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株価8連騰は本物か 投資の神様? インバウンド?【経済コラム】
2023-04-22 15:05:30

18日、日経平均株価は8営業日連続で値上がりし、終値でことしの最高値を更新しました。インバウンド効果か“低PBR改革”の影響か、はたまた“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が来日した余波か。市場ではポジティブな要因が次々にあげられ、さらなる上昇への期待も高まりましたが、一方でその持続性を疑問視する声もあがっています。さまざまな見方が交錯するマーケットの現状を取材しました。(経済部記者 西園興起)
株価上昇を引っ張ったセクターは?
18日の東京株式市場で日経平均株価は2万8658円83銭まで上昇。4月7日以降、8営業日連続の値上がりです。

株価はことしに入って上昇を続けますが、3月10日以降、欧米の金融不安が広がったことで大きく値下がり。
しかし1か月前の3月20日を底に再び上昇傾向が続き、4月20日までの1か月の日経平均株価の上昇幅は1700円にのぼりました。
この間の株価上昇を主導したのはどのセクターだったのか。
4月20日までの1か月間で、TOPIX=東証株価指数の上昇率は5.7%でしたが、業種ごとに分類した指数では、「卸売」が9.9%、「銀行」が9%、「保険」が7.7%、「証券」が7%と大きく伸びていることがわかります。
それではなぜこれらの銘柄が買われたのか。
しかし1か月前の3月20日を底に再び上昇傾向が続き、4月20日までの1か月の日経平均株価の上昇幅は1700円にのぼりました。
この間の株価上昇を主導したのはどのセクターだったのか。
4月20日までの1か月間で、TOPIX=東証株価指数の上昇率は5.7%でしたが、業種ごとに分類した指数では、「卸売」が9.9%、「銀行」が9%、「保険」が7.7%、「証券」が7%と大きく伸びていることがわかります。
それではなぜこれらの銘柄が買われたのか。
まず「卸売」。ポイントはこのセクターに含まれる商社株です。4月に来日したアメリカの投資家、バフェット氏が、日本の総合商社の株式に積極的に投資する姿勢を示したと伝わったことで、大手商社の株価は軒並み大きく値上がりしました。

そして「銀行」や「保険」「証券」。これら金融株の株価上昇の要因は、金融不安への懸念が後退したことで金融株に買い戻しの動きが出たためだと見られています。
株価上昇の背景にはさまざまな要因が
とはいってもこれ以外の銘柄にもまんべんなく買いが入ったというのが最近の株高の特徴です。その要因とともに見ていきます。

