5年に1度行われる国勢調査では、学歴に関する調査を10年に1度行っています。
今回の調査では、義務教育を修了していない人などが学ぶ「夜間中学」のニーズの把握が求められる中、初めて「小学校」卒業を調査することになりました。
その結果、おととし10月時点で最終学歴が「小学校卒業」の人は80万4293人いることがわかりました。
これまでも調査されてきた小学校にも通ったことがない「未就学」の人数は、前回平成22年から3万4000人ほど減りましたが9万4000人余りに上っていて、中学校まで卒業していない人は合わせておよそ90万人となっています。
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【詳しく】最終学歴“小卒”80万人 50代以下も2万人 なぜ?
2022-06-24 11:08:08

国が初めて国勢調査で最終学歴が「小学校卒業」の人について調べたところ、80万人を超えることが分かりました。
戦前の教育制度の違いなどが背景にあるとみられ、80代以上が9割を占めますが、50代以下も2万人近くいます。
小学校にも通っていない「未就学」の人と合わせると50代以下で義務教育を終えていないとみられる人が5万3000人余りに上ることもわかりました。
その背景は?
年代別、都道府県別の詳しいデータとともに詳しくお伝えします。
戦前の教育制度の違いなどが背景にあるとみられ、80代以上が9割を占めますが、50代以下も2万人近くいます。
小学校にも通っていない「未就学」の人と合わせると50代以下で義務教育を終えていないとみられる人が5万3000人余りに上ることもわかりました。
その背景は?
年代別、都道府県別の詳しいデータとともに詳しくお伝えします。
最終学歴が“小学校卒業”なぜ調査?結果の詳細は
“小学校卒業”年代別に見ると?80代以上が多い理由は?
年代別に詳しくみていきます。

全体としては、80代以上が多く9割を占めています。
その理由の1つは、戦前の教育制度が今と異なり、中学校は義務教育ではなかったことがあります。
1907年に義務教育課程が6年となり、当時の「尋常小学校」を卒業すれば、義務教育を修めたことになると規定されていました。
その後、戦時下で小学校は「国民学校」となり、このときは義務教育を8年間にする予定でしたが、戦時中の特例で初等科の6年までで高等科の2年は実現しませんでした。
もう1つの理由は、戦中や戦後の復興の混乱の中で、教育を受けられなかった人が多くいることです。
日本国憲法に基づいて1947年に義務教育制度ができ、小学校が6年、中学校が3年と定められましたが、戦後の混乱の中で、長期にわたって欠席する子どもがいるなど、義務教育を修了していない人は少なくありませんでした。
その理由の1つは、戦前の教育制度が今と異なり、中学校は義務教育ではなかったことがあります。
1907年に義務教育課程が6年となり、当時の「尋常小学校」を卒業すれば、義務教育を修めたことになると規定されていました。
その後、戦時下で小学校は「国民学校」となり、このときは義務教育を8年間にする予定でしたが、戦時中の特例で初等科の6年までで高等科の2年は実現しませんでした。
もう1つの理由は、戦中や戦後の復興の混乱の中で、教育を受けられなかった人が多くいることです。
日本国憲法に基づいて1947年に義務教育制度ができ、小学校が6年、中学校が3年と定められましたが、戦後の混乱の中で、長期にわたって欠席する子どもがいるなど、義務教育を修了していない人は少なくありませんでした。
日本人の若い世代にも…義務教育なのになぜ?

今回の国勢調査では、50代以下で「小学校卒業」と回答した人は1万9857人いました。
▽50代が6663人
▽40代が6163人
▽30代が4221人
▽20代が2508人
▽15歳から19歳でも302人となっています。
いずれの年代も外国人が50%余りを占めていますが、日本人も40%を超えています。
さらに50代以下では、小学校に通えていない「未就学」の人も3万3767人に上り、日本人が80%近くを占めています。
小学校卒業が最終学歴の人と合わせると、義務教育を終了していない人は50代以下で少なくとも5万3000人にのぼることが今回の調査で明らかになりました。
なぜこうした事態になっているのか。
今回の調査からはわかりませんが、岡山県で日本最大規模の「自主夜間中学校」を運営し、小学校や中学校に通えなかった人の学びを支援している城之内庸仁代表は次のように話しています。
「中には、いじめや不登校、それに引きこもり、親のネグレクトなどでほとんど学校に通えなかった人もいる。“形式的に卒業”したことになっている人も一定数いると見られるが、実態としては学校に行っていないという認識が強く残っている人も多くいるのではないか」
子どもの貧困や学校教育に詳しい立命館大学の柏木智子教授はこう指摘しています。
▽50代が6663人
▽40代が6163人
▽30代が4221人
▽20代が2508人
▽15歳から19歳でも302人となっています。
いずれの年代も外国人が50%余りを占めていますが、日本人も40%を超えています。
さらに50代以下では、小学校に通えていない「未就学」の人も3万3767人に上り、日本人が80%近くを占めています。
小学校卒業が最終学歴の人と合わせると、義務教育を終了していない人は50代以下で少なくとも5万3000人にのぼることが今回の調査で明らかになりました。
なぜこうした事態になっているのか。
今回の調査からはわかりませんが、岡山県で日本最大規模の「自主夜間中学校」を運営し、小学校や中学校に通えなかった人の学びを支援している城之内庸仁代表は次のように話しています。
「中には、いじめや不登校、それに引きこもり、親のネグレクトなどでほとんど学校に通えなかった人もいる。“形式的に卒業”したことになっている人も一定数いると見られるが、実態としては学校に行っていないという認識が強く残っている人も多くいるのではないか」
子どもの貧困や学校教育に詳しい立命館大学の柏木智子教授はこう指摘しています。

