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きゅう優生ゆうせい保護ほごほう強制きょうせい不妊ふにん手術しゅじゅつ きょう最高裁さいこうさい判決はんけつ

2024-07-02 21:11:36

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きゅう優生ゆうせい保護ほごほうのもとで障害しょうがいなど理由りゆう不妊ふにん手術しゅじゅつ強制きょうせいされたひとたちが「戦後せんご最大さいだい人権じんけん侵害しんがい憲法けんぽう違反いはんしていた」としてくに賠償ばいしょうもとめている5つの裁判さいばんで、最高さいこう裁判所さいばんしょだい法廷ほうていは3にち判決はんけつ言い渡いいわたします。最高裁さいこうさい統一とういつてき判断はんだんしめ見通みとおで、「時間じかんかべ」ともばれるじょ期間きかんについてどのように判断はんだんするか、注目ちゅうもくされます。

きゅう優生ゆうせい保護ほごほうのもとで障害しょうがいなど理由りゆう不妊ふにん手術しゅじゅつ強制きょうせいされた全国ぜんこくひとたちがくに賠償ばいしょうもとめた裁判さいばんうち札幌さっぽろ仙台せんだい東京とうきょう大阪おおさか高等こうとう裁判所さいばんしょ判決はんけつされ、上告じょうこくされている5けんについて、最高さいこう裁判所さいばんしょだい法廷ほうていは3にち午後ごご判決はんけつ言い渡いいわたします。

ことし5つきひらかれた弁論べんろんで、原告げんこくがわは「きゅう優生ゆうせい保護ほごほう不妊ふにん手術しゅじゅつ障害しょうがいしゃを『不良ふりょう』とめつけ、子孫しそんのこさないために強制きょうせいてきおこなわれたものだ。戦後せんご最大さいだい人権じんけん侵害しんがいで、憲法けんぽう違反いはんしていた」など主張しゅちょうし、くには「不法ふほう行為こういから20ねんがたちじょ期間きかんぎているので賠償ばいしょうもとめる権利けんりがなくなっている」などと反論はんろんしました。


この5けん裁判さいばんで、高等こうとう裁判所さいばんしょいずれも「きゅう優生ゆうせい保護ほごほう憲法けんぽう違反いはんしていた」とみとめましたが、このうち4けんくに賠償ばいしょうめいじたのに対にたい、1けんは「じょ期間きかん」がぎたとしてうった退しりぞけました。

3にち判決はんけつでは最高裁さいこうさい統一とういつてき判断はんだんしめ見通みとおで、およそ2まん5000にん不妊ふにん手術しゅじゅつ根拠こんきょとなったきゅう優生ゆうせい保護ほごほう憲法けんぽう違反いはんみとめるどうか、「時間じかんかべ」ともばれるじょ期間きかんについてどのように判断はんだんするかが焦点しょうてんです。


裁判さいばんの2つの焦点しょうてん原告げんこくがわくに主張しゅちょう

焦点しょうてんいちきゅう優生ゆうせい保護ほごほう憲法けんぽう違反いはん
最高さいこう裁判所さいばんしょ判断はんだん注目ちゅうもくされるのは、きゅう優生ゆうせい保護ほごほう憲法けんぽう違反いはんしていたかどうかです。

原告げんこくがわ障害しょうがいしゃなどへの強制きょうせいてき不妊ふにん手術しゅじゅつみとめていたきゅう優生ゆうせい保護ほごほうについて、「くに障害しょうがいしゃらを差別さべつし、ひととしての尊厳そんげん否定ひていした。優生ゆうせい手術しゅじゅつによってどもそだてるどうかを自分じぶんめられず、からだきずつけられた」などとして平等びょうどうけん個人こじん尊厳そんげんなどを保障ほしょうする憲法けんぽう違反いはんしていたと主張しゅちょうしています。

