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英総選挙まで1週間 激しい論戦続くことに
2017-05-31 21:47:18

EU=ヨーロッパ連合からの離脱交渉が今月始まるのを前に、イギリスで8日に行われる総選挙まであと1週間となりました。当初、圧勝が予想されたメイ首相率いる保守党は、最大野党の労働党の激しい追い上げを受けており、投票日まで激しい論戦が繰り広げられることになりそうです。
イギリスのメイ首相は、EUとの離脱交渉を前に、交渉を有利に進めるためには、強く安定したリーダーシップが必要だなどとして総選挙の前倒し実施に踏み切り、投票は今月8日、議会下院の650の議席をめぐって行われます。
選挙戦の序盤では、与党・保守党が世論調査の支持率で最大野党の労働党を20ポイント前後リードし、メイ首相が圧勝するとの見方が出ていました。
しかし、保守党が、マニフェストで社会保障費の見直しを打ち出したことや、テロ事件をきかっけに政府の治安対策への批判が広がり、30日の段階の各社の世論調査の平均は、メイ首相率いる保守党が44.7%、最大野党の労働党が34.8%と激しい追い上げを見せています。
メイ首相は、労働党のコービン党首について「EUとの離脱交渉に臨む準備も、テロに対応する準備もできていない」などと批判し、形成を転換しようとしています。
これに対し野党勢力は、31日の夜に公共放送BBCが行う各党の党首らによるテレビ討論会に、メイ首相が欠席することについて「厳しい質問を避けようとしている」と批判を強めており、選挙戦は、投票日まで激しい論戦が続くことになりそうです。
選挙戦の序盤では、与党・保守党が世論調査の支持率で最大野党の労働党を20ポイント前後リードし、メイ首相が圧勝するとの見方が出ていました。
しかし、保守党が、マニフェストで社会保障費の見直しを打ち出したことや、テロ事件をきかっけに政府の治安対策への批判が広がり、30日の段階の各社の世論調査の平均は、メイ首相率いる保守党が44.7%、最大野党の労働党が34.8%と激しい追い上げを見せています。
メイ首相は、労働党のコービン党首について「EUとの離脱交渉に臨む準備も、テロに対応する準備もできていない」などと批判し、形成を転換しようとしています。
これに対し野党勢力は、31日の夜に公共放送BBCが行う各党の党首らによるテレビ討論会に、メイ首相が欠席することについて「厳しい質問を避けようとしている」と批判を強めており、選挙戦は、投票日まで激しい論戦が続くことになりそうです。
争点1 EU離脱
メイ首相が「EUからの離脱交渉を担うリーダーを問う」と位置づけた今回の選挙で、各党はEU離脱について、対象的な政策を示しています。
このうち、保守党は「中途半端な姿勢はとらない」として、EUの単一市場や関税同盟から撤退する姿勢を明確にしています。そのうえで、EU側と自由貿易協定を含む「特別な関係」を結ぶことを目指すとしていますが、メイ首相は「悪い合意ならないほうがましだ」として、交渉に厳しい姿勢で臨むことを強調しています。
一方の労働党は、支持基盤の中に「離脱派」と「残留派」の双方を抱えることから、これまで離脱についての立場を明確にしてきませんでしたが、今回マニフェストの中で初めて「離脱を受け入れる」という考えを打ち出しました。そのうえで交渉では、単一市場や関税同盟へのアクセスの維持を目指すほか、イギリスで暮らすEU市民の権利を守ることを約束するなど、EU側との関係を重視する姿勢を内容となっています。
また、親EUの立場をとる自由民主党は、EUとの離脱交渉の後、合意内容について国民投票を実施するとしていて、この中で「EU残留」も選択肢の1つに盛り込み、EUにとどまる道をひらきたいとしています。
このうち、保守党は「中途半端な姿勢はとらない」として、EUの単一市場や関税同盟から撤退する姿勢を明確にしています。そのうえで、EU側と自由貿易協定を含む「特別な関係」を結ぶことを目指すとしていますが、メイ首相は「悪い合意ならないほうがましだ」として、交渉に厳しい姿勢で臨むことを強調しています。
一方の労働党は、支持基盤の中に「離脱派」と「残留派」の双方を抱えることから、これまで離脱についての立場を明確にしてきませんでしたが、今回マニフェストの中で初めて「離脱を受け入れる」という考えを打ち出しました。そのうえで交渉では、単一市場や関税同盟へのアクセスの維持を目指すほか、イギリスで暮らすEU市民の権利を守ることを約束するなど、EU側との関係を重視する姿勢を内容となっています。
また、親EUの立場をとる自由民主党は、EUとの離脱交渉の後、合意内容について国民投票を実施するとしていて、この中で「EU残留」も選択肢の1つに盛り込み、EUにとどまる道をひらきたいとしています。
争点2 治安対策
投票日の17日前にイギリス中部で起きたテロ事件をきかっけに、各党の治安対策に注目が集まっています。
