地下鉄切りつけ事件 “教育熱心な親 度過ぎると犯罪”動機供述
2025-05-09 08:58:37

長野県生坂村の自称、自営業 戸田佳孝容疑者(43)は7日、東京 文京区の東京メトロ南北線東大前駅のホームで、電車に乗り込もうとした20歳の大学生に突然、包丁で切りつけてけがをさせたとして警視庁に逮捕され、9日、殺人未遂と銃刀法違反の疑いで検察庁に送られました。
容疑者は逮捕当日、黙秘していましたが、その後、容疑を認め「教育熱心な親のせいで中学時代に不登校になって苦労した。世間の親たちに度が過ぎると子どもがグレて犯罪をおかすようになることを示したかった」などと事件を起こした動機について供述を始めていることが捜査関係者への取材でわかりました。
「駅の名前に『東大』とついているので世間の人たちが教育虐待を連想しやすいと思った」と話す一方、被害者の大学生については「たまたま近くにいたので狙った」などと供述しているということです。
容疑者は事件当日の7日に電車で長野県から東京に来たとみられ、警視庁は事件に至るさらに詳しいいきさつなどを調べています。
容疑者の供述内容
捜査関係者によりますと戸田容疑者は逮捕当日黙秘していましたが、8日午後の取り調べで事件についての供述を始めたということです。
「私がやったことに間違いありません」と容疑を認めたうえで、事件を起こした動機について「教育熱心な親のせいで中学時代に不登校になり苦労した。子どもを東大に入れようとする世間の親たちに度が過ぎると子どもがグレて私のように犯罪をおかすようになることを示したかった」と供述しているということです。
東大前駅で事件を起こした理由については「名前に『東大』と付いていて、世間の人たちが教育虐待を連想しやすいと思った」と供述しているということです。
被害者は東大に通う学生でしたが「たまたま近くにいたので狙いました」と話し「世間に自分の考えを示すことができれば、相手が死んでも死ななくても、どちらでもよかった」などと供述しているということです。
事件についての反省などはこれまで述べていないということです。
容疑者を知る人「変わった様子はなかった」
容疑者の自宅があるのは長野県の山間部にある人口およそ1600人の生坂村です。
村によりますと4年前の令和3年12月に容疑者から空き家について問い合わせがあり、現在住んでいる民家を紹介したということです。
この民家は周囲を森林に囲まれた一軒家で、玄関前には大量の段ボールなどが積み上がり雑然としていました。
近所に住む60代の女性は「引っ越してきたのは4年ほど前だと思います。IT関連の仕事を自宅でしていると聞きました。馬を飼いたいとこっちに引っ越して来たみたいです」と話していました。
また、容疑者の人となりについては「顔を合わせればあいさつをするような普通の近所の人という印象で事件を聞いてとても驚きました。近所とのトラブルも全然なかったです。ふだんはニコニコしているし容疑者の沈んだ顔をあまり見たことはなかったです」と話していました。
また、容疑者はこの女性と同じ地元の猟友会に入っていたということで、猟友会の集まりにも顔を出していました。
女性は「猟友会の集まりにも顔を出していて変わった様子はありませんでした。悩みがあるという話をされたこともありませんでした」と話していました。
東京大学の学生「暴力で主張は間違っている」
逮捕された容疑者が調べに対し「教育熱心な親のせいで不登校になった。事件を起こすことで世間の親に、度が過ぎると子どもが犯罪をおかすようになることを示したかった」などと供述していることについて、東京大学に通う学生に聞きました。
男子学生は「容疑者のような家庭があることは理解できるが、自身の体験から生じた主張を関係ない人を巻き込んで暴力という形で主張している部分が間違っていて、別の方法があったのではないか」と話していました。
別の男子学生は「受験戦争が激化していて保護者や先生から過度なプレッシャーがかかっている現状が実際にあり、自分は偶然その期待に応えられただけでうまくいかないケースもあると思う。ただ、容疑者が起こしたことは被害者が生まれてしまう結果となり、到底許されるものではない」と話していました。