政治せいじ資金しきんチェックする“監査かんさ人じん”が繰り返くりかえし「監査かんさミス」

国会こっかい議員ぎいんの政治せいじ資金しきんをチェックする監査かんさ人じんが繰り返くりかえし「監査かんさミス」を指摘してきされていました。

国会こっかい議員ぎいんが関係かんけいする政治せいじ団体だんたいは、資金しきんの使つかいみちについて外部がいぶの税理士ぜいりしなどの監査かんさを受うけることが義務ぎむづけられていますが、収支しゅうし報告ほうこく書しょの誤あやまりを見逃みのがし、２に年ねん以上いじょう続つづけて総務そうむ省しょうから指導しどう・助言じょげんを受うけた監査かんさ人じんが、去年きょねんまでの４よん年間ねんかんに合あわせて25人にんいたことがわかりました。

中なかには４よん年ねん連続れんぞくでミスを指摘してきされた監査かんさ人じんもいて、専門せんもん家かは「本当ほんとうに第だい三さん者しゃが監査かんさしているのか疑うたがわれかねず、大おおきな問題もんだいだ」と指摘してきしています。

閣僚かくりょうなどをめぐる「政治せいじとカネ」の問題もんだいが、相次あいつぎ国民こくみんの政治せいじ不信ふしんを招まねいたことを受うけて、国会こっかい議員ぎいんが関係かんけいする政治せいじ団体だんたいは、平成へいせい21年ねん分ぶんの収支しゅうし報告ほうこく書しょから、すべての支出ししゅつについて、領収りょうしゅう書しょを保存ほぞんするとともに外部がいぶの専門せんもん家かの監査かんさを受うけることが義務ぎむづけられています。

監査かんさは、政治せいじ資金しきんに関にかんする研修けんしゅうを受うけた税理士ぜいりしや公認こうにん会計かいけい士し、それに弁護士べんごしが担当たんとうし、会計かいけい帳簿ちょうぼや領収りょうしゅう書しょなどが適切てきせつに保存ほぞんされているか、金額きんがくや日付ひづけなどに誤あやまりがないかなどを確認かくにんしますが、去年きょねんまでの４よん年間ねんかんで延のべ157人にんがミスの見逃みのがしがあったとして、総務そうむ省しょうの政治せいじ資金しきん適正てきせい化か委員いいん会かいから指導しどう・助言じょげんを受うけています。

こうした「監査かんさミス」を指摘してきされた監査かんさ人じんについてＮＨＫえぬえいちけいが取材しゅざいしたところ、去年きょねんまでの４よん年間ねんかんに合あわせて25人にんが、翌年よくねんも再ふたたび監査かんさミスを指摘してきされていたことがわかりました。

このうち、３さん人にんは３さん年ねん連続れんぞくで、１いち人にんは４よん年ねん連続れんぞくで、監査かんさミスを指摘してきされていました。

指摘してきされたミスの多おおくは収支しゅうし報告ほうこく書しょの記載きさいの矛盾むじゅんや単純たんじゅんな計算けいさんミスの見逃みのがしですが、中なかには支出ししゅつの重複じゅうふく計上けいじょうの見逃みのがしや、別べつの団体だんたいを監査かんさした際さいの書類しょるいをコピーして転用てんようしたためとみられる監査かんさ結果けっかの報告ほうこく書しょの記載きさいの誤あやまりなど、ずさんなケースもあったということです。

政治せいじ資金しきんに詳くわしい駒澤こまざわ大学だいがくの富崎とみさき隆たかし教授きょうじゅは、「チェックがきちんと行おこなわれたことが担保たんぽされていないと、政治せいじ資金しきん収支しゅうし報告ほうこく書しょが信用しんようできないということになってしまう。軽微けいびなミスは専門せんもん家かも含ふくめ誰だれにでもありえることだが、それが続つづくと本当ほんとうに第だい三さん者しゃが監査かんさしているのか疑うたがわれかねず、大おおきな問題もんだいだ」と指摘してきしています。