「外国人の未就学は課題として指摘されており、想定されていたが、50代以下の世代で日本人でも同程度ぐらいが『小卒』という回答をしているのは憂慮すべき事態だ。もっと早くからこうした実態把握をすべきだった。最終学歴が大卒の人と比べると生涯賃金や生活の質において大きな差があり、貧困状態にも陥りやすく自分自身が望む生き方ができない状況に陥ることが想定される」。
50代以下で外国人が多い背景は?
全体を占める外国人の割合は2.5%ですが、50代以下では半数を超えているのはなぜなのでしょうか。
その背景には、1990年に入管法が改正され、それに伴って、日系3世まで定住が可能となることが明確化されるなど、年々、外国人が増えていることがあると考えられています。
ただ、言語や文化の違いから、日本の学校に通うことを困難に感じている子どももいると指摘されています。
その背景には、1990年に入管法が改正され、それに伴って、日系3世まで定住が可能となることが明確化されるなど、年々、外国人が増えていることがあると考えられています。
ただ、言語や文化の違いから、日本の学校に通うことを困難に感じている子どももいると指摘されています。
義務教育制度はどうなっている?
1947年に定められた今の義務教育制度は、憲法と学校教育法に基づき「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする」とし、保護者は子どもを学校に通わせる「就学」の義務を負います。
義務教育を子どもに受けさせなかった場合、督促されますが、それでも受けさせなかった場合、保護者に10万円の罰金が科せられることが法律で定められています。
文部科学省によりますと、外国の子どもたちも、国際人権規約に基づき義務教育を受ける権利は認められています。
一方で、外国人の保護者に子どもを就学させることは義務づけておらず、国は、子どもたちを学ばせるよう呼びかけています。
義務教育を子どもに受けさせなかった場合、督促されますが、それでも受けさせなかった場合、保護者に10万円の罰金が科せられることが法律で定められています。
文部科学省によりますと、外国の子どもたちも、国際人権規約に基づき義務教育を受ける権利は認められています。
一方で、外国人の保護者に子どもを就学させることは義務づけておらず、国は、子どもたちを学ばせるよう呼びかけています。
都道府県別は
最終学歴が「小学校卒業」の人や「未就学」の人の状況を都道府県別にみていきます。

最も多かったのは北海道で5万8444人、次いで愛知県で4万3072人、新潟県で3万6154人、大阪府が4万2399人となっています。
学びを支える1つ“夜間中学”の現状は
義務教育を受けられなかった人が「学びたい」と思った時、どうしたらいいのでしょうか。
その1つの受け皿として国が設置を呼びかけているのが「夜間中学」です。
2016年に施行された「教育機会確保法」では、「夜間中学」を設置するなど学習の機会を提供するよう自治体に義務づけていて、国は、すべての都道府県や政令指定都市に少なくとも1つは「夜間中学」を設置するよう呼びかけています。
その1つの受け皿として国が設置を呼びかけているのが「夜間中学」です。
2016年に施行された「教育機会確保法」では、「夜間中学」を設置するなど学習の機会を提供するよう自治体に義務づけていて、国は、すべての都道府県や政令指定都市に少なくとも1つは「夜間中学」を設置するよう呼びかけています。

一方で、全国の夜間中学は、この春に北海道などで開校した4校を含めても15都道府県の40校にとどまっています。
夜間中学がない地域のうち、宮城県仙台市や静岡県など3県で来年や再来年に開校するほか、鳥取県や群馬県など6県でこれから開校に向けて検討が進められています。
しかし、23県では設置の時期など具体的な見通しが立っていないということで、文部科学省は今回の調査結果を受け、全国の教育委員会に夜間中学の設置や充実に取り組むよう文書で通知しました。
夜間中学がない地域のうち、宮城県仙台市や静岡県など3県で来年や再来年に開校するほか、鳥取県や群馬県など6県でこれから開校に向けて検討が進められています。
しかし、23県では設置の時期など具体的な見通しが立っていないということで、文部科学省は今回の調査結果を受け、全国の教育委員会に夜間中学の設置や充実に取り組むよう文書で通知しました。
学びの支援、どうすれば?
立命館大学の柏木智子教授は、支援の在り方について、このように話しています。
「夜間中学は重要な学び直しの機会を保障する場で設置を進めるべきだが、仕事や子育てで通いにくい人や一度学校に通うのをやめた人たちが再び通学することには大きなハードルもあり、公的サービスにより多様なニーズに合わせて学びを保障する必要がある。また国勢調査は回答者の認識に基づくもので、調査に回答していない人も相当数いることから、必ずしも実態と合致しているとは限らない。支援につなげるには、より詳細な分析が必要になる」。
「夜間中学は重要な学び直しの機会を保障する場で設置を進めるべきだが、仕事や子育てで通いにくい人や一度学校に通うのをやめた人たちが再び通学することには大きなハードルもあり、公的サービスにより多様なニーズに合わせて学びを保障する必要がある。また国勢調査は回答者の認識に基づくもので、調査に回答していない人も相当数いることから、必ずしも実態と合致しているとは限らない。支援につなげるには、より詳細な分析が必要になる」。
ソース:NHK ニュース