サル痘 WHO“緊急きんきゅう事態じたい” 今いまできる対策たいさくは わかってきたこと7/25

欧米おうべいを中心ちゅうしんに報告ほうこくが相次あいつぐ「サル痘」について、WHO＝世界せかい保健ほけん機関きかんは7月つき23日にち「国際こくさい的てきに懸念けねんされる公衆こうしゅう衛生えいせい上じょうの緊急きんきゅう事態じたい」を宣言せんげんしました。
感染かんせんが確認かくにんされた人ひとは世界せかいで1万まん6000人にんを超こえ、専門せんもん家かはいつ日本にっぽんで感染かんせん者しゃが出でてもおかしくないと指摘してきします。

今いまの状況じょうきょうや、どう備そなえればよいかについてまとめました。
（2022年ねん7月つき25日にち現在げんざい）

“急速きゅうそくに感染かんせん拡大かくだいも適切てきせつな対策たいさくで防ふせげる”

「これまでに確認かくにんされていない多おおくの国くにに急速きゅうそくに広ひろがっている」。

WHOのテドロス事務じむ局長きょくちょうは2022年ねん7月つき23日にち、今回こんかいのサル痘感染かんせんの広ひろがりが「国際こくさい的てきに懸念けねんされる公衆こうしゅう衛生えいせい上じょうの緊急きんきゅう事態じたい」にあたると宣言せんげんしました。

ことし5月つき以降いこう、欧米おうべいを中心ちゅうしんにサル痘の感染かんせんの報告ほうこくが続つづいています。

WHOによりますと、感染かんせんが確認かくにんされているのは75の国くにと地域ちいきの1万まん6000人にん以上いじょう、そしてアフリカで5人にんが死亡しぼうしたとしています。

今回こんかい出だされた「国際こくさい的てきに懸念けねんされる公衆こうしゅう衛生えいせい上じょうの緊急きんきゅう事態じたい」は、「国際こくさい保健ほけん規則きそく」に定さだめられた手続てつづきです。

「他たの国々くにぐにに公衆こうしゅう衛生えいせい上じょうの危険きけんをもたらすと認みとめられ、緊急きんきゅうに国際こくさい的てきな調整ちょうせいが必要ひつような事態じたいが発生はっせいしたとき」に出だされます。

現在げんざい、新型しんがたコロナウイルス、ポリオの感染かんせん拡大かくだいでも「緊急きんきゅう事態じたい」が出だされていて、サル痘で3つとなります。

テドロス事務じむ局長きょくちょうは、サル痘の感染かんせん拡大かくだいについてはわからないことも多おおく世界中せかいじゅうに急速きゅうそくに拡大かくだいしているなどとして、宣言せんげんに踏み切ふみきったと述のべました。

一方いっぽうで、適切てきせつな対策たいさくを講こうじれば感染かんせん拡大かくだいは防ふせげると述のべ、まだ感染かんせんが確認かくにんされていない国くにも含ふくめてウイルスの監視かんし態勢たいせいを強化きょうかすべきだと訴うったえました。

発疹はっしんが特徴とくちょう的てきな「サル痘」 今回こんかいの感染かんせんでは

サル痘は、天然痘てんねんとうウイルスに似にた「サル痘ウイルス」に感染かんせんすることで起おきる病気びょうきです。

国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょやWHOなどによりますと、サル痘のウイルスの潜伏せんぷく期間きかんは通常つうじょう7日にちから14日間にちかんで、潜伏せんぷく期間きかんの後のち、発熱はつねつ、頭痛ずつう、リンパ節ぶしの腫はれ、筋肉きんにく痛つうなどが1日にちから5日間にちかん続つづき、その後そのご発疹はっしんが出でるということです。

発疹はっしんは、典型てんけい的てきには顔面がんめんから始はじまって体からだじゅうに広ひろがります。

徐々じょじょに膨ふくらんで水疱すいほう（水みずぶくれ）になり、うみが出でて、かさぶたとなり、発症はっしょうから2～4週間しゅうかんで治癒ちゆします。

多おおくの場合ばあい軽症けいしょうで自然しぜんに回復かいふくしますが、肺炎はいえんや敗血症はいけつしょうなどの合併症がっぺいしょうを引き起ひきおこすことがあり、年齢ねんれいが低ひくいほど重症じゅうしょう化かする可能かのう性せいがあるとされています。

ただ、今回こんかい広ひろがっているサル痘では様相ようそうが異ことなっています。

WHOによりますと、今回こんかいの感染かんせん拡大かくだいでは感染かんせんが確認かくにんされた人ひとの多おおくが男性だんせいで、そのほとんどが男性だんせいどうしでの性的せいてき接触せっしょくで起おきているということです。

アフリカ以外いがいの地域ちいきではサル痘の症状しょうじょうは、発疹はっしんが性器せいきや肛門こうもんの周辺しゅうへんなど一部いちぶにとどまっているケースや、発熱はつねつなどの前まえに発疹はっしんが出でるケースが特徴とくちょう的てきだとしています。

