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台風たいふう19ごう 緊急きんきゅう放流ほうりゅうろくダム 事前じぜん放流ほうりゅう実施じっし体制たいせいととのっておらず

2019-11-12 08:04:57

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ダム貯水ちょすいりょう限界げんかいちかづくと流入りゅうにゅうするみずおな程度ていどみず放流ほうりゅうし、下流かりゅういき氾濫はんらんそれがでる「緊急きんきゅう放流ほうりゅう」。先月せんげつ台風たいふう19ごうではむっつのダムおこなわれました。しかしこのダムすべてで、あらかじめみず利用りようしゃ協議きょうぎして事前じぜんみず放流ほうりゅうするルールめていないなど事前じぜん放流ほうりゅう実施じっし体制たいせいととのっていなかったことがかりました。

台風たいふう19ごうによる豪雨ごううでは関東かんとう東北とうほく中心ちゅうしんとする146のダムで、洪水こうずいふせために下流かりゅう放流ほうりゅうするみずりょう抑制よくせいする「洪水こうずい調節ちょうせつ」がおこなわれました。

このうちいずれけん管理かんりする福島ふくしまけん高柴たかしばダム茨城いばらきけん水沼みずぬまダム・竜神りゅうじんダム、栃木とちぎけん塩原しおばらダム、神奈川かながわけん城山しろやまダム、それくに管理かんりする長野ながのけん美和みわダムでは貯水ちょすいりょう限界げんかいえる予想よそうされたため、流入りゅうにゅうしてくるみずおな程度ていどりょう放流ほうりゅうする「緊急きんきゅう放流ほうりゅう」がおこなわれました。

緊急きんきゅう放流ほうりゅう」をすると下流かりゅう氾濫はんらんそれがでるため、くにひとつの回避かいひさくとして、事前じぜんみず放流ほうりゅうしてダム水位すいい容量ようりょう確保かくほする「事前じぜん放流ほうりゅう」が有効ゆうこうだとしています。

ただあめすくなかった場合ばあいにはダムみず水道すいどう発電はつでん農業のうぎょうなど使つか利用りようしゃ影響えいきょうため、「事前じぜん放流ほうりゅう」をおこなにはあらかじめ実施じっし体制たいせいととのえておく必要ひつようがあります。

しかしNHKえぬえいちけい取材しゅざいしたところ、このむっつのダムすべてで、あらかじめみず利用りようしゃ協議きょうぎして事前じぜんみず放流ほうりゅうするルールめていないなど、「事前じぜん放流ほうりゅう」の実施じっし体制たいせいととのっていなかったことがかりました。

このうち高柴たかしばダム美和みわダムなど台風たいふう接近せっきんともなって、きゅうきょ、利用りようしゃ了承りょうしょうなどして「事前じぜん放流ほうりゅう」をしたダムもありましたが、みずりょう回復かいふくしない場合ばあい懸念けねんし、積極せっきょくてき水位すいいげることができていませんでした。

国土こくど交通こうつうしょうによりますと、全国ぜんこくダム実施じっし体制たいせいととのっているのはいちわりほどしかないということで、あらかじめみず利用りようしゃ調整ちょうせいするなど、「事前じぜん放流ほうりゅう」ができる体制たいせいととのえるよううながしていく方針ほうしんです。

ダムくわしい京都きょうと大学だいがくすみ哲也てつや教授きょうじゅは「災害さいがいせまなか利水りすいしゃとの調整ちょうせいができていない状況じょうきょう事前じぜん放流ほうりゅう判断はんだんをすることは非常ひじょうむずかしく、事前じぜんルールめておくことがきわめて重要じゅうようだ。去年きょねん西日本にしにほん豪雨ごうう教訓きょうくん西日本にしにほんではルールめたダムすこずつえているが、東日本ひがしにっぽんではまだすくなく、台風たいふう19ごう教訓きょうくんうごひろがっていってほしい」とはなしていました。

