Show Furigana
パリ協定 歴史的採択から2年 存在意義問われる事態に
2017-06-01 20:31:09
すべての国が地球温暖化対策に取り組むことを定めた初めての枠組み「パリ協定」は、アメリカのトランプ大統領が協定から脱退する方針を決定したと発表したことで、おととしの歴史的な採択からわずか2年足らずで存在意義が問われる事態となっています。
おととし、京都議定書以来、18年ぶりに採択されたパリ協定は、先進国だけが責任を負ってきた温暖化対策について発展途上国を含むすべての国が取り組むことを定めた初めての枠組みです。
これまでに排出された温室効果ガスの多くは経済成長を遂げた先進国によるものだったため、先進国と途上国の間では、長年、温暖化対策に必要な資金支援や対策に取り組む責任の重さなどをめぐって根深い溝がありました。
このため、おととし、フランスのパリで開かれた国際会議「COP21」で各国が対立を乗り越えて協定の採択に至ったことは歴史的な転換点だと見られていました。
さらにオバマ前大統領のもとで世界第2位の排出国・アメリカと最大の排出国の中国がそろって協定の締結を発表するなど、各国が相次いで締結したことで去年11月には協定が発効し、今後の国際交渉はパリ協定に実効性をもたせるための詳しいルール作りが焦点となるはずでした。
そのやさきに交渉をけん引してきたアメリカが脱退する方針を決定したことは、各国の機運に水を差しかねず、パリ協定の存在意義そのものが問われる事態となっています。
これまでに排出された温室効果ガスの多くは経済成長を遂げた先進国によるものだったため、先進国と途上国の間では、長年、温暖化対策に必要な資金支援や対策に取り組む責任の重さなどをめぐって根深い溝がありました。
このため、おととし、フランスのパリで開かれた国際会議「COP21」で各国が対立を乗り越えて協定の採択に至ったことは歴史的な転換点だと見られていました。
さらにオバマ前大統領のもとで世界第2位の排出国・アメリカと最大の排出国の中国がそろって協定の締結を発表するなど、各国が相次いで締結したことで去年11月には協定が発効し、今後の国際交渉はパリ協定に実効性をもたせるための詳しいルール作りが焦点となるはずでした。
そのやさきに交渉をけん引してきたアメリカが脱退する方針を決定したことは、各国の機運に水を差しかねず、パリ協定の存在意義そのものが問われる事態となっています。
専門家「パリ協定に戻るよう説得を」
アメリカが「パリ協定」から脱退する方針を決定したと発表したことを受けて、地球温暖化対策に詳しい専門家は、世界全体の温暖化対策の実効性が薄れることは避けられないとして、日本が、協定に戻るよう、粘り強くアメリカを説得することが重要だと指摘しています。
アメリカは、去年9月、当時のオバマ政権が中国とともに「パリ協定」への締結を発表し、11月の協定の早期発効を大きく後押したほか、発展途上国の温暖化対策を支援する基金に多額の拠出を約束するなど、世界の温暖化対策をけん引してきました。
このアメリカが、「パリ協定」から脱退する方針を決定したと発表したことについて、地球温暖化対策に詳しい日本総研の藤波匠上席主任研究員は、温室効果ガスの排出量が世界2位で、国際交渉の場でも強い発言力を持っていたアメリカが協定から脱退することで、世界全体の温暖化対策の機運が下がり、協定の実効性が薄れることは避けられないと指摘しています。
そのうえで、日本への影響については、発展途上国の温暖化対策を支援するために先進国が拠出している資金のうち、アメリカが拠出するはずだった分の一部を日本が負担するよう求められる可能性があるということです。
また、平成9年に採択され、先進国に温暖化対策を義務づけた「京都議定書」では、採択の4年後に当時、世界最大の排出国だったアメリカのブッシュ政権が反対を表明したため、アメリカ抜きで協定が発効しました。
この際、日本国内で温暖化対策を進めても世界全体でみると効果がないといった議論が起こったことから、今回も、アメリカが抜けることでそもそも温暖化対策に取り組むことに意味があるのかなどといった消極的な意見や動きが日本国内で広がるおそれがあると懸念を示しています。
こうして世界全体の対策が遅れて温暖化が進み、気温が上がり続けると、海面の上昇や台風やサイクロンなどの大規模災害が頻発したりするほか、農作物の収穫が落ちたり、砂漠化が進んだりするなどの大きな影響が予想されると指摘しています。
一方、「パリ協定」の規定では、発効から3年後の2019年11月まで脱退の通告ができないため、「正式に脱退するためには時間がかかるので、日本政府には、協定に戻るよう、粘り強くアメリカを説得することが重要だ」と話しています。
そのうえで、「パリ協定は、各国が歳月をかけて議論を積み上げ作られたもので、1人のリーダーの発想によって、ひっくり返してしまうということが本当に許されるのかということについては、世界全体で考えていかなければならないと思う」と話していました。
アメリカは、去年9月、当時のオバマ政権が中国とともに「パリ協定」への締結を発表し、11月の協定の早期発効を大きく後押したほか、発展途上国の温暖化対策を支援する基金に多額の拠出を約束するなど、世界の温暖化対策をけん引してきました。
このアメリカが、「パリ協定」から脱退する方針を決定したと発表したことについて、地球温暖化対策に詳しい日本総研の藤波匠上席主任研究員は、温室効果ガスの排出量が世界2位で、国際交渉の場でも強い発言力を持っていたアメリカが協定から脱退することで、世界全体の温暖化対策の機運が下がり、協定の実効性が薄れることは避けられないと指摘しています。