1.インバウンド効果
この1か月で鉄道などの「陸運」が7.9%、「小売」が7.2%、「サービス」が5.9%、それぞれ上昇しました。
背景には、外国人旅行者の急増に伴い、インバウンド効果への期待が高まっていることがあります。
2.円安効果
円安が進んだことも株価の押し上げにつながっていると指摘されています。
輸出関連の銘柄に買い注文が入り、自動車などの「輸送」と「電気機器」がいずれも4.4%上昇しました。
3.低PBRの改善に期待
そして、もう1つが東京証券取引所の低PBR改革。
東証は、1株当たりの純資産と比較して株価が1倍を下回っているいわゆる“低PBR”の企業が多いことから、こうした市場での評価が低い企業に改善を促しています。このためこの低PBRの企業の改革に期待する買い注文が入っています。
では、誰が株式を買ったのか。このところ株式購入の動きが目立つのが外国人投資家です。
東京証券取引所の発表によりますと14日までの5営業日の間に、プライム市場で、外国人投資家が日本株を買い越した額は1兆円を超えました。1週間の買い越し額が1兆円を超えたのは、去年4月に東証が再編されてから初めてです。
この1か月で鉄道などの「陸運」が7.9%、「小売」が7.2%、「サービス」が5.9%、それぞれ上昇しました。
背景には、外国人旅行者の急増に伴い、インバウンド効果への期待が高まっていることがあります。
2.円安効果
円安が進んだことも株価の押し上げにつながっていると指摘されています。
輸出関連の銘柄に買い注文が入り、自動車などの「輸送」と「電気機器」がいずれも4.4%上昇しました。
3.低PBRの改善に期待
そして、もう1つが東京証券取引所の低PBR改革。
東証は、1株当たりの純資産と比較して株価が1倍を下回っているいわゆる“低PBR”の企業が多いことから、こうした市場での評価が低い企業に改善を促しています。このためこの低PBRの企業の改革に期待する買い注文が入っています。
では、誰が株式を買ったのか。このところ株式購入の動きが目立つのが外国人投資家です。
東京証券取引所の発表によりますと14日までの5営業日の間に、プライム市場で、外国人投資家が日本株を買い越した額は1兆円を超えました。1週間の買い越し額が1兆円を超えたのは、去年4月に東証が再編されてから初めてです。
なぜ取り引きは低調なのか
ただ、気になるデータもあります。株高の要因がこれだけあるにしては、売買の規模をあらわすデータに勢いがないということです。
東証プライム市場で4月に入って20日までの14日間のうち、出来高が10億株を下回った日数は7日と半分にのぼっています。出来高が10億株を下回った日数が1月は4日、2月と3月が1日だったことを考えると、4月の低調ぶりが際立つ形となっています。
市場関係者からは、出来高だけでなく、売買代金が低調なことが気がかりだという声もあがっています。このうちの1人は、次のように話していました。
「今回のように株価上昇が何日も続き年初来高値をつけるような局面では、一日の売買代金が3兆円を超えるというのが経験則のようなものだが、4月に入ってから、3兆円のラインを一度も超えておらず、2兆円に満たない日も二日間あるという状況だ。取引額が低調なことは心配だが、慎重な姿勢で投資に臨む投資家が多いという今の市場の姿をあらわしているのではないか」
それでは、取り引きのボリュームがそれほど大きくない中で、なぜ株価が上昇を続けたのでしょうか。
「途中のフロアで止まらない高層階へのエレベーターのような株価の動き。これは、海外のヘッジファンドが株価急落後に買い戻すときの上がり方の特徴だ」
こうした見方を示しているのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストです。
東証プライム市場で4月に入って20日までの14日間のうち、出来高が10億株を下回った日数は7日と半分にのぼっています。出来高が10億株を下回った日数が1月は4日、2月と3月が1日だったことを考えると、4月の低調ぶりが際立つ形となっています。
市場関係者からは、出来高だけでなく、売買代金が低調なことが気がかりだという声もあがっています。このうちの1人は、次のように話していました。
「今回のように株価上昇が何日も続き年初来高値をつけるような局面では、一日の売買代金が3兆円を超えるというのが経験則のようなものだが、4月に入ってから、3兆円のラインを一度も超えておらず、2兆円に満たない日も二日間あるという状況だ。取引額が低調なことは心配だが、慎重な姿勢で投資に臨む投資家が多いという今の市場の姿をあらわしているのではないか」
それでは、取り引きのボリュームがそれほど大きくない中で、なぜ株価が上昇を続けたのでしょうか。
「途中のフロアで止まらない高層階へのエレベーターのような株価の動き。これは、海外のヘッジファンドが株価急落後に買い戻すときの上がり方の特徴だ」
こうした見方を示しているのは、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストです。

ここで藤戸さんが注目するのは、ヨーロッパの主な金融機関に関連したCDS=クレジット・デフォルト・スワップのスプレッド。
CDSは、企業が債務不履行となるときに備える保険のような金融商品です。企業の経営破綻のリスクが高まると、保険料にあたるスプレッドが上昇します。
CDSは、企業が債務不履行となるときに備える保険のような金融商品です。企業の経営破綻のリスクが高まると、保険料にあたるスプレッドが上昇します。