事前じぜん放流ほうりゅうふたつの課題かだい

事前じぜん放流ほうりゅう」は台風たいふう豪雨ごううなどによってダム下流かりゅう洪水こうずい危険きけん予想よそうされたさいに、本来ほんらいなら水道すいどう発電はつでんなどで使つかみず容量ようりょう一部いちぶ放流ほうりゅうし、事前じぜんにダムの水位すいいげる操作そうさのことをいます。

事前じぜん放流ほうりゅう」をおこなにはみず利用りようしゃとあらかじめ協議きょうぎしてルール体制たいせいととのえておく必要ひつようがありますが、国土こくど交通こうつうしょう調査ちょうさしたところ、体制たいせいととのっているのは先月せんげつ時点じてんで、全国ぜんこくの562ダムちゅう、わずか54ダムだったということです。

なぜ体制たいせいととのわないのか。課題かだいとしてげられるのが、「渇水かっすいのリスク」と「ダム構造こうぞう」の問題もんだいです。

課題かだいいち渇水かっすいのリスク】
洪水こうずい調節ちょうせつをするために本来ほんらい水道すいどう発電はつでん使つかためのみず事前じぜん放流ほうりゅうした場合ばあいもし大雨おおあめらずに放流ほうりゅうぶんみずもどらなければ、みず利用りようしゃおおきな影響えいきょうてしまいます。

台風たいふう19ごうでは結果けっかとして大雨おおあめり、おおくのダム大量たいりょうみず流れ込ながれこみましたが、あきふゆ時期じき降水こうすいりょうすくなく、渇水かっすいのリスクがとく懸念けねんされます。

このため「事前じぜん放流ほうりゅう」の導入どうにゅうにあたってはみず利用りようしゃにとって最低さいていげんどのくらいの貯水ちょすいりょう必要ひつようなのか、放流ほうりゅう結果けっか渇水かっすいきた場合ばあい補償ほしょうどうするか、あらかじめダム管理かんりしゃみず利用りようしゃむずかしい協議きょうぎすすめる必要ひつようがあり、課題かだいとなっています。

さらに渇水かっすいふせためには、すうにちさき雨水あまみず流入りゅうにゅうりょう把握はあくすることも重要じゅうようで、気象きしょう予測よそく精度せいどをいかにあげていくかも課題かだいとなっています。

課題かだいダム構造こうぞうじょう 不可能ふかのう
ダムによっては容量ようりょう事前じぜん放流ほうりゅうできるだけの余裕よゆうがなかったり、そもそもみずながためにダムに設置せっちされている「放流ほうりゅうかん」の位置いちげないとおおくのりょう放流ほうりゅうできないなど物理ぶつりてきに「事前じぜん放流ほうりゅう」ができないダムもあります。

これについてはダム本体ほんたいをかさげして貯水ちょすい容量ようりょうやすことやあら放流ほうりゅうかん設置せっちなど必要ひつようで、おおくの時間じかん資金しきん課題かだいとなっています。

高柴たかしばダムルールなし”もきゅうきょ事前じぜん放流ほうりゅう

緊急きんきゅう放流ほうりゅう」をおこなったむっつのダムのうちひとつ、福島ふくしまけん高柴たかしばダムもあらかじめみず利用りようしゃとルールをめていないなど、「事前じぜん放流ほうりゅう」の実施じっし体制たいせいととのっていませんでした。

福島ふくしまけん鮫川さめがわ水系すいけいダム管理かんり事務所じむしょによりますと、高柴たかしばダムのみずはいわきある事業じぎょうしゃなどに対にたいして工業こうぎょう用水ようすいとして提供ていきょうしているということです。

当時とうじ台風たいふう接近せっきんともなってかなり大雨おおあめ予想よそうされたことから、けん企業きぎょうきょくに対にたいして了承りょうしょうたうえで、きゅうきょみず利用りようしゃのための容量ようりょううちよんわりほどを事前じぜん放流ほうりゅうしました。

しかしその後そのごダム上流じょうりゅう想定そうてい以上いじょう大雨おおあめとなり、ダムがみずをためられる限界げんかいえる可能かのうせいたかとして、「緊急きんきゅう放流ほうりゅう」がおこなわれました。