このうち保守党は、過激派思想が広がることを防ぐため、公共機関や地域社会の活動を通じて、イギリス社会の価値観を順守するよう指導するとともに、現在の法律で対処できない犯罪については新たな処罰規定を設けることを検討するなど、取締まりを強化する方針を明確にしています。
これに対して野党各党は、保守党政権下の緊縮策で、20%以上警察予算が削減されたことなどを挙げて批判を強めています。
具体的に、労働党は、警察官を1万人増員するなど治安機関の強化を公約しているほか、政府が公共機関などでの監視を強化した結果社会が分断されたとして、テロ対策のありかたを見直すとしています。
自由民主党も警察など治安機関の予算を3億ポンド増額し、警察官の給与水準も見直す方針を示しているほか、ヨーロッパ各国の治安機関との連携を深め、国境を越えたテロ対策の強化を訴えています。
このうち保守党は、過激派思想が広がることを防ぐため、公共機関や地域社会の活動を通じて、イギリス社会の価値観を順守するよう指導するとともに、現在の法律で対処できない犯罪については新たな処罰規定を設けることを検討するなど、取締まりを強化する方針を明確にしています。
これに対して野党各党は、保守党政権下の緊縮策で、20%以上警察予算が削減されたことなどを挙げて批判を強めています。
具体的に、労働党は、警察官を1万人増員するなど治安機関の強化を公約しているほか、政府が公共機関などでの監視を強化した結果社会が分断されたとして、テロ対策のありかたを見直すとしています。
自由民主党も警察など治安機関の予算を3億ポンド増額し、警察官の給与水準も見直す方針を示しているほか、ヨーロッパ各国の治安機関との連携を深め、国境を越えたテロ対策の強化を訴えています。
争点3 移民問題
イギリスではEUから離脱を望む人の多くが、増え続ける移民への対応を求めていることから、移民の問題は重要な争点の1つとなっています。
保守党は、EUからの離脱後、移民の数を抑えながらも経済成長にとって必要な人材は確保し続けるとしています。
そしてメイ首相は、内相時代に掲げた移民の増加を年間10万人以内に抑えるという公約を再び掲げ、移民が家族を呼び寄せるために必要な給与の水準を引き上げたり、留学生が就職するための条件を厳格化したりするとしています。
これに対して労働党は、移民に対する寛容な姿勢を打ち出しており、移民受け入れの上限は設けないとしています。そして、EUから離脱したあとに新しい移民政策を導入し、人種による差別のない公平なルールを作るとしていますが、具体的な方法については言及していません。
このほか、自由民主党が、移民の増加に公共サービスが対応できるよう基金を創設するとして、受け入れに前向きな姿勢を示しているのに対し、EU離脱の運動を主導したイギリス独立党は、移民の実質的な増加をゼロに抑えると主張しており、各政党の主張の違いが浮き彫りになっています。
保守党は、EUからの離脱後、移民の数を抑えながらも経済成長にとって必要な人材は確保し続けるとしています。
そしてメイ首相は、内相時代に掲げた移民の増加を年間10万人以内に抑えるという公約を再び掲げ、移民が家族を呼び寄せるために必要な給与の水準を引き上げたり、留学生が就職するための条件を厳格化したりするとしています。
これに対して労働党は、移民に対する寛容な姿勢を打ち出しており、移民受け入れの上限は設けないとしています。そして、EUから離脱したあとに新しい移民政策を導入し、人種による差別のない公平なルールを作るとしていますが、具体的な方法については言及していません。
このほか、自由民主党が、移民の増加に公共サービスが対応できるよう基金を創設するとして、受け入れに前向きな姿勢を示しているのに対し、EU離脱の運動を主導したイギリス独立党は、移民の実質的な増加をゼロに抑えると主張しており、各政党の主張の違いが浮き彫りになっています。
争点4 外交・防衛政策
EUから離脱したあと、イギリスが国際社会の中でどのような役割を果たしていくのかについても、議論が交わされています。
保守党は、イギリスが国連やNATO=北大西洋条約機構で主導的な役割を担いながら、「特別な関係」といわれるアメリカとの関係をいかして、国際社会での存在感を維持したい考えです。メイ首相は、GDPの2%を防衛費に充てるというNATOの目標を守るほか、むこう10年間で総額1780億ポンドを軍の装備費などに充てるとしています。
労働党もGDPの2%を防衛費に充て、核戦力を維持するとしながらも、マニフェストでは、中東和平の実現を目指したり、シリア内戦の終結を支援したりすることが強調され、コービン党首の反戦思想も反映されています。
自由民主党は、国連やNATOを通じ国際社会の問題の解決に貢献する姿勢を示すとともに、フランス、オランダ、ドイツなどとの防衛面での連携を深め、ヨーロッパに軸足を置いた政策を維持する姿勢を強調しています。
保守党は、イギリスが国連やNATO=北大西洋条約機構で主導的な役割を担いながら、「特別な関係」といわれるアメリカとの関係をいかして、国際社会での存在感を維持したい考えです。メイ首相は、GDPの2%を防衛費に充てるというNATOの目標を守るほか、むこう10年間で総額1780億ポンドを軍の装備費などに充てるとしています。