ヨーロッパの主な金融機関に関連したこのスプレッドの指数は、欧米の金融不安への懸念が高まる中で大きく上昇。
しかし3月15日から20日にかけてピークをつけたあとに反転し、足元では、混乱が起きる前の水準まで低下しています。
藤戸さんは、アメリカの銀行が相次いで経営破綻したことで、海外のヘッジファンドの一部が慌てて金融株などを手放し、一方でリスクに備えてCDSを購入したとみています。
その後、金融不安への懸念が後退したことで、CDSを売って、株を買い戻した可能性が高いと指摘します。
こうした動きは、リーマンショックやコロナショックのあとに何度も見られた現象だそうで、出来高が少ない中でも価格だけがつり上がっていく傾向があるということです。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 藤戸則弘チーフ投資ストラテジスト
「株価が急落したあとの上昇局面で、海外のヘッジファンドは、先物取引を通じて株式を買い戻していく。現物の株価はこれに連動して動く形となるが、こうした状況では現物の出来高が少ない中でも価格が一気に上がるという形をとることが多い」
しかし3月15日から20日にかけてピークをつけたあとに反転し、足元では、混乱が起きる前の水準まで低下しています。
藤戸さんは、アメリカの銀行が相次いで経営破綻したことで、海外のヘッジファンドの一部が慌てて金融株などを手放し、一方でリスクに備えてCDSを購入したとみています。
その後、金融不安への懸念が後退したことで、CDSを売って、株を買い戻した可能性が高いと指摘します。
こうした動きは、リーマンショックやコロナショックのあとに何度も見られた現象だそうで、出来高が少ない中でも価格だけがつり上がっていく傾向があるということです。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 藤戸則弘チーフ投資ストラテジスト
「株価が急落したあとの上昇局面で、海外のヘッジファンドは、先物取引を通じて株式を買い戻していく。現物の株価はこれに連動して動く形となるが、こうした状況では現物の出来高が少ない中でも価格が一気に上がるという形をとることが多い」
株価上昇を“本物”とするには
藤戸さんは、「金融不安への懸念がなお市場にくすぶる中で、現状では投資家が自信をもって株式市場に資金を投じる環境ではない。今後、企業の決算発表が本格化し、最近の株価上昇に見合った期待どおりの業績となっているかを見極める局面に入る。そうでないと判断されると期待はすぐにはげ落ちてしまうだろう」と指摘します。
一方、みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは、欧米の景気減速というリスクについても引き続き考慮しておくべきだと指摘します。
一方、みずほ証券の小林俊介チーフエコノミストは、欧米の景気減速というリスクについても引き続き考慮しておくべきだと指摘します。

「日本株の雲行きが完全に好転したとは言い切れない。市場が見積もる欧米の景気減速リスクが十分で無い可能性もある。この先、金融引き締めが長期化し、欧米の景気減速が現実のものとして意識されるようなことになると、投資家が再びリスク回避の姿勢を強めることもありうる」
世の中の森羅万象が反映され、複合的な要因が絡み合いながら形成される株価。最近の株価上昇のポジティブな要因がいくつも語られる中で、今後考えられるリスクについてもしっかり把握しておく必要があると思いました。
世の中の森羅万象が反映され、複合的な要因が絡み合いながら形成される株価。最近の株価上昇のポジティブな要因がいくつも語られる中で、今後考えられるリスクについてもしっかり把握しておく必要があると思いました。
注目予定

来週27日、28日は、日銀が新体制になってから初めての金融政策決定会合が開かれます。植田新総裁が金融政策についてどのような考え方を示すのか。会合の結果と記者会見での発言に市場の関心が集まっています。
さらに、会合後には「展望レポート」も公表されます。2025年度までの物価の見通しが示されることになり、こちらも注目です。
また、日米で、主要企業の決算発表が相次ぎます。欧米の金融不安などが決算内容や業績見通しにどのような影響を及ぼしているかが焦点です。
さらに、会合後には「展望レポート」も公表されます。2025年度までの物価の見通しが示されることになり、こちらも注目です。
また、日米で、主要企業の決算発表が相次ぎます。欧米の金融不安などが決算内容や業績見通しにどのような影響を及ぼしているかが焦点です。
ソース:NHK ニュース