福島ふくしまけん鮫川さめがわ水系すいけいダム管理かんり事務所じむしょ大竹おおたけ昭仁あきひと所長しょちょうは「事前じぜん放流ほうりゅうをしていなかったら、緊急きんきゅう放流ほうりゅうおこな時間じかんはやまったり、放流ほうりゅうするみずりょうがさらにえ、ダムの下流かりゅういきおおきな氾濫はんらん引き起ひきおこすそれもあった」とはなしていました。

一方いっぽうで、懸念けねんもありました。「事前じぜん放流ほうりゅう」をしても台風たいふう進路しんろがそれて大雨おおあめらずに、放流ほうりゅうしたぶん水量すいりょうもどらなかった場合ばあいのリスクです。

大竹おおたけ所長しょちょうは「大雨おおあめ洪水こうずいそなえるという意味いみではあらかじめ水位すいいげておくことが安心あんしんにつながるが、工業こうぎょう用水ようすいとして必要ひつようみずりょう確保かくほできなければ、事業じぎょうしゃおおきな影響えいきょうおよぼすリスクがある」とはなしていました。

そのうえで「大雨おおあめ予想よそうされるさいには事前じぜんどこまで水位すいいげていいことにするか、事前じぜん放流ほうりゅう必要ひつようみず確保かくほできなかった場合ばあいどう穴埋あなうめするのか、今後こんご利水りすいしゃ協議きょうぎしていきたい」とはなしていました。

流木りゅうぼくせき止せきとめも…効果こうか課題かだい

台風たいふう19ごうではおおくのダム上流じょうりゅうからの流木りゅうぼくせき止せきとめる効果こうか発揮はっきしました。一方いっぽうダムにたまった大量たいりょう流木りゅうぼくどう撤去てっきょするのか、課題かだいのこされています。

福島ふくしまけん高柴たかしばダムでは台風たいふう19ごうや15ごうあめによってダムの上流じょうりゅう大量たいりょう流木りゅうぼく発生はっせいしダムにせき止せきとめられました。

流木りゅうぼくおよそ2200立方メートルりっぽうめ-とるで、これは200リットルドラム缶どらむかん換算かんさんするとおよそいちまん1000ほんに当にあたるたるりょうです。

流木りゅうぼくせき止せきとめる効果こうかについて京都大きょうとだいがくかく教授きょうじゅは「ねんまえ九州きゅうしゅう北部ほくぶ豪雨ごううのように最近さいきん豪雨ごうう災害さいがいでは、洪水こうずいとともに流木りゅうぼく被害ひがい目立めだっている。ダムがなかった場合ばあい大量たいりょう下流かりゅういき流れ込ながれこみ、はし引っ掛ひっかかるなどすると、それ原因げんいんとなってかわ氾濫はんらん堤防ていぼう決壊けっかい引き起ひきおこすそれがある下流かりゅう水位すいい低下ていかさせるだけでなく流木りゅうぼくせき止せきとめるのもダムおおきな役割やくわりだ」とはなしています。

一方いっぽうで、ダムにたまった大量たいりょう流木りゅうぼくどう撤去てっきょするかはダムの管理かんりしゃにとっておおきな課題かだいです。

高柴たかしばダムでは撤去てっきょ作業さぎょうおこなっているものの、ダムみずうみ重機じゅうきれることがむずかしく、ボートった作業さぎょういんたちが流木りゅうぼくあつめ、ダムの本体ほんたいちかまではこび、重機じゅうき使つかって引き揚ひきあげるという地道じみち作業さぎょうおこなっています。

すべての流木りゅうぼく取り除とりのぞにはか月かげつほどかかる見込みこだということです。

大量たいりょう流木りゅうぼくがたまった状態じょうたいつづと、水質すいしつ悪化あっかにつながるほか来年らいねん出水しゅっすいなど大雨おおあめった場合ばあい流木りゅうぼくダム操作そうさ影響えいきょうおよぼすそれあるということで、いかにはや撤去てっきょできるかが課題かだいとなっています。
ソース:NHK ニュース