死亡しぼうの老ろう夫婦ふうふ 留守番るすばん電話でんわに「助たすけて」

老ろう夫婦ふうふが留守番るすばん電話でんわに残のこした「助たすけて」のメッセージは届とどきませんでした。

今回こんかいの豪雨ごううで、大おおきな被害ひがいが出でた岡山おかやま県けん倉敷くらしき市し真備まび町まち。氾濫はんらんした川かわから水みずが押し寄おしよせ国土こくど地理ちり院いんの推計すいけいでは、浸水しんすいの深ふかさが最大さいだいで４よんメートル80センチ程度ていどに達たっしたとみられています。

その真備まび町まちでは、今月こんげつ11日にちの夕方ゆうがたまでに、49人にんの死亡しぼうが確認かくにんされました。

関係かんけい者しゃによりますと、このうち、西原にしはら俊信としのぶさん（86）と妻つまの明子あきこさん（84）は今月こんげつ８はち日にち、自宅じたくで倒たおれているのを捜索そうさくにあたっていた自衛隊じえいたい員いんが見みつけたということです。

俊信としのぶさんは、目めや足あしが悪わるく、明子あきこさんは俊信としのぶさんのデイサービスに付き添つきそったり、自宅じたくで介護かいごしたりしていたということです。２に人にんの遺体いたいが見みつかったのは平屋ひらや建だての住宅じゅうたくの台所だいどころでした。妻つまが、体からだの悪わるい夫おっとを抱いだきかかえるような状態じょうたいで発見はっけんされたということです。

夫婦ふうふの次男じなんの幹夫みきおさん（54）は今月こんげつ７なな日にちの朝あさ、母ははの明子あきこさんに電話でんわをかけたそうです。

「水みずは来きていないから大丈夫だいじょうぶ」 明子あきこさんは、電話でんわ口ぐちでそう話はなしたといいます。

ところが、その後そのご、事態じたいが悪化あっかします。明子あきこさんは午前ごぜん10時じ57分ふん、近所きんじょに住すむ田原たはら康子やすこさんに電話でんわをかけていました。田原たはらさんは、当時とうじ、電話でんわに出でられず、留守番るすばん電話でんわには「水みずがあがってきているので、役場やくばに救助きゅうじょに来きていただくようにお願おねがいできませんか」というメッセージが残のこされていました。

ただ、その時とき、田原たはらさんは自宅じたくが浸水しんすいし、避難ひなんを余儀よぎなくされていました。明子あきこさんのメッセージに気きづくことはできませんでした。

そのころ、明子あきこさんは、知り合しりあいなどに繰り返くりかえし電話でんわをかけていたことが残のこっていた携帯けいたい電話でんわの履歴りれきからわかりました。

その後そのご、７なな日にちの午後ごご１いち時じすぎ、明子あきこさんは幹夫みきおさんに電話でんわをかけてきました。この日ひの朝あさの電話でんわで「水みずは来きていないから大丈夫だいじょうぶ」との内容ないようが「水みずが胸むねの高たかさまで来きている」と状況じょうきょうが切迫せっぱくしたものに変かわっていました。

電話でんわを受うけた幹夫みきおさん。しかし、30キロほど離はなれた岡山おかやま県けん玉野たまの市しで暮くらしているため記録きろく的てきな豪雨ごううの中なか、すぐに、助たすけに行いくことはできませんでした。

関係かんけい者しゃによりますと、西原にしはらさん夫婦ふうふが亡なくなったのは、このおよそ２に時間じかん後ご、午後ごご３さん時じごろ。死因しいんは水死すいしとみられています。

亡なくなった父ちちと母ははについて幹夫みきおさんは、涙なみだを流ながしながら、こう語かたりました。

「いろんなことを教おそわった厳きびしくも優やさしい両親りょうしんでした。亡なくなったと聞きいたときは『やっぱりダメだったのか』と思おもいました。自分じぶんが助たすけられたらよかったのですが、あの豪雨ごううの中なかでどうしようもありませんでした。『本当ほんとうにごめんなさい』という気持きもちです」

また、明子あきこさんが携帯けいたい電話でんわにメッセージを残のこした田原たはら康子やすこさんもやりきれない思おもいを抱かかえていました。

「留守番るすばん電話でんわを確認かくにんしたのは今月こんげつ８はち日にちになってからでした。ほんとうに仲なかむつまじい夫婦ふうふで、『避難ひなんするように声こえをかけていれば』という思おもいが消きえません」

ソース：NHK ニュース