北朝鮮きたちょうせん 五輪ごりん不参加ふさんか “コロナ感染かんせん懸念けねん”と“韓国かんこくけん制けんせい”背景はいけいか

北朝鮮きたちょうせんの体育たいいく省しょうは、この夏なつの東京とうきょうオリンピックについて、「新型しんがたコロナウイルスによる世界せかい的てきな保健ほけんの危機きき状況じょうきょうから選手せんしゅたちを守まもるため」だとして参加さんかしない方針ほうしんを明あきらかにしました。

これについて北朝鮮きたちょうせん情勢じょうせいに詳くわしい専門せんもん家かは、「ぜい弱ぜいじゃくな国内こくないの医療いりょう体制たいせい」への懸念けねんと「北朝鮮きたちょうせん問題もんだいでイニシアチブを取とりたい韓国かんこくをけん制けんせいする」思惑おもわくがあるのではないかという見方みかたを示しめしています。

北朝鮮きたちょうせんが東京とうきょうオリンピックに参加さんかしない方針ほうしんを明あきらかにしたことについて、北朝鮮きたちょうせん情勢じょうせいに詳くわしい南山なんざん大学だいがくの平岩ひらいわ俊司しゅんじ 教授きょうじゅは、背景はいけいには、新型しんがたコロナウイルスの流入りゅうにゅうに対にたいする強つよい懸念けねんがあると指摘してきしました。

平岩ひらいわ教授きょうじゅは「北朝鮮きたちょうせんは医療いりょう体制たいせいがぜい弱ぜいじゃくで、外国がいこくとの関係かんけいを断たつという非常ひじょうに厳きびしい対応たいおうをしている。仮かりに選手せんしゅを派遣はけんして感染かんせん者しゃが出でた場合ばあいに、北朝鮮きたちょうせんに帰国きこくしたあとの対応たいおうが極きわめて難むずかしいという懸念けねんが基本きほん的てきにある」と指摘してきしました。

また、平岩ひらいわ教授きょうじゅは、韓国かんこくをけん制けんせいするねらいもあるのではないかという見方みかたを示しめしました。

平岩ひらいわ教授きょうじゅは「韓国かんこくは東京とうきょうオリンピックをきっかけに次つぎの米べい朝ちょうの協議きょうぎを後押あとおししたいという思おもいもあったし、同時どうじに日本にっぽんを舞台ぶたいにするオリンピックなので日にち朝ちょう関係かんけいの進展しんてんも韓国かんこくが後押あとおしをして、北朝鮮きたちょうせん問題もんだいで韓国かんこくが全体ぜんたいのイニシアチブを取とりたいという思おもいがあったが、そうした韓国かんこく側がわの思おもいをけん制けんせいしたのだと思おもう」と分析ぶんせきしました。

今回こんかい、北朝鮮きたちょうせんは、朝鮮ちょうせん労働党ろうどうとうの機関きかん紙し「労働ろうどう新聞しんぶん」や国営こくえいの朝鮮ちょうせん中央ちゅうおう通信つうしんといった公式こうしきメディアではなく、体育たいいく省しょうのウェブサイトで方針ほうしんを明あきらかにしました。

これについて平岩ひらいわ教授きょうじゅは「正式せいしきな決定けっていだと思おもうが、今後こんごの展開てんかいで修正しゅうせいが可能かのうな範囲はんいなのではないか」と分析ぶんせきしました。

平岩ひらいわ教授きょうじゅは「アメリカの北朝鮮きたちょうせん政策せいさくの見直みなおしの内容ないようが近ちかく明あきらかになり、これを受うけて韓国かんこく、日本にっぽんの対応たいおうも分わかってくる。その内容ないようが北朝鮮きたちょうせんが望のぞむ対話たいわの方向ほうこうに進すすみ、オリンピックが利用りようできると考かんがえれば総会そうかいでの決定けっていを別べつの形かたちで翻ひるがえして東京とうきょうオリンピックに参加さんかするという可能かのう性せいも全まったくないわけではないと思おもう」と述のべました。

「南北なんぼく対話たいわ スポーツ外交がいこうも難航なんこうしそうだ」韓国かんこくメディア

北朝鮮きたちょうせんが東京とうきょうオリンピックに参加さんかしない方針ほうしんを明あきらかにしたことについて、韓国かんこくメディアは一斉いっせいに速報そくほうで伝つたえました。

このうち、通信つうしん社しゃの連合れんごうニュースは、ムン・ジェイン（文ぶん在ざい寅とら）大統領だいとうりょうが先月せんげつ、東京とうきょうオリンピックは、南北なんぼくと日本にっぽん、アメリカの対話たいわの場ばとなり得えるという考かんがえを示しめしたことに触ふれたうえで「韓国かんこく政府せいふの構想こうそうは水の泡みずのあわとなった」と伝つたえました。