繰り返くりかえされる「監査かんさミス」とは

総務そうむ省しょうの政治せいじ資金しきん適正てきせい化か委員いいん会かいによりますと、２に年ねん以上いじょう続つづけて指導しどう・助言じょげんを受うけた監査かんさ人じんが指摘してきされた「監査かんさミス」は、次つぎのようなケースです。

《収支しゅうし報告ほうこく書しょ上じょうの金額きんがく不ふ整合せいごう》
１ひとつ目めは「収支しゅうし報告ほうこく書しょ上じょうの金額きんがくの不ふ整合せいごう」です。政治せいじ資金しきん収支しゅうし報告ほうこく書しょには、一ひとつ一ひとつの支出ししゅつの目的もくてきや金額きんがく、年月としつき日び、それに支出ししゅつを受うけた者ものの氏名しめいや住所じゅうしょを書かく必要ひつようがあり、さらに費目ひもくやページごとに支出ししゅつの「小計しょうけい」や「合計ごうけい」を記載きさいする欄らんもあります。こうした個々ここの支出ししゅつを足たし上あげた金額きんがくと「小計しょうけい」や「合計ごうけい」の金額きんがくが合あわないケースが見みつかっていて、監査かんさ人じんがきちんと検算けんざんをしていない疑うたがいがあるということです。

《収支しゅうし報告ほうこく書しょと領収りょうしゅう書しょの金額きんがく不ふ整合せいごう》
２ふたつ目めが「収支しゅうし報告ほうこく書しょと領収りょうしゅう書しょの金額きんがくの不ふ整合せいごう」です。例たとえば、収支しゅうし報告ほうこく書しょには「１いち万まん2600円えん」の支出ししゅつと書かかれているのに、領収りょうしゅう書しょには「１いち万まん2660円えん」と書かかれているようなケースのことで、確認かくにん不足ふそくのため、領収りょうしゅう書しょに書かかれた金額きんがくを書き写かきうつす際さいの間違まちがいを見落みおとしたものとみられています。

《支出ししゅつの重複じゅうふく計上けいじょう》
このほか、１いち枚まいの領収りょうしゅう書しょをもとに同おなじ支出ししゅつを重複じゅうふくして収支しゅうし報告ほうこく書しょに記載きさいする「支出ししゅつの重複じゅうふく計上けいじょう」の見逃みのがしも指摘してきされています。

《監査かんさ報告ほうこく書しょにもミスが…》
さらに、監査かんさ人じんが作成さくせいした監査かんさ結果けっかの報告ほうこく書しょにもミスがあったと指摘してきされています。監査かんさした政治せいじ団体だんたいの名前なまえや監査かんさ対象たいしょうの期間きかん、それに根拠こんきょとなる法律ほうりつの条文じょうぶんなどが間違まちがっているケースが見みつかっていて、いずれも過去かこに別べつの政治せいじ団体だんたいを監査かんさした際さいの報告ほうこく書しょをコピーして転用てんようしたために起おきたとみられています。

ミス指摘してきされた監査かんさ人じん「資料しりょう膨大ぼうだいも時間じかんない」

総務そうむ省しょうから複数ふくすう年ねん続つづけて「監査かんさミス」を指摘してきされた監査かんさ人じんに取材しゅざいで話はなしを聞きくことができました。

この監査かんさ人じんは「毎年まいとし慎重しんちょうに監査かんさを行おこなってはいるが、ミスはミスなので自分じぶんが悪わるい。行き届いきとどかず指導しどうされた点てんは、改あらためなければいけない」と述のべました。

