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江戸えど時代じだい反射はんしゃ望遠鏡ぼうえんきょう かがみ精度せいど現代げんだいレベル

2019-11-17 22:07:09

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いまからおよそ180ねんまえ江戸えど時代じだい製作せいさくされた反射はんしゃ望遠鏡ぼうえんきょうかがみ精度せいど調しらべたところ、現代げんだい市販しはんかがみほぼおなレベルでつくられていたことをしめデータがられました。調査ちょうさにあたった専門せんもんは「計測けいそく機器ききのない時代じだいこれだけ精度せいどたかかがみ製作せいさくできるのは非常ひじょうおどろだ」と指摘してきしています。

この望遠鏡ぼうえんきょうは、江戸えど時代じだい後期こうき日本にっぽんはじめて反射はんしゃ望遠鏡ぼうえんきょう完成かんせいさせて天体てんたい観測かんそくおこなった国友くにとも一貫いっかんときつくったいちだいで、天保てんぽうななねん西暦せいれき1836ねんしるされています。

望遠鏡ぼうえんきょう所蔵しょぞうする滋賀しがけん長浜ながはまなどが、ひかりあつめてぞうをつくる「おもきょう」を取り外とりはずして東京とうきょう三鷹みたか国立こくりつ天文台てんもんだい持ち込もちこみ、鏡面きょうめん全体ぜんたい形状けいじょう表面ひょうめんこまかな起伏きふくをなくしていくみがきの精度せいどについて、現在げんざい市販しはんされている種類しゅるいかがみ比較ひかくしました。

その結果けっか形状けいじょう精度せいどしめ数値すうち種類しゅるいかがみ中間ちゅうかんとなり、いま市販しはんひんとほぼおなレベルという結果けっかました。

一方いっぽうみがきの精度せいどしめ数値すうちは、研磨けんま技術ぎじゅつ経年けいねん劣化れっか影響えいきょうして、市販しはんひんにはおよびませんでした。

計測けいそくおこなった国立こくりつ天文台てんもんだい都築つづき俊宏としひろさんは、「結果けっか非常ひじょうびっくりしました。現代げんだい加工かこうをするさい計測けいそく機器ききあるので、計測けいそくしながら修正しゅうせいすることができます。その手段しゅだんがないなかでこれだけの精度せいどかがみつくれるというのは、よほどの職人しょくにんわざ情熱じょうねつがあったのではとかんじました」とはなしています。

かがみデータ

望遠鏡ぼうえんきょうつつながさが33センチあり、調査ちょうさしたおもきょうつつそこ部分ぶぶん取り付とりつけられています。

かがみ表面ひょうめんがわずかにくぼんだ直径ちょっけいろくセンチ凹面鏡おうめんきょうで、ひかりあつめてぞうをつくる重要じゅうよう役割やくわりたすため、鏡面きょうめん精度せいど天体てんたいかた直結ちょっけつします。

鏡面きょうめん全体ぜんたい形状けいじょう精度せいどは、理想りそうてきほうものめんとのズレを計測けいそくして調しらべました。

その結果けっか一貫いっかんときかがみは0.67ラムダで、市販しはんかがみひとつは0.88ラムダ、もうひとつは0.30ラムダでした。

数値すうちひくほど精度せいどたかことをあらわしていて、一貫いっかんときかがみふたつの市販しはんひんという結果けっかになりました。

また表面ひょうめんみがきの精度せいどは、ほこりやちりがはいらないクリーンルームないこまかい起伏きふく計測けいそくする装置そうち調しらべました。

こちら数値すうちひくほど起伏きふくすくないことをあらわしていて、市販しはんひんひとつが0.6ナノメートルもうひとつは0.5ナノメートル、一貫いっかんときのものは3.7ナノメートルでした。

国友くにとも一貫いっかんときとは

国友くにとも一貫いっかんときは、江戸えど時代じだい後期こうき安永やすながななねん西暦せいれき1778ねん現在げんざい滋賀しがけん長浜ながはまにあった鉄砲てっぽう鍛冶たんやいえまれました。

職人しょくにんとしてわかうちから才能さいのうせ、鉄砲てっぽう以外いがいにも、空気くうきじゅう照明しょうめい器具きぐ現在げんざいまんねんひつにあたる携帯けいたいようふでなどつくってきました。