労働党もGDPの2%を防衛費に充て、核戦力を維持するとしながらも、マニフェストでは、中東和平の実現を目指したり、シリア内戦の終結を支援したりすることが強調され、コービン党首の反戦思想も反映されています。
自由民主党は、国連やNATOを通じ国際社会の問題の解決に貢献する姿勢を示すとともに、フランス、オランダ、ドイツなどとの防衛面での連携を深め、ヨーロッパに軸足を置いた政策を維持する姿勢を強調しています。
争点5 経済財政政策
大きな争点の1つとなっているのが、メイ首相率いる保守党政権がこれまで進めてきた経済財政政策の是非です。
保守党は、戦後最悪の水準まで達した巨額の財政赤字を大幅に減らしながら、失業率も42年ぶりの低い水準に抑え、経済成長も実現したとして、その実績を強調。EU=ヨーロッパ連合から離脱したあとも、これまでどおり、安定した経済財政運営を続けるとしています。さらに、電気やガスなどの公共料金に上限を設けることや、企業の取締役会に従業員の代表を加えるなど、労働者寄りの政策も打ち出し、去年の国民投票で浮き彫りになった労働者の不満を解消したい考えです。
これに対して最大野党、労働党は、保守党政権で進められてきた財政緊縮策によって、格差が拡大したと批判。より多くの国民が経済成長を実感できるよう、富裕層や大企業に対する課税を強化し、最低賃金も引き上げると訴え、格差の是正を目指すとしています。さらにEUからの離脱について、保守党が主張するような単一市場からの撤退は経済に深刻な打撃を与えるとして単一市場へのアクセスを確保すると訴えています。
一方、自由民主党は、単一市場へのアクセス確保を訴えているほか、先端技術や起業の支援などに重点的に予算を配分するなどの公約を掲げています。
保守党は、戦後最悪の水準まで達した巨額の財政赤字を大幅に減らしながら、失業率も42年ぶりの低い水準に抑え、経済成長も実現したとして、その実績を強調。EU=ヨーロッパ連合から離脱したあとも、これまでどおり、安定した経済財政運営を続けるとしています。さらに、電気やガスなどの公共料金に上限を設けることや、企業の取締役会に従業員の代表を加えるなど、労働者寄りの政策も打ち出し、去年の国民投票で浮き彫りになった労働者の不満を解消したい考えです。
これに対して最大野党、労働党は、保守党政権で進められてきた財政緊縮策によって、格差が拡大したと批判。より多くの国民が経済成長を実感できるよう、富裕層や大企業に対する課税を強化し、最低賃金も引き上げると訴え、格差の是正を目指すとしています。さらにEUからの離脱について、保守党が主張するような単一市場からの撤退は経済に深刻な打撃を与えるとして単一市場へのアクセスを確保すると訴えています。
一方、自由民主党は、単一市場へのアクセス確保を訴えているほか、先端技術や起業の支援などに重点的に予算を配分するなどの公約を掲げています。
争点6 医療・福祉は
医療や福祉の分野をどう充実させるかも、争点の1つとなっています。とりわけ国民の関心が高いのが、税金で財源を賄い、原則として無料で国民に医療を提供している国民保健サービスです。
保守党政権はこれまで財政緊縮策の一環として、この分野の予算や人員を削減してきましたが、今回は5年間で80億ポンド(1兆1000億円余り)、予算を増額することを公約に掲げました。
これに対し最大野党の労働党は、ことし5月に公営の病院が大規模なサイバー攻撃を受けたのは、財政緊縮策の影響で病院のIT予算が削減されたためだと批判。国民保健サービスに今後5年間で300億ポンド(4兆2000億円余り)を投じるとしています。
自由民主党も予算を拡大する方針を明らかにしていて、主要政党がそろって国民保健サービスの充実を訴えています。
一方で、保守党は社会保障の財源を充実させるため、一部の高齢者の負担増につながる政策を打ち出しました。しかし、この政策を労働党が厳しく批判し、世論調査でも労働党が保守党を追い上げる要因となっていることから、メイ首相が高齢者の負担に上限を設けると述べる軌道修正を迫られています。
保守党政権はこれまで財政緊縮策の一環として、この分野の予算や人員を削減してきましたが、今回は5年間で80億ポンド(1兆1000億円余り)、予算を増額することを公約に掲げました。
これに対し最大野党の労働党は、ことし5月に公営の病院が大規模なサイバー攻撃を受けたのは、財政緊縮策の影響で病院のIT予算が削減されたためだと批判。国民保健サービスに今後5年間で300億ポンド(4兆2000億円余り)を投じるとしています。
自由民主党も予算を拡大する方針を明らかにしていて、主要政党がそろって国民保健サービスの充実を訴えています。
一方で、保守党は社会保障の財源を充実させるため、一部の高齢者の負担増につながる政策を打ち出しました。しかし、この政策を労働党が厳しく批判し、世論調査でも労働党が保守党を追い上げる要因となっていることから、メイ首相が高齢者の負担に上限を設けると述べる軌道修正を迫られています。
ソース:NHK ニュース