ジョンナム氏し殺害さつがい事件じけん “出国しゅっこく”で捜査そうさは一層いっそう困難こんなんに

北朝鮮きたちょうせんのキム・ジョンナム（金きむ正男まさお）氏しが殺害さつがいされた事件じけんをめぐって、マレーシアと北朝鮮きたちょうせんは、これまで禁きんじていた相手あいて国こくの国民こくみんの出国しゅっこくを認みとめるとともに、遺体いたいを北朝鮮きたちょうせんに引き渡ひきわたすことで合意ごういしましたが、事件じけんの捜査そうさ対象たいしょうになっていた北朝鮮きたちょうせん大使館たいしかんの２に等とう書記官しょきかんらが、合意ごういによってマレーシアを出国しゅっこくしたと見みられることから、事件じけんの捜査そうさは一層いっそう困難こんなんなものとなりそうです。

北朝鮮きたちょうせんのキム・ジョンウン（金きむ正ただし恩おん）朝鮮ちょうせん労働党ろうどうとう委員いいん長ちょうの兄あに、キム・ジョンナム氏しが、２月にがつにマレーシアで殺害さつがいされた事件じけんをめぐり、両国りょうこくは、互たがいに相手あいて側がわの国民こくみんの出国しゅっこくを認みとめない異例いれいの措置そちを取とってきました。

これについて両国りょうこくは３さん０ぜろ日にち夜よる、交渉こうしょうの結果けっか、相手あいて国こくの国民こくみんの出国しゅっこくを認みとめるとともに、遺体いたいを北朝鮮きたちょうせんに引き渡ひきわたすことで合意ごういしたと発表はっぴょうし、ジョンナム氏しの遺体いたいは安置あんちされていた病院びょういんを出でて、３さん０ぜろ日にち夜よる、中国ちゅうごく・北京ぺきんに向むかった旅客機りょかくきに積み込つみこまれたものと見みられています。

また、北朝鮮きたちょうせんに足止あしどめされていた外交がいこう官かんやその家族かぞく９きゅう人にんが、ピョンヤンを出発しゅっぱつし、３さん１いち日にち朝あさ、クアラルンプール国際こくさい空港くうこうに到着とうちゃくしました。

一方いっぽう、警察けいさつが捜査そうさ対象たいしょうとしていた、北朝鮮きたちょうせん大使館たいしかんのヒョン・グァンソン２に等とう書記官しょきかんと、北朝鮮きたちょうせんの国営こくえい航空こうくうのキム・ウギル職員しょくいんの２に人にんと見みられる男性だんせいが、３さん０ぜろ日にち、とどまっていた北朝鮮きたちょうせん大使館たいしかんを出でて、ジョンナム氏しの遺体いたいを乗のせたと見みられる旅客機りょかくきで、北京ぺきんに向むけて出国しゅっこくしました。
２に人にんは３さん１いち日にち未明みめいに北京ぺきんに到着とうちゃくし、迎むかえの車くるまで北朝鮮きたちょうせん大使館たいしかんに向むかいました。

マレーシア政府せいふは、９きゅう人にんの北朝鮮きたちょうせんからの出国しゅっこくと引き替ひきかえに、２に等とう書記官しょきかんらの出国しゅっこくを認みとめることで、自じ国民こくみんの保護ほごを最さい優先ゆうせんしたものと見みられます。
しかし、事件じけんを主導しゅどうしたとされる北朝鮮きたちょうせん国籍こくせきの容疑ようぎ者しゃ４よん人にんがすでに出国しゅっこくし、捜査そうさ対象たいしょうとなっていた２に等とう書記官しょきかんら２に人にんも新あらたに出国しゅっこくしたと見みられることで、事件じけんの捜査そうさはより一層いっそう困難こんなんなものになりそうです。

出国しゅっこくしたと見みられる北朝鮮きたちょうせんの２に人にんとは

北朝鮮きたちょうせん大使館たいしかんのヒョン・グァンソン２に等とう書記官しょきかんと、北朝鮮きたちょうせん国営こくえいのコリョ航空こうくうのキム・ウギル職員しょくいんは、事件じけん当日とうじつの先月せんげつ１いち３さん日にち、事件じけんを主導しゅどうしたと見みられる北朝鮮きたちょうせん国籍こくせきの４よん人にんの容疑ようぎ者しゃが出国しゅっこくした、クアラルンプール国際こくさい空港くうこうの第だい１いちターミナルに設置せっちされた監視かんしカメラに一緒いっしょにいる姿すがたが捉とらえられていました。

このうち、２に等とう書記しょき官かんについては、去年きょねん９月くがつ２に０ぜろ日にちにマレーシアに入国にゅうこくしたことが警察けいさつの発表はっぴょうでわかっています。