そうしたなかでもっと有名ゆうめいなのが、日本にっぽんはつの「反射はんしゃ望遠鏡ぼうえんきょう」です。

江戸えど外国がいこくせい望遠鏡ぼうえんきょうたことをきっかけ製作せいさく取り組とりくみ、試行しこう錯誤さくご繰り返くりかえしながら50だいなか最初さいしょいちだい完成かんせいさせました。

一貫いっかんときつくった望遠鏡ぼうえんきょう現在げんざいよんだいのこされていて、今回こんかい調査ちょうさしたのはこのうち番目ばんめふるものです。

一貫いっかんとき自作じさく望遠鏡ぼうえんきょうでみずから天体てんたい観測かんそくおこない、つきのクレーターの大小だいしょうえがけた月面げつめん観測かんそくや、太陽たいよう黒点こくてんいちねんあま連続れんぞく観測かんそくした図面ずめんのこしています。

図面ずめん非常ひじょう正確せいかくで、日本にっぽん天文学てんもんがくにおいて貴重きちょう資料しりょうとされています。

完成かんせいから180ねん まったくもりなし

一貫いっかんとき望遠鏡ぼうえんきょう研究けんきゅうつづけてきた京都大きょうとだいがく大学院だいがくいん冨田とみた良雄よしおもとじょきょうによりますと、かがみとして使つかわれている金属きんぞくどうとすずをぜた青銅せいどうで、完成かんせいから180ねんちかたった今たったいまでもくもりがまったくないということです。

金属きんぞくでできたかがみは、年月としつきがたつと通常つうじょう、さびてしまいますが、一貫いっかんときどうとすずを最適さいてき比率ひりつ混ぜ合まぜあわせ、さびにくく、たか反射はんしゃりつほこかがみ作り上つくりあげました。

その比率ひりつどうやって突き止つきとめたのか、くわしいことはわかっていないということです。

冨田とみた元助もとすけきょうは「180ねんちかまったくもりがない状態じょうたいあるというのはすごいことで、材料ざいりょう学的がくてきにもいまでもなぞのこっている。性能せいのうすごいので、たとえば木星もくせい衛星えいせい理論りろんてき計算けいさん一貫いっかんときのこしたスケッチがぴったり一致いっちしている。いま天文てんもんがくからてもこの時期じきこれだけやっていたのはすばらしく、評価ひょうかできる」とはなしています。

専門せんもん西洋せいよう理解りかいしながら明治めいじ近代きんだいへ」

江戸えど時代じだい後期こうきには、オランダを通をとおして最先端さいせんたん知識ちしきがもたらされ、国友くにとも一貫いっかんときよりはや時期じきに、杉田すぎた玄白げんぱく前野まえの良沢りょうたくがオランダ解剖かいぼうしょ「ターヘル・アナトミア」を日本語にほんごやくした「解体かいたい新書しんしょ」を出版しゅっぱんしたほか平賀ひらが源内げんない摩擦まさつ電気でんきこす「エレキテル」をつくっています。

江戸えど時代じだい科学かがくくわしい国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかん産業さんぎょう技術ぎじゅつ資料しりょう情報じょうほうセンター鈴木すずき一義かずよしセンターちょうは、「日本にっぽん科学かがく技術ぎじゅつすこずつ西洋せいようレベルちかづいていった」と、この時期じき特徴とくちょう指摘してきしたうえで、今回こんかい実験じっけん結果けっかについて「明治めいじになってはじめて西洋せいよう科学かがく技術ぎじゅつ導入どうにゅうしたのではなくて、いろんなひとたちがすこしずつ西洋せいよう理解りかいしながら明治めいじ近代きんだいけてあゆんでったということが実証じっしょうできた」とはなしていました。

また国立こくりつ天文台てんもんだいでの調査ちょうさ見守みまもった長浜ながはま太田おおた浩司こうじ学芸がくげい専門せんもんかんは「一貫いっかんときがすばらしい技術ぎじゅつりょくっていたことはわかっていましたが、科学かがくてき調査ちょうさはっきりしたのでうれしくおもいます。自分じぶんかんがえてやったというのはすごい技術ぎじゅつりょくで、探究たんきゅうしんとか知識ちしきよくはかれないものがあったんだなとおもいました」とはなしていました。
ソース:NHK ニュース