袴田巌さん無罪確定 検察が控訴権利を放棄
2024-10-09 03:15:35

袴田さんは逮捕から58年を経て、「死刑囚」の立場から解放されました。
58年前の1966年に今の静岡市清水区で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審で、静岡地方裁判所は9月26日に無罪の判決を言い渡し、有罪の決め手とされてきた「5点の衣類」や袴田さんの自白調書など、あわせて3つの証拠を捜査機関がねつ造したと指摘しました。
これについて8日、最高検察庁の畝本直美検事総長は談話を発表し、「判決は多くの問題を含む到底承服できないものだ」とする一方、「相当な長期間にわたり、法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致した」として、控訴しないことを明らかにしていました。
静岡地方検察庁は9日午前、裁判所に対して控訴の権利を放棄する手続きを取り、袴田さんの無罪が確定しました。
袴田さんは逮捕から58年を経て、「死刑囚」の立場から解放されました。
弁護団は、袴田さんが釈放されるまで47年7か月にわたって不当に身柄を拘束されたとして今後、国に刑事補償を請求する方針です。
亡くなった専務夫婦の孫にあたる男性「受け入れるしかない」
無罪判決が確定することを受けて、事件で亡くなったみそ製造会社の専務夫婦の孫にあたる男性がNHKの取材に応じ「検察が控訴を断念した理由について、詳細を聞いていませんが、判断に異議はありませんし、受け入れるしかないと思っています」と心境を明かしました。
今回の判決で、捜査機関があわせて3つの証拠をねつ造したと指摘されたことについては、「ねつ造が本当にあったのかなかったのか、真相がわからず、まだもやもやする部分はあります」と述べました。
その上で、袴田巌さんに対しては「長いあいだ死刑囚という立場に置かれたあとに無罪が確定するのはかわいそうだと思います。もっと早く再審が開かれていれば、58年もかからなかったのではないかと思います」と話していました。
林官房長官「議論なども踏まえ適切に対応するものと考えている」
林官房長官は臨時閣議のあとの記者会見で「個別事件における検察当局の判断にかかわる事柄についてコメントすることは差し控える」と述べました。
その上で、再審制度のあり方について「最高検察庁としてはこの事件の再審請求手続きが長期に及んだことなどについて所要の検証を行いたいと公表したものと承知している。また、法務省でも現在、協議会で議論が行われており、その議論なども踏まえ適切に対応するものと考えている」と述べました。