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もし食料しょくりょう不足ふそくになったら? 対策たいさく報告ほうこくしょまとまる 農水省のうすいしょう

2023-12-06 08:38:32

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ロシアによるウクライナ侵攻しんこう気候きこう変動へんどう問題もんだいなど食料しょくりょう安全あんぜん保障ほしょう課題かだいなるなか、農林水産省のうりんすいさんしょう有識者ゆうしきしゃ会議かいぎは、食料しょくりょう不足ふそくした場合ばあい政府せいふ事業じぎょうしゃに対にたい輸入ゆにゅう拡大かくだい増産ぞうさんそれカロリーたか作物さくもつへの生産せいさん転換てんかんなどについて、法律ほうりつもとづく要請ようせい計画けいかく作成さくせい指示しじできるようにすべきだとする報告ほうこくしょりまとめました。

食料しょくりょう不足ふそく場合ばあいもとめられる対応たいおう 段階だんかいてきにまとめる

食料しょくりょう供給きょうきゅうをめぐっては、人口じんこう増加ぞうか気候きこう変動へんどう問題もんだいくわえ、ロシアによるウクライナ侵攻しんこう新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいなどで、世界せかいてき不安定ふあんていなるそれ指摘してきされています。

こうしたなかで、農林水産省のうりんすいさんしょう有識者ゆうしきしゃ会議かいぎは6にち国内こくない食料しょくりょう不足ふそくした場合ばあいもとめられる対応たいおう報告ほうこくしょにまとめました。

それによりますと、コメや小麦こむぎ大豆だいず、それにたまごにくなど品目ひんもくは、平時へいじから生産せいさん輸入ゆにゅう在庫ざいこ状況じょうきょうについて政府せいふ情報じょうほう収集しゅうしゅうできるようにすることが重要じゅうようだとしています。

そしてこれら品目ひんもく供給きょうきゅうりょう平時へいじより2わり以上いじょう減少げんしょうする場合ばあいは、政府せいふ農家のうか企業きぎょうに対にたいして輸入ゆにゅう拡大かくだい増産ぞうさん出荷しゅっかさき調整ちょうせいなど要請ようせい計画けいかく作成さくせい指示しじおこなことがもとめられると指摘してきしています。

さらに、最低さいていげん必要ひつようカロリー確保かくほ困難こんなんなるそれある場合ばあいは、農家のうかに対にたいして、サツマイモなど念頭ねんとうに、カロリーを重視じゅうしした品目ひんもくへの生産せいさん転換てんかん要請ようせい計画けいかく作成さくせい指示しじおこなことが必要ひつようだとしています。

報告ほうこくしょでは、これら対策たいさく根拠こんきょなる法律ほうりつ整備せいび必要ひつようだとしていて、農林水産省のうりんすいさんしょうは、さらに具体ぐたいすすめ、来年らいねん通常つうじょう国会こっかい関連かんれんする法案ほうあん提出ていしゅつする方針ほうしんです。


報告ほうこくしょ詳細しょうさい

今回こんかいまとめられた報告ほうこくしょでは、コメ、小麦こむぎ大豆だいず菜種なたねやパームたまごにく乳製品にゅうせいひんなどの「畜産ちくさんぶつ」、砂糖さとうくわえ、肥料ひりょう家畜かちく飼料しりょう種子しゅしなどの「生産せいさん資材しざい」も対象たいしょう品目ひんもくとしたうえで、不足ふそくする状況じょうきょうを4つの段階だんかいけて対応たいおうをまとめています。

まず、食料しょくりょう不足ふそくするまえ平時へいじ段階だんかいから、政府せいふが、民間みんかん在庫ざいこ状況じょうきょうを、事業じぎょうしゃ営業えいぎょう秘密ひみつにも配慮はいりょしつつ、流通りゅうつう過程かていなどふくめて十分じゅうぶん把握はあくできるようにする必要ひつようある指摘してきしています。

つぎ大幅おおはば食料しょくりょう不足ふそく兆候ちょうこう把握はあくした場合ばあいには、内閣ないかく総理そうり大臣だいじんトップとする政府せいふ対策たいさく本部ほんぶげたうえで、まずは農家のうか企業きぎょう自主じしゅてき取り組とりくうながため、生産せいさん輸入ゆにゅう拡大かくだい出荷しゅっか調整ちょうせいなど要請ようせいすべきだとしています。

