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建設アスベスト 国と企業の責任認める 最高裁が初判決
2021-05-17 07:54:26

全国各地の建設現場でアスベストを吸い込み肺の病気になったとして、元作業員と遺族が訴えた集団訴訟で、最高裁判所は、国と建材メーカーの賠償責任を認める判決を言い渡しました。
13年前から争われている全国の集団訴訟で初めてとなる最高裁の判決で、健康被害を訴える人が増え続けるとみられる中、今後は被害者の救済の在り方が焦点となります。
13年前から争われている全国の集団訴訟で初めてとなる最高裁の判決で、健康被害を訴える人が増え続けるとみられる中、今後は被害者の救済の在り方が焦点となります。
建設現場で働いていた元作業員たちが、建材のアスベストを吸い込み肺がんや中皮腫などの病気になったとして、国と建材メーカーに賠償を求めた集団訴訟は、平成20年から全国の裁判所に相次いで起こされ、原告は1200人余りに上っています。
このうち、横浜、東京、京都、大阪の4つの地裁に起こされた裁判で、17日、一連の集団訴訟では初めて、最高裁判所が判決を言い渡し、第1小法廷の深山卓也 裁判長は「国は昭和50年にはアスベストを使う建設現場に危険性があることや、防じんマスクを着用する必要があることを指導監督すべきだった」などと指摘し、国と建材メーカーに賠償責任があるという判断を示しました。
建設現場で働いていた500人から600人が毎年、アスベストが原因の病気で労災認定を受けるなど、健康被害を訴える人が増え続けるとみられる中、今後は被害者の救済の在り方が焦点となります。
最高裁の判決は、政府や与党が検討している救済策に影響を与える見通しです。
アスベストと 健康被害を受けた人たちの裁判
アスベストは、安価で軽量であるうえ、耐火や断熱、防音にすぐれているという特性があり、かつては建材や摩擦材など、さまざまな製品として使用されていました。
中でも多かったのが建材として使われたケースで、1950年代から使用が広がり、高度経済成長期のビルの高層化や鉄骨化に伴って、多く使われるようになりました。
独立行政法人「環境再生保全機構」によりますと、1970年代から90年代にかけては、年間およそ30万トンという大量のアスベストが輸入され、使用のピークを迎えていました。
一方、アスベストは非常に細い繊維からなっているため、それを吸い込んでしまうと肺の細胞に沈着しやすく、変化しにくい特性ゆえに細胞の中に長くとどまることになり、肺がんや中皮腫などの病気を引き起こすことがあります。
アスベストを吸い込んでから発症するまでの潜伏期間は10年以上で、長い場合は50年というケースもあることから、アスベストの健康被害は「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになりました。
アスベストをめぐっては、1975年に吹きつけ作業の原則禁止やメーカーや事業者にアスベスト建材への警告表示の義務づけ、1995年に事業者に防じんマスクの着用を義務づけるなど、徐々に規制が強化され、2006年にアスベストの製造や使用などが全面的に禁止されました。
ただ、アスベストが大量に使用されていた時代に建設現場で働いていた人たちの中で病気を発症する人が増えていて、今でも毎年、500人から600人が新たに労災と認められています。
さらに、当時建設された建物の老朽化が進んでいることから、これからアスベストが使われた建物の解体が増えて、被害者はさらに増加するとみられています。
一方、アスベストを扱う工場における、いわゆる「工場アスベスト」の被害をめぐっては、2005年に兵庫県の大手機械メーカー「クボタ」の工場周辺の住民などのアスベストによる深刻な健康被害が相次いでいることが明らかになりました。
これを踏まえて、2006年、被害を救済するための法律「アスベスト健康被害救済法」が施行されました。
また、アスベストを扱う工場で働き、健康被害を受けた人たちが、国を訴えた裁判では、最高裁判所が2014年に排気装置の設置を義務づける国の規制が遅かったと判断して賠償を命じる判決を言い渡し、この判断に基づいて、現在は和解手続きが進められています。
中でも多かったのが建材として使われたケースで、1950年代から使用が広がり、高度経済成長期のビルの高層化や鉄骨化に伴って、多く使われるようになりました。
独立行政法人「環境再生保全機構」によりますと、1970年代から90年代にかけては、年間およそ30万トンという大量のアスベストが輸入され、使用のピークを迎えていました。
一方、アスベストは非常に細い繊維からなっているため、それを吸い込んでしまうと肺の細胞に沈着しやすく、変化しにくい特性ゆえに細胞の中に長くとどまることになり、肺がんや中皮腫などの病気を引き起こすことがあります。
アスベストを吸い込んでから発症するまでの潜伏期間は10年以上で、長い場合は50年というケースもあることから、アスベストの健康被害は「静かな時限爆弾」と呼ばれるようになりました。
