【随時更新】イスラエル・パレスチナ情勢(11日の動き)
2023-10-11 03:44:28

※11日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
双方の死者 あわせて2100人に
イスラエル軍は、イスラム組織ハマスが大規模な攻撃を開始した今月7日以降、イスラエル側でこれまでに少なくとも1200人が死亡したと発表しました。
一方、パレスチナ側について、ガザ地区を実効支配するパレスチナの保健当局は、これまでに900人が死亡したと発表していて、双方の死者はあわせて2100人に増えました。
イスラエル軍 ハマスの幹部2人殺害を発表
ガザ地区に激しい空爆を続けているイスラエル軍は10日、ハマスの幹部2人を殺害したと発表しました。イスラエルのガラント国防相は「われわれは攻撃を空から始めていて、今後は地上からも攻撃をするだろう」と述べて、地上での侵攻に向けて準備していることを示唆しました。
ニューヨークでイスラエル支持する1万人規模のデモ
イスラエル国外で世界最大規模とされるユダヤ人コミュニティーがあるアメリカ・ニューヨークで、10日、イスラエルを支持するデモが開かれました。警察によりますと、およそ1万人が集まり、イスラエル国旗を身にまとった参加者たちは誘拐された人だとする写真を掲げながら「ハマスは人間の盾を使うのをやめろ」などと訴えていました。
イスラエルに家族がいるという男性は「イスラエルで、われわれの仲間が極めて野蛮な方法で虐殺された。本当に恐ろしい、予測のできない時代で、私にできることは同じように恐怖を感じている人たちと一緒に祈ることだ」と話していました。
デモが行われたニューヨーク中心部の道路には人があふれ、長時間にわたって通行止めになる事態となりました。
パレスチナで支援活動のNGO“犠牲になっているのは市民の命”
パレスチナのガザ地区などで女性や子どもなどへの支援活動を行っているNGO、JVC=日本国際ボランティアセンターのエルサレム事務所で代表を務める木村万里子さんがNHKの取材に応じ、「これまでもハマスがロケット弾を発射することはありましたが、今回はハマスの戦闘員がイスラエル領内に入って人質を取るなど、これまでと大きく違うと思う」と話していました。
一緒に支援を行ってきたガザ地区のNGOのメンバーとは定期的に連絡を取り合い、無事が確認できているということですが、「攻撃があった初日の夕方のやりとりの中で、『夜もちゃんと眠れるといいね』とメッセージを送ったのですが、『私もそう願ってるけれどもそれは無理だと思う』という返事が来ました。その後も夜は眠れないから攻撃が少ない昼間に眠るようにしているそうです」と話していました。
さらに、ガザ地区では病院も被害を受けており、多くのけが人が搬送され医薬品などが不足していて現地の医療関係者から支援の要請が届いているということで、「医療関係者で犠牲になってしまった方もいる中で、それでも医療従事者の方たちはけがをされた人たちを必死の思いで懸命に治療している状況です。今は直接医薬品を届けることができない状態ですが、現地で活動が再開できる状況になったらすぐに支援ができるように準備を進めています」と話していました。
松野官房長官「外交努力続け 邦人の安全確保に万全期す」
松野官房長官は午前の記者会見で「ハマスなどのパレスチナ武装勢力による攻撃について、特に罪のない一般市民に対する攻撃や誘拐は、どのような理由であれ正当化することはできず、強く非難する。日本政府として事態の沈静化に向けて、さまざまな関係者と意思疎通をしているところだ。今後もG7を含む国際社会と連携しつつ、外交努力を続けていく」と述べました。
また在留邦人への対応について「イスラエルの空港で、一部の商用便の運航停止が発生しているため、出国を希望される方に対し、運航状況に留意するよう呼びかけているところだ。今後も緊張感を持って邦人の安全確保に万全を期していく」と述べました。
アメリカ大統領補佐官「イランの“共犯関係” 情報を精査」
アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は10日、記者会見で「今回の攻撃において、われわれは当初からイランが広い意味で共犯関係にあると言ってきた。彼らはハマスに資金や訓練、それに装備品を提供してきたからだ。そして、そのすべてがわれわれが目の当たりにしたことの一因になっている」と指摘しました。
その上で「イランが攻撃を事前に知っていたのかや計画を支援したり、攻撃を指示したりしたのかという点については確認できていない。われわれが持っている情報を精査している」と述べました。
イラン精鋭部隊の元司令官「ハマスに技術移転 戦争の質に影響」
イランの精鋭部隊、革命防衛隊で周辺国での作戦に関わってきた元司令官のキャナニモガダム氏は10日、首都テヘランでNHKの取材に応じました。
革命防衛隊がハマスに対して行ってきた軍事支援については、「ガザ地区は完全に閉じられていて、どんな兵器やミサイル、それに兵士も送れない」としながらも、「サイバー空間などを通じた技術移転や財政支援によって、彼らがミサイルや無人機を自分たちで作れるように後押ししてきた」と説明しました。
その上で、今回のハマスによる大規模攻撃について「これまでと異なり、高性能の無人機や防空システムをくぐり抜けるロケット弾が使われている。われわれの支援が間違いなく戦争の質に影響を与えている」と述べ、イランの支援によりハマスの兵器開発能力が向上した成果だと誇示しました。
一方で、ハマスの戦闘員たちが動力付きのパラグライダーを使って、ガザ地区を囲む壁を越え、イスラエル側に侵入したとされることなどについては、「われわれも驚いている」と述べ、ハマスが独自の戦闘方法を編み出しつつあるという見方を示しました。
イスラエル 人質の家族が大統領と面会
イスラエルでは、イスラム組織ハマスの攻撃で、外国人を含む100人以上が人質になっていて、ハマス側はイスラエルが今後、警告なしにガザの住民を攻撃した場合、人質を処刑するとけん制しています。
こうしたなか、家族が人質となっている10組ほどが10日、エルサレムでヘルツォグ大統領に面会し、人質となっている家族の情報や、解放のために手を尽くすことを求めました。
このうち、ハマスによる襲撃を受けた音楽イベントに参加した29歳の義理の弟が人質にとられたというジャスミン・オレンさんは、「何の情報もないまま5日がたとうとしていて、私たち家族は皆、正気ではいられません。弟が無事に帰ってくることと、政府が人質の解放のために行動を起こしてくれることを望みます」と、今の心境を話していました。
そのうえで、「政府はハマスに交渉の余地を与えてしまうため、人質の解放を最優先にできないかもしれないが、少なくとも救出の戦略を立てて欲しい」と話し、人質とイスラエル側がとらえているハマスのメンバーなどとの交換も選択肢として検討すべきだと訴えていました。
イスラエル最大の商業都市テルアビブは
地中海に面したテルアビブは、イスラエル最大の商業都市で、普段は大勢の観光客や買い物客でにぎわっていますが、ハマスによる大規模な攻撃以降、多くの商店が営業を取りやめ、街は閑散としていました。
港にあるイベント会場には、市民から寄付された食料や衣類が集められ、前線にいる兵士や攻撃で大きな被害が出たイスラエル南部の人々に送る作業が急ピッチで進められていました。
作業に当たっていた男性は、「毎日300台くらいのトラックや車がここを出発しています。SNSの呼びかけに多くの人が集まってくれています」と話していました。
テルアビブにもガザ地区から発射されたロケット弾の被害が出ていて、中心部にほど近い地区では7日夜、住宅にロケット弾が直撃し、がれきの山が残されていました。
近くに住む37歳の男性は「ロケット弾を迎撃できず、このエリアで直撃を受けるのはこれまでなく異例のことです。近所の人たちはさらなる攻撃を恐れて外出せず、街は死んでしまったようだ」と話していました。
また、テルアビブの郊外で住宅地の道路にロケット弾が着弾した現場では、激しく壊れて焼け焦げになった車が放置され、住民たちが割れた窓ガラスの破片やがれきの片付けに追われていました。