さらに供給きょうきゅうりょう平時へいじより2わり以上いじょう減少げんしょうした場合ばあいには、食生活しょくせいかつ事業じぎょう活動かつどうおおきな影響えいきょうとして、さらなる対策たいさくもとめています。

この目安めやすとされたのが、いわゆる平成へいせいべい騒動そうどう」です。


冷害れいがいによってコメがだい不作ふさくとなった1993ねん、コメの供給きょうきゅうりょうまえとしくらべて24%減少げんしょうし、価格かかく上昇じょうしょうし、各地かくちいだめ発生はっせい

政府せいふがタイまい緊急きんきゅう輸入ゆにゅうするなどおおきな混乱こんらんきました。

この段階だんかいでは、対策たいさく本部ほんぶが「事態じたい宣言せんげん」をおこない、要請ようせいによっても必要ひつようりょう確保かくほできないさいは、農家のうか企業きぎょうに対にたいして生産せいさん輸入ゆにゅう拡大かくだい出荷しゅっか調整ちょうせいに関にかんする計画けいかく作成さくせいするよう指示しじすべきだとしています。

またそれでも必要ひつようりょう確保かくほできない場合ばあいは、計画けいかく変更へんこう指示しじできるようにすべきだとしました。

さらに、1にんたり、1にち1900キロカロリーの摂取せっしゅ確保かくほできないようなきわめて深刻しんこく段階だんかいなると、農家のうかに対にたいして、サツマイモやコメなど念頭ねんとうにカロリーを重視じゅうしした品目ひんもくへの生産せいさん転換てんかん要請ようせいし、それでも確保かくほできない場合ばあいは、生産せいさん転換てんかんに関にかんする計画けいかく作成さくせいするよう指示しじすることが妥当だとうだとしています。

報告ほうこくしょでは、これら対策たいさくうち、「要請ようせい」については、罰則ばっそくもうけるべきではないとする一方いっぽうで、「計画けいかく作成さくせい指示しじ」に違反いはんした場合ばあい罰則ばっそくもうけることが妥当だとうだとしています。

計画けいかくどおりに実施じっししなかったり、計画けいかく変更へんこう指示しじしたがわなかったりした場合ばあいには、その事実じじつ公表こうひょうすることが妥当だとうだとしています。


人口じんこう増加ぞうか 気候きこう変動へんどう ウクライナ侵攻しんこう背景はいけい食料しょくりょう安全あんぜん保障ほしょう

今回こんかい報告ほうこくしょがとりまとめられた背景はいけいには、食料しょくりょう安全あんぜん保障ほしょうに対にたいする意識いしきたかまりがあります。

世界せかいてき人口じんこう増加ぞうか背景はいけいに、コメや小麦こむぎといった穀物こくもつ需要じゅようつづけているほか新興しんこうこく経済けいざい成長せいちょうともなって肉類にくるい植物しょくぶつなど消費しょうひえています。

世界せかい人口じんこうは、2050ねんには現在げんざいよりも18おくにんえて、97おくにんたっする予想よそうされ、食料しょくりょう需要じゅようはさらにえていく見込みこまれています。

その一方いっぽうで、供給きょうきゅうめんでのリスクも顕在けんざいしていて、2022ねん公表こうひょうされた国連こくれんのIPCC=気候きこう変動へんどうに関にかんする政府せいふかんパネルの報告ほうこくしょではかんばつなど異常いじょう気象きしょうによって、穀物こくもつなどが不作ふさくなるリスクがたかまっていると指摘してきされています。


とりインフルエンザやASF=アフリカぶたねつなど家畜かちく伝染でんせんびょうによって、畜産ちくさんぶつ供給きょうきゅう支障ししょうしょうじるそれたかまっています。

日本にっぽんではさくシーズンとりインフルエンザによって過去かこ最多さいたおよそ1771まんのニワトリが処分しょぶんされ、たまご卸売おろしうり価格かかく一時いちじ平年へいねんよりおよそ7わりたかくなったつきもありました。

また新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいその後そのご経済けいざい活動かつどうきゅう回復かいふくともなって、国際こくさいてき物流ぶつりゅう混乱こんらんしたことも、今後こんご食料しょくりょう確保かくほへの懸念けねんたかめました。


