首脳会談へ 両国のねらい 思惑は?
2023-06-22 09:54:58

アメリカのバイデン大統領は、インドのモディ首相を国賓としてワシントンに招き首脳会談を行います。双方は、防衛分野などでの協力について議論する予定で、覇権主義的な行動を強める中国を念頭に一層の関係強化を図る見通しです。
インド首相の国賓招待は14年ぶり
【アメリカの思惑】

対中国・ロシア 高まるインドの重要性
アメリカにとって「最大の競合国」と位置づける中国に対抗するうえで、インドの重要性は高まっています。
また、ロシアから多くの兵器を購入してきたインドと軍事・安全保障面で関係を深めることは、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの圧力を強めるうえでも有効だという考えがあります。
伝統的に非同盟主義をとってきたインドに接近するうえで、バイデン政権は、インド固有の立場にさまざまな配慮を示してきました。
また、ロシアから多くの兵器を購入してきたインドと軍事・安全保障面で関係を深めることは、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアへの圧力を強めるうえでも有効だという考えがあります。
伝統的に非同盟主義をとってきたインドに接近するうえで、バイデン政権は、インド固有の立場にさまざまな配慮を示してきました。

アメリカとインド、それに日本とオーストラリアからなる4か国の枠組み「クアッド」での協力関係を強化するうえでは、中国との経済的な結びつきが強いインドの立場を考え、安全保障分野での協力が前面に出過ぎないよう細心の注意を払ってきました。
さらに、欧米などがロシア産原油の国際的な取り引きに上限価格を設定する制裁を科す中、インドが一定の条件のもとでロシアからの輸入を続けていることについても強くは反対してきませんでした。
さらに、欧米などがロシア産原油の国際的な取り引きに上限価格を設定する制裁を科す中、インドが一定の条件のもとでロシアからの輸入を続けていることについても強くは反対してきませんでした。
地球規模のパートナー
バイデン政権が外国の首脳を国賓として招くのは、フランスのマクロン大統領、韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領に続いてモディ首相が3人目で、同盟関係を結んでいない国の首脳としては初めてです。
今回の首脳会談でバイデン大統領は、中国が覇権主義的な行動を強める中、民主主義という価値観を共有するインドと、軍事、先端技術、宇宙など幅広い分野での協力を確実に深め、インドをさらに自陣営に引き寄せたい考えです。
モディ首相の訪問を前に、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は「インドはアメリカにとってインド太平洋地域だけでなく地球規模での重要なパートナーだ。今後、両国の関係は決定的なもののひとつになる」と述べ、訪問が極めて重要なものになると強調しています。
今回の首脳会談でバイデン大統領は、中国が覇権主義的な行動を強める中、民主主義という価値観を共有するインドと、軍事、先端技術、宇宙など幅広い分野での協力を確実に深め、インドをさらに自陣営に引き寄せたい考えです。
モディ首相の訪問を前に、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は「インドはアメリカにとってインド太平洋地域だけでなく地球規模での重要なパートナーだ。今後、両国の関係は決定的なもののひとつになる」と述べ、訪問が極めて重要なものになると強調しています。
【インドのねらい】