また、キム職員しょくいんについては、ことし１月いちがつ２に９きゅう日にちにマレーシアに入国にゅうこくしていて、警察けいさつが拘束こうそくするための令状れいじょうをとって事情じじょう聴取ちょうしゅに応おうじるよう求もとめていました。

一方いっぽう、同おなじく警察けいさつが事情じじょう聴取ちょうしゅを求もとめていた北朝鮮きたちょうせん国籍こくせきのリ・ジウ氏しについては、今回こんかい、出国しゅっこくが確認かくにんされていません。
リ・ジウ氏しは、すでに起訴きそされているインドネシア人じんのシティ・アイシャ被告ひこくを、いたずら番組ばんぐみへの出演しゅつえんと偽いつわって勧誘かんゆうしたと見みられていて、クアラルンプールのデパートなどでシティ被告ひこくとともに予行よこう演習えんしゅうを繰り返くりかえしたとされています。

合意ごういの裏うらに 北朝鮮きたちょうせんの思惑おもわくは

キム・ジョンナム氏しの殺害さつがい事件じけんをめぐって、北朝鮮きたちょうせんは３さん０ぜろ日にち夜よる、国営こくえいメディアを通をつうじて、マレーシア政府せいふとの合意ごうい内容ないようを発表はっぴょうし、双方そうほうがこれまで禁きんじていた相手あいて国こくの国民こくみんの出国しゅっこくを認みとめるとともに、遺体いたいが北朝鮮きたちょうせんに引き渡ひきわたされることになったと明あきらかにしました。

この中なかで北朝鮮きたちょうせんは、両国りょうこく国民こくみんのビザなしでの渡航とこうの再開さいかいを前向まえむきに協議きょうぎすることで一致いっちしたと強調きょうちょうし、東南アジアとうなんあじあにおいて対外たいがい活動かつどうの拠点きょてんである重要じゅうような友好国ゆうこうこくマレーシアとの関係かんけい改善かいぜんを、急いそぎたい思惑おもわくがあると見みられます。

一方いっぽうで北朝鮮きたちょうせんはこれまで、死亡しぼうしたのはキム・ジョンナム氏しではなく、所持しょじしていたパスポートの名義めいぎの「キム・チョル」だとしたうえで、死因しいんについても、猛毒もうどくのＶぶいＸえっくすによる殺害さつがいではなく、心臓しんぞう発作ほっさであり、アメリカと韓国かんこくの陰謀いんぼうによって事件じけんに仕立したて上あげられたと主張しゅちょうしてきました。

このため、今回こんかいの合意ごういによって、当初とうしょからの要求ようきゅうどおり、遺体いたいが北朝鮮きたちょうせんに引き渡ひきわたされることで、事件じけんには関与かんよしていないとする主張しゅちょうを、今後こんご一段いちだんと強つよめることも予想よそうされます。

“人質ひとじち”取とられた形かたちのマレーシア

国際こくさい空港くうこうで猛毒もうどくのＶＸが使つかわれるという、国くにの信用しんようにもかかわる事件じけんとあって、マレーシア政府せいふは警察けいさつに徹底てっていした捜査そうさを指示しじし、捜査そうさへの非難ひなんを繰り返くりかえす北朝鮮きたちょうせん大使たいしに国外こくがい退去たいきょを求もとめるなど、強硬きょうこうな姿勢しせいを示しめしていました。

しかし、北朝鮮きたちょうせんがマレーシア人じんの出国しゅっこくを禁止きんしするという異例いれいの措置そちをとったことで、マレーシア政府せいふは事実じじつ上じょう人質ひとじちをとられたかたちとなりました。

これ以降いこう、マレーシア政府せいふは、交渉こうしょうによって事態じたいを打開だかいする方針ほうしんに転てんじ、北朝鮮きたちょうせんと水面すいめん下かで交渉こうしょうにあたってきました。この中なかで、北朝鮮きたちょうせんは９きゅう人にんの出国しゅっこくと引き替ひきかえに警察けいさつの捜査そうさ対象たいしょうとなっていた２に等とう書記官しょきかんらの出国しゅっこくを認みとめるよう強つよく求もとめたものと見みられます。

これに対にたいしマレーシア側がわは、ナジブ首相しゅしょうが、２に人にんの出国しゅっこくを認みとめるという政治せいじ判断はんだんを行おこなったものとみられます。

３さん０ぜろ日にち夜よるの声明せいめいで、ナジブ首相しゅしょうは２に等とう書記官しょきかんらの出国しゅっこくについて一切いっさい触ふれておらず、今後こんごも徹底てっていした捜査そうさを行おこなうと強調きょうちょうしましたが、捜査そうさは困難こんなんな状況じょうきょうに追い込おいこまれたといえます。

ソース：NHK ニュース