近くに住む住民によりますと、ロケット弾が爆発した際に大量の金属片が飛び散り、周囲に止めてあった車や高層階の住宅にも被害が広がったということです。
被害の大きかったアパートに両親が暮らしているという男性は、「私の両親は窓のない部屋に避難していて無事でしたが、それは本当に幸運でした。ハマスが市民に向けてこのようなひどい攻撃をしているのを世界はしっかりと見ています」と憤った様子でした。
ガザ地区封鎖「国際人道法で禁止」 国連
イスラエル・パレスチナ情勢に関連し、スイスのジュネーブに本部がある国連人権高等弁務官事務所のターク人権高等弁務官は10日、緊急の声明を発表しました。この中では「われわれは爆発寸前の火薬庫のような状況に直面している。イスラエル人とパレスチナ人の命が失われ、双方の地域社会に計り知れない苦しみがもたらされている」としています。
その上で、イスラエルによるガザ地区の封鎖について「生活必需品の供給を遮断し、民間人の命を危険にさらすような封鎖は、国際人道法で禁止されている」と批判しました。
また、イスラム組織のハマスを名指しすることは避けつつ、「パレスチナの武装勢力に対して、拘束されている民間人を即時に無条件で解放するよう求める。人質を取ることは国際法で禁じられている」と指摘しています。
さらにイスラエル側に対して、ガザ地区への空爆により、住宅や学校、国連機関への被害が相次いでいるとして、民間人や民間施設への攻撃をやめるよう呼びかけています。
「オスロ合意」調停役 新たな和平合意の実現を訴える
イスラエルとパレスチナの二国家共存への道を開いた1993年の「オスロ合意」で調停役を務めたノルウェーの元外交官、ヤン・エゲランド氏がNHKのオンラインインタビューに応じ、アメリカとアラブ諸国などの主導による新たな和平合意の実現を訴えました。
国連で人道問題担当の事務次長を務めたあと、現在は国際NGO・ノルウェー難民評議会の事務局長としてガザ地区への人道支援などに当たっているエゲランド氏は、「イスラエル軍によるガザ地区への包囲と空爆に、240万人もの罪のない市民は持ちこたえられないだろう。その43%は15歳未満の子どもだ」と述べました。
そして「現地には60人近いスタッフがいるが、支援物資の備蓄は数日間で底をつく。短期的には上下水道や病院を動かすための電気、より長期的には食料と、空爆で家を失った18万人から19万人の住まいが必要だ」と述べたうえで、支援物資を運び込み、市民が安全地帯に逃れるための、人道回廊と呼ばれる避難ルートが必要だという考えを示しました。
そして、30年前の「オスロ合意」を振り返って「当時は双方に楽観的な見方があふれ共同プロジェクトも多かったが、合意を実行に移すのに時間がかかりすぎ、その間に平和を望まない勢力が力を増してしまった。恨みや対立、憎しみがこれまでになかったほど増幅してしまった今、人々や指導者たちの間の信頼を再構築する必要があるが、長い時間がかかるだろう」と述べました。
その上で、問題の解決に向けて「アメリカと、エジプトをはじめとするアラブ諸国など、国際社会の調停のもとで双方が会談し、新たな『エルサレム合意』を目指すべきだ。イスラエルの安全と、パレスチナ人の人権、尊厳、正義、そして未来への希望を保証するものだ。それはまだ実現可能だが、簡単ではない。国際社会による多大な努力が必要になる」と訴えました。
イスラエル軍とハマス 攻撃の応酬が激化
ハマスによる大規模な攻撃の報復として、イスラエル軍は10日も、ハマスが実効支配するガザ地区に激しい空爆を続けています。
これに対してハマス側は10日午後、イスラエル南部のアシュケロンや、最大の商業都市テルアビブの住民に対して、大規模な攻撃を行うとの警告を出し、予告通り午後5時から一斉にロケット弾の発射を始めました。
地元のメディアは、アシュケロンで住宅地などにロケット弾が着弾した様子を伝えていて、けが人がいるとの情報も出ています。
この攻撃についてハマスの軍事部門は声明で、「イスラエルが私たちの市民から住まいを奪い続けるなら、私たちもアシュケロンが住めなくなるまで攻撃し、別の街も同じように攻撃する」と強調しました。