そして、「ムン政権せいけんは北きたに対にたいする政策せいさくを見直みなおさざるを得えなくなった」と指摘してきしました。

また、保守ほしゅ系けいの主要しゅよう紙し、朝鮮ちょうせん日にち報ほうは「今後こんご、南北なんぼく対話たいわ、スポーツ外交がいこうも難航なんこうしそうだ」と伝つたえました。

北朝鮮きたちょうせんとオリンピック

北朝鮮きたちょうせんは1964年ねん冬ふゆのインスブルックオリンピックに初はじめて参加さんかし、夏なつの大会たいかいは1972年ねんのミュンヘンオリンピックから参加さんかしました。

これまで夏なつと冬ふゆの合あわせて19のオリンピックに参加さんかしています。

このうち1992年ねんのバルセロナ大会たいかいと、2012年ねんのロンドン大会たいかいでは最多さいた4つの金メダルきんめだるを獲得かくとくするなど、これまでに金メダルきんめだる16、銀メダルぎんめだる17、銅メダルどうめだる23を獲得かくとくしています。

日本にっぽんにとって印象いんしょう的てきなのは、1996年ねんのアトランタ大会たいかい、柔道じゅうどう女子じょし48キロ級きゅうの決勝けっしょうです。

金メダルきんめだる確実かくじつといわれた田村たむら亮子あきこ選手せんしゅが初はじめて世界せかい大会たいかいに出場しゅつじょうした北朝鮮きたちょうせんのケー・スンヒ選手せんしゅに敗やぶれた一いち戦せんは世界せかいに驚おどろきを持もって受け止うけとめられました。

また、2016年ねんのリオデジャネイロ大会たいかい卓球たっきゅう女子じょしシングルスで、当時とうじ世界せかいランキング6位いで日本にっぽんのエースだった石川いしかわ佳けい純じゅん選手せんしゅは初戦しょせんの3回戦かいせんで世界せかい的てきに無名むめいだった北朝鮮きたちょうせんの選手せんしゅに敗やぶれる波乱はらんもありました。

北朝鮮きたちょうせんが夏なつの大会たいかいに不参加ふさんかとなれば1988年ねんのソウルオリンピック以来いらい、33年ねんぶりとなります。

IOC バッハ会長かいちょう 南北なんぼく融和ゆうわに向むけた働はたらきかけの経緯けいい

IOC＝国際こくさいオリンピック委員いいん会かいのバッハ会長かいちょうは、韓国かんこくと北朝鮮きたちょうせんの南北なんぼく融和ゆうわに向むけ、さまざまな働はたらきかけを行おこなってきました。

2018年ねん冬ふゆのピョンチャンオリンピックでは、開会かいかい式しきで2006年ねんのトリノ大会たいかい以来いらい12年ねんぶりに韓国かんこくと北朝鮮きたちょうせんの合同ごうどう行進こうしんが実現じつげんしたほか、アイスホッケー女子じょしでは史上しじょう初はつとなる南北なんぼく合同ごうどうチームが結成けっせいされました。

バッハ会長かいちょうは大会たいかい後ごの2018年ねん3月つきに北朝鮮きたちょうせんを訪おとずれ、キム・ジョンウン総そう書記しょきと初はじめて会談かいだんし、キム総そう書記しょきから東京とうきょうオリンピック・パラリンピックに参加さんかする意向いこうを伝つたえられました。

その年としの6月つきには国際こくさいオリンピック委員いいん会かいの創立そうりつ記念きねん日びとなる「オリンピックデー」にあわせて韓国かんこくと北朝鮮きたちょうせん、それに日本にっぽんと中国ちゅうごくのオリンピック委員いいん会かいの会長かいちょうらをスイスのローザンヌに招まねき、東京とうきょう大会たいかいや2022年ねんの冬ふゆの北京ぺきん大会たいかいに向むけて北朝鮮きたちょうせんの参加さんかを支援しえんする考かんがえを表明ひょうめいしていました。

東京とうきょう大会たいかいに向むけては2019年ねんにIOCと韓国かんこく、それに北朝鮮きたちょうせんの間まで▽2018年ねんの世界せかい選手権せんしゅけんで南北なんぼく合同ごうどうチームが結成けっせいされた柔道じゅうどうの混合こんごう団体だんたいをはじめ、▽バスケットボール女子じょし、▽ホッケー女子じょし、それに▽ボートの4つの競技きょうぎで合同ごうどうチームの結成けっせいを目指めざすことで合意ごういしていましたがその後そのご、具体ぐたい的てきな動うごきはみられませんでした。

ソース：NHK ニュース