さらに、ロシアによるウクライナ侵攻しんこうでは、両国りょうこくとも穀物こくもつ生産せいさんさかだったこともあり、国際こくさいてき小麦こむぎ価格かかく一時いちじ高騰こうとうしたほか、ロシアがおも輸出ゆしゅつこくである肥料ひりょう価格かかく上昇じょうしょうしました。

このほか経済けいざい大国たいこくとして存在そんざいかんたかめる中国ちゅうごくとので、食料しょくりょう争奪そうだつせんとなり“ける”ケースが懸念けねんされるほか、トウモロコシなどの穀物こくもつはバイオ燃料ねんりょう原料げんりょうなるなど食用しょくよう以外いがいでの需要じゅようたかまり予想よそうされています。

こうしたことから、農林水産省のうりんすいさんしょう有識者ゆうしきしゃ会議かいぎがまとめた報告ほうこくしょでは、食料しょくりょう飼料しりょうなどおお特定とくていくに地域ちいき依存いぞんする日本にっぽんは、世界せかいてき需給じゅきゅう不安定ふあんていによっておおきな影響えいきょうけるそれある指摘してきしています。


海外かいがい法律ほうりつ

食料しょくりょう安全あんぜん保障ほしょうをめぐる国際こくさい情勢じょうせいきびしさをなか海外かいがいでは、食料しょくりょう不足ふそくそなえた法律ほうりつをすでに整備せいびしているくにもあります。

農林水産省のうりんすいさんしょうによりますと、このうちスイスは、食料しょくりょう不足ふそくつづ期間きかんながさにおうじて、政府せいふべき対応たいおうさだめています。

たとえば、3か月かげつ以内いないたん期間きかんであれば、備蓄びちく放出ほうしゅつ輸入ゆにゅう促進そくしんなどおこない、1ねんえるような長期ちょうきかんであれば、生産せいさん転換てんかん配給はいきゅうなどをおこなとしています。

実際じっさいにコロナ短期たんきてき需給じゅきゅうひっ迫ひっぱくしたさいは、バターたまご輸入ゆにゅう促進そくしんなど措置そちおこなったということです。

また、ドイツも食料しょくりょう安定あんてい供給きょうきゅう確保かくほするため、食品しょくひんメーカーに対にたいして定期ていきてき生産せいさん能力のうりょく保管ほかん能力のうりょくなど情報じょうほう提供ていきょう義務ぎむづけているほか食料しょくりょう危機ききしょうじた場合ばあい生産せいさん流通りゅうつうなどかく段階だんかい政府せいふ介入かいにゅうすることを規定きていしています。

このほか中国ちゅうごくでも食料しょくりょう安全あんぜん保障ほしょう関連かんれんする法律ほうりつ制定せいていけたうごあるほか、ロシアによるウクライナ侵攻しんこうけて、対策たいさく見直みなお乗り出のりだくに相次あいついでいるということです。


有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ座長ざちょう消費しょうひしゃ意識いしき行動こうどう変革へんかくを”

今回こんかい有識者ゆうしきしゃ会議かいぎ座長ざちょうつとめた、リスクマネージメントが専門せんもん名古屋なごや工業こうぎょう大学だいがく渡辺わたなべ研司けんじ教授きょうじゅは、「おお食料しょくりょう海外かいがい依存いぞんしているわが国わがくにはリスクがたかく、いままえにたくさんぶつはあるが、非常ひじょうぜい弱ぜいじゃく状態じょうたいだ。今回こんかい政府せいふ枠組わくぐめたが、それだけでは機能きのうせず、事業じぎょうしゃによる柔軟じゅうなんなオペレーションや、消費しょうひしゃ意識いしき行動こうどう変革へんかく必要ひつようになってくる」と指摘してきしました。

そのうえで、「消費しょうひしゃには、お金おかねはらえば、いつでもなにでもなものがべられる状態じょうたい依存いぞんしすぎると、不測ふそく事態じたいおちい可能かのうせいふくらむという構造こうぞうを、まずはってもらいたい。グローバルなサプライチェーンから地産ちさんしょうにシフトするなど、『我慢がまんする』ということではなく、『地元じもとしょくたのしむ』という意識いしきえていくことが、インパクトをらすことにもつながるはずだ」とはなしていました。

ソース:NHK ニュース