すべての人ひとに免疫めんえきがなかった場合ばあいなどに、1人にんの患者かんじゃから何なん人にんの人ひとに感染かんせんするかを示しめす「基本きほん再さい生産せいさん数すう」は1以下いかとされ、2を超こえるとされる新型しんがたコロナウイルスなどと比くらべてそれほど感染かんせん力りょくが強つよいわけではありません。

感染かんせん経路けいろは

サル痘は、一般いっぱんにネズミやリスなど感染かんせんした動物どうぶつにかまれたり、血液けつえきや体液たいえき、発疹はっしんに触ふれたりすることで感染かんせんするとされています。

また、感染かんせんした人ひとの発疹はっしんや体液たいえき、かさぶた、患者かんじゃが使つかった寝具しんぐや衣類いるいなどに接触せっしょくしたり、近ちかい距離きょりで飛ひまつを浴あびたりすることで、誰だれもが感染かんせんする可能かのう性せいがあると指摘してきされています。

感染かんせん経路けいろが特定とくていできない、いわゆる「市中しちゅう感染かんせん」とみられる患者かんじゃや、女性じょせいの患者かんじゃも確認かくにんされているとして、特定とくていのグループの人々ひとびとの病気びょうきとしてとらえずに警戒けいかいすべきだとされています。

ワクチンは

サル痘に対にたいしては、かつて接種せっしゅが行おこなわれた天然痘てんねんとうのワクチンが高たかい効果こうかがあり、WHOによりますとサル痘の感染かんせんを防ふせぐ効果こうかは85％に達たっするということです。

ただ、天然痘てんねんとうはワクチン接種せっしゅが積極せっきょく的てきに行おこなわれた結果けっか、1980年ねんに地球ちきゅう上じょうから根絶こんぜつされたこともあり、日本にっぽん国内こくないで最後さいごに接種せっしゅが行おこなわれたのは1976年ねんで、そのときに子こどもだった今いまの40代だい後半こうはん以上いじょうの世代せだいは接種せっしゅを受うけていて、サル痘に対にたいする免疫めんえきがある可能かのう性せいがあります。

日本にっぽんには効果こうかが高たかく副ふく反応はんのうも小ちいさいとされる天然痘てんねんとうのワクチンがあり、テロ対策たいさくの一環いっかんとして国家こっか備蓄びちくされています。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうはこのワクチンを東京とうきょうの国立こくりつ国際こくさい医療いりょう研究けんきゅうセンター病院びょういんで、濃厚のうこう接触せっしょくした患者かんじゃの家族かぞくなどを対象たいしょうに接種せっしゅできる体制たいせいを整ととのえています。

病院びょういんでは入院にゅういん患者かんじゃを担当たんとうする医師いしや看護かんご師しなど50人にんに接種せっしゅを済すませていて、接種せっしゅの対象たいしょうを保健所ほけんじょや地方ちほう衛生えいせい研究所けんきゅうじょの職員しょくいんなどにも拡大かくだいすることを検討けんとうしています。

そして、今月こんげつ29日にちにはこのワクチンをサル痘のワクチンとして承認しょうにんするかどうか、専門せんもん家か部会ぶかいを開ひらいて審議しんぎを始はじめることにしています。

治療ちりょう薬やくは

治療ちりょう薬やくについても国内こくないでは臨床りんしょう研究けんきゅうでの投与とうよが検討けんとうされています。

用もちいられるのは、アメリカの製薬せいやく会社かいしゃが天然痘てんねんとうの治療ちりょう薬やくとして開発かいはつした「テコビリマット」という飲のみ薬やくで、ヨーロッパではサル痘の抗こうウイルス薬やくとして承認しょうにんされています。

「特定とくてい臨床りんしょう研究けんきゅう」として患者かんじゃに投与とうよできるようになっているのは、現時点げんじてんで東京とうきょうの国立こくりつ国際こくさい医療いりょう研究けんきゅうセンターと大阪おおさかのりんくう総合医療センターそうごういりょうせんた-、愛知あいちの藤田ふじた医科いか大学だいがく病院びょういん、それに沖縄おきなわの琉球りゅうきゅう大学だいがく病院びょういんの4か所かしょだということです。

日本にっぽんでは感染かんせんの報告ほうこくなし

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、日本にっぽんでは集計しゅうけいが開始かいしされた2003年ねん以降いこう、サル痘の感染かんせんは報告ほうこくされていません。

専門せんもん家か「マスクや手洗てあらい消毒しょうどく サル痘の感染かんせん予防よぼうにもかなり有効ゆうこう」

元もと国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょの獣医じゅうい科学かがく部長ぶちょうで「サル痘」を研究けんきゅうしてきた岡山おかやま理科りか大学だいがくの森川もりかわ茂しげる 教授きょうじゅに、感染かんせん状況じょうきょうや対策たいさくについて話はなしを聞ききました。