アメリカと中国の関係が冷え込むのとは対照的に「歴史上、最も近い」といわれるほどアメリカに接近するインド。
背景には2つのねらいがあるとみられています。
背景には2つのねらいがあるとみられています。
隣国・中国をけん制
1つは、覇権主義的な行動を強める隣国・中国の存在があります。
先月、G7広島サミットにあわせて開かれた日本とアメリカ、オーストラリアとの4か国の枠組み「クアッド」の首脳会合では、他の首脳らとともに「力や強制によって現状を変更しようとする不安定化または一方的な行動に強く反対する」などという共同声明をまとめ、名指しは避けつつも、「世界最大の民主主義国」として連携して中国をけん制する姿勢を改めて示しました。
また、その直後には南太平洋のパプアニューギニアを初めて訪れて、島しょ国14か国の首脳らとの会合を開催。
インド洋だけではなく、中国が影響力を強める南太平洋にも積極的に関与していく姿勢を鮮明にしました。
先月、G7広島サミットにあわせて開かれた日本とアメリカ、オーストラリアとの4か国の枠組み「クアッド」の首脳会合では、他の首脳らとともに「力や強制によって現状を変更しようとする不安定化または一方的な行動に強く反対する」などという共同声明をまとめ、名指しは避けつつも、「世界最大の民主主義国」として連携して中国をけん制する姿勢を改めて示しました。
また、その直後には南太平洋のパプアニューギニアを初めて訪れて、島しょ国14か国の首脳らとの会合を開催。
インド洋だけではなく、中国が影響力を強める南太平洋にも積極的に関与していく姿勢を鮮明にしました。
国連安保理の常任理事国入りへアメリカの後押し期待
そして、インドがアメリカに接近するもう1つの理由が、悲願である国連安保理の常任理事国入りを果たすため、アメリカの後押しを得るという点です。
人口が14億を超え、まもなく中国を上回り世界一になるとみられるインド。
経済面でもGDP=国内総生産はおととし、宗主国だったイギリスを抜いて世界5位となりましたが、アジアの大国を自負するインドには、国際社会でふさわしい地位と権限が与えられていないという思いがあります。
伝統的な友好国であるロシアとの関係を維持しつつも、アメリカにも接近する背景には、名実ともに大国の仲間入りを果たすにはロシアだけではなく、アメリカの協力が不可欠だという認識があるとみられます。
人口が14億を超え、まもなく中国を上回り世界一になるとみられるインド。
経済面でもGDP=国内総生産はおととし、宗主国だったイギリスを抜いて世界5位となりましたが、アジアの大国を自負するインドには、国際社会でふさわしい地位と権限が与えられていないという思いがあります。
伝統的な友好国であるロシアとの関係を維持しつつも、アメリカにも接近する背景には、名実ともに大国の仲間入りを果たすにはロシアだけではなく、アメリカの協力が不可欠だという認識があるとみられます。
【インド外務省「防衛協力が重要テーマ」】
今月19日に会見を開いたインド外務省のクワトラ外務次官は、モディ首相の今回の訪米では2国間の防衛協力が重要なテーマだと述べました。
両国の間では首脳会談に向けた、いわゆる「地ならし」が続けられてきて、今月5日にはアメリカのオースティン国防長官が訪問先のニューデリーでインドのシン国防相と会談し、両国が新技術の共同開発や共同生産など防衛分野での協力を強化していくことで一致しました。
両国の間では首脳会談に向けた、いわゆる「地ならし」が続けられてきて、今月5日にはアメリカのオースティン国防長官が訪問先のニューデリーでインドのシン国防相と会談し、両国が新技術の共同開発や共同生産など防衛分野での協力を強化していくことで一致しました。

背景には、ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、最も頼りにしてきたロシアからの兵器の供給に遅れが出るなど、「輸入依存」の危うさが浮き彫りになったという事情があります。
インドは、国境をめぐって隣国の中国と緊張状態にありますが、軍事力では大きく水をあけられています。
先月8日には、老朽化が進み地元メディアが「空飛ぶ棺おけ」ともやゆする旧ソビエト製の戦闘機ミグ21が墜落し、住民3人が巻き添えになるなど、兵器の近代化や拡充は喫緊の課題となっています。
こうしたことから、モディ政権は、高い生産技術を持つ欧米との防衛分野での共同開発や共同生産を通じて技術移転を促し、兵器の国産化を進め、「輸入依存」からの脱却を図りたいねらいがあります。
インドは、国境をめぐって隣国の中国と緊張状態にありますが、軍事力では大きく水をあけられています。
先月8日には、老朽化が進み地元メディアが「空飛ぶ棺おけ」ともやゆする旧ソビエト製の戦闘機ミグ21が墜落し、住民3人が巻き添えになるなど、兵器の近代化や拡充は喫緊の課題となっています。
こうしたことから、モディ政権は、高い生産技術を持つ欧米との防衛分野での共同開発や共同生産を通じて技術移転を促し、兵器の国産化を進め、「輸入依存」からの脱却を図りたいねらいがあります。
専門家「歴史的訪問 2国間関係大きく前進へ」

今回のモディ首相の訪米について、インドの元外交官で政府系シンクタンク「インド防衛研究所」のアショーク・サジャンハール氏は、「2000年代初めごろはアメリカとインドの2国間の防衛協力など存在しないようなものだったが、その後、関係は大きく改善され、今やアメリカはロシアにつぐ2番目の兵器の供給元として浮上しつつある。歴史的な訪問となり、2国間関係を大きく前進させる『ゲームチェンジャー』になるだろう」と述べ、2国間の関係強化が進むという見方を示しました。
一方、先月、G7広島サミットにあわせて来日したウクライナのゼレンスキー大統領との初の対面での会談については「モディ首相はウクライナへの人道支援を続ける考えを伝えるとともに、対話と外交こそが唯一の解決策だという立場を改めて示した」と述べ、ロシアの軍事侵攻を支持しない一方、経済制裁には加わらない欧米と一線を画すインド独自の立場を貫いたとしています。
一方、先月、G7広島サミットにあわせて来日したウクライナのゼレンスキー大統領との初の対面での会談については「モディ首相はウクライナへの人道支援を続ける考えを伝えるとともに、対話と外交こそが唯一の解決策だという立場を改めて示した」と述べ、ロシアの軍事侵攻を支持しない一方、経済制裁には加わらない欧米と一線を画すインド独自の立場を貫いたとしています。
ソース:NHK ニュース