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“同一労働同一賃金” 中小企業に適用 対応進まないケースも
2021-04-01 10:40:45

非正規雇用で働く人たちの待遇改善を目指した「同一労働同一賃金」は1日から中小企業に適用されますが、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化した中小企業を中心に対応が進んでいないケースが多いとみられています。
人材サービス会社「エン・ジャパン」は去年12月からことし1月にかけて中小企業150社に、インターネットで調査を行いました。
それによりますと、「同一労働同一賃金」への対応について「すでに完了している」と回答した企業は28%でした。
「現在、取り組んでいる」、「対応が決まり、これから取り組む予定」と回答した企業を合わせても51%で、対応にめどがついている中小企業は半数にとどまっていました。
また、「同一労働同一賃金」のめどがついていると回答した中小企業に対応する上での悩みを複数回答で尋ねたところ、「人件費の増加」と「正社員と非正規社員の待遇差が不合理かどうかの判断」がいずれも23%と最も多かったということです。
調査を行った「エン・ジャパン」の担当者は、「新型コロナウイルスの影響で多くの中小企業では業績が悪化している。さらに、テレワークの導入や職場の感染対策などの対応も重なり、人件費の増加につながる待遇差の改善まで対応できていないケースが多いとみられる」と話しています。
パート従業員の待遇 改善した中小企業

岐阜県本巣市の「スギヤマメカレトロ」は、従業員およそ100人の中小企業で自動車メーカーや航空関連企業の機械の修理などを行っています。
正社員の定年は60歳で、いったん退職したあとに再雇用された14人がパート従業員として働き続けています。
会社では若手社員への技術の継承や人手不足の解消につなげようと中小企業に「同一労働同一賃金」が適用されるのに合わせて3月、パート従業員の待遇を改善しました。
具体的にはパート従業員について▽ボーナスは正社員に準じる水準に引き上げるほか、▽これまでは認めていなかった交通手当や住宅補助などの手当を支給することにしました。
ボーナスは1人あたり平均でおよそ25%上昇し、手当は合わせて1か月に1万円近く支給されます。
正社員の定年は60歳で、いったん退職したあとに再雇用された14人がパート従業員として働き続けています。
会社では若手社員への技術の継承や人手不足の解消につなげようと中小企業に「同一労働同一賃金」が適用されるのに合わせて3月、パート従業員の待遇を改善しました。
具体的にはパート従業員について▽ボーナスは正社員に準じる水準に引き上げるほか、▽これまでは認めていなかった交通手当や住宅補助などの手当を支給することにしました。
ボーナスは1人あたり平均でおよそ25%上昇し、手当は合わせて1か月に1万円近く支給されます。

この会社で30年以上働く杉山吉司さん(73)は、定年退職したあと8年前からパート従業員として勤務しています。
現在は営業担当として1日8時間、週に5日働いています。
1か月の収入は手取りで20万円ほどです。
「同一労働同一賃金」が導入されることで交通手当や住宅補助などが年間およそ12万円支給されることになり、ボーナスは去年の実績で考えると年間でおよそ12万円増えることになります。
杉山さんは、「パート従業員になったため給料も下がるし正社員と同じ仕事をやっているのになぜだという気持ちもあってショックでした。同一労働同一賃金が導入されて収入も上がりありがたく、生活も楽になるので妻も喜びます」と話していました。
これに対して会社側は「同一労働同一賃金」を続けていく上での難しさも感じています。
ことしは、新型コロナウイルスの影響で受注が大幅に減り、去年およそ30億円だった売上げは30%ほど減少する見通しです。
一方で人件費はパート従業員への手当が年間でおよそ100万円増えることになります。
またボーナスは業績に応じて支払われていますが去年の実績で考えるとおよそ100万円増えることになります。
従業員の定年退職で今後も毎年、2人から5人ほどパート従業員が増える予定で「同一労働同一賃金」によって人件費の負担は大きくなる見込みです。
このため会社ではパートの従業員についても勤務の査定を毎年、行うことにしました。
一人一人の仕事の成果や業務量などをチェックし会社全体の利益や生産性の低下につながらないようにして同一労働同一賃金に対応していくことにしています。
現在は営業担当として1日8時間、週に5日働いています。
1か月の収入は手取りで20万円ほどです。
「同一労働同一賃金」が導入されることで交通手当や住宅補助などが年間およそ12万円支給されることになり、ボーナスは去年の実績で考えると年間でおよそ12万円増えることになります。
杉山さんは、「パート従業員になったため給料も下がるし正社員と同じ仕事をやっているのになぜだという気持ちもあってショックでした。同一労働同一賃金が導入されて収入も上がりありがたく、生活も楽になるので妻も喜びます」と話していました。
これに対して会社側は「同一労働同一賃金」を続けていく上での難しさも感じています。
ことしは、新型コロナウイルスの影響で受注が大幅に減り、去年およそ30億円だった売上げは30%ほど減少する見通しです。
一方で人件費はパート従業員への手当が年間でおよそ100万円増えることになります。
またボーナスは業績に応じて支払われていますが去年の実績で考えるとおよそ100万円増えることになります。
従業員の定年退職で今後も毎年、2人から5人ほどパート従業員が増える予定で「同一労働同一賃金」によって人件費の負担は大きくなる見込みです。
このため会社ではパートの従業員についても勤務の査定を毎年、行うことにしました。
一人一人の仕事の成果や業務量などをチェックし会社全体の利益や生産性の低下につながらないようにして同一労働同一賃金に対応していくことにしています。

「スギヤマメカレトロ」の浅野博幸社長は、「会社にはなかなか若い人材が入ってこないため社員の平均年齢はどんどん上がっているのが現状です。こうした中で長年勤めて技術を持ち、パート従業員として働く人たちには若手への教育にも力を入れてもらっています。正社員からなんでパート従業員を優遇するのかという声が出るのではないかと非常に心配しました。そのバランスをどこでとるかが難しいと感じています」と話していました。
専門家 「確実に待遇改善すること重要」

第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストは「景気が緩やかに持ち直して多くの企業で業績が伸びる中で人手不足が問題となっていた状況だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況は変わった。非正規の待遇改善は企業からすると人件費が増えてしまうので、業績が厳しい中で対応が難しくなっている」と話します。
そのうえで「非正規雇用で働く人の待遇の改善を無理にでも求めると雇用を減らすという判断を企業が迫られることにもつながる可能性が出てくる。今の雇用維持の政策をしっかり続けつつまずは経済を戻していくことが最優先事項で経済の状況を見ながら丁寧にゆっくりと確実に非正規雇用で働く人たちの待遇を改善することが重要になっている」と指摘しています。
また「コロナ禍がおさまれば企業にとっては人手不足が課題になるとみられる。同一労働同一賃金に取り組むことは優秀な人材に働き続けてもらうとともに非正規雇用で働く人の意欲を高めいい仕事をしてもらうことにもつながり企業にもメリットが大きい」と話していました。
そのうえで「非正規雇用で働く人の待遇の改善を無理にでも求めると雇用を減らすという判断を企業が迫られることにもつながる可能性が出てくる。今の雇用維持の政策をしっかり続けつつまずは経済を戻していくことが最優先事項で経済の状況を見ながら丁寧にゆっくりと確実に非正規雇用で働く人たちの待遇を改善することが重要になっている」と指摘しています。
また「コロナ禍がおさまれば企業にとっては人手不足が課題になるとみられる。同一労働同一賃金に取り組むことは優秀な人材に働き続けてもらうとともに非正規雇用で働く人の意欲を高めいい仕事をしてもらうことにもつながり企業にもメリットが大きい」と話していました。
ソース:NHK ニュース