Q．緊急きんきゅう事態じたいの宣言せんげんについて、どう見みますか
A．人にんから人ひとへの感染かんせんがここまで広ひろがったことは初はじめてで、多おおくの国くにに感染かんせんが広ひろがり、患者かんじゃ数すうの増加ぞうかに歯止はどめがかかっておらず、国際こくさい的てきな協力きょうりょく体制たいせいがないと対応たいおうが難むずかしくなっていて、異常いじょう事態じたいであるのは間違まちがいありません。
ただ、アフリカ以外いがいでは死亡しぼう者しゃはおらず重症じゅうしょう者しゃが少すくないことと、医療いりょう従事じゅうじ者しゃや重症じゅうしょう化かしやすいとされる子こどもや妊婦にんぷ、免疫めんえき状態じょうたいが悪わるい人ひとへの感染かんせんが非常ひじょうに限定げんてい的てきだということから、緊急きんきゅう委員いいん会かいの中なかでは深刻しんこく度どはそこまで高たかくないと考かんがえる人ひともいたようです。
また、感染かんせん拡大かくだいを抑おさえ込こめている国くにもありますが、世界せかい全体ぜんたいで見みると増ふえ方かたは収おさまっていないので、最終さいしゅう的てきに事務じむ局長きょくちょうが緊急きんきゅう事態じたいだと判断はんだんするに至いたったと思おもいます。
新型しんがたコロナの際さい、感染かんせんが拡大かくだいしたあとに後ご追おいで緊急きんきゅう事態じたいを宣言せんげんしたことの反省はんせいもあったと思おもいます。

Q．新あらたに分わかったことは
A．患者かんじゃについては男性だんせいが圧倒的あっとうてきに多おおく、男性だんせいどうしで性的せいてき接触せっしょくがあった人ひとが多おおいことは今いまのところ変かわっていません。
女性じょせいや子こども、医療いりょう関係かんけい者しゃの感染かんせんは非常ひじょうに少すくなく、傾向けいこうは大おおきくは変かわっていません。
重症じゅうしょう化かする人ひとが少すくないのは、ほとんどの患者かんじゃが成人せいじん男性だんせいだということもあると思おもいます。

Q．ウイルスの感染かんせん力りょくや病原びょうげん性せいについてはどう見みていますか
A．直接ちょくせつ皮膚ひふと皮膚ひふが接触せっしょくして、病変びょうへん部位ぶいに触ふれる場合ばあいに感染かんせんリスクが高たかいです。
また、患者かんじゃの精液せいえき中ちゅうにウイルスが検出けんしゅつされるということは報告ほうこくされていますけれども、実際じっさいにそれが感染かんせん源げんになっているかどうかは分わかっていません。
最近さいきん、ドイツで患者かんじゃ2人にんが入院にゅういんした病室びょうしつ内ないでのウイルスの広ひろがりを調査ちょうさした論文ろんぶんが出でています。
それによると、例たとえばベッドの縁えんからウイルスが検出けんしゅつされたり、患者かんじゃが使用しようしたトイレの便座べんざや洗面せんめん所しょの蛇口じゃぐちでも検出けんしゅつされていると報告ほうこくされています。

Q．日本にっぽんでのリスクは
A．感染かんせんは欧米おうべいだけでなく、韓国かんこくやシンガポール、タイなどアジアにも広ひろがっていて、日本にっぽんでもいつ感染かんせん者しゃが出でてもおかしくありません。
国内こくないでも検査けんさ・診断しんだん体制たいせいの準備じゅんびは各地かくちの衛生えいせい研究所けんきゅうじょなどで進すすめられていて、政府せいふや行政ぎょうせい、医療いりょう機関きかんは危機きき感かんを持もって備そなえる状況じょうきょうになっています。
患者かんじゃさんへの対処たいしょ法ほうについては、国立こくりつ国際こくさい医療いりょう研究けんきゅうセンターからガイドラインが出でていて、皮膚ひふ科かなどのクリニックでも準備じゅんびできる状況じょうきょうにあります。
ただ、新型しんがたコロナがどんどん拡大かくだいする中なかで、医療いりょう機関きかんが厳きびしい状況じょうきょうを迎むかえていて、サル痘に対にたいして適切てきせつに対応たいおうできなくなることを心配しんぱいしています。

Q．私わたしたちは、どう備そなえるべきでしょうか
A．患者かんじゃが触ふれた場所ばしょに触ふれると間接かんせつ的てきにも感染かんせんリスクのあることが分わかってきましたけれども、幸さいわい日本にっぽんはコロナへの対応たいおうが徹底てっていしていますので、マスクするなり手なりてを洗あらうことや消毒しょうどくなどを徹底てっていしていれば、サル痘の感染かんせん予防よぼうにもかなり有効ゆうこうだと思おもいます。

また、サル痘に感染かんせんして発疹はっしんが現あらわれるなどした部位ぶいがものすごく痛いたむと訴うったえる患者かんじゃもいるようですけど、命いのちにかかわるようなケースは今いまのところ少すくないということですので、それほど怖こわがる必要ひつようはないかと思おもいます。
感染かんせん者しゃが出でている地域ちいきに渡航とこうしたからといって、危あぶないということはないとは思おもいますが、素手すでで握手あくしゅすることや、何なににでも触ふれるようなことは避さけたほうがいいのではないでしょうか。
コロナのように気きをつけて対応たいおうすれば、感染かんせんリスクはかなり下さげられるでしょう。

ソース：NHK ニュース