アスベストをめぐっては、1975年に吹きつけ作業の原則禁止やメーカーや事業者にアスベスト建材への警告表示の義務づけ、1995年に事業者に防じんマスクの着用を義務づけるなど、徐々に規制が強化され、2006年にアスベストの製造や使用などが全面的に禁止されました。
ただ、アスベストが大量に使用されていた時代に建設現場で働いていた人たちの中で病気を発症する人が増えていて、今でも毎年、500人から600人が新たに労災と認められています。
さらに、当時建設された建物の老朽化が進んでいることから、これからアスベストが使われた建物の解体が増えて、被害者はさらに増加するとみられています。
一方、アスベストを扱う工場における、いわゆる「工場アスベスト」の被害をめぐっては、2005年に兵庫県の大手機械メーカー「クボタ」の工場周辺の住民などのアスベストによる深刻な健康被害が相次いでいることが明らかになりました。
これを踏まえて、2006年、被害を救済するための法律「アスベスト健康被害救済法」が施行されました。
また、アスベストを扱う工場で働き、健康被害を受けた人たちが、国を訴えた裁判では、最高裁判所が2014年に排気装置の設置を義務づける国の規制が遅かったと判断して賠償を命じる判決を言い渡し、この判断に基づいて、現在は和解手続きが進められています。
アスベスト 被害“潜在化”の指摘
最高裁判所が国や建材メーカーの賠償責任を認めた判断を確定させたことを受け、建設アスベスト訴訟の弁護団は去年12月とことし3月、電話相談を実施し、合わせて155人から相談が寄せられました。
相談を寄せた人の年齢は、詳細を聞き取ることのできた123人のうち116人率にして94%が60歳以上でした。
また、労働者として働いていて、アスベストの健康被害を受け、医療費や療養費の補償が受けられる、労災の認定を受けた人は12人、工場周辺の住民や一人親方など、被害者が労働者以外の場合に補償が受けられる、アスベスト健康被害救済法の認定を受けた人は1人でした。
弁護団は相談内容を把握できた136人のうち、123人、率にしておよそ90%は労災の申請などをしていない新たな被害者の可能性があるとしています。
相談を寄せた80歳の男性は、一人親方として建設現場で長年働いてきて、10年ほど前から肺の病気を患っていたものの、これまでは病気がアスベストによるものだという自覚がなく、電話相談をきっかけに、救済法の申請をすることを検討しています。
申請のサポートをしている労働組合の「東京土建江戸川支部」の藤井文理さんは「発症までが20年から30年と長いので、病気を発症したとしても、それがアスベストによるものなのかどうか分からないという方が多くいると考えています」と話していました。
電話相談を実施した、弁護団の佃俊彦弁護士は「潜在的なアスベストの被害者は、非常に多くいるのではないかと懸念しています。国や建材メーカーが、建設アスベストの被害にどのように向き合って、どのような解決の方向を打ち出していくのか、早く明確にするべきだ」と話していました。
相談を寄せた人の年齢は、詳細を聞き取ることのできた123人のうち116人率にして94%が60歳以上でした。
また、労働者として働いていて、アスベストの健康被害を受け、医療費や療養費の補償が受けられる、労災の認定を受けた人は12人、工場周辺の住民や一人親方など、被害者が労働者以外の場合に補償が受けられる、アスベスト健康被害救済法の認定を受けた人は1人でした。
弁護団は相談内容を把握できた136人のうち、123人、率にしておよそ90%は労災の申請などをしていない新たな被害者の可能性があるとしています。
相談を寄せた80歳の男性は、一人親方として建設現場で長年働いてきて、10年ほど前から肺の病気を患っていたものの、これまでは病気がアスベストによるものだという自覚がなく、電話相談をきっかけに、救済法の申請をすることを検討しています。
申請のサポートをしている労働組合の「東京土建江戸川支部」の藤井文理さんは「発症までが20年から30年と長いので、病気を発症したとしても、それがアスベストによるものなのかどうか分からないという方が多くいると考えています」と話していました。
電話相談を実施した、弁護団の佃俊彦弁護士は「潜在的なアスベストの被害者は、非常に多くいるのではないかと懸念しています。国や建材メーカーが、建設アスベストの被害にどのように向き合って、どのような解決の方向を打ち出していくのか、早く明確にするべきだ」と話していました。
田村厚労相「深くお詫び 早期解決に向けしっかり対応」
田村厚生労働大臣は、談話を発表し「最高裁判所の判決により、国の責任が認められたことについて、重く受け止めており、国に責任があると認められた原告の方々に対しては、責任を感じ深くお詫び申し上げる。判決を踏まえ、適切に対応したいと考えている」としています。
そのうえで「このほかの係争中の原告との早期和解や、未提訴の被害者などに対する補償について、与党でも検討いただいており、厚生労働省としても、できるかぎり早期の解決に向けてしっかり対応したい」としています。
そのうえで「このほかの係争中の原告との早期和解や、未提訴の被害者などに対する補償について、与党でも検討いただいており、厚生労働省としても、できるかぎり早期の解決に向けてしっかり対応したい」としています。
ソース:NHK ニュース