一方いっぽうくにきゅう優生ゆうせい保護ほごほう憲法けんぽう違反いはんどうかについて、これまで一切いっさい主張しゅちょうしていません。

最高裁さいこうさい法律ほうりつ規定きていについて憲法けんぽう違反いはんだと判断はんだんしたのは、戦後せんご12れいしかなく、今回こんかいどのような判断はんだんなる注目ちゅうもくされます。

焦点しょうてん】「じょ期間きかん」が適用てきようされるかどう
もう1つの焦点しょうてんは、不法ふほう行為こういから20ねんぎる賠償ばいしょうもとめる権利けんりがなくなるという「じょ期間きかん」が適用てきようされるかどうかです。

原告げんこくがわは「くにきゅう優生ゆうせい保護ほごほうもとづく施策しさく推進すいしんしたことで偏見へんけん差別さべつ浸透しんとうし、原告げんこくたちは被害ひがい認識にんしきすることが困難こんなん状況じょうきょうだった。『じょ期間きかん』を適用てきようすることはいちじるしく正義まさよし公平こうへい理念りねんはんする」として、不妊ふにん手術しゅじゅつから時間じかんがたっていても損害そんがい賠償ばいしょうもとめることができる主張しゅちょうしています。

一方いっぽうくには「きゅう優生ゆうせい保護ほごほう手術しゅじゅつおこなわれていたことはおおやけにされていたのだから、当事者とうじしゃ損害そんがい賠償ばいしょうもとめることができなかったとはえない」と反論はんろんしています。

また不妊ふにん手術しゅじゅつけたひとたちに一時いちじきん支給しきゅうする法律ほうりつ施行しこうされたことをまえ、「国会こっかい問題もんだい解決かいけつ措置そちったのに、裁判所さいばんしょ判例はんれい根本こんぽんてき変更へんこうして解決かいけつはかことは裁判所さいばんしょ役割やくわりえている」と主張しゅちょうしています。

じょ期間きかん」は「時間じかんかべ」ともばれ、最高裁さいこうさい例外れいがいみとめた判決はんけつは2れいしかありません。

こえげることができなかった原告げんこくたちの事情じじょうどのように判断はんだんするのか注目ちゅうもくされます。


宮城みやぎけん原告げんこくくにがきちんと謝罪しゃざい補償ほしょうを」

3にち判決はんけつまえ宮城みやぎけん原告げんこく家族かぞくがNHKの取材しゅざいおうじ、おもかたりました。

原告げんこくの1にん飯塚いいづか淳子じゅんこさん(70だい仮名かめい)は25ねん以上いじょうまえから全国ぜんこく先駆さきがけてくに謝罪しゃざい補償ほしょうもとつづけ、裁判さいばん全国ぜんこくひろがるきっかけとなりました。

飯塚いいづかさんは「手術しゅじゅつがなければしあわたくさんあったとおもいます。この被害ひがいやみほうむられてはこまおもい、まよいながらたった1にんこえをあげました。ここまでのに本当ほんとうながくるしかったです。人生じんせいもうなくなっているのでくにがきちんと謝罪しゃざい補償ほしょうをするような判決はんけつであってほしいです」とはなしています。

また佐藤さとう路子みちこさん(60だい仮名かめい)は、一連いちれん裁判さいばん全国ぜんこくはじめて裁判さいばんこした知的ちてき障害しょうがいある佐藤さとう由美ゆみさん(60だい仮名かめい)の義理ぎりあねです。

裁判さいばん参加さんかすることがむずかしい由美ゆみさんをささえ、わり裁判さいばん参加さんかつづけています。


路子みちこさんは「間違まちがったことをしたのだから、謝罪しゃざいするのがひととしてもくにとしても当然とうぜんのことです。最高裁さいこうさいには最後さいごとりでとして、『20ねんじょ期間きかん適用てきようしない』とはっきり明言めいげんしてもらい、くににはきちんとした謝罪しゃざい被害ひがいしゃ救済きゅうさいをしてほしい。日本にっぽん福祉ふくし障害しょうがいしゃ差別さべつ解消かいしょうけてあかるいいちなるような判決はんけつ期待きたいしています」とはなしています。