そのうえで「国会こっかい議員ぎいんが関係かんけいする政治せいじ団体だんたいは１いち円えん以上いじょうの領収りょうしゅう書しょをすべて保存ほぞんしなければならず、自分じぶんが担当たんとうしている政治せいじ団体だんたいでは年間ねんかん4000枚まいにもなる。領収りょうしゅう書しょを紛失ふんしつしているケースや日付ひづけや品目ひんもく、目的もくてきなどが記載きさいされておらず再さい発行はっこうを依頼いらいしなければならないケースもあり、収支しゅうし報告ほうこく書しょと突き合つきあわせて確認かくにんする会計かいけい帳簿ちょうぼにも多おおくの記載きさいミスがあるので毎回まいかい大変たいへんな作業さぎょうだ」と話はなしました。

さらに「監査かんさには時間じかんがかかるのに、議員ぎいん側がわは収支しゅうし報告ほうこく書しょの提出ていしゅつ期限きげんの直前ちょくぜんになって監査かんさを依頼いらいしてくるため、限かぎられた時間じかんで膨大ぼうだいな資料しりょうを確認かくにんしなければならなくなる。なぜミスをしたのか明確めいかくな理由りゆうはわからないが、『監査かんさミス』が続つづいた背景はいけいにはこうした状況じょうきょうがあると思おもう」と述のべました。

政治せいじ資金しきん監査かんさ制度せいどの経緯けいい

平成へいせい19年ねん、閣僚かくりょうなどが関係かんけいする政治せいじ団体だんたいの光熱こうねつ水すい費ひや事務所じむしょ費ひをめぐる問題もんだいが相次あいつぎ国民こくみんの政治せいじ不信ふしんが高たかまったことを受うけて、政治せいじ資金しきん規正きせい法ほうが改正かいせいされました。

その結果けっか、国会こっかい議員ぎいんが関係かんけいする政治せいじ団体だんたいは、平成へいせい21年ねん分ぶんの政治せいじ資金しきん収支しゅうし報告ほうこく書しょから、すべての支出ししゅつについて領収りょうしゅう書しょを保存ほぞんするとともに外部がいぶ監査かんさを受うけることが義務ぎむづけられました。

監査かんさを担になうのは、政治せいじ資金しきんに関にかんする研修けんしゅうを受うけて総務そうむ省しょうの政治せいじ資金しきん適正てきせい化か委員いいん会かいに登録とうろくした税理士ぜいりしや公認こうにん会計かいけい士し、それに弁護士べんごしで、ことし９月くがつ20日にち現在げんざいで5013人にんが登録とうろくしています。

監査かんさ人じんは、政治せいじ資金しきんの使つかいみちが妥当だとうかどうかをチェックする権限けんげんはなく、会計かいけい帳簿ちょうぼや領収りょうしゅう書しょなどが適切てきせつに保存ほぞんされているか、金額きんがくや日付ひづけなどに不ふ自然しぜんな点てんがないかなどを外形がいけい的てきにチェックするだけですが、単純たんじゅんミスの見逃みのがしや確認かくにん不足ふそくなどが後ごを絶たちません。

このため、総務そうむ省しょうの政治せいじ資金しきん適正てきせい化か委員いいん会かいは、平成へいせい26年ねん分ぶんの収支しゅうし報告ほうこく書しょから提出ていしゅつされた書類しょるいを確認かくにんする過程かていで監査かんさミスが見みつかった監査かんさ人じんに対にたいして、指導しどう・助言じょげんを行おこなっていて、平成へいせい26年ねん分ぶんは17人にん、平成へいせい27年ねん分ぶんは48人にん、平成へいせい28年ねん分ぶんと29年ねん分ぶんはいずれも46人にんが監査かんさミスを指摘してきされています。

政治せいじ資金しきん適正てきせい化か委員いいん会かいは、今後こんご、ミスを指摘してきされた監査かんさ人じんへの研修けんしゅうを充実じゅうじつさせ、確認かくにん不足ふそくに伴ともなうミスの事例じれい集しゅうを作成さくせいして周知しゅうちを図はかるなどして、監査かんさの質しつの向上こうじょうを図はかりたいとしています。

ソース：NHK ニュース