そのうえで、日本への影響については、発展途上国の温暖化対策を支援するために先進国が拠出している資金のうち、アメリカが拠出するはずだった分の一部を日本が負担するよう求められる可能性があるということです。
また、平成9年に採択され、先進国に温暖化対策を義務づけた「京都議定書」では、採択の4年後に当時、世界最大の排出国だったアメリカのブッシュ政権が反対を表明したため、アメリカ抜きで協定が発効しました。
この際、日本国内で温暖化対策を進めても世界全体でみると効果がないといった議論が起こったことから、今回も、アメリカが抜けることでそもそも温暖化対策に取り組むことに意味があるのかなどといった消極的な意見や動きが日本国内で広がるおそれがあると懸念を示しています。
こうして世界全体の対策が遅れて温暖化が進み、気温が上がり続けると、海面の上昇や台風やサイクロンなどの大規模災害が頻発したりするほか、農作物の収穫が落ちたり、砂漠化が進んだりするなどの大きな影響が予想されると指摘しています。
一方、「パリ協定」の規定では、発効から3年後の2019年11月まで脱退の通告ができないため、「正式に脱退するためには時間がかかるので、日本政府には、協定に戻るよう、粘り強くアメリカを説得することが重要だ」と話しています。
そのうえで、「パリ協定は、各国が歳月をかけて議論を積み上げ作られたもので、1人のリーダーの発想によって、ひっくり返してしまうということが本当に許されるのかということについては、世界全体で考えていかなければならないと思う」と話していました。
環境NGO「温暖化対策は急務」
アメリカのトランプ大統領がパリ協定から脱退する方針を決定したと発表しましたが、巨大災害や異常気象につながるおそれがある地球温暖化の対策は待ったなしの時期に来ていて、環境NGOなどはさらなる対策が必要だと指摘しています。
各国の科学者などで作る国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」の報告書では、地球温暖化対策を加速させなければ海面の上昇や感染症の拡大など、深刻で逆戻りできない影響が世界規模で生じるおそれがあると警鐘を鳴らしています。
さらに、各国の間では温暖化による影響が食糧や水不足、さらに難民やテロの発生など世界情勢の不安定化につながるとの危機感も広がっていて、政財界のリーダーが集まる「ダボス会議」の最新の報告書でも、世界経済への影響が大きいリスクとして「大量破壊兵器」に次ぐ2番目に「異常気象」を挙げています。
日本国内でも温暖化による影響は災害だけでなく健康や農業などさまざまな分野に及ぶと予測されています。おととし環境省がまとめた報告書では、影響が特に大きく緊急性が高い事例として、今世紀末には洪水を引き起こすおそれのある大雨の頻度が増えると予測しています。
また、熱中症など暑さの影響で死亡するリスクが、2090年代には最大で3.7倍に達するほか、▽デング熱のウイルスを媒介する蚊の生息する地域が、今世紀末には北海道の一部にまで広がると予測しています。
さらに、品質の高い1等米の比率が減り、特に九州では今世紀末に40%減少するという予測があると指摘しています。
国連のIPCCは世界の平均気温の上昇を今世紀末に産業革命前より2度未満に抑える国際的な目標を達成するには、温室効果ガスの排出量を2010年の時点と比べて2050年には40%から70%削減し、今世紀末までにほぼゼロにする必要があると指摘しています。
パリ協定でも今世紀後半の2050年以降には世界の排出量を実質ゼロを抑えることを目指していますが、現時点で各国が国連に提出している削減目標では不十分な水準だとされていて、環境NGOなどはさらなる対策が必要だと指摘しています。
各国の科学者などで作る国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」の報告書では、地球温暖化対策を加速させなければ海面の上昇や感染症の拡大など、深刻で逆戻りできない影響が世界規模で生じるおそれがあると警鐘を鳴らしています。
さらに、各国の間では温暖化による影響が食糧や水不足、さらに難民やテロの発生など世界情勢の不安定化につながるとの危機感も広がっていて、政財界のリーダーが集まる「ダボス会議」の最新の報告書でも、世界経済への影響が大きいリスクとして「大量破壊兵器」に次ぐ2番目に「異常気象」を挙げています。
日本国内でも温暖化による影響は災害だけでなく健康や農業などさまざまな分野に及ぶと予測されています。おととし環境省がまとめた報告書では、影響が特に大きく緊急性が高い事例として、今世紀末には洪水を引き起こすおそれのある大雨の頻度が増えると予測しています。
また、熱中症など暑さの影響で死亡するリスクが、2090年代には最大で3.7倍に達するほか、▽デング熱のウイルスを媒介する蚊の生息する地域が、今世紀末には北海道の一部にまで広がると予測しています。
さらに、品質の高い1等米の比率が減り、特に九州では今世紀末に40%減少するという予測があると指摘しています。
国連のIPCCは世界の平均気温の上昇を今世紀末に産業革命前より2度未満に抑える国際的な目標を達成するには、温室効果ガスの排出量を2010年の時点と比べて2050年には40%から70%削減し、今世紀末までにほぼゼロにする必要があると指摘しています。
パリ協定でも今世紀後半の2050年以降には世界の排出量を実質ゼロを抑えることを目指していますが、現時点で各国が国連に提出している削減目標では不十分な水準だとされていて、環境NGOなどはさらなる対策が必要だと指摘しています。
ソース:NHK ニュース