これまでの判決はんけつじょ期間きかん」の判断はんだんかれる

きゅう優生ゆうせい保護ほごほうのもとで不妊ふにん手術しゅじゅつ強制きょうせいされたひとたちがくに賠償ばいしょうもとめる裁判さいばんは、6ねんまえ知的ちてき障害しょうがいある宮城みやぎけん女性じょせい仙台せんだい地方ちほう裁判所さいばんしょはじめてこし、その後そのご全国ぜんこくひろがりました。

弁護べんごだんによりますと、これまでに39にんが12の地方ちほう裁判所さいばんしょ支部しぶうったこし、1しんと2しん判決はんけつは、原告げんこく勝訴しょうそが12けん敗訴はいそが9けんとなっています。

これまでの判決はんけつでは、おお裁判所さいばんしょきゅう優生ゆうせい保護ほごほうについて平等びょうどうけん個人こじん尊厳そんげん保障ほしょうする憲法けんぽう違反いはんすると判断はんだんした一方いっぽう不法ふほう行為こういけて20ねんぎる賠償ばいしょうもとめる権利けんりがなくなるという「じょ期間きかん」については判断はんだんかれました。

最初さいしょ判決はんけつとなった2019ねん仙台せんだい地裁ちさい判決はんけつでは、きゅう優生ゆうせい保護ほごほう憲法けんぽう違反いはんしていたという判断はんだんしめされましたが、賠償ばいしょうについてはくに主張しゅちょうみとめ、手術しゅじゅつから20ねん以上いじょうたっていて「じょ期間きかん」がぎているとしてうった退しりぞけられました。

その後そのご全国ぜんこく裁判所さいばんしょでも時間じかん経過けいか理由りゆう原告げんこく敗訴はいそつづきました。

おととし2つき大阪おおさか高裁こうさいが「じょ期間きかん適用てきようそのままみとめることはいちじるしく正義まさよし公平こうへい理念りねんはんする」と指摘してきしてはじめてくに賠償ばいしょうめいじる判決はんけつ言い渡いいわたと、その翌月よくげつにも東京とうきょう高裁こうさいが「原告げんこくくに施策しさくによる被害ひがいだと認識にんしきするよりまえ賠償ばいしょうもとめる権利けんりうしなわれるのはきわめてこくだ」として「じょ期間きかん」の適用てきよう制限せいげんし、くに賠償ばいしょうめいじました。

これ以降いこう全国ぜんこく原告げんこくうったみとめる判決はんけつ次々つぎつぎされるようになり、去年きょねん3つきには札幌さっぽろ高裁こうさい大阪おおさか高裁こうさいが「じょ期間きかん」の適用てきよう制限せいげんしてくに賠償ばいしょうめいじました。

一方いっぽう全国ぜんこくはじめて提訴ていそされた裁判さいばんは、去年きょねん6つき仙台せんだい高裁こうさいが「じょ期間きかん」を理由りゆうふたたうった退しりぞけ、原告げんこくがわ上告じょうこくしました。

原告げんこく高齢こうれいで、弁護べんごだんによりますと、これまでに、全国ぜんこくうったこした39にんのうち6にん死亡しぼうしました。

最高さいこう裁判所さいばんしょだい法廷ほうていでは、札幌さっぽろ仙台せんだい東京とうきょう大阪おおさか高裁こうさい判決はんけつがあった5けんについてまとめて審理しんりされています。


きゅう優生ゆうせい保護ほごほう」とは

きゅう優生ゆうせい保護ほごほう」は戦後せんご出産しゅっさんブームによる急激きゅうげき人口じんこう増加ぞうかなど背景はいけいに1948ねん施行しこうされた法律ほうりつです。

