大阪 放課後等デイサービス死亡事故 運営法人代表ら2人逮捕へ
2023-12-12 03:12:15

大阪 吹田市にある放課後等デイサービスの施設「アルプスの森」では、1年前の去年12月、通っていた中学1年の清水悠生さん(当時13)が施設の前で送迎車から降りたあと、行方が分からなくなり、1週間後に近くの川で死亡しているのが見つかりました。
遺族や捜査関係者によりますと、生徒は本人の障害の特性から急に走り出してしまうことがあったため「個別支援計画」の中で送迎車から降りる際は職員2人が必ず付き添い、施設内に誘導するという取り決めを施設側と交わしていました。
しかし、警察が捜査した結果、施設の職員が取り決めを守らず、当時、1人で対応しており、こうした対応が常態化していた疑いがあることが分かったということです。
警察は、施設側が生徒が急に走り出すおそれがあることを知りながら安全管理を怠ったことが事故につながったとして、運営する法人の代表、宇津慎史容疑者(60)と、兄で社員の宇津雅美容疑者(65)を12日午後にも業務上過失致死の疑いで逮捕する方針です。
また、送迎車の48歳の運転手についても今後、書類送検する方針だということです。
2人は先月、別の利用者の男の子に対する暴行の疑いで逮捕されていて、警察は施設の運営の実態などを詳しく調べています。
これまでの経緯
大阪・豊中市の中学1年、清水悠生さん(当時13)は、小学1年の頃から吹田市にある放課後等デイサービスの施設「アルプスの森」に通っていました。
特別支援学校の授業が終わった後、帰宅するまでの時間を過ごしていたといいます。
母親の亜佳里さん(42)によりますと、3歳の時に「自閉スペクトラム症」と診断され、ことばで意思疎通を図ることが難しかったという悠生さん。
両親は、写真を貼ったり絵を描いたりした手作りのカードで一緒に遊びながらやりとりしていたということです。
施設への通所にあたり、両親は施設側と「個別支援計画」の中である取り決めを交わしていました。
悠生さんは、本人の障害の特性から急に走り出してしまうことがあったため、送迎車から降りる際は職員2人が必ず付き添い、施設内に誘導するというものです。
しかし、去年の12月9日、悠生さんは送迎車から降りた後急に走り出し、行方が分からなくなりました。
近くを流れる川のそばに上着が落ちていたことから警察や消防などが周辺を捜索したところ、1週間後に川で死亡しているのが見つかったということです。
両親は施設の職員が取り決めを守らず、当時、1人で対応していたことを施設側から聞かされたといいます。
母親の亜佳里さんは「車の乗り降りの時が最も危険で『必ず2人でやります』と施設側から言われていたので、安心して子どもを預けていました。今は本当に許せず、悔しい気持ちでいっぱいです」と話しています。
この事故を受けて、吹田市はことし2月、施設に対する監査を実施。
決められた対応をせず生徒の安全確保を怠ったとして、新規の利用者の受け入れを3か月間停止する行政処分を行いました。
亜佳里さんは事故から1年となる今も現場の川をたびたび訪れ、花を手向けています。
川を見るたびに、水遊びが大好きだった悠生さんの姿を思い出すといいます。
亜佳里さんは「キラキラ光る水面を見て遊びに行こうと考えたのだと思います。ここに来ると、あの子を助けたかったとか、苦しかったのではないかとか、そんなことを思って毎回悲しくなります。このような事故を繰り返さないために、原因や改善すべき点がどこにあるのか、社会全体で考える機会を作ってほしい」と話していました。
今回の事故について、施設側はことし10月、取材に対し「ご遺族に対して大変申し訳ないという気持ちは時間がたっても変わることはありません。2度と同じような事故が起きないよう注意を払い、再発防止に努めてまいります」とコメントしていました。
「放課後等デイサービス」とは
「放課後等デイサービス」は、児童福祉法に基づき、障害のある子どもを放課後や休日に受け入れる福祉サービスで、11年前の2012年4月に始まりました。
原則、小学生から高校生にあたる年齢の子どもが対象で、民間の施設が自立した日常生活を送るのに必要な支援を行ったり、地域との交流の機会を提供したりしています。
こども家庭庁によりますと、施設の費用は国や自治体が9割を負担し、残りの1割を利用者が世帯の収入に応じて利用料として負担することになっています。
施設の管理責任者は障害のある子どもの支援を3年以上経験していることなどが条件で、職員の半数以上は子どもの養育のための専門的な知識を備えた保育士や児童指導員とするよう定められています。
厚生労働省によりますと、全国の施設の数はことし7月時点であわせて2万758か所、利用者数はのべ34万3430人に上っています。