法律ほうりつでは精神せいしん障害しょうがい知的ちてき障害しょうがいなど理由りゆう本人ほんにん同意どういがなくても強制きょうせいてき不妊ふにん手術しゅじゅつおこなことをみとめていました。

当時とうじおや障害しょうがい疾患しっかんそのままども遺伝いでんするとかんがえられていたこともあり、条文じょうぶんには「不良ふりょう子孫しそん出生しゅっしょう防止ぼうしする」と明記めいきされていました。

きゅう優生ゆうせい保護ほごほうは1996ねん母体ぼたい保護ほごほう改正かいせいされるまで48年間ねんかんにわたって存続そんぞくし、この間このかん強制きょうせいてき不妊ふにん手術しゅじゅつけさせられたひとはおよそ1まん6500にん本人ほんにん同意どういしたとされるケースふくめるとおよそ2まん5000にんにのぼるとされています。

くには「当時とうじ合法ごうほうだった」として謝罪しゃざい補償ほしょうおこなってきませんでしたが、不妊ふにん手術しゅじゅつけさせられた女性じょせいくに損害そんがい賠償ばいしょうもとめる裁判さいばんこしたことなどけて、2019ねんきゅう優生ゆうせい保護ほごほうのもとで不妊ふにん手術しゅじゅつけたひとたちに一時いちじきん支給しきゅうする法律ほうりつ議員ぎいん立法りっぽう成立せいりつ施行しこうされました。

この法律ほうりつではきゅう優生ゆうせい保護ほごほう制定せいていした国会こっかい政府せいふ意味いみする「我々われわれ」が「真摯しんし(しんし)に反省はんせいし、こころからふかくおわびする」としています。

そのうえで本人ほんにん同意どういしたケースふく不妊ふにん手術しゅじゅつけたことがみとめられれば、一時いちじきんとして一律いちりつ320まんえん支給しきゅうするとしています。

くにのまとめによりますと、ことし5つきまつまでに1331にん申請しんせいし、このうち1110にん一時いちじきん支給しきゅうみとめられたということです。

一方いっぽうこれまで1しんと2しん原告げんこく勝訴しょうそした12けん判決はんけつでは慰謝いしゃりょう弁護士べんごし費用ひようなど最大さいだいで1にんあたり1650まんえん賠償ばいしょうめいじられ、一時いちじきんおおきく上回うわまわっています。


公費こうひ手話しゅわ通訳つうやくしゃ法廷ほうてい配置はいち

3にち判決はんけつでは、最高さいこう裁判所さいばんしょ聴覚ちょうかく障害しょうがいあるひと傍聴ぼうちょうすることが予想よそうされるとして、公費こうひ手話しゅわ通訳つうやくしゃ法廷ほうてい配置はいちします。

最高裁さいこうさいによりますと、こうした取り組とりく全国ぜんこく裁判所さいばんしょはじめてとみられます。

裁判所さいばんしょ敷地しきちないにも手話しゅわ通訳つうやくしゃ配置はいちされ、所持しょじひん検査けんさなど手続てつづ傍聴ぼうちょう希望きぼうする聴覚ちょうかく障害しょうがいしゃをサポートします。

原告げんこく弁護べんごだん支援しえんしゃはこれまで、障害しょうがいしゃ傍聴ぼうちょうしやすい環境かんきょう整備せいびについて繰り返くりかえ要望ようぼうしていました。

弁護べんごだんせき直人ただびと弁護士べんごしは「いままでなんもとめても実現じつげんしなかった傍聴ぼうちょうしゃ手話しゅわ通訳つうやく実現じつげんしたのは、本当ほんとうおおきなことだ。今後こんご全国ぜんこく裁判さいばんおおきな影響えいきょうおよぼすという意味いみ歴史れきしてきいちだ」とはなしていました。

ソース:NHK ニュース